新人です。エースパイロットやってます。   作:今井亜美(ハーメルンのすがた)

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 小説を見るときは部屋を明るくして離れて見てね!


コスモスの日
九話 未来を見た蕾


 

『では────始めてくれ』

「っはい!」

 

 ────コロニー・セブンス。

 宇宙開拓期時代、史上七番目に造られたコロニー。

 

 その近海。無重力の海に漂う一機のアーク。

 

 白を基調としたボディとパーツの隙間に流れる蒼いエネルギーの流星。特徴的なのは、前面以外の腰部からスカート上に広がる七本の赤いオプションパーツ。

 頭を飾るは三本のアンテナ。中央の一本は前に、サイドの二本は後ろに向かってそれぞれ伸びている。

 

 今、そのアークの瞳に光が灯る。

 スカートの裾が持ち上がり、花びらの様に咲き誇る。

 

「COSMOS-SYSTEM……起動! ステージアップ!」

 

 アークに乗っているパイロットはまだ年若い女の様だ。

 生来の快活さの中にどこか緊張感をにじませた声がコックピットの中に響く。

 

 彼女の声に呼応する様に、オプションとその周辺に青白い光が舞う。光は徐々に輝きを増していき、パーツ間の青いエネルギーラインがそれに呼応する様に加速していく。

 

「ステージ3、安定領域で稼働中……!」

『よし……ステージ4に移行してみて』

 

「っ……了解……! ステージ────4!」

 

 若干の躊躇いの後、女パイロットはシステムのステージを上げる。

 輝きが、強く、強く、増していく。

 

「ステージ4……安定……? しないっ!?」

 

 突如コンソールに表示される赤文字。

 システムが危険領域に侵入した事を知らせるもの。

 パイロットは素早く端末を操作する。しかし、警告は止まらない。洪水の様にエラーと警告が溢れ出る。

 

『強制終了するんだ! ベルっ!!』

「ダメ、止まらないっ!? あっ────!?」

 

 極端に膨れ上がった輝きは、最早鋭く、目に突き刺さる程の光量となっていた。

 

 青い光の奔流の中、誰も観測出来ないその場所で、女パイロットの目に、不思議な光景が飛び込んでくる。

 

「これ……は……!?」

 

 それは、破壊と絶望。

 炎に包まれて死にゆく人々の嘆きと怨嗟。

 

 爆発の中、崩落するコロニー・セブンス。 

 

「な、なに……これ……?」

 

 それを見てしまったパイロットは、ただひたすらに困惑した。今見ているものは、何なんだろう? ただの悪い夢? 

 

 初めは否定しようとした。

 しかし、不思議な事に分かってしまった。これは、現実だ。これから起きる未来の景色なんだと。

 

 彼女の『直感』が、そう告げていた。

 

 

 

☆☆☆ ☆☆☆

 

 

 

 コロニー・セブンス。

 中立を気取ったこのコロニーは、帝国と地球の狭間にいながら、未だ戦火とは無縁の平和な場所。

 

 しかし、戦争が進むにつれ徐々に形勢が連合軍に傾き始めた。悪化する宇宙情勢。中間に位置するコロニー・セブンスへの圧力は増していき、立場は苦しくなる一方。

 

 最早、帝国か連合か。

 どちらか片方を選ばなければならない時だと言える。

 帝国を選べば、直ちに攻撃される事はないが戦争に勝つ保証がなく、かといって連合を選べば地理的に最前線であるこのコロニーは確実に戦火に巻き込まれるだろう。

 

 究極の二択。

 このコロニーが選んだ答え、それが────全ての運命を決した。

 

 

 

「ふむ……話は非常に興味深いが……」

 

 アーク技術研究所コロニー・セブンス支部。

 年若い研究所長ティアナ・アルグレイは施設内の自身に充てがわれた私室で、友人兼同僚のテストパイロットの話を聞きそう呟いた。

 

 彼女はいつもと変わらない優雅な所作でティーカップを傾け、紅茶で喉を潤す。その後、湯気で少し曇った飾り気のない黒縁眼鏡を外して、ハンカチで汚れを拭く。

 

 拭きながら、緊張する同僚に確認の意味を込めて質問をしていく。

 

「ステージ4に到達した時、未来の光景を見た……という事だね?」

 

 コクリ、と同僚が頷いたのを視線を上げてチラリと確認し、話を続ける。

 

「未来に待っているのは滅び……コロニー・セブンスの崩壊、と。ここまでに間違いはあるかな?」

「うん……間違いないよ、ティア」

 

「ふうむ、一度状況を整理しようか」

 

 スチャリ、とティアナが眼鏡をかけ直す。

 眼鏡を拭いて、かけ直す。それは彼女が真面目な、取り分け言い辛い話をする時に決まってやるルーティンだった。

 

