6度も処刑されて破滅した悪徳貴族、7度目の人生は流刑地で最強の王を目指す 作:わんた
「シエン・ド・エンフォールを処刑する!」
王国法で定められた以上の税を取って民を苦しめていたら、王家に睨まれて捕まってしまった。
処刑台から頭が転がり落ちる。首から血を流し続ける体を見て……視界が真っ暗になり、意識を失った。
完全な死だ。
そう思っていたのだが、目覚めると幼少期に戻っていた。
人生をやり直していると気づくのに時間はかからなかった。
今度こそ、王家に気づかれないように領民を苦しめよう。
成人して領主になると税率は王国法の上限ギリギリにして、気に入った村娘を犯し、飽きたら殺すなんてことをしていく。
皆が俺を恐れ、楽しい日々だった。
次第にもっと強い刺激が欲しくなって、魔物と領民を戦わせる見世物もした。この噂が広がって多くの貴族は楽しんでくれたが、王家に気づかれてしまい、また殺されて幼少期に戻ってしまった。
3度目の人生だ。
なんで俺は生き返るんだろう。
少しだけ疑問を持つ。
死ぬのは怖い、終わりがないというのは、それだけで恐怖を覚える。
だから俺は奴隷を買い漁り、全てを忘れるために虐待していく。悲鳴、流れる血、懇願する声、恐怖する目、それだけが俺の心を癒やしてくれる。
しかし幸せな生活は長く続かなかった。
殺した奴隷の数が300を越えた頃、騎士団がやってきて俺を斬り殺したのだ。
これで人生が終わることを祈っていたのだが、無慈悲にも4度目の人生が始まる。
流石に俺も学んだ。
力が無ければ殺されると。
殺されなければ死なない! だから強くなれば良いんだ!
完璧な理論である。
4度目の幼少期に戻った俺は、奴隷を虐待しながら大剣だけではなく魔法も学んで技術を磨いていく。成人して当主になった頃には、国内でも有数の実力者になった。
だが、それだけじゃ王家と対抗するには足りない。
檻に入れた魔物と奴隷を戦わせるショーを開催して、悪徳領主仲間を集めていく。
予想したとおり騎士団に気づかれてしまったが、乗り込んできた敵は俺の力で全滅させると、悪徳領主仲間と一緒に反乱を起こしたのだ。
殺される前に殺せ!
そうすれば新しい人生が開かれる。
死が遠ざかるのだ!
必死に戦い王城までたどり着いたが、今代の剣聖と呼ばれる女に斬り殺されてしまった。
あぁ、また死んだ。
酷い苦痛だ。
苦しみから解放して欲しい。人生で一番、神に祈ったのだが、何故かまた幼少期に戻ってしまった。
神よ! どうして私に、こんな仕打ちをするのだ!
許せない。全てが憎い。
俺は再び大剣と魔法の技術を高め、今度は外国と手を組んで王家を滅ぼそうとするが……またしても剣聖によって殺されてしまう。5度目の人生も失敗であった。
中も外もダメ。行き詰まりだ。6回目の人生は絶望と共に始まる。どうせ殺されるのであれば、派手に死んでやる。そうすれば、もしかしたら本当の終わりが来るかもしれない。
俺は近隣の領主を滅ぼし、領内の税率を90%にして贅の限りを尽くしていく。
他国とも通じて国内を荒らしていく。貴族の娘を犯し、俺と同じように絶望させてから殺す。
悪行と呼ばれる行為は全てやってきた。
そして、俺はついに王国を滅ぼしたのだ。剣聖も足元で倒れている。
勝った! 運命に打ち勝ったのだ! ふはははは! すがすがしい気分である!
