魔法少女ほむら☆マギカ Live in a Twilight World/No Friends at Dusk   作:トマスアレポ

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Day 3

ほむらは南凪自由学園の廊下を歩き、理科室のドアを開ける。セーラー服の襟が首に擦れ、違和感を覚えるが、みたまのメモに記された日時と場所を信じ、警戒心を抑える。理科室に入ると、机に腰掛けた少女が目に入る。

緑色のショートボブに、小学生のような幼い外見。制服にだぼだぼの白衣を羽織っている。

「その服なら、どこにでも紛れ込めるね」

少女――都ひなのが軽い口調で言う。

ほむらは両手の指を組み合わせてポーズを作り、

「主義は『TENET(信念)』、そのはずよ」

ひなのは頷き、理科室の奥へ案内する。

「おしゃべりはなし。正体も目的もね」

ひなのが軽い口調で言いながら、ビーカーで入れたコーヒーを手渡す。ほむらは無言で室内を見渡し、出口と窓を確認する。ひなのはその様子に微笑み、机の上に置かれていたペンを手に立ち上がる。

広げられたノートには、既に猫の絵が描かれている。ひなのがペンを走らせると、猫の絵が逆再生のようにスッと消え、ノートが白紙に戻る。ほむらの目が鋭くなる。

「それは…何?」

「逆行するペン。未来から来たものだよ。握って書こうとすると、既に書いてあった内容が『消える』。落とそうとすると手に『戻る』。面白いだろ?」

ひなのがペンをほむらに差し出す。ほむらは一瞬躊躇し、受け取ってノートの別のページを開く。そこには、ぐにゃぐにゃの試し書きの線が既に引かれている。ペンを走らせると、線が逆再生のようになぞられ、消えていき、ノートが白紙になる。ほむらの指が震える。

ひなのが机に2本のペンを置き、説明する。

「普通、ペンからインクが出て紙に染み込む。でも、これは逆。紙のインクがペンに戻るんだ」

ひなのがペンの上に手をかざす。触れていないのに、ペンが掌に逆再生のように引き寄せられる。

「やってみる?」

ほむらが同じように手をかざすと、ペンが掌に吸い寄せられる。

「触ってないのに…なぜ?」

ひなのがスマートフォンの再生画面を見せる。

「君から見ればペンを『引き寄せた』。でも、ペンからすれば手から『落ちた』だけ」

画面には、ペンが引き寄せられるシーンと、逆再生で「落ちる」瞬間が映し出される。

「原因と結果が逆転してるんだ。理屈じゃなく、感覚の話だよ」

「劇場で…同じ光景を見た」

ほむらが呟く。神浜市立劇場の混乱――白羽根を貫いたピンクの光、逆再生のように穴に戻る破片の光景が脳裏に蘇る。

「劇場? へえ、話してみてよ」

ひなのが興味を示す。ほむらは慎重に言葉を選びながら語る。

「壁に穴が開いた。破片が逆に戻り、魔法少女の攻撃が白羽根を貫いた」

ひなのが目を細める。

「運がいいな。逆行の攻撃が当たっていたら多分悲惨なことになっていた」

 

ひなのが机から降り、黒板に近づく。黒板にはエントロピーのグラフが描かれ、矢印が逆方向に伸びている。

「このペンや劇場の現象は、ネゲントロピー――エントロピーの減少を示してる。通常、宇宙は秩序から混沌へ進む。ソウルジェムも同じ。透き通った状態から濁って壊れる。でも、これは逆。時間が未来から過去へ動いてるんだ」

ほむらが黒板を見つめる。キュゥべえの言葉――エントロピーの減少への関心――が頭をよぎる。

「未来から送り込まれたって、どういうこと?」

「時間を逆行することによって過去も変えることができる。」

ほむらが眉を寄せる。自分の時間遡行能力に似ているが、それとは全く異なる現象だ。

「目的が分からないのに、なぜそんなものを?」

ひなのが肩をすくめる。

「あたしの推測だけど…核戦争級の危機じゃないかな。魔法少女が引き起こす、ソウルジェムや魔女の力を超えた何か。世界を終わらせるような力――たとえば、時間そのものを逆行させる技術とか」

ほむらの心臓が跳ねる。里見那由他のグリーフシード――立方体の機械部品――が脳裏に浮かぶ。

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