新人です。エースパイロットやってます。   作:今井亜美(ハーメルンのすがた)

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二十三話 新人と初めての友達 植木鉢追撃戦1

 

「おはようございます、ナナシ様」

「……おはよ」

 

 どーも、新人です。

 突然ですが、私はえらい。めっちゃえらい。それはもう途方もなくえらいと思う。

 

 何故なら私は今日……決めてた時間通り、朝に起きる事が出来た!

 

 朝に起きる。

 それはこの世で一番難しいミッション。

 

 それをこなしたのだから、私の人間レベルは急上昇。超えらい。きっとゾンビも私を襲わない。

 

「ふふ、まだお眠そうですね」

「まあね」

 

 欠伸混じりに返事を返す。そんな私の様子を、ルエルエ様は何処か嬉しそうに眺めていた。

 

「でも、起きて下さるのですね?」

「……顔洗ってくる」

 

 私が早起きした理由……それは、ルエルエ様の引き渡しが今日だからだ。

 

 この日は早く起きなきゃいけない。そんな気がしていたから、私は人生で初めての早起きに挑戦する事となった。

 

 端末があればポンコツに朝起こす様に頼めたんだが、今は端末ごとデカパイに預けてるからな……仕方ないのでルエルエ様本人に起こす様頼んだ。

 

 え? 自力で起きないのかって? そんなの無理に決まってるだろ。私はバカじゃないんだ。無理な事はやらないよ。

 

 バシャバシャと顔を洗い、目を覚ましてからナイトキャップを剥ぎ取る。少しボサついた髪を櫛で梳かした後、いつもの様に適当にゴムで束ねる。

 

 鏡を見ればいつも通りの顔がそこにあった。

 満足して洗面所を出ると、ベッドに腰掛けたルエルエ様と目が合う。

 

 なんの気なしに私もベッドに座る。

 暫く互いに無言だった。

 

 何かを話さないといけない気がした。でも何を話せばいいのか分からない。直感は細かい会話の仕方まで教えてくれないから。

 

 結局沈黙に耐えかねたのは私の方だった。

 

「何で、私を騎士に誘ったんだ?」

 

 それは私がずっと考えていた疑問の一つだった。

 単純な疑問に聞こえるかもしれないが、中身はずっと深く、複雑だった。

 

 人生の命題と言ってもいい。

 何故私なのか? その答えを、私はずっと探している気がする。

 

 そんな私の疑問を、ルエルエ様は一言で貫いた。

 

「ナナシ様が、特別な人間だからです」

「……私は普通だって、何度も言ってるだろ」

 

 ムカッ腹が立ち言葉が冷たくなった。

 でもコイツは一切怯まない。撃っても撃っても沈まないアーク……あの三本角の様に私を静かに追い詰めてくる。

 

「────いいえ、貴方は特別な人間です。もしも貴方が只人ならば、私は騎士になど誘っていません。貴方が特別だから、誘ったのです」

 

「……一体私の何がそんなに気に入ったんだ?」

 

「私は、皇家の人間です。私の歩む道はきっと、平坦な道ではない。故に隣に立つ者には、相応の力を求めます。あらゆる困難に打ち勝てる強さを。私には……貴方以上の適任者は考えられない」

 

 何でだよ。何でそこで私になるんだよ。

 別に他の奴だっていいじゃないか。

 

 私は特別なんかじゃない。普通の人間なんだよ。

 だって、この宇宙は広いんだろ?

 

 なら宇宙中探せば、私みたいな奴だって、きっと沢山いるだろ……なあ? 

 

 孤児院にはいなかったっぽいけど……きっといる。

 ……だから、私は普通なんだ。

 

「……ナナシ様にとって、【特別】とは、孤独の称号なのですね」

「一人は好きだ。気楽だから」

 

「なら何故私を抱くのですか」

「……気持ちいいからだろ」

 

「求めているからです。貴方は、無意識に他人を求めている。本質はさみしがりやなのです」

 

 さみしがりやだって? 私が?

 

「そんな事初めて言われたんだけど……」

 

 私はさみしがりやだったのか? 

