6度も処刑されて破滅した悪徳貴族、7度目の人生は流刑地で最強の王を目指す 作:わんた
森の中の外縁部は小型の魔物が多いようだ。人型、動物、昆虫系等の魔物が襲ってくる。最大でも2m弱ぐらいのサイズなので、大剣を振り回していれば勝手に死んでくれる。
ゴブリンと、それに飼われているウルフが20匹ぐらい出てきたときもあったが、特に危険らしい場面はなかった。
戦場で死んだ前の体よりシエンは優秀だ。
俺の接近戦や魔法の技術と組み合わされば、この島の開拓を大きく進めて、二つ目や三つ目の村も作れるはず。
ただそこまで進んでしまうと、王国は犯罪者を派遣するのではなく、普通の冒険者や貴族の兵、領民を使うようになるだろう。
その時、犯罪者である俺たちはどうなるか?
使い終わった道具の行く末なんて決まっている。
どこかに捨てられるのだ。
牢獄に入れられるのであればまだましで、村に戻ることを許されず「死の島」で魔物を狩り続けて死ねと命令されるかもしれない。
戦う力を持つ冒険者なら何とかなるだろうが、俺を兄貴と慕っているジュリアンのような、子供たちも巻き添えにするのよろしくない。また宿や雑貨の店員だって捨てられるだろうから、開拓と同時に俺たちの身を守る方法を考える必要がある。
最悪、王国を相手取って戦うことも視野に入れておこう。
暴走した家臣の身代わりとして国家反逆罪になった男が、流刑地に来て本当に国家へ反逆するかもしれないとは。
ふふふ。人生とは面白い。
「兄貴ー! 牙の剥ぎ取り終わりました! 毛皮はどうします?」
「捨てておけ」
「えー。もったいないですよ。売らなくても毛布に使えますし、あいつらが喜ぶ……すみません。余計なことを言いました」
話している間にジュリアンの口が止まった。しまったといった顔をしている。自分の都合を優先していると気づいたからだ。
もし俺が腹を立ててしまえば、関係は終わってしまう。それが嫌なんだろうな。
「気にしてない。それより、毛皮が必要だという理由を聞かせてくれ」
「え、あ、はい。実は親のいない5人の子供を養っていまして、寒い夜は身を寄せ合って寝ているんです。ですから毛皮さえあれば、もう少しマシな生活が出来ると思って……つい余計なことを言ってしまいました……」
親が子供を捨てたか、それとも死んでしまったか。細かいところは分からないが、ジュリアンは守るべき存在がいるようだ。
だから、周囲からヤバいと思われている俺にも声をかけたのだな。
事情が分かっていろいろと納得した。
「毛皮は何枚必要だ?」
「3枚もあれば十分です」
「なら、3枚だけ剥ぎ取るぞ。俺も手伝う」
「兄貴ぃ……」
目から涙をこぼしながら、ジュリアンは感動していた。
「泣くなら手を動かせ」
「う、うっす」
腕で涙を拭うと一緒に毛皮の剥ぎ取りを始める。
死んだばかりなので、死体はまだ暖かい。ウルフの頭を掴むと、大ぶりのナイフを喉元から腹にかけて、一直線に切れ目を入れる。刃は浅くして肉には届かぬよう、慎重に進めていく。
無事に作業を終えると次は、次は足元から先まで切り込みを入れていく。これも先ほどと同じく、肉には届かないようにする。
足は関節の曲がりが多い。骨の構造をなぞるよう、慎重にナイフの刃を滑らせる。
切れ目を一通り入れ終わると、ナイフの背を使い、皮と肉のあいだに滑り込ませ、慎重に剥がす。
――ベリッ。
乾いた音がした。
毛皮が肉から剥がれるたび、ぬるりとした生臭さが立ちのぼる。
俺は表情を変えず、手を止めない。内側の脂肪をできる限り残さぬよう、皮をめくっていく。途中に関節や尻尾の付け根で難航するものの腱を断ち、慎重に皮を肉から引き抜いた。
一匹目が終わったら、次は二匹目だ。
同じ作業を繰り返す。合計で1時間ぐらい経過しただろうか。なんとか二匹分の毛皮の剥ぎ取りが終わった。ジュリアンの方を見ると、ちょうど一匹目の作業が終わったみたいだ。作業に慣れていなかったようで、毛皮に肉が付いてしまっている。
これは後で、丁寧に取っていかなければいけないな。
「予定の3枚手に入った。他の魔物が来る前に移動するぞ」
「はい!」
ジュリアンが毛皮を背負い袋に入れていくと、中がパンパンになってしまった。
大きい物を入れるスペースがない。普通なら狩りを中断して変える判断をするところだが、まだ昼前だ。時間はある。
最悪、手で持てば良いかと思い、予定通り森の奥を目指していく。
たまにゴブリンや大型蜘蛛が襲ってくるが、大剣で斬り殺していった。素材は剥ぎ取らない。死体は放置して先を進む。
昼ぐらいになると、俺たちは干し肉を囓りながら歩くことにした。
予定よりも早く進めている。しばらくして森を抜けて、荒れ地のエリアに来た。
村の近くにある森は、意外と小さかったんだな。
「この先にはアースドラゴンがいます。戻りませんか?」
「大物じゃないか。逃げるなんてもったいない! 戦うぞ!」
「えぇ……」
ようやく歯ごたえのある敵に出会えそうで、自然と笑みがこぼれてしまった。
嫌そうな顔をしているジュリアンだが、拒否権はない。
一人で帰れる距離じゃないので、俺に付いていくしかないのだ。
「文句を言うつもりか?」
「そんなことはありません! ですが……大丈夫なんですか?」
「心配は無用だ。行くぞ」
大剣を持つ手に力を入れると、荒れ地に踏み出していく。
待っていろよ! アースドラゴン!!