新人です。エースパイロットやってます。   作:今井亜美(ハーメルンのすがた)

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 想像以上に多くの人に見てもらえてウレシイ……ウレシイ……。

 毎回「ここすき」入れてくれる人、いつもありがと! 見るの楽しいよ!

 みんなも入れてくれると嬉しい!
 もちろん、感想や高評価もとっても嬉しいよ!



十話 新人とポンコツ

 

 どーも新人です。

 私は今、ちょっとブルーです。

 

 あー……コロニー・セカンドでの日々は良かったなあ。なんにもせずに部屋に引きこもっててもだーれも怒らないまじパラダイスだったのに。

 

 映画見ながらポテチキメて、コーク飲んでさあ。

 たまに哨戒任務でアークに乗って、宇宙で泳いで……。

 

 マジ人生最高の日々を送ってたのになー。

 一月もしないうちに出撃ですよ……。

 

 しかも相手はコロニー? 規模デカすぎじゃない?

 マシンガンやレールガンでどうにかなる相手じゃないんだが?

 

「拠点攻略用の装備になるってよ」

 

 ポム、と私の頭に大きな手のひらを置いたのはボブニキ。

 

 彼の言う様に、いまジャッコの両肩には大きなミサイルポッドが括りつけられており、右手に装備してるのもいつもの豆鉄砲ではなく、威力高めのジャッコバズーカだ。

 更には普段空いてる左手に盾も装備され、万全の重装備といった感じである。

 

「どうせ話聞いてなかっただろ? 作戦はこうだ。まずドルフィンの主砲でコロニーの壁に穴を開ける。俺達は中に入って好きにぶっ放す。嫌んなるよなあ」

 

 今回襲うコロニー・セブンスは中立を気取った裏切り者コロニーだと聞いている。だからめちゃくちゃになるまで壊そうって話だ。

 壊せばすっきりするかもしれないが、その分だけ人が死ぬ。軍人ではない、無関係な人も。

 

「ま、お前はコロニーに撃つ必要ねえ。それより防衛部隊の相手を頼む。そっちの方が得意だろ? 帰ったらまた、ジュース奢ってやるからよっ!」

 

 ボブニキは言いたいだけ言うと、自分の機体に向かっていった。

 私も機体に乗り込もうとして、既にハッチが空いている事に気付く。

 そこにいたのは、大きなお尻を揺らして何やらゴソゴソしている赤い三つ編みの女。つまりデカパイ。

 

「……何やってんの?」

 

 私はドン引きしている。

 

 コイツ、遂にロリコン趣味がいきすぎてそこまでする様になったのか、と。

 私が座ってたシートに頬ずりして笑ってた……キモ……。

 

「あ! ナナシちゃん、ナナシちゃん! 聞いて聞いて! むふふ!」

 

 犯行現場が見つかったのに、やけに嬉しそうだな。

 開き直ったのか……?

 

「ナナシちゃんの機体にね〜! スゴイの乗せちゃった!」

「……スゴイの?」

 

「そーだよ! 滞在中ヒマだったから作ったの! それで艦長に伝えたら、乗せていいよって言われたから!」

 

 デカパイは興奮気味に色々話してくれたが、結局肝心の中身が1ミリも分からない。

 

「ふふふ、知りたい? じゃあほら! 乗って!」

 

 デカパイに手を引かれ、コックピットの中に入る。

 

「後で感想教えてね〜!」

 

 ヒラヒラと手を振るデカパイがハッチの向こうに消えていく。

 とりあえず機体をスタンバイモードにセットしよう、と電源を入れた。

 普段通りにパスワードを適当に打ち込む。

 

 すると、見慣れないシステムが立ち上がった。

 

-------------------

 

 Automatic Imagenation

 Learning Integration System

 

 AI-LIS

 

-------------------

 

「アイ……リス?」

『はい、お呼びでしょうかマスター』

 

 シャベッタァッ!?

 喋るぞコイツ!? は!?

 

『初めまして、マスターナナシ。私は自動想像学習統合システム────アイリスです』

 

 はきはきと明朗な女性の機械音声。

 って事は、これAIか?

 

『はい。私はAIになります』

「じゃあ、デカパイはコミュニケートAIを作ったって事?」

 

『すみません、よく分かりませんでした。デカパイとは何を指す固有名詞でしょう?』

「デカパイはデカパイでしょ」

 

『センシティブなワードは使用を禁止されています』

 

 何だこのポンコツ。

 ていうかただのお喋りAIをアークに搭載するってデカパイは何を考えてんだ? アークは玩具じゃないんだぞ?