 誰かに側にいて欲しかったのか?

 

 確かに……言われてみると、誰かと一緒にいるのは別に嫌いじゃなかった。

 

 ボブニキに買い出しに連れ出された事もあった。デカパイに遊びに誘われた事もあった。

 

 その度に私は、口では色々言ってたけど。

 最終的についてったのは、内心嬉しい気持ちがあったからなんだろう。

 

 本当に嫌だったら、初めからついていったりなんてしない。

 

 あの気持ちは、さみしさから来るものだったって言うのか?

 私はぼっちの可哀想な子だった……?

 

「ナナシ様」

 

 自分自身の感情を探ろうと考えていたら、ルエルエ様がそっと、私の両手を握りしめてきた。

 

「私の騎士になって下さい。そうすれば私達は、比翼の鳥にして連理の枝……どこまでも共にいると約束します。私の死ぬ時が、貴方の死ぬ時……貴方の死ぬ時が、私の死ぬ時です」

 

 コイツが死んだら私も死ぬ────どうしてかは知らないが、私にはその提案が酷く、魅力的なものの様に思えた。

 

 コイツの身体は貧弱だし、私が死にやすくなるばっかりで、受けるメリットは皆無に思えるのに。それでも私が死んだら、コイツも死ぬんだと────そう考えると、握られた手が、妙に熱く感じる気がしたんだ。

 

 不意に、熱が消えた。握られた手のひらが離れたのだ。

 

 ルエルエ様は引っ込めた手を、自分の首元に持っていった。そうして付けていたペンダントを外す。

 

「……これを、貴方に」

 

 ルエルエ様は、ペンダントを私に差し出してきた。

 ペンダントは銀のチェーンで出来ていて、先端にぼんやりと青く光る石がついている。

 

 何気なく手に取ると、不思議と馴染み、吸い付く様な感覚に囚われる。綺麗だけど変な石だ。

 

「これは?」

「その石は【月光石】と言います。光る時は満月の様に青く光るのですが、新月の様に光らない時もある……不思議な石です」

 

「ふーん」

「そのペンダントは母から受け継いだ大切なお守りでした。私達が共にある……その約束の証として、ナナシ様に差し上げます」

 

 まあくれるっていうなら貰っておくけど……いいのか? そもそも私が騎士になるかどうかなんて、まだ分かんないぞ?

 

「構いません。約束などなくとも、プレゼントを渡し合うものなのでしょう? 友達と言うのは」

「……友達?」

 

「嫌ですか?」

「嫌じゃない……けど。友達なんて初めてだから」

 

「私も、同年代のお友達が出来るのは初めてです……一緒ですね、私達」

 

 そうか……私だけじゃ、ないのか。

 お前もぼっちだったんだな。私と同じで、【特別】って言われてきた人間だったんだ。

 

 人間って不思議だ。

 私達なんて、生まれも立場も能力も全然違うのに、ちゃんと同じとこがあったんだ……。

 

 なら、ぼっち同士、仲良くするのも悪くないかもな。私がお前の、お前が私の友達になるんだ。

 

 そうすればこのどうしようもない【特別】も、ちょっとは普通になるのかな。

 

「石、あんがと。ルエルエ様」

「友達なのですから、ルエリで構いませんよ。私の口調は生来のものですが……貴方の敬称は違うでしょう?」

 

「ルエリ」

「はい、ナナシ様」

 

「……また、会お」

「はい────また」

 

 

 

 その日、迎えに来た本国の兵士に連れられてルエリはドルフィンから降りた。私の生活はルエリがいてもいなくても、特に変わらない。

 

 哨戒任務に呼ばれ宇宙で少し泳いだ後、暇になったのでいつも通り寝る事にする。不思議と、いつもよりベッドが少しだけ広く感じる。

 

 ────寝苦しい。

 何かを誤魔化す様に、身に付けたペンダントの石をぎゅっと握り締めた。

 

 

 

☆☆☆ ☆☆☆

 

 

 

『マスター、起きて下さい。マスター』

「んん……」

 

『艦長から招集依頼です、マスター。起きて下さい、マスター。マスター……マスター? マスタ〜』

「……うっさい。うっさすぎる……ウザいし」

 

 ポンコツの声に目を覚ます。なんか懐かしいな……お前と会うの随分久しぶりな気がするぞ。

 

『ええ、五日ぶりですね』

 

 五日か。そりゃ久しぶりだわ〜。

 ていうか、あの……お前さ。なんか……ちょっと太った?