「まずステージ4到達後、暴走する試作機……【コスモス】を私が遠隔で強制シャットダウンし、機体を回収。コックピットに座ったままのキミは気絶していて、さっきまで医務室でぐっすりだった。これが約三時間前の話」

 

「……夢だって言いたいの!?」

「そうじゃない、結論を急ぐな」

 

 そう言いつつ、彼女は罰が悪そうに自身の長い紫髪をクルクルと指先で弄った。先端がくるくるとしたウェーブ上の髪は、指に巻きつけるのに丁度良かった。

 

「私が言いたいのは、キミが一体その景色をいつ見たかという事だ。キミがコックピットで未来を見たなら、まだ話も分かる。しかし、医務室で見たというなら……それはただの夢だ」

 

「夢なんかじゃないっ! あれは……絶対にっ!! 何というか……勘、みたいなのが、そう言ってるの……!」

「キミの気持ちも分かる。でも、私も科学者としてのプライドがある。データ不足の話を鵜呑みにする事は出来ない」

 

「ティアは、信じてくれないんだ……?」

「友人としては信じたいさ。でもそういう話じゃないのは分かるだろう? ベルガモット・リバティ」

 

 ティアナは敢えて、友人を愛称であるベルでなく、フルネームで呼び突き放す。ベルガモット、と呼ばれた少女は手を固く握り締め、肩を震わせた。

 

 それが怒りによるものか、はたまた悲しみによるものか、ティアナには分からなかった。ただ、ここで彼女の手を取れたらどんなに良いか、と考えてしまう自分がいた。

 

「うん……ゴメンね? 私、ちょっと、混乱してたみたい! あはは」

 

 にこっ、とベルが笑う。いつもの快活な彼女が魅せる無邪気で明るい笑顔ではなく。

 誰にでも分かる、無理やり取ってつけた様な、その場を取り繕うだけの笑顔。

 

「あー! もう、何かお腹空いちゃった! 私っ食堂に行ってくるっ!」

 

 ベルはそう言って立ち上がると、足早に部屋を立ち去った。

 一人残ったティアナは天を仰いで大きく息を吐く。

 

「失敗したな〜……これは」

 

 友情か、プライドか。

 比べるべくもない答えだと、分かっているのに。

 

 たまに忘れる。あの子がまだ十八歳の子供なんだって事。変に大人びているから、どうしようもなく甘えてしまう事が多々ある。ティアナの悪い癖だった。

 

「もう少し、甘えさせてあげるべきだったか……」

 

 再び口をつけた紅茶は、すっかり冷めきっている。

 

(もしあの子の語る未来が真実だとしたら……このコロニーは崩壊する。原因は色々考えられるが……事故、テロ、反乱……どうもピンとこない。しっくりくるのはやはり)

 

 帝国軍の襲撃。

 それが、天才科学者ティアナの誇る灰色の脳細胞が導き出した結論だった。

 

 

 

☆☆☆ ☆☆☆

 

 

 

 コロニー・セカンド。

 帝国所属のコロニーであり、地球圏から比較的近い位置に存在する要地。

 

 地球圏離脱後、ケルマディ級戦艦ドルフィンは補給のため、この地に駐留していた。

 

 そんなドルフィンで艦長を務める、見た目は若く美しい女性……エレノア・グレイスは現在、甲板に設置したアウトドア用の簡易チェアの上で読書に勤しんでいた。

 

「艦長、こちらにいましたか」

 

 男の声を聞き、エレノアは振り向く。 

 

 声の正体はリカルド・ドッグマン。

 彼は少し、焦った様な顔をして、こちらに向かってくる。

 

(本国からの指令を聞いたのでしょうね)

 

 エレノアはすぐに用件に当たりをつける。

 リカルドは彼女の前まで来て、口を開く。

 

「次の作戦、本当に実行するんですか?」

 

 やっぱり。

 そう思うエレノアの頭は、静かに翳る。

 しかし、それを表には出さない。あくまで、彼女は艦長であろうとした。

 

「……本国からの指示です。やるしかないでしょう」

「! 自分は反対です。中立を表明しているコロニーを一方的に襲うなんて……!」

 

「表明しているだけだからです、コロニー・セブンスは。中立と言いつつ、裏では連合に資源と技術を流している」

 

「でも、その恩恵を受けているのは帝国だって同じ筈だ」

「そう、これまではそれでも良かった。ですが先日の地球上での敗戦により、戦争の形勢は連合軍に傾いている」

 

「だから、だと?」

「だから、なのでしょう? いつ敵になるか分からない中立コロニーなど、目障りでしかないのだ、と」

 