 

『いえ、私はただのお喋りAIではありません。自動想像学習統合システムです』

「長いしウザいしどうでもいいし……」

 

『戦闘時に様々な支援機能を利用可能です。例えばカメラで捕捉した敵のハイライトや残弾の表示及び管理に照準自動補正。敵の進路予測、ランダム生成したパターン回避、パイロットのバイタルデータ収集、緊急時の機体自動保護────』

 

「あーもううるさい! 全部いらないからオフ!」

『すみません、一部機能はマスターの権限ではオフに出来ません』

 

「はあ!?」

 

 私、マスターじゃねえの!?

 マスターなのにマスター権限ないとかマジか!?

 

『マザー・リサ曰く、マスターの安全を第一にするため、だそうです。なので安全面に関する機能はオフに出来ません』

 

 あのロリコン野郎っ……!!

 こんなポンコツお喋りAIつける位なら、自動でポテチが出てくる機能をつけろよっ!!

 

 私が頭を抱えていると、ピロン! と通信が入りどこか得意気なデカパイの声が聞こえる。

 

『ナナシちゃん! じゃなかった、モブ曹長! アイリスはどう? どう? スゴかったでしょ? でしょ?』

 

 イラッ……。

 

『まだ出撃の時間じゃないからね! 今のうちにアイリスと親睦を深めて────』

 

「────おい、デカパイ」

『え、なに急にそのイケボ♡』

 

「お前……帰ったらお仕置きだから」

『あ、ひゃ、ひゃい……♡ 沢山お仕置きしてくだしゃい……♡♡♡』

 

 ブツリ……と通信を無理やりぶち消して深くため息を吐く。ただでさえブルーな気分がディープブルーな気分になった。

 

『ではマスター。マザーの言っていた様に親睦を深めましょう。まず貴方の事を教えて下さい。そうですね……好きな食べ物はなんですか?』

 

「お願いだから暫く黙ってて……」

『承知しました。出撃まで待機モードに移行します』

 

 

 

☆☆☆ ☆☆☆

 

 

 

 ベルガモット・リバティ。十八歳。

 ふわふわとした茶色の癖っ毛をした、明るく快活な性格の少女。

 

 真面目で努力家。常に笑顔で、誰にでも好かれる。

 しかしここ最近、彼女は自分が上手く笑顔を作れているか全く自信がなかった。

 

 先日実施されたコスモスのステージ4到達テスト。

 あの日、ベルの頭の中に飛び込んできた崩壊するコロニー・セブンスの光景は……彼女の心に深い影を落としていた。

 

(あの光景は絶対本物だった)

 

 そう、彼女は確信していた。

 勘である。特別な理由なんてない、ただの勘。

 

 だがこの勘を、無根拠だと馬鹿に出来ない理由があった。

 

 鋭すぎるのである。

 ここ最近のベルの勘は、常識の範囲をずば抜けて鋭かった。

 

 例えば、昼休憩の際食堂に入ると、メニューを見る前から何があるのか分かった。

 

 混雑してる時は、空いている席の位置がすぐに分かった。

 

 後ろから驚かそうと近づいてくる友人のハグを簡単に躱せた。

 

 ベル自身わけが分からない。

 分からないが、勘、や、直感、といった、第六感とも言うべき何かが、あの日以来、極端に強まってしまったのだと感じている。

 

(だからあんなもの見ちゃったのかな……?)

 

「なーに考えてんだー?」

「んえ?」

 

 お昼休みの食堂。

 対面に座ったベルの友人、メリッサ・ドーラントは呆れる様な目でベルを見つめる。

 

「最近のお前、ちょっとおかしいぞ。メシ食ってる時くらいもっと幸せそうな顔しろ。メシに失礼だろ」

「あはは……ゴメンねメリちゃん」

 

「メリちゃんじゃねえ! メリッサ少尉と呼べ!」

 

 ふんす、と小さな胸を張ってメリッサが怒る。

 動きに合わせて、後ろで無造作に結ばれた彼女の黒髪が揺れた。

 

 実際、彼女はベルよりも年上の21歳だ。

 

