6度も処刑されて破滅した悪徳貴族、7度目の人生は流刑地で最強の王を目指す 作:わんた
船に乗って三日。ようやく流刑地についた。
時刻は昼頃だろうか。俺たちは船から降ろされると、桟橋で足につけた鎖を外される。
「うーーん」
体を伸ばすと気持ちが良い。気温は穏やかなので野宿はしやすそうだ。
「荷物を取りに来い!!」
港には大小さまざまな木箱が置かれている。名前が書かれていて、それぞれの持ち物をまとめてくれているようだ。
近くには騎士が10人ほど。仮に罪人が暴れても船で逃げる時間は稼げそうだ。
文字を読めない人が騎士に確認を取っている中、俺の名前の書かれた木箱が見つけた。人がいないところまで持ち運んでから開ける。
シエン・ド・エンフォールが愛用していたミスリル製の大剣があった。人の背丈以上もある。分厚く大きい。刀身には魔術文字が隙間なく書かれていて、『頑丈』『鋭さ強化』『魔法切断』といった効果が付与されている。
防具は魔物素材を使っている。裏側に魔術文字が刻まれていて『頑丈』『衝撃減少』『魔法耐性(弱)』が付与されているようだ。
何回目かのループの時にシエン・ド・エンフォールが魔法を学んでいたので、専門的な知識も持っているのだ。
装備を身につけ、最後にポーチと大ぶりのナイフを腰にぶら下げた。中には金貨が1枚と銀貨が数枚。あとは回復ポーションが数個入っている。
犯罪者である俺たちに持ち物を返却された理由は単純だ。島にいる魔物を倒して人類の拠点を増やしたいからである。
罪人を素っ裸で放り込んだら、争い合い、数日も待たずに死ぬしかないからな。
だが国の予算で武具や道具を用意するつもりもないみたいで、捕まえたときに持っていた武具等を運ぶだけで終わっている。中途半端な対応だ。
「これは俺のだ! 返せ!」
「うるせぇ! 俺様が活用してやるから、大人しく渡すんだ!」
声がする方を見ると武器の奪い合いをしていた。助け合いの精神なんてないようだ。
騎士は見ているだけで止めようとはしない。
それどころか、罪人の争いを無視して撤退準備を始めていた。
王国の法が届かない「死の島」は、弱肉強食の世界か。
気づけば至る所で奪い合いが始まっているが、俺の近くに来る者はいない。国家反逆罪で捕まったと大罪人と知らなくても、大剣を持つ2メートル近い男から、物を奪おうなんて誰も思わないのだろう。
荷物の奪い合いは激しくなり、海に落とされる者や斬り殺される者まで出てきた。
争いを避けるべく、桟橋から逃げて村の方へ行く人も多い。
さて、俺はどうしよう…………急ぐ理由もないので、人混みが嫌いな俺は最後まで残るか。
武具が入っていた木箱に座って様子を見ていると、海に落ちた男が悲鳴を上げる。
「いてぇ! 助けてくれ! 魔物が……」
ウミヘビに噛まれて飲み込まれていた。島の近くにまで海に住む魔物がいるのか。
イカダを作って逃げようとしても途中で壊されそうだな。船を出して魚を捕るのも難しいだろう。食料については自然豊かな島に期待するしかなさそうだ。
時間が経つにつれて、争いが終わり人は減っていく。残ったのは俺の他数人ぐらい。
人も減っったことだし、そろそろ移動するか。立ち上がると桟橋を出て村の中に入る。
店がいくつかあって食べ物を売っている。罪人ばかりなのだが、商売は成り立っているようだ。
通貨は王国で使っているものが、そのまま利用できるらしい。物価はやや高いが、想像していたよりかはマシだと感じた。
ここまでは割と高評価だったんだが、悪いところもある。
治安が最低なのだ。建物の影では、路上で暮らしている人たちがいてスラム街を思い出す。
しかも気分が悪いことに浮浪者の多くは子供だ。魔物と戦う戦士として運ばれたわけじゃないだろうから、この村で生まれ捨てられたのだろう。
「酷い場所だな」
将来戦士になるであろう子供を放置するなんて、ここの未来を考えている人が全くいないことを示している。今を生きていれば、先のことなんてどうでも良いのだろうか。
今は定期的に罪人は送られてきているが、人材の補給が止まったら終わりだぞ?
そういったリスクを考えてないのであれば、村をまとめている人の程度が知れるというものだ。
最初に冒険者を登録しろと指示されていたので、ギルドの建物へ入る。ゴロツキどもが一斉に俺を見た。値踏みをしているようだ。
無視して歩くと、俺と同じぐらいの大男が前に立つ。
「新入りだな。挨拶をーーぶべらっ」
遠慮なく顔面を殴りつけると、カウンターにまで吹き飛んだ。
大剣を抜いて振り上げる。
「ま、待ってくれ!」
「戦士なんだ。死ぬ覚悟ぐらいできているだろ」
遠慮なく振り下ろすと、当たる直前で盾を持った男が間に入って受け流されてしまう。
建物全体が揺れると、刀身が床に大きな傷を作った。
「なんだよ。この威力……」
完全には力を流せなかったようで、盾は大きく傷ついている。腕も折れているようだ。もう一度攻撃すれば、盾を持った男は両断出来るだろう。
大剣を肩に担ぐと二人を見た。
「2対1ってことでいいのか?」
「ま、待てって! どうしてそうなる!」
「俺の邪魔をしたんだから、戦う意思があるんだろ。受けて立つぞ」
「違う! 俺は仲裁しに来ただけだって! 頼むから武器を納めてくれ!」
盾を持つ男に懇願されてしまった。
周りを見ると、巻き込まれたくないのか建物から逃げ出していく。
犯罪者の集団であるはずなのに根性が足りない。
「詫びを入れれば許す。そうじゃなければ殺す。どうする?」
「これで勘弁してくれ!」
盾を持った男は銀貨を2枚差し出してきたので受け取る。
次に大男の方を見た。
「詫びなんて入れないぞ!」
「なら、殺す。この島には衛兵なんていない。法だって守ってくれない。助けを期待するなよ」
「俺を殺したら部下が復讐に来る! それでもやるのか!?」
「それは楽しそうだな」
部下と言っても村の規模を考えれば10人もいないだろう。そのぐらいなら余裕で勝てる。
本来の体の持ち主であるシエン・ド・エンフォールには悪いが、俺は戦いが大好きだから、襲ってくるなら返り討ちにしてやる。
大剣を振り下ろすと男を両断した。脳髄や血が周辺に飛び散る。
「人間が真っ二つ……? そんなことできるのかよ……ッ!」
返り血を浴びた盾を持っている男は、転がるようにして建物から逃げ出す。
残ったのはカウンターの中にいる受付の女だ。
静かにしていたから胆力があるなと思っていたら、立ったまま気絶していた。
…………すまん。驚かすつもりはなかったんだ。