【書籍化決定】男女比バグっているのに悪役転生だと思い込んでいる奴   作:陽波ゆうい

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第三章 おかしな休日の過ごし方?
第28話 悪役だけど、自分で頑張りたい(違う)※重要なお知らせあり


 休日の朝。

 起き抜けにトーレーニングルームで1時間ほど汗を流す。

 

 部屋でシャワーを浴び終わり、上半身裸で濡れた髪を拭いている時……僕は前から思っていたことを呟く。

 

「ん〜〜、ス(・)マ(・)ホ(・)が欲しいなぁ」

 

 そう、僕は学生の必需品スマホを持っていないのだ。

 

 前世でも、親からスマホを買ってもらったのは高校生になってからなので、今持っていなくてもおかしくはないのだが……。

 

「スマホは便利だし、何より情報の塊。それに……この部屋にはテレビも無いしなぁー」

 

 僕は部屋をぐるりと見回す。

 

 広々とした空間に、豪華な家具、趣味の良い装飾品、シャワー室、さらにはメイドさんまでいる。

 

 揃いすぎていると言っても過言ではない。

 

 しかし、この屋敷にはないものもあった。

 

 それは……スマホとテレビ、パソコンといった情報機器だ。

 

 屋敷には豪華なものが揃っているため、金銭的に買えないというわけじゃないはず。

 

 もっと言えば、周りが揃いすぎているからこそ、スマホもテレビもパソコンもなくてもいい。

 

 外のことなんて気にしなくてもいい。

 

 それぐらいこの環境は快適すぎるのだ。

 

 だが、テレビがなくとも……スマホは欲しい。

 

 連絡手段としてはもちろん、この世界のことを知るための情報が欲しい。

 

 と言っても、この世界はファンタジー世界ではなく、現代ラブコメが舞台っぽい。

 

 外の景色も、学園生活も、たくさん女性がいるなーと思う以外は元の世界とさほど変わらない。

 

 でもこの世界のことをちゃんと分かったわけではない。

 確かな情報を掴まないとね。

 

「好感度を上げたり、ヒロインや主人公を意識するものいいけど……たまには冷静に情報収集といってみよう!」

 

 そんなことを考えていると、ドアの向こうからノック音がした。

 

「玲人様。入ってもよろしいでしょうか?」

「ああ、いいよ」

「失礼いたします、玲人様。朝食の支度ができま……ふぇ」

 

 部屋に入ってきたのは、菜子ちゃんだ。

 今日もメイド服姿が似合っている。

 

「おはよう、菜子」

「……」 

 僕は柔らかな声色を掛けたものの……菜子ちゃんはドア付近で立ったまま動かなくなってしまった。

 

「ん? 菜子? どうした? 菜子っ」

 

 少し大きな声を掛ければ、菜子ちゃんがハッと我に返った。

 

 でも、顔を真っ赤に染めて僕から顔を逸らして……。

 

「れ、玲人様っ」

「ん?」

「な、なんで……上半身裸なんですかっ」

「? ああ、すまない。今シャワー上がりでな」

 

 そうだった、そうだった。

 僕、さっきから頭をタオルで拭きながら考え事していたばかりで……上半身に服を着てなかったよ。

 

「今着るからちょっと待ってな。えーと、Tシャツは……」

「……」

 

◆◆

 

 朝食後。

 

 僕の部屋には恭子さんが来ていた。

 恭子さんの後ろには、菜子ちゃんが僕の顔をちらちらと伺っていた。

 

「坊ちゃま。ひとつ申し上げておきますが――」

 

 恭子さんは深々とため息をつき、冷たい声で続けた。

 

「今後、シャワー上がりであのような格好を見かけた場合、トレーニングルームの使用は禁止といたします」

「そんなっ」

 

 僕は思わず声を上げた。

 

 僕が何をしたというのだ!

 

 上半身裸だったけど、見苦しい身体ってわけじゃないはず!

 

 ちゃんと鍛えているから引き締まった身体だよ!

 

 トレーニングルームを禁止されたら僕は……悪役デブルートまっしぐらになってしまう!

 

 それに、悪役といえば好感度を上げるために身体を鍛えるのは欠かせない。

 

 今は効果がないけど……続けることに意味があると思う!