 しかし、低めの身長と凹凸の無い身体に童顔も合わさってどこか幼く見えてしまう。そんなメリッサが怒っても全然怖くない。むしろカワイイまである、とベルは常々思っている。

 

「少尉って……ほんと隠す気ないよねメリちゃん」

「スパイだって事か?」

 

 スパイ、と堂々と言い放つ。こんなスパイがいるだろうか? 実際、いるんだから仕方ない。

 

 メリッサは連合軍人である。

 技研の技術目当てに送り込まれたスパイである彼女は、何とスパイ活動初日の段階で自分がスパイだとバラした。

 

「だってアタシ、演技とか上手くねーし」

 

 悪びれる様子すらなく言い放つ彼女はいっそ得意気な様子で笑う。

 

「嘘つきゃどっかでボロがでる……だったら先に言っといた方がお互い良いだろ。どうせそこそこの報告してりゃ上は納得すんだ。アタシはそれで金が貰える、技研はスパイに騙されず連合軍の情報を得られる、ウィンウィンだろ?」

 

 それに、と彼女は続ける。

 

「ホントに大事な機体は乗せてくんねーしな。例の新型もアタシはCって開発名しか聞いてねえし」

 

 笑顔なのは変わってないが、一気に軍人っぽい雰囲気に変わった事をベルは感じ取った。普段の彼女なら気付かなかったかもしれないが、これは探りだ。

 C……つまりコスモスの情報を探りに来ている。

 

「悪いけど守秘義務があるから……メリちゃんにも教えられないよ」

「わーってる。それでいいさ。むしろ教えてきたら注意するとこだ」

 

 一気に気配が霧散する。

 どうやらこれはテストだったらしい。

 

 本気半分、最近ボーっとしているベルへの心配半分、といった所。

 

「とりあえずボケてはなさそうだな。何か悩みでもあんのか? お姉さんに話してみ?」

 

 見た目だけならお姉さんというより妹だよな、とベルは苦笑する。もちろん、口にはしない。

 

「うーん……笑わないで聞いてくれる?」

「それは、内容によるなー」

 

「私……最近変なんだ」

「そりゃ知ってるが……」

 

「えっとね、急に勘が鋭くなったっていうか、今日もメリちゃんのハグ避けたでしょ?」

「そーいや最近決まんねえな。てっきりタイミングを見切られ始めたのかと思ったが」

 

「勘が鋭くなったし、体力とかも前よりある気がするし、それに……未来が」

「……未来?」

 

「……未来が見えたんだ。このコロニーが襲撃され、る…………ッ!?」

 

 突然ベルは血相を変えて上を見上げる。

 

「お、おい。どうした?」

 

 メリッサが呼びかけるも、反応しない。

 ジッと上を見つめたまま。いや、見てるのは上じゃないな、とメリッサは気付く。ベルが見てるのは上じゃねえ、その先にあるもの、宇宙だ。

 

「なに……この敵意……!? まさか、今日っ!?」

 

 ベルは叫んで立ち上がると、勢いよく駆け出して食堂を飛び出した。

 

「お、おい!? どうしたんだよ!?」

 

 慌ててメリッサも後を追いかける。

 しかし、一向に差が縮まらない。

 

(アイツ、こんな足早かったか!?)

 

 ベルが角を曲がった。

 その後を追うメリッサの前に飛び込んできたのはセキュリティロックのされたドア。チッとメリッサは舌打ちを鳴らして考える。

 

 ベルが向かった先は研究所の最高セキュリティエリア。メリッサの持つセキュリティカードでは開けられない。

 

「アイツ、何だっていきなりこんな所……? まさか」

 

 メリッサは考える。今この先で研究されてるものと言えば、例の新型。

 

「C……か!?」

 

 ウー! ウー!

 

「っ何だ!?」

 

 その時、研究所内に警報が鳴り響いた。

 危険度最大のレッドアラート。

 

 メリッサは瞬時に判断を切り替え、格納庫に向けて走り出した。

 

 

 

☆☆☆ ☆☆☆

 

 

 

『ハイパービーム砲、目標に命中!』

『コロニー・セブンスの外壁、崩れます!』

 

『よし、アーク部隊発進! 主砲、再チャージ! ……リカルド中尉、聞こえますか』

『何でしょう、艦長』

 

『作戦通り、貴方は防衛部隊の迎撃をお願いします。コロニーに撃つ必要はありません』

『っ……了解。リカルド・ドッグマン、アンジー出る!』

 

『モブ曹長! 作戦時間です。発進どうぞ!』

 

 …………………。

 

『……モブ曹長? 曹ちょーう? えっと……ナナシちゃん?』

 

 …………zzz。

 

『まさか寝てる!? お、起きてナナシちゃん!? 出撃だよ!? あ、アイリス! ナナシちゃんを起こして!』

 

『イエス、マイ・マザー。対ナナシちゃん睡眠時用音声の内、最もデシベル数の高いパート21を再生します』

 

 ジリリリリリリッ!!!!

