ゼンゼロのキャラを曇らせたくなった時に書くやつ   作:豚足と豚骨の化身

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パイパー:新たなる旅立ちに・中編:

 

「事故った割には随分回復がはやかったなぁ……。シーザーのやつもびっくりしてたぜぃ。」

 

散らばった工具の上で、大破したトラックを直している男へ私は呆れたように声をかける。コイツを道端で拾ってから3週間が経った。腹部骨折に全身打撲の大怪我……全治2ヶ月と判断された癖に、その半分にも満たない期間で完全回復したのは流石に恐怖を感じざるを得ない。

 

「俺の身体は頑丈だからな。それに、お前さんやカリュドーンの子の奴らが丁寧に治療してくれたおかげもある。まぁなにはともあれ、これでようやくコイツを直してやれるって訳だ。」

 

「頑丈で済むもんなのかぁ?それ……。」

 

「まぁ実際俺は今元気にここに立ってるわけだから、証明は出来てるだろ?」

 

「そうかぁ……まぁアンタがそう言うならそうしとこうか。それでだ、そんな元気そうなアンタに仕事が入ってるんだけど……どうする?まだ本調子じゃないようなら、断わっとくからよぉ。」

 

「いや、問題ない。今すぐ始めよう。ビッグダディさんにもそういう約束で通してるからな。」

 

そう言いながら工具を手早く片付け、アイツは黒く汚れた作業着を脱ぎ捨てた。その服の下から、動きやすそうなスポーツウェアが現れる。

 

「それじゃあ早速行くとするか。バイクの運転はできるのかぁ?」

 

「いや、普通に免許を持っていない。だから暫くはお前さんの後ろに乗せてもらうよ。」

 

「アンタの命を預かるってわけか。コイツは責任重大だぜぇ。」

 

「あぁ、もう道端で干からびたカエルみたいになるのは懲り懲りだから、よろしく頼む。」

 

そうして、私達の初仕事が開始した。

 

「そこそこ飛ばすからなぁ。しっかり掴まってろよっ!」

 

「へっ?あっ……?」

 

私の言葉に返ってきた素っ頓狂な声を合図に、私は思い切りアクセルを踏み切る。飛び込むような発進、砂埃を舞い上がらせながら、私たちは前方から吹きすさぶ風に抗い前へと進む。

 

「ちょっ…トばしすぎ!トばしすぎだって!」

 

「聞こえねぇなぁ〜?」

 

私の腹あたりに腕がまわってくる。どうやらあまりの速さに姿勢を低くしながらしがみついているらしい。なら振り落とされる心配も無いと、私は更にスピードを上げる。

 

「なんか加速してるだろ!お前さんちょっとは自重しろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ……久しぶり走ると気持ちいいなぁ〜」

 

目的地に着いたあと、私は大きく伸びをしてバイクから降りる。横に目をやると、バイクの同乗者は真っ青な顔でその場に崩れ落ちていた。

 

「郊外とはいえ……いくらなんでも……これはっ……」

 

「なんだぁ……トばしすぎたかぁ?」

 

「そう言うレベルじゃない……」

 

おぅ……ちょっとやりすぎたな。反省しよう。

 

「……それはそうと、仕事ってのは何をすればいい?」

 

「ん〜今回のはそんなに難しくなくてなぁ……ここで待ち合わせしてたトラックから輸送品……て言ってもアタッシュケース一個分のを受け取ればいいんだけど……居ないな。」

 

辺りを見回す。ここはホロウの中のガソリンスタンド。郊外ではよく見る場所だが、事前情報で渡された写真と景色は一致しているから場所は間違えていないはず。しかしながら、当の待ち合わせ相手は現れない。

 

「嫌な予感がするぜぃ。なんかこう……バーニスのやつがやたら高いテンションで私に近づいてきた時にみたいな……。」

 

「その表現は正しいの?」

 

「そりゃぁ……そういう時に限ってバーニスは面倒事を引っさげてくるからな〜。アンタもアイツと付き合ってたら分かるはずだせい。」

 

実際、バーニスは悪いやつではないが……少々、いやかなりズレてるところがある。まぁ、そこが好きなのも事実であるが。そんなこんなで、私は古ぼけたガソリンスタンドを見て回る。エーテル結晶、使えなくなった給油機、それと地面に残ったタイヤ痕……。付き方的にトラックのものであろうことは容易に予想できる。そうして考えていると、耳元でまだ具合が悪そうなバディの声がした。

 

「新しいものだな。」

 