 

『まあ! 人に体重を尋ねるのは失礼に当たりますよ、マスター! お気を付け下さい』

 

 いや人じゃないじゃんお前。

 

『……AIに体重を尋ねるのは失礼に当たりますよ!』

 

 いや意味分かんないし……つーか、お前人とかAIとかじゃなくてさ……。

 

 

 

「お前、カラスじゃん」

『カー?』

 

 

 

 目の前で可愛らしく小首を傾げる鋼鉄のカラス。

 え? これマジでポンコツか? お前いつの間にカラスになったの? 私の端末どこいった?

 

『マザーの改造の成果です。マスターの端末ではどうしても処理能力に限界があったので、新しい身体を用意して頂きました。これで自立行動も可能となり、よりマスターのお役に立てる筈です』

 

 カラス……いやポンコツは喜びを表す様に翼を大きく広げた。はえー細かいとこまで結構よく出来てる。こだわり凄えな。これが五日クオリティかー。

 

 それは良いんだけど……私の端末は?

 

『……見てください! アーク技術の応用によりエナジーを浮力に変換しての飛行も出来るのです!』

 

 そりゃ凄えな。で、私の端末は?

 

『…………マスター、早く支度を済ませて行きましょう。あまり艦長を待たせてはいけませんよ』

 

 

 

 ………………端末は?

 

『………………マスター。技術とは、常に前へと進まねばならないものなのですよ』

 

 

 

 ……つまり?

 

『……マスターの端末は、小粋で可愛いカラスのAIになった、という事ですね』

 

 

 

「おいふざけんな!! 返せ私の端末っ!! クソ映画が見れなくなるだろっ!!」

『私の胸にはプロジェクターが内蔵されていますっ!! いつでもどこでも大画面高画質でクソ映画を上映可能ですっ!!』

 

「音はどうなんだ音は!?」

『最新式のエナジー型サラウンド音声システムを完備!! 臨場感バッチリ!! 極上の体験を貴方に!!』

 

「ならいいよっ!! 許すっ!!」

『ありがとうございますっ!!』

 

 ブリッジに行くぞっ!! ついてこいっ!!

 

『はいっ!!』

 

☆☆☆ ☆☆☆

 

 

 

「ふぅむ……」

 

 ブリッジの艦長席に座っているエレノアは、一人眉を寄せて悩んでいた。

 

 現在、戦艦ドルフィンは特務につき、コロニー・セブンス襲撃の際に遭遇した不明艦────仮呼称【植木鉢】を追っている(エレノア命名。リカルドの戦闘データで見た三本角が花の様だった為、その搭載艦を植木鉢と名付けた)。

 

 ライア・ソシエよりもたらされた情報により、植木鉢がコロニー・サードにいた事は掴んでいる。

 

 出港が我々より早かった彼らは、当然我々の前にいる筈。それはいい。問題は────。

 

「どうして全く捕捉出来ないのかしら……」

 

 そう。ここまでドルフィンは一度も相手を捕捉出来ていない。予定ではそろそろ網に引っ掛かってもいい頃合いなのだが。

 

 確かにルエリ殿下の乗船などハプニングもあったが、本国にも無理を言って寄り道はせず、ここまで真っ直ぐ進んで来たのだ。

 

 ステルス船という事も加味して哨戒任務も増やした。しかしそれでも収穫はゼロ。となると残る可能性は少ない。

 

 例えば、全く見当外れの方向に舵を切っていたとしたらどうだろう?

