新人です。エースパイロットやってます。   作:今井亜美(ハーメルンのすがた)

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五話 新人とマッキガイ トスター基地攻略戦2

 

 敵軍基地をデカパイのナビに従ってテコテコと歩く。途中、兵士が何度かやってきたが、どうもデカパイはハッキングした監視カメラでモニタリングしてるらしい。

 止まれ、とか、隠れろ、とかの指示に従って行動していれば、誰にも見つからずに済んだ。

 

 うーん……デカパイ、実は有能説あるか?

 もし私一人で潜入してたら、色々考えないといけなくてめんどくさかったし。

 

 そう考えるとデカパイの指示に従ってるだけで終わるこっちの方が楽でいいかもしれない。

 

 でもなぁ……デカパイ、普段の言動や行動がちょっとキモいんだよなぁ……なんか最近、こっちを見る目も怪しい気がするし……ちょっとロリコン入ってないか?

 

 やたらボディタッチが多かったり、一緒にお風呂入ろうとか、寝ようとか提案してくるし、変な服着せようとしてくるし……ツーアウトってとこか?

 それさえなければ、結構使える女なのになぁ。

 

 とまあ、そんな事を考えている内に無事に物資保管庫に到着した。デカパイが電子ロックを遠隔解除して中に入る。

 

『目標の物資はG-13にある筈だよ!』

 

 GねG……えっと、あそこがAでこっちがB……。

 だからGはこっちだ。

 

 13番レーンに辿り着き、目印の付いたコンテナを探して開ける。この中に目当ての爆弾が────。

 

「…………?」

『ナナシちゃん? 爆弾あった?』

 

「……ない」

『え?』

 

「爆弾がない」

『え……ええ!?』

 

 中身をあらためられた時に見つかったなこりゃ……。

 勿論、簡単には見つからない様に隠してはいた筈だけど、偶然見つかっちゃったんだろう。正直、予想はしてたよ。こうなる可能性はゼロじゃなかったしね。

 

『ど、どうしよう!? 作戦の中止を皆さんに伝えて────』

「いや、作戦は続行する」

 

『ええ!? 爆弾なしでどうやって!?』

「格納庫に行く。そこで機体を強奪して、弾薬庫を爆破する」

 

『こ、ここから格納庫ってかなり距離があるけど!?』

「問題ない。本気でダッシュするから」

 

 地図なら頭に入ってる。

 保管庫を飛び出し本気でダッシュする。

 

 私が本気で走ったら格納庫なんてあっという間だ。

 

『な、なんか物凄い勢いでナナシちゃんの位置情報が更新されてるっ!?』

 

 デカパイの声が鬱陶しくなってきたな……。

 もうナビゲートは不要だし、通信をオフにする。

 

 角を二、三、曲がればそこに格納庫が見えた。

 素早く目を走らせる。障害になりそうな技術員を確認。

 

 腰のホルダーから銃を抜き放ち、走りながら遠方から狙撃。

 潜入任務用のサプレッサー付きだから派手な発砲音もない。

 

 目標は邪魔になる位置にいる少し離れたところの技術員、四名。

 頭部にヒット確認。間違いなく死んだな。

 

「こっちの点検も終わったな、おーい、そっちは……!?」

 

 一人だけ残しておいた近場にいる技術員にタックルをかまし、押し倒す。

 こめかみに銃を突き付けて、問う。

 

「あの横の機体、パスワードはなに?」

「うぅ……何が……え?」

 

「早くしろ。三、二────」

「え? え?」

 

「一、……チッ」

 

 判断が遅い! ムカつく!

 これ以上待ってられないので、そのまま撃ち殺し横の機体に向かう。

 

 丸っこくって両腕についた大きな盾……重量級だな。

 見た目からして鈍そうなボロ機体だけど、まあ何でもいい。

 

 ハッチを開けてコックピットの中に。

 

「ん……? 仕様が帝国製?」

 

 てっきり連合のアークかと思ってたけど、帝国軍の鹵獲された機体だったのか?