「がはっ」
腹を見ると切っ先が飛び出ていた。
背後から剣で貫かれたようだ。
後ろを見ると、全身真っ黒な男がいる。協力してくれた他国の暗殺者だろう。用済みになった俺を殺したのか。
痛い。嫌だ。 どうして俺ばかり、酷い目に合うんだよ。
何をしても楽しくないんだ。
神様、お願いだから俺の人生を終わらせてくれ。
もう生きたくないんだ。
だが、俺の願いは叶わず7回目の人生が始まる。
目の前には見慣れた部屋。ベッドから降りて鏡の前に立つと、銀髪で目つきの悪いガキが立っていた。貴族ではなく、凶悪犯だと言われた方が納得いく風貌だ。
「はぁ……」
無気力な俺は両親から体を鍛えろと命令された以外のことは何もせず、ただただ時間を無駄に消費していく。
領民を虐める気も起こらない。貴族の義務として大剣の訓練をするが、すでに剣聖に近い技術を持っているので、意味は無い。つまらない作業である。
両親が死んで当主になってからは、政務を家臣に任せてぼーっと過ごす日々を送っていた。
久々に鏡の前に立つ。相変わらず悪党の顔をしていた。身長は2m近くあって、服の上からでも鍛え上げられた筋肉がわかる。
ふと、背後に死神が見えた。
もう終わらせてくれよ!
頭がおかしくなりそうだ!!
「大変です! 王国騎士団が国家反逆罪として旦那様を捕まえようとしております!」
「何故だ? 俺は何もしてないぞ?」
慌てて入ってきたメイドに聞いた。
「家臣が謀反を企てていたようです。その責任を取るために……」
何もしなくても俺は破滅する運命なのか。
また死んで、生き返るのか?
嫌だ。もう終わらせてくれっ!!
「あぁぁあああああっっっっ!!」
何度も同じ人生を繰り返して頭がおかしくなってしまった。
立っているのも辛く、自分の頭を殴る。
「だ、旦那様!?」
メイドが駆けつけてくるが、振り払う。
今度は頭を壁に何度も打ち付ける。額が割れて血は流れるが、それでも止めない。
ガン、ガン、ガンと部屋に響く。
外から騎士の駆けつけてくる音が聞こえ……俺は精神を錯乱したまま痛みによって意識を失った。
これで、終わりにしてくれ――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
目が覚めると俺は船の中にいた。
足は鉄の鎖が付いていて動きにくい。周囲に似たような人が多く、男だけじゃなく女もいた。みんな何日も風呂に入ってないらしく、汗臭かった。
「ここは……いたっ」
激しい頭痛と共にシエン・ド・エンフォールと呼ばれた悪党の記憶が流れ込んでくる。どうやら、国家反逆罪として流刑……島流しにあっているようだ。
他の犯罪者と一緒に船へ乗せられいる。
そうか、俺は彼が諦めた人生の続きをさせられているのか。
神という存在が願いを叶えたのだろうか?
だったら俺みたいに戦闘狂じゃなく、まともな感性をもった善人の魂を入れれば良いのに。バカなんだろうか。
「なぁ、お前は何で流刑になったんだ? 俺は強盗殺人だ」
隣にいる男が声をかけてきた。
スキンヘッドで顔中に傷がある。自分の罪状を自慢げに語っているところが、小物感を抱かせた。
「国家反逆罪だ」
「は? 嘘つくんじゃねぇよ」
「信じないなら別にいい」
「…………マジなのか?」
俺があっさりと引き下がったことで、真実味が増したみたいだ。
「嘘はつかない」
「マジかよ……ってことは、例の伯爵様じゃねーか」
顔を引きつらせた強盗殺人犯男は、俺から距離を取った。近くで話を聞いていたヤツらも離れていく。お前たちだって流刑にされるほどの重犯罪者だというのに、仲間外れにするのか。
シエン・ド・エンフォールは、どんだけ嫌われているんだよ。
気分が悪くなったので立ち上がると階段を登って甲板に出た。
陸地は見えない。泳いで逃げられないから拘束も最低限にして、自由に動けるようにしているのか。
「落ちても助けねーからな!」
船員の一人が注意してくれた。
シエン・ド・エンフォールの記憶が正しければ、戻ったところで王家に殺されるだけだ。
俺は逆らうつもりも、逃げ出そうとも思わない。新天地で生き残り、ループから抜け出す手がかりを見つけたい。
甲板には、酔ったのか海に向かって吐いている人たちも見える。
流刑地は、大量の魔物が住む大きな島だと聞いている。大陸の人間は、そこを「死の島」と呼んでいた。
まともな法はない場所で、弱肉強食である。人類が住めるように開拓するため、罪人を使って人類の支配領域を増やしているらしい。
悪逆非道の限りを尽くし、何が悪かったのかすら理解せず人生を諦めて精神の死んだシエン・ド・エンフォールが行き着く先としては、上等な部類に入る。
思う存分暴れられそうだ。
俺は自然と笑っていた。