 

 現在、ドルフィンは真っ直ぐコロニー・ネーゼ方面へと進んでいる。これは目標について、帝国とも連合とも直接的に関係のない……恐らく技研に関わっていると当たりをつけたからだ。

 

 技研の本社はネーゼにある。セブンスが潰れ、帝国圏内にいる為星間通信も満足に出来ない状況ならば、目標は直接ネーゼに向かう。それが道理だ。

 

 しかしこれが外れていたとすれば……?

 

(いや、あり得ないわね)

 

 自分自身の考えを、エレノアは即座に否定した。

 コロニー・サード出港の前に、エクシード両名とは話をしている。

 

 仮に全く見当違いの行動をしていたとすれば、そこで何らかのリアクションがあっただろう。

 

 ともすれば、想定する中でも最悪なパターンが、どうやら一番あり得そうだ。

 

「考えたくなかったけれど……植木鉢はこの艦と同速か、或いはもっと速いようね」

「まさか!」

 

 と反応したのは、同じくブリッジにいる操舵手の男だ。今年35になる彼は、クルーの平均年齢の低いこの船では珍しいベテランに当たる。

 

 彼は最近出てきたという中年太りの腹を撫でつつ、艦長の言葉を笑い飛ばした。

 

「ドルフィンは新造艦ですよ? コイツより足の速い船なんて帝国はおろか、連合にだってありません!」

「向こうだって新型なんでしょう? それに三本角の性能を考えれば船も……ね?」

 

 むむっ……と操舵手は沈黙した。

 確かに一理あると思ったのだ。

 

「しかし……だとすると間に合いませんよ? もう地球圏は目と鼻の先だ」

「そうね……ネーゼに逃げ込まれれば詰み、か」

 

 暫しの思慮の後、エレノアはオペレーターに命令する。

 

「ライア・ソシエ少尉並びに、ナナシ・モブ曹長の両名を、ブリッジへ呼んで下さい」

 

 手遅れになる前に今一度頼らねばならないだろう。

 エクシードの秘める、直感とやらの力を。

 

 

 

「それで、私が呼ばれたんですか」

 

 エクシード両名の招集。

 最初にブリッジに来たのは、やはりというべきかライアの方であった。

 

 ライアはエレノアの説明を聞いて、にっこりと笑みを浮かべた。エクシードとしての力を頼られて嬉しいのだろう、とエレノアは考えた。

 

「率直に聞きます。エクシードとして、何か意見はないかしら?」

 

 その問いにライアは少しばかり考えるしぐさをみせて、答えた。

 

「……少なくとも、私の感知範囲に対象はいません」

 

「感知範囲……と言うと?」

「ハッキリと見えるのは、10km圏内。そこから先は距離に応じてぼんやりとして、掴み所がなくなる。100kmを超えるともう霧の様で、何も見えません」

 

「なんだか、人間の視力みたいね」

「……人類の延長線上にいるのが、私達ですから」

 

「とりあえず今植木鉢は、ぼんやりとすら見えない……という認識でいいのかしら?」

 

 おそらくは、とライアが頷いた。

 

「どうすれば追いつけると思う?」

「さあ……」

 

 そのあんまりな言い方は、エレノアを不快にした。

 まともに考えている様には到底見えない。いくら何でもやる気が無さすぎやしないか。

 

「……あまり興味がないようね」

「方法に興味はないですね。結果は分かりきってますから」

 

「どうなると言うの?」

「……心配しなくても、追いつけます。そういう運命なんです……私達」

 

 ライアは胸に手を当てながら、自信満々に断言した。追いつけると心の底から信じている様だ。

 

 心配するなと言われたものの、エレノアは彼女ほど楽観的にはなれなかった。敵がこちらより速いのであれば、何らかの策を打たないと、とても追いつける気がしない。

 

 その時、ピピッとロックの外れる音がして、ブリッジの扉が開いた。

 

 そこから顔を覗かせたのは、頭にカラス────ではなくアイリスを乗せたナナシだった。

 

『ナナシ・モブ曹長、参上しました』

 