「そういうの分かるもんなのか〜?」

 

「まぁ、同業者ってこと……タイヤ痕なんて何千回も見てる。お前さんらがバイクに詳しいのと一緒だ。」

 

「そんなもんなのか〜。でもそうなるとよ〜覚悟しないといけないぜい。多分、この先にあるのは惨事だろうからなぁ。」

 

「分かってる……」

 

私たちは互いに心の準備をし、地面についた四駆の足跡を追ってゆく。いつしかパチパチと炎の音が聞こえて、顔を上げた。

 

大破したトラック。その車体についた大量の爪痕。エーテリアスに襲われたのだろう。無惨に破損したトラックの傍らには、血塗れのホロウレイダーが2人倒れていた。恐らく、もう死んでる。

 

「こりゃぁ……酷いなぁ……」

 

こういう場面はホロウでは珍しくない。私も何度か遭遇したことがある。しかし何度見ても人の死は慣れないものだ。隣でカヒュッと息の切れる音がした。

 

「見たくないんなら見ない方がいいぜい。気分がいいもんでもないんだからよ〜。」

 

「……問題ない。それより荷物の無事を確認しよう。あの死体がエーテリアスになるまえに。」

 

「あぁ……そうだな〜……」

 

私達は乱暴に開かれた後部の扉からトラックの中へと入る。目的の荷物はすぐに見つかった。かなり煙る3畳半の一角に、捨ておかれたアタッシュケースがある。

 

「これ……だよな……ゴホッ」

 

先陣を切った私のバディは、煙に咳き込みながらもそれを取ってくれた。私は「ありがとよ〜」と礼を言いつつそれを受け取って、それから二人で一緒にバイクの元まで戻る。

 

「ゴホッ……ゴホッゴホッ……はぁ……」

 

「どんだけ煙吸ったんだ〜?ここからトばして帰っても大丈夫なのかよ〜。」

 

「……大丈夫だ。あ……いや、ちょっと速度落として。頼むから。」

 

「……了解。気持ち遅めに走るぜい。」

 

アタッシュケースをバイクへ括り付け、私もハンドルを握る。そして緊張したような震えた息と共に、私の服がギュッと掴まれるような感覚がした。

 

「気持ち遅めって言ったからな?本当に頼っ……」

 

踏み込まれたアクセルに呼応して、車体は舞い散る砂埃と共に風を切り裂く。背後から情けない叫び声が聞こえると共に、私を掴む力が一気に強くなった。

 

「話が違うんだがぁ!?」

 

一応言うなら、気持ちは落とした。気持ちは。郊外で走り屋をやってると、速度感覚が狂うのだ。まぁ結果的に、ブレイズウッドに着いた頃には真っ青になったバディの姿があったから、私に落ち度はあるのだけど……。

 

「大丈夫か〜?」

 

「速度落とすって言った……言ったのに……意識が景色と一緒にぶっ飛ぶかと思った……」

 

「ごめんよ〜……私はビックダディに報告しに行ってくるからさ〜ちょっとそこで休んどくといいぜい。」

 

私は地に伏したその背中を擦りながら、屋外かつ崖っぷちに放り出されたブレイズウッドのソファを指さした後、言葉通りに報告へと向かった。

 

 

 

色々あったせいか、報告には随分時間を使ってしまった。気づくともう日は沈んで、空には満点の星が映っている。先程の場所へ戻ると、ソファには星を眺める人影がひとつあった。

 

「まだ居たのか〜?帰ってもよかったのに。」

 

私は隣に腰を据えて、バディの顔を覗き込む。返事は無かった。ただ、無言で私にニトロフューエルを飲んでいる。しばらくニトロフューエルを嗜むその姿を見つめていると、おもむろに口を開いた。

 

「郊外は……綺麗だよな。一見廃れてるけど、その実そこにあるのは人の営みと自然の共存だ。」

 

暗いホロウと光る月。それをバックにした後ろ姿はどうも悲しげな雰囲気を漂わせていた。私は何も返さず、続く言葉に耳を傾ける。

 

「ここで死ねるならさ……幸せなんじゃないかって……思う時がある。都会の空気の中……野垂れ死ぬくらいならな。アイツらも……そうだったんじゃないのかね。」

 

それは……今日のホロウレイダー達のことだろうか。つまり、アイツらが郊外で死んだことが不幸中の幸いだと?……そう言っているのなら、私には分からない思考である。

 

「アンタはさぁ、なんでそう思うんだ〜?」

 