 システムの電源を入れると名前が表示される。

 

-------------------

 

 MACK-i-GUY

 

-------------------

 

「……【マッキガイ】」

 

 名前だけは聞いた事がある。確かシミュレーターのデータで見た。

 地上戦用に開発された水陸両用機……比較的新しい量産機だった筈。

 

 ぶっちゃけた話、全く好みじゃない。

 何故ならこれは、コンセプトからして下手くそ用に作られた補助輪機体だからだ。

 

 重力のある地上じゃあ下手くそパイロットは上手く動けなくて、ビーム兵器が回避出来ない。

 だから装甲を分厚くして攻撃を耐えようっていうのがこの機体だ。

 

 はなから回避の事を考えてないから運動性最悪。

 乗り心地が悪いったらありゃしない。

 

「嫌いなタイプだけど」

 

 今はこれでやるしかない。

 パスワードを勘任せに適当に入力して解除し、機体を立ち上げる。

 

「武器は……お! いいもの発見!」

 

 そばのガンラックに旧式の大型レールガンがあった!

 これいいんだよ~ジャッコマシンガンより遥かに威力が高くてかなり使える!

 

 連射性と命中率が低いとかって理由で使われなくなったらしいけど……命中率なんてパイロットの腕次第でどうとでもなるし、連射が必要になるのは近距離に複数の敵がいる時くらいだ。

 遠方から迎撃すれば特に問題も無い。

 

 大型レールガンを手に取り、格納庫の外へ。同時にデカパイとの通信をオンにする。

 

「こちらナナシ」

『ナナシちゃん!? 大丈夫なの!? 急に通信きっちゃダメだよ!?』

 

「うっさ……もうちょっとボリューム落として」

『あ、ご、ごめんね? 大声出しちゃって』

 

「それよりも、機体の奪取に成功した。識別コードを送信する」

『え!? もうアークを奪ったの!? パスワードは!?』

 

「適当に入力したら開いた。それより一分後に弾薬庫を爆破するから。全体に指示だして」

『適当にって……へ? 一分後?』

 

「よろしく。通信終わり。あ、オーバー」

『ちょ、ちょっと待って!? 一分は早す────』

 

 通信をぶち消し、改めて両手で操縦桿を握りしめる。

 後は一分後に弾薬庫まで移動して爆破するだけだ。

 

 格納庫から弾薬庫は少し離れてる。

 とはいえ、近づきすぎると爆発に巻き込まれるだろう。

 

 さっきいた物資保管庫の方面……そっちからなら丁度いいか?

 そう私の勘が告げているので、そっちの方に機体を動かしていく。

 

 すると十秒も経たない内に少し広い場所に出た。

 アークを十二分に動かせるスペース……演習場って所だろうか。

 

「んで、あの機体はテスト中……かな?」

 

 エース用の特殊カラーリングが施されたフラットが、私の前に立ちはだかった。

 技術員は撃ち殺した……まだ基地内にアラートは流れてない筈だが、あの動き。

 

 私が敵だとある種の確信を持っている様な動きだ。

 

『そこの機体! 止まれ! 俺はガゼル・ドーラント大佐だ。誰が動かしてる? パイロットは────』

 

 ガタガタうるさい通信が入ってきたので、強制シャットアウト。

 レールガンをコックピットに向かってぶっ放す。

 

 相手は間一髪、盾を構えた。

 しかし、レールガンの質量には耐え切れず、後方に吹き飛ぶ。

 

 フラットは倒れる寸前、スラスターを吹かして滑る様に地表付近を移動。

 ちっ……今の一発で分かった。

 

 想像以上にこのマッキガイ……鈍すぎる。

 今の射撃も腕を上げるまで遅すぎ。

 

 そのせいで上手く不意討ちの射撃が決まらず、ガードする隙を与えてしまった。

 

『くそっやはり敵かッ!』

 

 うーん敵にバレた。基地内のアラートが鳴り響く。

 こうなるともたもたしてたら、一瞬で囲まれる。こんな亀さんみたいな鈍い機体で囲まれたくない。

 

 とっととコイツを倒して爆破させないと。

 デカパイと約束した時間まで残り三十九秒!