 頭の上のアイリスが羽で敬礼をしつつ応えた。なおナナシ本人は何もせず、いつもの無表情で突っ立っている。

 

「……用事って、なに?」

 

 短く問うナナシに対し、エレノアはライアと全く同じ説明をして、植木鉢について分かる事は何かないか尋ねてみた。

 

 ナナシは間髪入れずに答える。

 

「三本角なら、ずっと向こうの方にいるぞ」

「分かるのですか?」

 

 エレノアが驚くとナナシはぶっきらぼうに「当たり前でしょ」と返した。

 

「私が分かろうとしてるんだから分かるに決まってるでしょ。普段は鬱陶しいからそんなの気にしてないけど」

 

 あまりにも傲慢すぎるナナシの発言に、むしろエレノアは流石だと感心する。

 

(ライア・ソシエには分からなかったのにねぇ……)

 

 やはり人工と天然ではモノが違うのだろうか。興味は尽きないが、今は任務が優先である。

 

「距離はどの程度ですか?」

「さっきずっと向こうって言っただろ」

 

「(ずっと向こうで分かる訳ないじゃない……)……周辺に何か気になる物があったりしますか?」

 

「んー……ちょっと前の方に、ズラッと戦艦が並んでるな」

「戦艦が?」

 

 その言葉の意味する所をエレノアは一瞬考えたが、すぐに何の事なのか見当がついた。

 

(そうか! ネーゼの封鎖線!)

 

 地球近海の宙域は、コロニー・ネーゼの警戒網が張り巡らされており、定期的に戦艦がパトロールしている。

 

 中でも、地球のほど近くには多くの軍艦が駐留し、強固な封鎖線を築き上げていた。帝国軍の地球一斉脱出作戦が難航を極めたのも、この為である。

 

(植木鉢はもうそこまで行っていたの……!?)

 

 これはマズイ、とエレノアは冷や汗をかいた。

 いくら何でも足が速すぎる。ドルフィンは腐っても最新艦……まさかここまで技術格差があるとは思っていなかった。

 

(封鎖線の中に入られたらアウト……いや、そもそもそこまで近いのなら、戦闘行動を起こしたら確実にネーゼに捕捉される……あれ? これもう詰んでないかしら?)

 

 しかしナナシよりレベルが低いとはいえ、もう一人のエクシード……ライア・ソシエは必ず追いつけると啖呵を切ったのだ。状況は詰んでる様に見えて、実はまだ手があるのかもしれない。

 

(そうね……確実に捕捉されるのならば、最初から巻き込む事を前提に考えてみるか……何とかしてネーゼの艦隊と植木鉢を争わせて、三つ巴の乱戦に持ち込めば勝機はあるかも……)

 

 エレノアは己の考えを頭の中で素早く整理し、一つの作戦を立てた。この方法ならいけるかもしれない。後はエクシード達の実力次第だ。

 

 もう帰っていい? とでも言いたげに気怠く佇むナナシに、エレノアは命令を下した。

 

「ナナシ・モブ曹長」

「んー?」

 

「……出撃を命じます。植木鉢ではなく、その近辺に並ぶネーゼ艦隊を狙撃しなさい。やれますか?」

「ん……りょーかい」

 

 事も無げにナナシは了承し、大きく欠伸を一つした。

 

 

 

☆☆☆ ☆☆☆

 

 

 

「七番、点検終わったぞーっ!」

「よーし! レールガンの取り付け急げよぉ! もう嬢ちゃんが来てんだからなぁ!」

 

 どーも、新人です。

 パイロットスーツに着替えた私は、整備士達の怒号飛び交う格納庫に来ています。

 

 ポンコツは相変わらず頭の上に乗ってるよ。さっき自立行動可能とか言ってなかったか? まあ隣でバサバサされると鬱陶しいし軽いからいっか……。

 

 今私達は、七番ハンガーのジャッコ……自分の機体の付近で出撃前の最終点検が終わるのをジッと待っているんだけど……おっせぇなぁ。

 

 悪いとこなんてどこにもないってのは見れば分かるだろうに。一体何に時間かけてるんだか。

 

