新人です。エースパイロットやってます。   作:今井亜美(ハーメルンのすがた)

6 / 30
六話 新人と打ち上げ花火

 

 ふぃー終わった終わった。

 ちかれたー……。

 

 今日は朝から大分仕事したからなー。

 結局、あの後オッサン……隊長達は援軍に来なかった。いや厳密には来てたんだけど、到着したのは全て終わった後だった。

 

 お陰でやってくる敵をあのポンコツ機体で全部相手にしなきゃいけなかった。

 十機はいたかな? めんどくさくて数えてないけど。

 

 残弾六であの数はいやーキツイっす。

 

 二枚抜きすればいけっかなーって思ってたけど流石にそこまで火力足りなかったわ。一体は貫けても二体目には耐えられちった。

 

 こういう時はビーム兵器欲しー、って思うんだけどね。

 

 だから途中で弾切れしてからは直接レールガンでぶっ叩いたり、パンチやキックしたり、位置取り工夫して誤射させたりして倒したよ。

 

「ナナシちゃん、お疲れ様〜!」

「わぷっ」

 

 機体から降りると合流したらしいデカパイがこっちに抱きついてきた。到着早いっすね。

 

「沢山敵がいたんでしょ? 大丈夫だった? 怪我とかしてない?」

「んむ……別に平気。一発も食らってない」

 

「い、一発も? やっぱナナシちゃんはすごいねぇ〜!」

「これくらい別に普通」

 

 ニコニコと私の頭を撫で回すデカパイ。やっぱ子供扱いされてんのかな? 撫でられるのは別に嫌いじゃないけどさあ。

 

「いっぱい動いて汗かいたでしょ? 一緒にシャワー浴びよ!」

「別に汗なんてかいてないけど」

 

 あれくらいの運動じゃ汗なんてかかないよ。

 さっき疲れたって言ったのも気持ちの問題だ。

 

 体力的にはダメージにもなってない。

 

「え、そうなの? まあでもほら! いこいこ! 私が背中流してあげるから〜」

 

 強引にデカパイに押し切られ、シャワールームに向かう事になってしまった。

 まあシャワーも嫌いじゃないし、別にいいけど……ほんとに一緒に入るの?

 ……コイツ、マジでロリコンじゃないだろうな?

 

 

 

☆☆☆ ☆☆☆

 

 

 

「異常なし……綺麗なもんじゃねえか」

「ガキが上手くやったんでしょう? 施設は殆ど無傷でしたし」

 

 そんな話をしながらトスター基地マスドライバー管制室の端末を操作しているのは、第四小隊の生き残り、トミーとボブだ。

 二人はここで、これから使用するマスドライバーの射出が問題なく行えるかの確認を取っていた。

 

「実際、どう思います?」

 

 そう切り出したのはボブ。

 トミーは画面から顔を上げず答える。

 

「どうって何が?」

「分かってるでしょう? クソガキの事ですよ」

 

 トミーは押し黙った。

 クソガキ……ナナシ・モブ曹長。

 

 遅れて施設にやってきた二人が目にしたのは、無傷で佇むマッキガイ一機と、その周囲に散らばる敵の残骸達。

 

 基地の規模を考えれば十〜二十機はいた筈だが、全て一人で倒したというのか。

 恐ろしいのは、敵の残骸が綺麗すぎる所だろう。その全てがコックピットを綺麗に撃ち抜かれたり潰されたりしてやられているという点だ。

 

 あんな事が出来る技量……どう考えても人間の仕業には思えない。

 実態を知っているトミーの目から見ても、そうなのだ。これはそれほど、異質な事だった。

 

 押し黙ったトミーをよそに、ボブは続ける。

 

「俺達が出会ったフラット、ありゃ“青い稲妻”だ。アイツには右腕が無かったし、コックピットも半壊してた。そんな状態で出撃する訳がない。だったら、やったのはガキって事でしょう?」

「ああ……そうだな」

 

「あのクソガキは……ナナシは本物だ。俺達は六人がかりで、青い稲妻の片腕をやるのに四人死んだってのに……!」

「歴代最高のシミュレータースコア……か」

 

 正直、ナナシの態度から今までただのクソガキとしか思ってこなかったが……。

 

「ちょっとは当てにしてもいいのかもしれねえな」

 

 

 

☆☆☆ ☆☆☆

 

 

 

 どーも、新人です。

 あれから三日が経ちました。

 

 今、私はシャトルの座席に座って発射待ち中です。

 隣に座ったデカパイが手をニギニギしてきてキモいです。

 