 

「坊ちゃま? いいですね?」

 

 声に出していなくとも、僕の内心を見透かしたように恭子さんが圧をかけてくる。

 

 僕は頷くしかなかった。

 

 というか、菜子ちゃん……恭子さんに言ったんだね。

 やっぱり僕のこと、まだ苦手なのかな?

 

「前々から思っておりましたが……坊ちゃまは無防備すぎます」

「そ、そうか?」

 

 チラッと菜子ちゃんを見る。

 

「……」

 

 菜子ちゃんは無言でこくんと頷いた。

 

 ええ……僕、そんなに無防備なの?

 無防備って……どういうこと?

 

「えと、以後気を付ける!」

「「……」」

  

 ハッキリと告げたものの……恭子さんも菜子ちゃんも無言である。

 

 うん、姉妹揃って信用されていないね! 

 これから好感度上げを頑張ろう!!

 

「恭子。話は変わるが母さんと連絡を取りたい」

「かしこまりしました。では、いつも通り私が要望を代わりに伝えましょうか」

「いや、僕が直接母さんに言いたいことがあるんだ。だからスマホを貸してほしい」

「かしこまりました」

 

 恭子さんがスマホを少しいじってから僕に渡した。

 

 見れば、母さんの連絡先の画面が出ていた。

 

 赤色の電話マークを押してワンコール目……もう繋がった。

 

 母さんの声が電話越しに響く。

 

『もしもーし。恭子ちゃん、れーくんに何かあったの?』

 

 僕に何かあった前提なんだ。

 

 元の玲人は母さんによっぽど心配を掛けていたようだな。

 

「いや、僕だよ母さん。忙しいところごめん。今大丈夫?」

『えっ、れ、れーくんっ!? じゃあ、まま、れーくんと通話してるのっ』

「まあ、そうだな」

 

 母さんが明らかにウキウキしている様子だ。

 

 でもこのままでは以前と同じように母さんのペースに飲まれてしまう。

 

 悪いけど、今回は母さんのペースに合わせている場合ではない。

 

「母さん。僕、スマホが欲しいんだけど……」と、言おうとしたが……強引に口を閉じた。

 

 いや……それはダメだな。

 

 それじゃあ以前の玲人と同じことをしている。

 

 親のお金で欲しいものを欲しいままに……。

 

 僕はそうじゃない。

 

「母さん、僕さ――」

『うんうんっ。どうしたの、れーくんっ』

「アルバイトしたいんだけど……いいかな?」

『――』

 

 その瞬間、電話越しの空気が変わった気がした。

 

 母さんの反応が消え、無音が耳に届く。

 

「あれ? 電話切れた?」

 

 顔を上げると恭子さんと菜子ちゃんが……驚愕した表情でこちらを見ている。

 

 ん? 2人とも、どうしだんだろう?

 でも今は母さんの方が優先だな。

 

「母さん? かーぁさん?」

『ハッ!  うん、ままだよっ。電波が悪かったのかなっ。今、れーくんがとんでもないこと言った気がしたのっ。だから……もう一回言ってくれる?』

 

 なるほど、電波の問題か。

 それなら次はもっとはっきり言わないとね!

 

「欲しいものがあって、それを買うためにアルバイトをしたいんだけど、いいよね?」

『いや、良くないよ! 良くないわよっ。今からお家戻るから待っていて!』

「え、ちょっと母さん!?」

 

 電話は一方的に切られた。

 

「母さん、こっちに来るみたいだ」

「坊ちゃま……」

「あはは……」

 

 恭子さんは呆れ顔、菜子ちゃんは乾いた笑みを浮かべていた。

 

 えと……僕、何かやらかした感じなの?




新章バイト編に入ります。

【お知らせ】

 この度、『男女比バグっているのに悪役転生だと思い込んでいる奴』

 書籍化&コミカライズ化が決定いたしました。

 ダブル!! やりましたねぇ!!!
 
 これも皆さまの熱い応援のおかげです。ありがとうございます。

 詳しい詳細はまた後日お知らせいたします。

 ゆっくりにはなりますが、こちらの更新も続けますので、WEB版も書籍版もよろしくお願いしますm(_ _)m
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