緑が生い茂る森の真ん中ではしゃぎまわる二人の子供、ユーリィとユズは木々の間を駆け回る。ユーリィの父のグレムの狩場であるこの森は、いつもグレムの狩りについていってたユーリィにとっては大きな庭みたいなものである。魔物も臆病な奴が多く、狩りに来るグレムを恐れて逃げ出すものが殆どである。
「遅いよユズ!」
「ちょっと待ってよユーリィ!」
ユーリィは余裕の表情で森の中を駆けるが、ユズは木の根につまずきながらふらふらとユーリィを追う。
「どうしたのユズ、もしかしてバテた?」
ユーリィは少し先の小さな丘の上で意地悪そうに笑う。
「う、うるさい!!私よりも力ないくせに!!」
「それ今関係なくない!?」
ユズはユーリィを睨みながら彼のいる丘まで一気に駆け抜けようとするがまた木の根につまずき今度は転んでしまう。グレムの狩りについていったことのないユズは森に慣れておらず、ここに来るまでに彼女が転んだ回数は既に十回を超えている。
「うぐぅ・・・ユーリィより体力あるはずなのに・・・」
「そりゃあんなにつまずいたり転んだりしてたら疲れるよ」
「うるさーい!!」
ようやく丘にたどり着いたユズは丘の上によじ登る。
「手、貸そうか?」
「いらない!」
上からユーリィが手を伸ばすがユズはその手に噛み付く。こうかはばつぐんだ。
「いてっ!?なにすんだよユズっ!?」
「うるふぁい!」
ユズは手に噛み付きながら上まで登りきる。ユーリィは放してもらうために手を振り回すがユズはなかなか放さない。
「ふゅーりぃのふへにぃ!!」
「いだだだだ!やめろぉ!はなせぇ!!」
このユーリィの手に噛み付いた状態からユズが放してくれるまで、約三十分の時間が必要だった。
ユーリィは涙目になりながら自分の手の無事を確認する。
「本気で噛み付くことないだろ・・・」
「つべこべ言わない!それよりユーリィ、お腹空いたー」
ユズはそう言いユーリィの背負っているバックを指差す。そのバックは村で大量のお菓子などを詰め込んであるものである。
「うん、僕もお腹空いちゃったよ」
「え、ユーリィも食べるの?」
「流石にもう僕泣いていいよね?」
本気で泣きそうなユーリィを無視してユズがバックの中身を漁る。だがいくら中を探ってもお菓子が出てこない。
「んー?」
不思議に思いユズがバックの中を開けると血の匂いがユズの鼻を刺激する。
「なんじゃこりゃあぁ!!」
バックの中に入っていたのはお菓子ではなくグレムの使用する狩猟道具だった。
「ちょっとユーリィ!?これどうゆうこと!?」
バックを背負ったままの状態のユーリィに問い詰める。だがユーリィはきょとんとした顔でユズのほうへ振り返る。
「なんだよいきなり怒鳴りだしてさぁ」
「私のお菓子が入ってない!ていうかこれおじさんのじゃん!?私のお菓子はどこぉ!?」
言ってることの理解ができないユーリィだったが自分がバックの中身を見てようやくユズの言ってたことを理解する。
「なんじゃこry」
「それさっきやった。そ・れ・よ・り・も!」
「ひょ?」
ユズはユーリィを掴み上げて騒ぎ始める。お菓子がなかったことが相当ショックなようだ。
「こぉの馬鹿ゆうぅぅうりいぃぃい!!」
「ぎゃあぁぁぁあ!!やめてください死んでしまいます!!」
ボコボコにされながらなんとかユズを落ち着かせたユーリィは改めて自分の持ってきたバックを見る。
「形が似てるから間違ったのかな?」
「確かにおじさんの持ってるバックと私たちが使うバックって似てるよね」
「うーん、どっちにしろこりゃ村に戻ったほうが・・・―
気を取り直してどうしようか話し合おうとするユーリィとユズだが、それを魔物のうめき声が遮る。
「ウソ・・・ま、魔物!?」
狼の姿をしたその魔物はゆっくりとユーリィ達に近付いてくる。
「フィアーウルフ?ここら辺の魔物は父さんがあらかた狩ったはずなのに・・・?」
グレムの狩場でもあるこの森は魔物の数が極端に少ない、仮にいたとしてもグレムをはじめとする人間を恐れこうして敵意を向けてはこない。彼らに大人と子供の差が理解できていなければの話だが。
「逃げよう!!このままじゃ食べられちゃうよ!?」
ユズがユーリィの服の袖を引っ張るが、ユーリィは動かない。
「なにしてんのよ!本当に食べられるわよ!?」
「父さんから聞いたことがある。フィアーウルフは臆病なやつだけど足はかなり速いって・・・だから逃げても多分無駄だと思う」
そう言いながらユーリィはバックを下ろす。その腰の後ろには布で巻かれたなにかがくくり付けられていた。
「どうせ逃げられないなら・・・」
ユーリィはその巻かれた布を外す。それとほぼ同時にフィアーウルフも襲い掛かる。
「やるしかない!!」
襲い掛かるフィアーウルフにユーリィは布から外されたそれを力任せに振り回す。その一撃でフィアーウルフの左前足は切り裂かれる。
「あ、それって・・・」
ユズがユーリィの持っている物を指差す。それはグレムが狩りに使用している狩猟刀だった。
「おじさんの狩猟刀じゃん!?」
「うん、村から出るとき置いてあったからさ」
「それって泥棒・・・」
ユーリィは聞こえない振りをしながらフィアーウルフのほうを警戒する。フィアーウルフは左前足を深々と切りつけられているがまだ敵意をむき出しにしている。
(・・・おかしいな、父さんの言ってたことと大分違うぞ?)