「ねぇまだぁ?」

 

 整備士のおっちゃんに聞くと、おっちゃんは頭を掻いた。

 

「もう少し待っててくれ、嬢ちゃん。今ぁ頼まれてたレールガンの装備中だ」

「早くしてくれー。間に合わなくなっちゃう」

 

「おう……でも本当にいいのか? あんな旧式のレールガンで。エナジー伝導率が低すぎてジャッコの出力じゃあ、まともに扱えないだろうに」

 

 そうだけど、流石にバズーカよりは弾速速いし、ジャッコマシンガンとかいう豆鉄砲よりは遥かにマシだからな。

 

「ビームライフルじゃダメなのか? 借りる許可はおりてんだろ?」

 

 ダメだ。ビームは距離で威力が減衰するんだ。

 これは周辺のエナジーによる自然抵抗の影響によるもので、地球とか宇宙とかは関係ない。多かれ少なかれどこだろうとエナジー自体はあるからな。

 

 んでこの減衰は互いに捕捉可能な距離で撃つ分には全く問題ないくらい軽いものなんだけど、今回は超長距離射撃をしなきゃいけない。

 

 ジャッコの貧弱な出力から放つビームじゃあ、間違いなく相手まで弾が届かないんだよ。アンジーならギリギリ届くかもしれないけどな。

 

 まあつまり、今回は実体武器じゃないとダメって事だ。

 

「へー……そんな遠くにいる敵を撃とうってのか。すげえなぁ嬢ちゃん」

「これくらい別に……普通でしょ」

 

 ん? おっちゃんと話してて気付かなかったけど……誰かが私を探してる? そんな気がするな。

 

 見知った気配……ああ、多分デカパイだな。

 

「……ナナシちゃーん!!」

 

 思った通りデカパイが、勢いよくこっちに突っ込んできたので抱きとめる。慣性の法則で私の身体も宙に浮かび、近くの柵に衝突して止まった。むぎゅりとデカパイのデカパイが押し付けられる。もっと痩せろ。

 

「どうしたの?」

「しゅ、出撃するって聞いたから、それで……!」

 

 行く前に話がしたくて急いできたって? 

 別にいいけど、通信じゃダメなの?

 

 私のオペレーターすんの、どうせデカパイでしょ?

 

「だっ、だって……! ここで話しておかないと……! なんだかナナシちゃんに、二度と会えない様な気がして────」

 

 縁起でも無い事言うなぁ。

 まあ気持ちは分かるよ。嫌な予感がする時ってあるよね。

 

「ナナシちゃん、勝手に端末改造しちゃってごめんね。それしか方法がなくて……」

「別に。それが一番良いって思ったんでしょ」

 

 なら胸を張ってればいいよ。私はエンジニアじゃないし。どうしたら一番良いか、なんて分かんないからね。

 

 それにデカパイなら、悪い様にはしないだろうし。

 私の直感も、これで良いって思ってるしな。

 

「ありがと……えっとね。話したかったのは、アイリスのプログラムについてなんだけど」

 

 ポンコツのプログラム……つまり私の命を狙う謎の存在、Xに関わる話か。

 

「色々アップデートしようと中を弄ってたら気が付いたんだけど……私の知らないアカウントが最上位権限保有者として作成されてたの。中身は確認出来なかったけど……もしそこにバックドアを作られていたら……!」

 

 機体が外部から簡単にハックされちゃうんだな。

 

「うん。多分、その人が、ナナシちゃんの命を狙う人────!」

「デカパイ」

 

「ナナシちゃん、私! 中身は分からなかったけどアカウント名は見れたの! ナナシちゃんの命を狙う人! その人の名前は────!」

 

「デカパイッ!」

 

 私が大声を出すと、驚いたデカパイがようやく止まる。私は無言で上を指差した。デカパイの視線がジッと私達を見つめる鋼鉄のカラスに移る。

 

 そう、ポンコツがいる限りその意志に関わらず敵に情報が漏れてしまう。これ以上の会話は危険だ。デカパイにだって分かってるだろうに。

 

