魔法少女ほむら☆マギカ Live in a Twilight World/No Friends at Dusk 作:トマスアレポ
ガタンと部屋が揺れる。
いろはがドアのスコープを確認する。
「空港に着いた。準備しよう」
いろはがアリナに酸素マスクをつける。ほむらは部屋にあった黒い防護服を着始めるが、腕に痛みを覚える。床に血が滴る。
「それ、どうしたの?」
いろはが疑問を投げる。
「なんでもない。先に行くわ」
ほむらがガスマスクを装着し、ドアを開ける。ストレッチャーに乗せられたアリナを押すいろはが続く。
自由港の後部に貨物機が突き刺さっている。主翼は折れ、エンジンの一つが壁に当たり、爆発して燃えている。
消防車両が集まり、消防士たちが逆向きに歩く。水が貨物機からホースへ戻っていく。
黒い防護服のほむら、いろは、アリナがその中を突っ切る。自由港の裏手――数日前にほむらが侵入した場所へ近づく。
扉横のシャッターは爆発の衝撃で底が開き、ジェットエンジンの吸気でガタガタ揺れている。
「ここで待ってて。合図したら入って」
シャッターの音が激しくなり、ジェットエンジンの轟音が響く。ほむらが背後のエンジンを見た瞬間、爆発が元に戻り、破片が吐き出され、突風に体を突き押される。
ほむらはシャッターに叩きつけられ、開いた底から保管庫へ押し込まれる。
保管庫内で、倒れたほむらに銃が突きつけられる。
「!たっ知をここてっやうど」
逆行した声が響く。
「!だ誰は前お」
「!らかいなれしもかるてっ知か何」
声の主は、数日前のほむらといろは――順行の二人だ。
ほむらの脳裏に、これから起きることが閃く。
順行いろはが逆向きに部屋から出て行く。
ほむらが床から起き上がり、木箱や棚を引き剥がす。もみ合いながら、足元のグロックを通路に蹴り出す。
順行ほむらを棚に押し込み、バックドロップで床に叩きつける。すると順行ほむらが起き上がり、背後に回る。順行ほむらの腕を掴み、通路に押し出す。
今度は順行ほむらが顔や腹に拳を放つが、全ての動きを読んで掴む。
瞬間、世界から音と色が消える。時間停止だ。順行ほむらの盾に手を伸ばす。
順行ほむらが逆行ほむらの拳を掴み、勢いで倒す。床に倒されるが、通路に落ちたグロックを手繰り寄せる。世界が動き出す。
起き上がり、順行ほむらを引っ張り、回転ドアの部屋に押し込む。
通路からグロックが跳ね、手元に戻ってくる。順行ほむらがカッターナイフを逆行ほむらの腕に突き刺し、抜くと傷が治る。
順行ほむらをガラスに押し倒し、銃を構える。バン! と弾丸が順行ほむらの頭をかすめる。
ガラス越しのいろはの部屋に、逆再生のように回転ドアに戻る人影が見える。
順行ほむらにグロックを掴まれると、ほむらはマガジンを落とし、スライドを引き抜いて捨てる。
グロックを順行ほむらの手に残し、回転ドアに飛び込む。世界が順行に戻る。
順行の部屋でいろはを突き飛ばし、通路を突っ走る。
後ろからいろはが追いつき、ほむらのガスマスクをはぎ取る。
床に転がりながら、いろはと目が合った。
いろははほむらの顔を見て血相を変え、ガスマスクを投げ、順行ほむらの元へ走り去ってゆく。
通路を走り、シャッターをくぐって外にいるいろはに合図する。
「行って!」
「!てっ行」
いろはの視点では、ほむらが後ろ向きにシャッターをくぐって中に入る。
いろはがシャッターを開け、保管庫から通路を通り、回転ドアの部屋へ。ガラス越しに、いろはとアリナのストレッチャーが見える。
回転ドアに入り、世界が順行に戻る。保管庫に戻ると、数日前のほむらといろはの声。
「誰か…いる?」
「いや…」
いろはが外に出ると、ほむらがパトロールカーの後部ドアを開け、手招きする。
ストレッチャーをパトロールカーに積み込み、いろはが助手席に座る。空港を抜け出す。周囲には散乱した金塊と、それに群がる職員たち。
空港を離れ、ほむらがいろはに問う。
「どうして、もう一人の私のことを言わなかったの?」
「対消滅寸前だったから」
「後で言えたんじゃない?」
「言ったら、タイムパラドックスになってたかも」
「起きたことは仕方ない…ね」
ほむらが苦笑する。