魔法少女ほむら☆マギカ Live in a Twilight World/No Friends at Dusk   作:トマスアレポ

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Day -13~-8

ほむらが目覚めると、身体がアルミブランケットに包まれている。

「起きた? あの後、本当に大変だったよ」

いろはが声をかける。

「まさか燃やされて凍死しかけるなんて」

「逆行中だからね。熱も冷たい状態から暖かい状態に逆戻りする。エントロピーの逆転ってところかな?」

ほむらが周囲を見回す。寝ていたベッドのほか、いろはが腰掛けるベッド、アリナが横たわるベッドがある。窓のない壁に、生活必需品の棚が並ぶだけだ。

「ここ、どこ?」

「今は逆行中。あの日の自由港に戻るまで、この結界で過ごすよ。時間が来たらドアが開くようになってる」

「アリナは?」

ほむらの問いに、アリナが答える。

「超バッドなんですケド」

「そんな言葉が出るなら、だいぶ回復したみたいね」

ほむらがしばし俯く。

「結局…グリーフシードは渡したも同然ね」

「起きたことは仕方ないよ」

ほむらがいろはの顔を見る。

「隠し事のある子の言い分は、素直に受け止められないわ」

「情報は慎重に扱わないと。知らないことが武器になることもあるよ」

「まだ、私はいろはのこと何も知らないわ」

「これから知ればいいよ。私も、ほむらちゃんがここまで他人を助けられるって初めて知ったし」

「誰にでもするわけじゃない」

「でも、誰かはいるんでしょ?」

いろはの問いに、ほむらが黙り込む。

「魔法少女って二種類しかいないよね。誰かのために魔法少女になったか、自分のために魔法少女になったか」

「そうね…確かに私は誰かのためでもあるけど、自分のためでもある。いろははどう?」

「私は…もう忘れちゃったかな」

「それ、嘘ね」

ほむらといろはが顔を見合わせて笑う。

「アリナは全然笑えないんですケド?」

アリナがぼやく。

「どうして人質になってたの?」

「ちょっと言い争いしちゃって…アリナは滅びの先が見たかっただけなのに、みことは『絶望の先には何もない』って譲らなくて…わけわかんない。それで、気づいたら拘束されて電車の中」

「滅びとか絶望とか、一体何?」

「みことは自殺したがってる。アリナがみことに近づいたのも、それが理由。みことは自分の命と世界の行く末が一致してると思ってるみたい。あり得ないんですケド〜」

「絶望、ね…」

「あー、いちごミルク飲みたい! フールガールの…」

「ねえ、ちょっと静かにして? お姉ちゃん、今やってるんだから」

いろはが子供をたしなめる口調でアリナに言う。

「お姉ちゃん?」

ほむらが驚いて繰り返す。

「あー、なんか癖なんだよね…私に妹なんていないのに…」

いろはが照れた顔をする。

「これが一段落したら、お互いの人生をもう少し語るのもいいわね」

ほむらが呟く。

「ところで、『アルゴリズム』って何? あの時、みことが言ってたけど」

「『アルゴリズム』は時間逆行の核心技術。あの立方体のグリーフシードがその一つで、全部で8個」

「それが揃うとどうなる?」

「世界全体の逆行が起きる。時間の矢が反転して、未来が消え、同時に過去も消える」

「世界の終わりってことね」

「フールガールも…」

「さっきから言ってるフールガールって誰?」

ほむらの問いに、アリナが寝返りを打ち、顔を背ける。

「…友達。アリナの」

 

 

 

ほむらがベッドに寝転がり、天井を見上げる。

「ねえ、いろは」

「何?」

別のベッドで横になるいろはが答える。

「私たち、今、未来人よね。過去の私たちを殺したらどうなるの?」

「答えはないよ」

「答えがない?」

「パラドックスだよ。みことたちも同じ。過去に戻って自分や先祖を殺しても影響はないって信じてる」

「まだあるわ。今、私たちがこうして生きてるってことは、未来では何も起こらなかったってこと?」

「楽観的に見れば、そうだね」

「でも、みことたちもそれは分かってるんでしょう?」

「自分たちの行動で結末が変わると信じてるんだと思う。それが悲観的シナリオかも。パラレルワールドの理論なら、人の意識は多元軸の世界を認識できないからね」

「そうね…」

ほむらが自分の時間遡行能力を考える。確かに、時間遡行で過去を変えたことはある。だが、記憶するのは常にほむら一人。遡行は特定の時間のほむらの精神に憑依するようなもので、別のほむらが出現するわけではない。そして、結末はまだ変えられていない。

考えがまとまらない。

「世界は、あらかじめ決まってるのかしら…」

「それ、決定論?」

いろはが反応する。

「確かに、運命に決められてるかもしれないけど…私たちは魔法少女。奇跡も魔法もあるんだから、自由に未来を決めてもいいよね。その方が私は好きかな」

「そうね…」

「到着まで寝よっか? おやすみ」

数日『前』の自由港まで、ほむらは身体と心を休めた。

 

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