深海棲艦が接近していることが伝えられ、騒然となる。そんな中、鳳翔さんは冷静に能代さんから詳しい情報を聞き出すため口を開く。
「能代さん、敵の艦種などはわかりますか?」
「あっはい!接近してきているのは、軽巡棲鬼と駆逐イ級だと思われます!まっすぐにこの鎮守府に進路を取っており、おそらく鎮守府近くの海岸に上陸するものと考えられます!」
たった2隻の接近、はぐれなのか、偵察なのかは判断はできない。鳳翔さんはしばらく考え込む。やがて考えがまとまったのか指示を飛ばす。
「吹雪さんと夕立ちゃんは自動小銃を持ってきてください、能代さんは私と一緒に上陸地点に向かい相手の動向を探ります。もしそれ以上進行してくるのであれば制圧します。それと…」
鳳翔さんは私を見る。
「暁さんも一緒に来てもらいます。私達の敵がなんなのか見てもらう為に」
そうして私は、鳳翔さん達に着いていく。向かう途中気になることがあり能代さんに聞くことにし、声をかける。
「あの…能代さん?」
「ん?どうしたの、急にさん付けなんて。私たち昔からの仲じゃん?」
「その子、私達が知ってる暁ちゃんじゃないわ」
「へ?」
鳳翔さんからの一言で能代さんの目が点になる。理解が追いついき鳳翔さんにくってかかる。
「じゃあ、この暁ちゃんはどこの所属の子!?それ以前にどうやってこの鎮守府まで…?」
「気が付いたら海の上に居たそうよ、陸地を探していたらたまたまここに着いたらしいわ」
「気が付いたら海の上って…"始まりの艦娘"と一緒じゃないですか!?」
始まりの艦娘?なんだろうそれ。
「それについては詳しく調べないとわからないわね、その為にもこの島から脱出しなきゃいけないわ」
「でも…脱出できるんですか?近くの鎮守府に救助求めようにも傍受されて私たちの存在がバレちゃいますよ?」
「脱出するだけならば、なんとかなります。それに策もありますし」
その声色は自信がなく、一抹の希望に縋るように弱かった。少し空気が暗くなり、慌てて話題を戻す。
「そういえば、自動小銃なんて意味あるんですか?効かなさそうですけど」
「あーそのことね」
私の質問に能代さんは答える。
「私たち艦娘や、深海棲艦は実際の艦と同等の力を持ってるし通常兵器は効かないけど、それはあくまで海の上での話なの。理由はわからないけど陸上だと砲撃能力以外機能しなくなるの、装甲や馬力も人と遜色ないから、陸上では対人兵器が効くのよ」
「そうなんですか…」
「そうなのよー。海になにかしらの力があるとかなんとか言われてるけどねー、まあそういうものなのよ」
そうやって会話をしていると、海岸に近づいてきた。私たちは木の裏に隠れ、様子を伺う。件の深海棲艦は既に上陸していたが、陸に上がっているのは軽巡棲鬼のみで駆逐イ級は海面から顔を覗かせていた。軽巡棲鬼はこちらにまったく気が付いていないようで、独り言を呟いていた。それなりに離れている私たちにも聞こえるくらいの声で。
「アー!ナンデワタシガコンナコトシナキャイケナイノヨ!シカモワタシタチダケ!イッチャンモソウ思ウヨネ?艦娘トハ戦イタクナイシ…グータラシテタイヨ!」
そう言って、砂浜に寝転がりジタバタと手足を振り回す。思っていたのとはかなり違う印象を受ける深海棲艦だ、ちらっと横を見ると2人も予想外だったようで眉を顰めていた。
「あれが深海棲艦…初めて生で見たけど、なんか…その…」
「あれが特殊な深海棲艦なだけです。それにしても、ここまで言葉を喋る個体は見たことがありませんね…。あら、軽巡棲鬼型なのに脚もありますね」
「他の個体は、機械みたいに同じセリフしか言わないのに…。それにどうしてか、あの深海棲艦に懐かしいものを感じるのよ、まるで…阿賀野姉のよう…な」
「アー!」
声に反応して、振り直すとジタバタと暴れていた軽巡棲鬼がピタっと動きを止めており海にいるイ級と比べ、理性を感じるも吸い込こまれそうな目と視線があった。ピョンと跳ね起き、こちらに走ってきた。
「能代ジャーン!ソレニ鳳翔サンヤ暁チャンマデ!ワタシダヨ、ワタシ」
くるっと回り、キラッとポーズを取る軽巡棲鬼。そして信じられないことを言い放った。
「阿賀野サンダヨー!イヤーミンナ生キテテヨカッター!」
久しぶりの投稿になります。仕事が大変だったりして手がつけられていませんでした。これからも不定期ではありますが続けていきたいので、出たら見るか程度に頭の片隅の端の方に置いといてください。