「そんな疑心暗鬼で……! 我々に虐殺をさせるのですか!?」

「そう、正気じゃないのです。だからこれほど、戦火も長引く」

 

「それが分かっていて、どうしてっ……!」

「帝国軍人だからです。私も、そして貴方も」

 

 ジッと二人は見つめあった。

 この場の理は、エレノアにあった。それをリカルドも分かっていた。

 

 この場で子供なのはリカルドの方だった。彼の方が感情的で、理想的で、ずっと人間的だった。

 彼は、もっと大人にならなければいけなかった。目の前の艦長がそうであるように。

 

「っ……出港は、いつになります?」

「明日には出ねばならないでしょう。クルーに通達しておいてください」

 

「っ……了解」

「待って」

 

 その場を去ろうとするリカルドを、艦長が止める。

 

「何か?」

「……貴方は、未来を見た事がありますか?」

 

「未来……?」

「いえ、変な事を聞きました。もう下がってよろしい」

 

「は……? では、失礼します」

 

 リカルドはその場を立ち去った。

 エレノアに聞こえない位置まで移動してから、一人ごちる。

 

「大人って嫌なものだったんだな……」

 

 

 

 一方、エレノアも読書を再開しながら、独り言を呟いていた。

 

 頭を占めるのは、本の内容についてではなく。

 先程の問答。

 

 そして、先日の艦隊戦でジャッコに乗って出撃しながら、戦艦四隻、アーク六機を撃墜せしめたあの若すぎるエースパイロットの事。

 

「未来が見える……か」

 

 もし、あのエースパイロットだったら。

 今回の作戦について、一体何を思うだろうか……。

 

 

 

●ベルガモット・リバティ

 コロニー・ネーゼ出身。

 この世界の主人公。

 

 茶髪。ふわふわとした癖っ毛。アホ毛持ち。

 

 明るく元気な女の子! 十八歳。

 学生時にコロニー・ネーゼのアーク技術研究所本社へインターンに赴き、パイロットシミュレータを行った所、意外にもパイロット適性がある事が判明。

 

 そこをティアナにヘッドハンティングされ、コスモスのテストパイロットとなる。

 

 好きな食べ物はハンバーグとイチゴとカボチャ。

 嫌いな食べ物は納豆とひじき。

 

●ティアナ・アルグレイ

 イルーワ帝国出身。

 いつでも冷静沈着な天才科学者。二十一歳。

 

 紫髪。メガネっ娘。先端がくるくるとうねったロングウェーブ。

 

 帝国大学ではアーク工学を専攻し、若干、十五歳の若さで飛び級卒業。囲い込もうとする軍の捕捉を振り切りコロニー・ネーゼに亡命。以来、アーク技術研究所で働いている。

 

 好きな食べ物は特に無いが帝国人らしく紅茶は愛飲している。

 嫌いな食べ物は野菜全般。

 栄養なんてサプリメントで十分だよ。だから私にはサラダは不要さ……ベル? なんでサラダを二つ頼んだんだい? ベル? ベル……??

 

●コスモス / COSMOS

 主人公機。チート。最強機体。

 ジャッコに乗ったナナシがまるで歯が立たなくて軽く絶望するレベル。

 

 技研で作られた新システムの試作機。

 腰部のオプションパーツから周囲に溶けたエネルギーを集め自身の物に転換出来る。

 

 このエネルギー転換システム『コスモス・システム』の力によって理論上は永久機関が成立しており、ステージが最高の7まで到達すればジェネレーター出力が無限に達する。

 

 システム抜きでも通常のフラットより速くハイグランド並みの機動性を持ち、装甲はシステムの負荷に耐える為殊更頑丈。更に吸い上げたエネルギーによるパルス防壁を常時纏っている。

 

 その耐久力はジャッコマシンガンでは傷一つつかず、ミサイルの直撃だって余裕で耐え、ビームライフルを三発は当てないとダメージが通らないレベル。

 

 武装は掌から出すジェネレーター直結の収束エネルギー発射機構コスモ・ブラスター(威力がステージによって大きく変化し、安定しない)。

 

 安定した威力を持つ専用外付け武器コスモ・ライフルとコスモ・ソード。

 

 ステージの上昇に伴ってパルス防壁が強化され、加えてエナジー・シールド、エナジー・バリアを段階的に使用可能になる。

 

 どう考えてもこの時代に存在してちゃいけないオーパーツ。ティアナさんがベルの為に色々ガチりすぎてこうなった。多分、戦後は封印されてる。

 




 遂にロボアニメでありがちな主役機と主人公が登場し、ありがちロボアニメ本編がスタート!

 ここからナナシのモブ化が加速していく……!?
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