RESIDENT EVIL Tyrant reincarnation 作:ss好き
ラクーンシティへ通じるハイウェイに一台のジープが走っていた。ハイウェイにはその車以外は一台も走っておらず、閑散としていた。ジープには男がひとり乗っていた。まだとても若く、20歳をこえて間もないと分かる顔立をしていた。しかし、幼さを若干残すその顔はハンサムでありモデルのような顔つきをしており、さぞかし女性にモテるであろうことが予想できた。
そんな男の顔は少しの不安と懸念、疑問の色が浮かんでいた。男は少し前に警察学校を卒業し、ラクーン市警に配属予定であった。既にラクーンシティのワンルームアパートの一室を借り、少しだが荷物も運び込んでいる。幼少期はラクーンシティに住んでいたため、地理にも少し詳しい。何よりも男はラクーンシティを気に入っていた。
猟奇殺人事件と呼ばれる複数人のグループで人間を喰い殺すというおぞましい事件が多発していた。被害者はどんどん増えていき、市警は特殊部隊S.T.A.R.S.の投入を決定した。だが、部隊は五人を残して隊員が殉職するという最悪の結末に終わった。最終的には薬物異常者とカルト宗教による犯行とされ、犯人グループは摘発されたと発表があり、事件は収束するかに見えた。しかし、アークレイ山中にて怪物を見たという市民からの通報や、明らかに人の歯型がついた傷の死体が発見されたりなど、未だに事件が続いているのは明らかだった。
男自身も気味悪さを感じつつも興味と自分が捜査に加わり、事件解決に貢献しあわよくば自分が解決の立役者になりたいという欲があった。だが何よりも望むことは無垢の市民の安全を脅かす犯人を捕まえ、アメリカ合衆国の法の下できちんと裁判を行い、厳正な判決と罰を与えられ、恐怖に怯えている市民を助けたいという思いがあった。其の為に男は配属希望にラクーンシティを第一候補に指名した。だが男自身はそんな思いとは裏腹に最近は気が滅入ることが続けて起こっていた。
付き合っていた彼女が男のラクーン市警配属に難色を示したのだ。彼女からすれば不気味な猟奇殺人事件が起こっている街に自分から向かおうとするのは正気とは思えない行動に見えたのだろう。結局説得も虚しく、彼女の方から別れ話を突きつけられ、そのまま別れる形となった。男は二日酔いするほど酒を飲み酔いつぶれた。
別れて数日後には気落ちしつつも配属日が近づいてきたため、ラクーンシティの下見とアパートの契約、荷物の運び込みを開始しており、残りの荷物はラクーンシティについてから運び込もうとしていた。しかし、数日前からラクーン市警より自宅待機命令が出され、男は自宅待機を余儀なくされた。その後、ラクーン市警からの連絡がないため、確認の電話を行ったが音信不通だったために愛車のジープを走らせてラクーンシティに向かっていた。
(待機命令が出てもう数日以上になる・・・本来なら先週から出勤のはずだが、待機命令の後から連絡が一切ない。絶対におかしい)
男はラクーン市警とラクーンシティそのものに疑問を感じながら、法定速度ギリギリのスピードでハイウェイをジープで走っていた。途中ニューヨークからラクーンシティまではそこそこの距離があり、念の為にと連絡ついでに休憩のためモーテルに入った。しかし、ラクーン市警は応答がなかった。
(此処最近は不幸続きだ・・・ラクーンシティは妙な事件が起きて、そのことで彼女とは別れ、やけ酒で二日酔いになる。しかも配属先のラクーン市警とは待機命令の後からは連絡が取れない・・・確実に何か起こっている)
男は自分の運の悪さと音信不通という不気味な出来事に弱気になっていることを自覚していた。同時に何かが起きていると勘が訴えている。男が思案しているとあるものが見えてきた。
ラクーンシティまで後三十分
と書かれた看板が猛スピードで後ろに飛んでいった。それと同時に夜のため暗いが、遠目からでもラクーンシティのシルエットが見えてきた。それと同時に不安も大きくなりなり、今なら間に合う、引き返せと心が訴えてくる。
(俺は警察官だ。市民が危機的状況なら助けるのが使命だ。もし先輩警官達が困難な状況なら、微力でも力になれるはずだ。弱気になるな!俺!)