 振り払おうかと思ったけど、何か凄い緊張してるから流石に可哀想でやめておいた。

 初めてシャトルに乗るのかな? 私はもう前に乗ったから慣れちゃったよ。最初は凄いワクワクしたんだけどね。

 

「今日は一斉脱出だから……地球中から帝国軍が飛ぶんだから……!」

 

 目を閉じて念仏の様に唱えるデカパイ。

 そんなデカパイに対して、同じく目を閉じてはいるものの、腕を組み微動だにせずいた隊長が口を開く。

 

「それでも、三割はネーゼに捕捉されるだろう」

 

「ネーゼ……同じコロニーなのに、どうして……?」

「奴らは地球近海にいる。俺らとは立場が違うのさ」

 

 発射が基地制圧から三日後になったのは、この地球一斉脱出作戦に合わせたからだ。

 

 地球近海にある、コロニー・ネーゼ。

 彼らの勢力圏を抜ける為にも、帝国軍が地球脱出する瞬間を合わせて、生き残る確率を上げようって作戦な訳だね。

 

 隊長がチラリと時計を見た。

 

「時間だ」

 

 それを合図に、シャトルが動き出した。

 背中がぼすりとシートに押し付けられる。

 

 シャトルは徐々に速度を上げ、遂に第二宇宙速度に達した。グイン、と身体の方向が曲がる。カーブに差し掛かったのだ。

 カーブを駆け上がり、そのまま射出。

 

 窓から外を見ると、あれよあれよというまに、地表からどんどん離れていく。遠くに見える日の光が、中々どうして綺麗じゃないか。

 

 そうやって空を見ていると、遥か遠くの方でも同じ様に打ち上がったシャトルがある事に気付く。

 彼らも、私達と同じ帝国軍なんだろう。

 

 ふと、ふわりと身体が浮き上がる感覚を覚える。

 久しく忘れていた無重力の感覚。

 

 この瞬間は好きだ。重力から解放されて、無重力になる瞬間。何度味わってもたまらない。

 

 やっぱり重苦しい地球よりも、宇宙にいる方が私の性に合っている。

 

 宇宙は自由だ。

 私には、宇宙は無限に広がる青い海に見える。

 

 大昔、冒険家が海の果てに浪漫を見出したように。

 宇宙が秘めた大いなる神秘性が、私を惹きつけてやまないから。

 

「ハッ……ハッ……ハッ……ハッ……」

 

 デカパイの息がめちゃめちゃ荒くなってきた。

 たまにいるって聞いた事ある。宇宙空間に出ると緊張して、息の吸い方を忘れちゃう人。

 ガサゴソと座席の下を漁って、酸素吸入器を取り出しデカパイの口元に押し当てる。

 

「あ、ありがと……」

 

 深呼吸をして少しは落ち着いたらしい。

 うっさい息は止まったけど、また手をニギニギするのが始まった。

 

 逃げる様に外に視線を向けると、遠くに花火が見える。

 

「あ……ああっ!?」

 

 デカパイも気付いたらしい。

 あの花火は、私達とは別の帝国軍ロケットだろう。彼らは運悪くネーゼに捕捉されてやられてしまったという訳だ。

 まさに打ち上げ花火だね。散ってるのは火薬じゃなくて命だけど。

 

 ちらほらと爆発や火線が目に入る様になってきた。

 アークに乗って応戦する奴が出てきたんだ。

 

「そ、そんな……こっちはまだ地球の重力圏なのに!?」

 

 こんな所でアークに乗ったら、間違いなく地球の重力に引かれて死ぬ。それでも仲間を逃がす為に、何人も出撃して弾幕を張った。

 

 とはいえ、これは焼け石に水だ。

 

 敵はちゃんと墜落ラインの外から撃ってきてるんだから、戦いの土俵に立つことさえ出来ていない。

 出撃してる奴がよっぽど馬鹿じゃなければ、それも分かってる。

 

 つまり、これは死ぬ為に出ているんだ。なるべく派手に死ぬ為に。そうやって目を引いていれば、その間は他のシャトルが無事に飛べるから。

 

「あいつらの犠牲によって、俺達は宇宙に出る……それを忘れちゃいけねえ」

 

 噛み締める様に呟いた隊長の言葉で、みんな窓の外の景色を焼き付けるように眺めていた。

 私は途中で飽きて寝た。花火って最初は楽しいけど、長くみてるとフツーに飽きるわ。

 




まず宇宙に出ます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。