フィアーウルフは基本狩りはしておらず、食べるものは他の魔物の食べ残しや死肉が主である。そして自分より体の大きいやつに対してはそもそも姿すら滅多に見せない魔物のはずなのだが、ユーリィ達の目の前にいるフィアーウルフは二人とあまり変わらない大きさのはずなのに敵意を出している。
「とにかくなんとかしなきゃ・・・!」
再度襲い掛かるフィアーウルフの頭に真上から狩猟刀を振り下ろす。
「・・・ッまだ浅い」
今度は右目を傷付けるがまだフィアーウルフは倒れない。
「しぶといなぁ・・・」
ユーリィが小さく溜息を吐いたその直後、フィアーウルフの小さな悲鳴と供に肉が潰れる音と骨が砕ける音が同時に響く。
「え・・・?」
「ウソでしょ・・・今度はこいつなの?」
後ろで見ていたユズは状況を理解すると同時にその場で腰を抜かす。そこにいたのは亜人の魔物であるゴブリンであった。
「・・・冗談でしょ?」
ゴブリンはたった今食料と化したフィアーウルフを首から掴み上げてその腹に噛り付く。そのまま肉を食い千切りむしゃむしゃと食事を楽しむ。その光景にユーリィも思わず数歩下がる。
「ユーリィ・・・もう逃げよう?いくらなんでもヤバイって・・・」
ユズは小さく囁く。
「そうだね・・・さすがにこいつはヤバイよ・・・」
幸いにもゴブリンは殺したフィアーウルフを食べるのに夢中である。だがそれは『フィアーウルフと大して変わらない大きさの自分らも捕食対象の可能性がかなり高い』という意味づけでもあった。
「ゆっくりここから離れよう、あいつ多分僕らに気付いてない」
「目が悪いのかな?」
「いや、単純に鈍感だしそもそも知能低いって父さんが言ってた」
「親は偉大」
二人はできるだけ音を立てずにその場から離れようとするが、足元を見てなかったユズがまたしても転んでしまう。
[・・・?]
その音を聞いてゴブリンが二人の方に振り向く。
「あっ・・・馬鹿っ!」
「う、うるさ・・・あ」
二人がゴブリンの方を見るとそこには『新しい食料が見つかった』と言わんばかりの気持ち悪い笑みを浮かべたゴブリンがそこにいた。
「・・・やばい、逃げ―
その一言を言い切る前にゴブリンが走り出す。左手にさっきまで食べていたフィアーウルフを、右手にはそのフィアーウルフを叩き潰した冒険者が持っていたであろう大剣を持ちながら。
[ゲギャギャギャ!!]
ゴブリンはその右手に持つ大剣を振り下ろす。
「あ・・・」
「・・・ッ!?ユズッ!!」
ユーリィは転んで体制を崩してしまったユズを咄嗟に抱えてその一撃をかわす。だがその瞬間自分達がいた丘の岩があっさり砕けてしまう。
「そんなのアリかよ・・・」
目を丸くしてその自分達が居た場所を見る。力だけの一撃だがこれをくらえば子供の体など一瞬で挽肉になるだろう。
「やるしかないのか・・・!?」
覚悟を決めて狩猟刀を構えるユーリィ、だがその直後
「だ・・・」
「ん?ユズ―
「だぁらぁっしゃあぁぁあ!!」
ユズがゴブリンに向かって物凄い勢いで走りだす。
「な、なにやってんだよユズっ!?」
[ゲゲッ]
ゴブリンは変わらず気持ち悪い笑みを浮かべながら右手に持つ大剣を振り回す。
「そんなの当たって死んだらどうする!?」
ユズはそれをゴブリンの足元にスライディングしながら避ける。
[ゲギャ?]
「喰らえ!!ポケットハック!!」
そのままユズはゴブリンの膝裏を渾身の力を込めて蹴りぬく。
[グゲッ!?]