男は不安に苛まれる自分に活を入れ、改めてラクーンシティへと車を走らせた。その助手席には一つのファイルと封筒が置かれており、封筒には男の名前が書かれていた。
レオン・スコット・ケネディ
ラクーンシティへ続く道を一台のバイクが走っていた。登場者は若い女性で赤いバイカー系の衣類を着用していた。容姿端麗で勝ち気そうな雰囲気なのだが、まだ成人していなくなんと大学生の身なのだ。そんな彼女は数か月前から連絡が取れなくなっていた兄の安否確認のために、隣町からラクーンシティへと単身バイクに跨り向かっていた。2週間に一回は連絡してくる兄が連絡をしてこないのだ。こちらから電話をかけても、手紙を出してもなんの音沙汰もない。兄の友人や同僚、ラクーン市警にも連絡したが繋がらないか、話し中の音しか帰ってこなかった。この時点で半ばパニックに近い不安に苛まれていた彼女はある決断を考えていた。
(兄さんに何かあったんだわ・・・必ず連絡をくれるのに、ここ数ヶ月は音信不通で何が起きているか分からない。けど、何かに巻き込まれたのは確実!連絡が取れないのなら、直接ラクーンシティに行って確認するだけ!)
大学に数日の休みを何とか承諾してもらい、ルームメイトや親しい大学の友人たちにも事情を話した。皆が危険だと思いとどまるように説得してくるが、一度決めたら止まらないのが彼女である。最終的に逆に説得されて、必ず無事に返ってくることを約束に送り出してくれた。彼女は出発前に友人たちと力強い抱擁と激励に見送られながらラクーンシティへ出発した。
(勢いよく飛び出したけどちょっと失敗した・・・ヘルメットはとにかくライダースーツか厚手の服を着るべきだったなぁ〜。少し寒いし、お尻も何時間も乗っているせいか痛くなってきた)
彼女は自分でも半ば馬鹿なことしたと少し後悔した。兄が音信不通で心配で確認に向かう。それはいいが、軽装でいくのは我ながら呆れてしまっていた。パニックに近い精神状態だったとはいえ、万が一事故が起きた時にこの格好では、悲惨なことになるのは想像に難くない。それでも残された最後の家族なのだ。何かあったらと思うと背筋が寒くなり、動悸が早まり苦しくなる。彼女は言い訳するように自分を心のなかで励まし続けた。
(大丈夫よ・・・ちょっと電気か機械的なトラブルで街がと連絡が取れないだけ・・・それに何かあっても、兄さんなら大丈夫・・・何も心配いらない、ちょっと行って私の短絡的な考えと行動を叱られて、謝って話して安堵して、そして帰るだけ・・・大丈夫、大丈夫・・・)
彼女は言い訳のように心のなかで大丈夫と呟きながら親友との出発前の会話も思い出していた。
「お兄さんに会うために女一人でバイク旅は、本当なら何が何でも止めたいわ。この国じゃ変態とクズが山のようにいるんだから・・・でも貴女のことだから何をしてでも探しに行こうとするでしょうね・・・貴女の家の事情も心情も分かるけど・・・仕方ないわ、みなまで言わない、行ってらっしゃい、でも必ず無事に帰って来ること!私も皆も待ってるから!気をつけて行ってきなさい!クレア!」
大学を出る前の親友たちとの会話に、胸に温かいものと瞳に熱と液体が込み上げてくるのを感じながら、クレア・レッドフィールドは遠くに見え始めたラクーンシティへとバイクを走らせ続けた。
二人の心情や状況はオリジナル、リメイク、C・NOVELSのバイオを混ぜた感じになりました。後二つ程エピローグを挟んで、次章に入ります。引き続き本作をよろしくお願いします。