 

 どわぁっ!? な、なに!? 何だ!?

 敵の襲撃か!?

 

『マースターッ!! 起きてくださいッ!! あーさでーすよーッッッ!!!』

「うわああああ!! うっさ!! うっさい!!! 耳がイカれるぅ!!?」

 

『……マスターの起床を確認。音声停止……おはようございます、マスター』

 

 あー……頭の中でずっとキィーンって聞こえる……。

 人が折角気持ちよく眠ってたのにっ……!

 

「起こしたのはお前かポンコツ……?」

『ポンコツではありません。自動想像学習統合システムのアイリスです』

 

「あーもういい聞いた私がバカだった……」

 

 マジこいつ帰ってきたら絶対消す……!

 キャッシュの欠片も残さずに消滅させてくれる……!!

 

『ナナシちゃん起きた!? 出撃の時間だよ! ナナシちゃんが最後!』

「……了解。ナナシ・モブ、ジャッコ、出ます」

 

 頭がクラクラするけど、何とか操縦桿を倒してカタパルトから射出される。機体を引き起こしてコロニーの壁に向かって進める。

 

 コロニーは円筒系で、ぐるぐると回転しているから、先程戦艦が開けた穴はもう流されてどこかに行ってしまっていた。

 

「侵入口はどっちだ……?」

『ナビゲーションを開始します』

 

 不意に画面に矢印が表示される。

 矢印に従い右に移動すると、壊れた外壁が見えてきた。

 

『あちらが侵入口です。行きましょう、マスター』  

「……うーん? いや」

 

 まだ少しグラつく脳の奥で勘が告げている。

 私はそれに従い急ブレーキをかける。

 

『何を────これは』

 

 コロニーの外壁に緊急修復用の特殊ジェルが噴射される。ジェルは瞬く間に固まり、壁を塞いでしまった。

 

『……マスターは、これを読んだのですか?』

 

 勿論違う。

 いや、それもあるけど、主な理由は違うものだ。

 

 私は機体を穴より更に右に流し、コロニーの壁沿いにどんどん進んでいく。

 

『警告。現在の進行方向は、作戦領域から外れています。コロニー内への侵入に失敗した以上、一度母艦へ帰投し指示を仰ぐ事を推奨します』

 

 ポンコツが何か言ってるけど全部無視して進み続ける。こっちに何かがいると感覚が伝えている。

 

(なんだ……こっちに行かなきゃマズイのか……? 何で……?)

 

 勘に従って前に進むと、コロニーの外壁に穴が空いているのを見つける。戦艦が無理やり空けた穴じゃない。元々空いていた、つまり通路になっている場所だ。

 

 通路の中に入ってみるが、少し進んだ所で壁に行き当たった。しっかりとハッチが閉まっている。

 

 私の感じる不思議なプレッシャーはこの通路の先、ハッチの向こうからしていた。

 

『周辺地形を検索中……事前入手済みのマップデータに該当無し。見た目はアークの発進口、といった様子ですが……レーダーに感。マスター、警戒を』

 

 ハッチが徐々に開いていく。

 私は、思わず息を呑んだ。

 

 向こう側から姿を現したのは、一機のアーク。

 見たことない奴だ。連合の新型だろうか。

 

 白を基調にしたカラーリングで差し色の赤が実にヒロイックだ。見た目も特徴的な三本角に赤いスカート。

 

 ソイツを見た瞬間、私の感覚は特大の警鐘を鳴らす。

 こいつは……ヤバいっ! 絶対に勝てない……戦っちゃいけない奴だっ!!

 




 ロボアニメでありがちな相棒のサポートAIが遂に登場!
 AIキャラにありがちな『最初は融通きかないポンコツ』展開をかまし、今後訪れるベタベタな主人公落ち展開を匂わせていく……!
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