「なんで……か。そう言われると難しいな。ただ都会アンチなだけかもしれない。まぁだが……そうだな。自分がもしも死ぬとなった時、死に場所くらいはいい場所でありたいから……かもな。」

 

「ん〜?ん〜……そうかぁ……。えっと……どういうこと?」

 

ノスタルジックな雰囲気に、返答に困る答え。なんか踏み込んじゃいけないラインに足がかかっている気がする。私が困っているのを理解してか、その原因たるソイツは小さく笑って、半分くらい残ったニトロフューエルを私に手渡した。

 

「あとはやるよ……俺の口には合わなかった。」

 

「それって私に処理を任せてるだけじゃぁ……?」

 

「ハハハ……そうかも。でも今日はお前さんに散々虐め倒されたんだし、これくらいのやり返しは許してくれよ。」

 

「うっ……そう言われると何も言い返せないぜい。」

 

仕方なくハーフなニトロフューエルを処理する私を横目に、手をヒラヒラとしながら、「後はよろしく」と吐き捨てて私のバディは遠くの方へと姿を消した。

 

「なんなんだよぉ、全く。」

 

嘆きを吐いて、ニトロフューエルを流し込む。慣れ親しんだ味は、微かな不満も同時に洗い流してくれる。そして残るのは、先の会話で感じた……心做しかの胸騒ぎだけだった。

 

 

 

それからの日々は早かった。アイツと仕事をして、アイツがトラックを直すのを手伝って、そして時々ニトロフューエルを飲む。アイツはニトロフューエルの代わりに、オレンジジュースを飲んでいた。

 

「随分可愛いものをのむんだなぁ〜?」

 

そんな風に茶化してみると、「うるさい。」と言いながら背中をぶっ叩かれる。そんな毎日は、私にとって実に楽しいものであり、それに比例するように、それはまるで荒野を沈む太陽のようにあっという間に過ぎ去った。

 

 

そして初仕事からだいたい4ヶ月がたったその日、私が見上げるその眼前には、隅から隅まで綺麗にされたトラックがあった。

 

「ついに終わった……アイアンタスク、修理完了だ……!」

 

車体の下からバディが姿を現し、清々しい顔で汗を拭う。私はそれに手を差し伸べて、ソイツの身体を起こしてやった。

 

「いやぁ……長かったなぁ。まさか4ヶ月もかかるとも思わなかったぜい。」

 

「あぁ……だがこれでようやくまた走れる。」

 

嬉しそうに工具を片付けるバディの姿に、私は少々寂しさを覚えた。何故なら、トラックがまた走れるようになったってことは、コイツはもうブレイズウッドに留まる理由もないからだ。

 

「なぁ……アンタ、ここで仕事する気はないか〜?バーニスも懐いてるしさぁ……トラックの運転手ってのもウチは常に人手不足だからよ〜。」

 

「ハハ……それはちょっと無理だな。俺もやりたいことがあるからさ。でも安心しな、俺もお前さんと同じで寂しいよ。」

 

「寂しいとは言って無いだろっ!」

 

「ははは……はいはい。」

 

郊外は広い。ひとつに留まらず、あらゆるところを転々とするヤツも多いのだ。だから、郊外ではこういう別れも多々ある。コイツがしたいことがあるのなら、私にそれを止める権利は無い。

 

「ならさぁ、お別れパーティ……開かせてくれないか〜?多分、他のやつもノリノリでやってくれると思うぜい。」

 

「お?じゃあ喜んで受けさせてもらうか。全員に……挨拶しときたいしな。」

 

「そんじゃ、決まりだな〜。早速みんなに伝えてくるぜい。」

 

私はくるりと身を翻して、その場を後にする。なにせ、私は別れを惜しむようなキャラじゃないからな。あの場に居ると、ボロが出てしまいそうだ。

 

そうして、私はその提案をみんなへ話した。案の定、二つ返事てそれは了承され、二日後に決行されることが決定した。

 

「二日後か、楽しみだな。」

 

「ま、ここの恒例行事みたいなものだよ。今回はアンタが主役なんだから、しっかり楽しめよなぁ。」

 

「あぁ、ありがとうよ。」

 

そんな会話をした。私も楽しみだった。もちろん……心残りが無いわけではなかったが、それでもしっかり送り出してやれる気がしたから。私はきっと、浮かれていたのだと思う。

 

 

 

 

アイツが血を吐いて倒れたという報告を受けるまでは……

















どうも、主人公の名前設定しなかったのに一生苦しめられています。対戦ありがとうございました。
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