ゴブリンがふらついたところをさらに石で頭を殴り追撃する。そのときの衝撃でめまいを起こしたのか大剣を落としてしまう。それをすかさずユズが拾う。
「どうだ!!」
「ポケット何所!?」
「そこっ!?」
その大剣を持ってユーリィのところに行こうとしたユズだが、子供にはかなり重いらしく引きずりながらになってしまっている。
「さすがに・・・重い」
「ユズよりは軽いよ」
「頭カチ割るわよ」
「すんませんした」
ゴブリンは頭を抱えて二人を睨む。左手に掴んでいたフィアーウルフを投げ捨て襲い掛かる。
[ゲヒャァ!!]
ゴブリンはその汚い爪で引っかこうとするが、二人は横に転がるように避ける。
「やあぁぁあ!!」
転がった勢いを利用してユズがゴブリンから奪った大剣を振り回す。だがそれでも大剣は重く、その切っ先は下へと落ちてしまう。だが
[ギエェェェェエ!?]
何とかギリギリでゴブリンの細い足に直撃する。その切れ味のない刃で
は肉を切ることはできなかったが骨にダメージを与えられたようだ。
[ギャギャギャギャギャギャ!?]
足の骨にひびが入ったのかもがき苦しむゴブリン、その痛みでユーリィの持つ狩猟刀の刃が目前まで迫っていることに、ゴブリンは喉を貫かれるまで気付かなかった。
喉を貫かれてその場に倒れるゴブリン、倒れたのを確認して二人は同時に腰を抜かす。
「危なかったぁ・・・」
「もうダメかと思ったよ・・・」
気付けばすっかり夕暮れ時である。
「あ・・・早く帰らなきゃね・・・」
「うん・・・そうだ―
[ギギギ・・・]
二人が安堵の溜息を吐いて帰ろうとすると、倒れたはずのゴブリンがまた立ち上がっていた。
「え・・・?」
「そんな・・・」
二人にもう戦う力はない。そんな二人にゴブリンの爪が迫るその刹那。
「その子達に手を出すな・・・」
その場に駆けつけたグレムがその爪を剣で受け止める。その顔は鬼のように険しい。
[ゲヒュ?]
「・・・一閃!!」
グレムが剣を一振りするとゴブリンの首がすでに地面に転がっていた。
「お前達、無事か?」
グレムはすぐに二人の方へ駆け寄る。先程の険しい表情はない。
「うん・・・大丈夫」
「そうか、すまないお前達の帰りが遅いから探しに来て見れば魔物に襲われているのだから正直心底肝を冷やしたぞ?」
「うぅ・・・ごめんなさい」
グレムは溜息を吐きながら二人の手を握る。
「私の狩猟刀を勝手に持って行ったのは褒められた行為ではないが・・・いや、それよりも無事で何よりだ」
「父さん・・・」
「帰ろう、マティエも待っている」
「うん!!」
二人はグレムに手を引かれながら森を後にする。ただグレムは考え込んでいた。
(凶暴化した魔物・・・やはりこの子達の持つこれのせいか?それとも・・・いや、それはないか)
グレムは途中で考えるのをやめて二人を抱える
「どうしたのおじさん?」
「いや、お前達もう疲れただろう?私が負ぶって行こうとしてるだけだよ」
「大丈夫父さん?ユズ重くない?」
「いてまうぞこんにゃろう!!」
その一言を聞いた瞬間ユズは暴れだす。
「やめろやめろ、落としていまうぞ?」
「いいよ、ユーリィだけ落としても」
「ヤメテ!!」
二人(主にユズ)が暴れまくったおかげで三人が村に着いたのはもう夜中であった。家の前にはマティエが怖い微笑みを浮かべて待っていた。
「あら、みんな遅かったわね?」
「あ、あぁすまない」
「後でコブラツイストの刑ですね~」
「頼む、それだけは勘弁してくれ」
グレムは既に眠ってしまった二人を見てからマティエに言う。
「やはりこの子達にはこれの使い方を学んでもらわなければいけないようだ」
「やはり・・・ですか」
「明日、二人を中央の都市に連れて行く、そこで私の知り合いに使い方をあらかた教えてもらおう」
グレムは二人をベッドに寝かせる。
「そう・・・なら」
マティエはグレムの体を掴み一瞬でコブラツイストの形に持っていく。
「な・・・待ってくれ、マティ―
その後グレムの悲痛な叫び声が村中に響いたという。
宿敵は睡魔、reidです('A`)
くっそ眠い朝に投稿したこの二話目・・・深夜テンションなの丸解りじゃね?父さん強過ぎぃ!!その父さんにコブラツイストとか奥さん怖すぎぃ!!お父さん・・・なんてうらやま・・・うらやましいんだ!!(隠す気はない)なんかやりたい放題やっちまった感が否めないなぁ・・・まぁ、いっか!悪いね☆
こんな調子でひどい物を投稿していくのでよろしくお願いします!大丈夫です!多分詰まないはず!!
読者「多分じゃダメだろ!!フライアガレー!!」
reid「コンナハズハー!!」
この始末☆