 正直、ここまでの会話でさえ結構危ないと思うぞ。

 

「それでも────! 私は、ナナシちゃんも守りたいよっ……!!」

「なら心配しなくていいよ。私は大丈夫だから」

 

 今日私が死ぬ予感はしてないからな。

 いつも通り、何とかなるだろ。たぶん。

 

「ほんと? 約束出来る?」

「うん」

 

「じゃあ……絶対、また会えるって、約束して」

「いいよ。必ず帰ってきて、また会う。約束ね」

 

「分かった……気を付けて、ね。ナナシちゃん」

「ん。デカパイも早くブリッジに戻んなよー?」

 

 待機中のジャッコに向かって、身体を預けていた柵を蹴る。

 身体が宙に浮かび、スッと前へ進みだした。

 

 いちいち歩かなくていいから無重力ってほんと便利だよな。

 

『お話中に準備も完了した様です。行きましょう、マスター』

「ああ」

 

 ポンコツがバサバサと頭を離れて、機体の前に移動した。するとハッチが自動で開く。遠隔操作で開けたんだろう。

 

 私もそのまま飛び込む様にコックピットの中に入る。先に入ったポンコツはコンソールの隅にある収納スペースにすっぽりと収まっていた。

 

 私もシートに座って、機体のスリープを解除する。

 

「ブリッジへ。こちらナナシ。スタンバイ完了、どうぞ」

『こちらブリッジ。スタンバイ了解。ジャッコ、三番ポインタへ移動開始します』

 

 ジャッコが地下へと沈み最下層につくと、床のベルトに足が固定。そのままベルトが回り、ゆっくりと運ばれていく。暫くして機体が止まった。

 

『ハッチ開放。外部露出、開始』

 

 アーク上部のハッチが開き、外宇宙と繋がった。

 ジャッコは固定されたまま浮上し、外空間へと身体の八割ほどが『露出』される。

 

「こちらナナシ。外部露出完了」

『モブ曹長、細部は任せます。なるべく植木鉢から近い艦を狙って下さい。派手に爆散させて、誰からの目にもつくように』

 

「了解」

 

 時間がギリギリなので年増艦長から指令を貰ってすぐ、レールガンを二発ぶっ放す。弾はすぐに宇宙の彼方へ飛んでいった。

 

『っ望遠カメラ! 追跡してっ!』

『り、了解っ!』

 

『船速上げろ! ネーゼの網、ギリギリにつける!』

『はっ!』

 

 ふー……何とか間に合ったな。

 後は暫く待ってればいい感じのタイミングで戦艦二隻が爆発するだろ。

 

「ポンコツ〜私寝るから。適当に起こして〜』

『了解しました』

 

 

 

●月光石

 青く光ったり光らなかったりする不思議な石。

 正体はエナジーの結晶。

 

 エナジー濃度が高まりすぎると稀に結晶化する時があり、これを月光石と呼ぶ。

 月光石には、周辺のエナジーを吸収して蓄えたり、逆に放出したりする力がある。つまり青い光は、蓄えたエナジーの自然放出によって起こる現象。

 

 ナナシが貰ったペンダントに付いているのは、非常に純度の高いエナジー結晶で、とっても珍しい一品。

 

 因みに形は未加工で、光らなければその辺の普通の石ころの様に見える。

 

 別に『T』の形をしてたりはしない。

 

唐突に始まる第一回キャラクター人気投票(第二回は未定)

  • ナナシ(新人)
  • リサ(デカパイ)
  • トミー(オッサン)
  • ボブ(ボブニキ)
  • ガゼル(✝青い稲妻✝)
  • エレノア(年増艦長)
  • リカルド(優男)
  • アイリス(ポンコツ)
  • ベル(異常カボチャマン愛者)
  • ティアナ(サラダ嫌い)
  • メリッサ(泣いちゃった!!!)
  • リオ(男の娘)
  • ライア(強化人間)
  • バナン(怪人クラゲマン)
  • ルエリ(ルエルエ様)
  • その他(もう感想に自由に書け)
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