 

『だがそんな機体でッ!』

 

 フラットカスタムが上空に飛ぶ。

 私の背に基地の建物がある以上、そのままではビームライフルが撃てないからね。

 

 上からビーム兵器を撃ち下ろしてくるつもりなんだろう。私はレールガンの銃口をぴったりと敵に向けつつ、ブーストを駆使して左右にステップし攻撃を避けていく。

 

『避けた!? この動き、まさかッ!?』

 

 まだだ、まだ撃てない。敵の機動性はかなり高い。

 今撃ってもマッキガイの反応速度じゃ避けられる。

 

 だから今は回避に専念する。約束の時間までは残り二十四秒。

 

 敵はそのまま片手でライフルを撃ちつつ、空いた左手でビームソードを抜き放つ。

 

『射撃が当たらんのならばッ!』

 

 そうだ、お前に取れる選択肢は接近戦のみ。

 何せこっちは近接武器を持ってないのだから。

 

 だが相手がどれだけ速かろうとこの相対速度なら、外す事は無いっ!

 

 ドウンッッッ!!!

 重たい射撃音と共にレールガンの一撃がフラットカスタムを襲う。敵はライフルを持った右手を盾にした。それを貫通し、弾はコックピット目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。

 

『ぐっ……まだだ!!』

 

 しかし、弾はコックピットを貫かない。思いっきり凹ませて、中が半分見えてるけど……それだけだ。装甲が想像以上に厚い。レールガンの一撃にも耐えるなんてよっぽどだろう。

 

 うーん、想定とちょい違うけどしゃーないか。

 

『取ったぞッ! 死神ぃ!』

 

 ビームソードが私を襲う。

 デカパイとの約束まで後八秒。

 

 私は横に転がって、横薙ぎの一撃を回避。

 同時に転がりながら敵の側面目掛けてレールガンを射撃。

 

『くっ!? ぬううう!!』

 

 フラットカスタムは強引に急制動を掛けて、間一髪射撃を躱してくれた……私の読み通りに。

 さあ、デカパイとの約束の時間だ。

 

 ドォォ……ンッ!

 

 強い爆発音と衝撃が、ここまで広がる。

 

『!? これは────』

 

 さっき放った弾が狙い通り、山なりに飛んで弾薬庫に着弾したのだ。

 タイムは一分ジャスト。コンマ一秒までぴったり合わせた。見てるかパイセン? これが時間を守るってコトだぞ!

 

『コイツ……初めからコレが狙いで……!?』

『大佐! 大変ですっ! アークの編隊が当基地に接近中!! すぐに迎撃に向かって下さいっ!』

『だが、ここにも敵がっ!』

 

『そいつは後続で何とかします! 大佐は外の奴らを!』

『ちぃぃ……! 死神! 勝負は預けるっ!』

 

 ……ん? あのフラットカスタム、退くのか。

 まあそれならそれで構わない。どうせ、敵が格納庫から山程来るだろうし。今の内にリロード済ませとこうっと……あれ? 残弾六? まじ? 

 

 あ、急いでたから予備の弾取ってないや……。

 

 

 

●マッキガイ / MACK-i-GUY

 地上戦闘用に開発された機体。一応水中や宇宙でも使える。丸っこくて頭身が少し低め。

 ナナシが学校で使ったシミュレーターに名前だけデータが入っていた。

 

 普通の人間は重力下でビームを避けるなんて絶対無理なので、だったらいっその事装甲を分厚くして攻撃を防ごう! というコンセプトの元、開発される。

 

 ジャッコと比べると戦績はかなり良く、パイロットの生還率も高い。だから殆どのパイロットはジャッコよりもマッキガイに乗りたがる。

 

 両腕の大きな盾で敵を防ぎ、腹部にある発射口からミサイルを、頭部からヘッドバルカンを撃つ。なお、ナナシが今回乗った機体は両方とも弾が抜かれていた。マニピュレータは普通に手なので武装も持てる。

  

 流石マッキガイだ、何ともないぜ!

 

●本気ダッシュ

 ナナシの必殺技。

 本気で走る。ただそれだけ。

 

 速すぎ? ヒトが本気で走ってるんだから車やバイクなんかより速いの当たり前でしょ(ナナシ談)

 

 なお、走る事に本気になってるだけで、別に全力じゃない。

 

 上位技に『超本気ダッシュ』、『マジで超本気ダッシュ』、『マジのガチで超本気でダッシュ』、『マジのガチで超本気ダッシュEXTREME』、『マジのガチで超本気ダッシュEXTREME改』がある。

 

ナナシ「次の技名は……『真・本気ダッシュ』とかいいかも……」

リサ「ナナシちゃん? なにノートに書いてるの〜? お絵かき?」

 




 メカニックくんの死因:判断が遅い
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