キヴォトスの亡霊   作:枝那

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ブルアカ書きたい欲も高まってきたので久しぶりにこっちも投稿します。
割と長めになったので分割しました。


バリアフリー②

二人の斬り(撃ち)合いは続く。

 

ホシノの放った銃弾はムクロに斬られるか避けられる。刀を十分に振るえない範囲に近づいて攻撃しようとしても、そもそも撃つ前に攻撃されてしまう。

 

刀と銃。

 

普通に考えて両者が互角に渡り合うはずなどなく、刀は銃の前にはば為す術なく敗れてしまう。

 

だが、その普通は『亡霊』によって容易く崩される。

 

 

――カチンッ

 

~~~………

 

(彼は数回の斬撃の後刀を鞘に収める)

 

それは戦いの中でホシノが見抜いたムクロの癖。唯一の“隙”。

そこを攻めない手はない。

 

(抜かせる前に、止める!!)

 

彼が刀を抜く瞬間、ホシノは足を伸ばして柄頭を抑え、抜刀を妨害する。

 

――ヒュッ

 

「あ」

 

間抜けな声を出す。

 

ホシノの足に阻まれ刀を抜けなくなったムクロが即座に取った行動は、鞘を後ろに動かすことによる抜刀。

 

剥き出しになった刀身が、再び彼女を襲う――

 

ザンッ!!

 

その刀の軌道に呼応するように、並んでいる街路樹が数本同時に両断される。

ホシノは冷や汗をかきながら後ろに大きく跳ね、間一髪で斬撃を躱すことに成功した。

 

~~~~

 

(彼を止めるのは無理)

 

顔に張り付いた汗を乱雑に拭いながら、ホシノはいつの間にか鞘を回収したムクロに目を向ける。

 

(なら、狙うのは刀…!)

 

 

陸八魔アルはアウトローに憧れている。

 

何物にも縛られず我が道を征く存在。それが彼女の目指す先である。

 

彼女は便利屋を設立した。

 

浅黄ムツキ、鬼方カヨコ、伊草ハルカと共に、ブラックマーケットを拠点に様々な依頼を日々こなしている。

 

風紀委員に目をつけられ、時にはテントで暮らしたり、満足に食事も摂れなくなるなど苦しい状況に追い込まれることも多いが、頼れる社員たちと共に自分の理想に向かって邁進している。

 

猫探しから誘拐まで。金次第で何でもやるのが彼女たち『便利屋68』である。

 

 

ある日、便利屋はとある学校を襲撃しろという依頼を受けた。

 

彼女はこの依頼を受理し、食費が危うくなるほど資金をつぎ込ん傭兵を雇い、早速その学校を襲撃した。

 

数に物を言わせた人海戦術、便利屋たちの優れた連携と実力によって最初は優勢かに思えた。

しかし、傭兵たちは一介のバイトに過ぎず、終業時間が来てそのまま解散。

 

数の利を失った便利屋の逃亡という、何とも言い難い結果に終わったのだ。

 

 

その翌日。

 

アルは依頼主に依頼の遂行を急かされた。

依頼主はかなりの大物らしく、彼女としてもこの依頼は絶対に成功させたかったため断ることは出来なかった。

 

だが、資金は既に底をついていた。これでは再び傭兵を雇って襲撃をかけることが出来ない。

 

ならば便利屋の4人だけで襲撃するか?それも無理だ。先日襲撃した学園は予想以上の手練れだった。便利屋の戦力だけでは敗色濃厚。

 

どん詰まりの状況だが、それでもアルは諦めない。彼女は融資を受けることに決めた。

当然、真っ当な銀行であれば門前払いされるため、彼女が選んだのはブラックマーケットにある闇銀行。そこであれば、風紀委員から指名手配を受けている便利屋68も融資を受けることが出来る。

 

即断即決で便利屋は闇銀行へ足を運び、審査を受けることになった。

 

 

だが、突きつけられたのは厳しい現実。

取り付く島もなく、便利屋68は融資を断られた。

 

理想と現実のギャップに打ちのめされ、アウトローとしての自分に自信を失くしかけていた時に、『彼女ら』は訪れた。

 

『覆面水着団』と名乗る集団が、闇銀行を強盗しに来たのである。

アルは気付いていなかったが、『覆面水着団』の正体は先日便利屋が襲撃をかけたアビドス高校の生徒たちである。

 

ブラックマーケットは確かに無法地帯ではあるが、その中にも一定の秩序は存在する。銀行強盗などという蛮行を行えば、すぐさまマーケットガードがやって来て制圧されるだろう。加えて、ここには決して触れてはならない存在がいる。

 

アビドス生たちの思惑はどうあれ、ブラックマーケットを敵に回すことを恐れず白昼堂々銀行を襲撃するその姿は、アルにはさぞ自分が理想とする『アウトロー』のように見えただろう。

 

その勇姿に甚く心を動かされたアルは、既に銀行を後にしたアビドス生たちをたまらず追いかけたのだ。

 

 

「ゼェ…ハァ…!覆面水着団は?もう行っちゃった!?」

 

銀行からかなりの距離を走ったアルは、膝に手を置き息を整えている。

 

「アルちゃ~ん!強盗ちゃんたちには会えたー?」

 

社員たちも彼女に追い付く。

アルがキョロキョロと周囲を見渡していると、銃声と轟音が便利屋の耳をつんざいた。

 

「この音…きっと覆面水着団が戦ってる音だわ!行きましょう!」

 

「あ、待ってよー」

 

急いで戦闘音の発生源まで行く。

幸いなことに、アルたちがさっきいた場所からそこまで距離は遠くなかった。

 

音が聞こえた場所にやって来ると、激しい戦闘を繰り広げている二つの影が目に入る。砂煙や黒煙によってその姿がはっきりしないが、よく目を凝らして見てみると。

 

「……え?」

 

彼女が目にしたものは。

 

「あの子……アビドスの生徒よね?なんでここに…?」

 

覆面水着団のメンバーなどではなく、先日襲撃したアビドス高校の小鳥遊ホシノ。そして……

 

「戦ってるのは………ッ!?」

 

あらゆる悪人の恐怖の象徴。『亡霊』、篁ムクロであった。

 

「な、なんでアビドスの人がムクロと戦ってるのよ!?」

 

「あれー?アルちゃん気付いてなかったの?覆面水着団はアビドスの子たちだよ?」

 

「な……なんですってー!!?」

 

覆面水着団の正体はアビドス高校の生徒たちだった。アルは衝撃の事実に白目を剥く。このような状況でもいつも通りなアルに呆れながら、カヨコはムクロとホシノの戦闘に注視する。

 

「ムクロとあそこまで戦えるなんて……あのホシノって生徒、あんなに強かったんだ」

 

表情こそ変わらないものの、そう言うカヨコの声色は驚愕が隠し切れていない。彼の人外じみた強さは彼女も痛いほど理解している。以前戦った時に只者ではないと薄々感じ取ってはいたが、あの『亡霊』を相手に互角の戦闘を繰り広げていることが信じられなかった。

 

「でも、長くはもたないんじゃないの?」

 

「…うん、そうだね」

 

恐らく、小鳥遊ホシノはあの風紀委員長と並ぶ実力者なのだろう。

だが、それでもムクロには決して敵わないと、彼女たちは確信していた。

 

単純な実力の差だけではない。

『何が起こるか分からない』という不気味さが、ムクロにはあるのだ。

 

「どうする、社長?今ムクロに加勢すれば、傭兵なんて雇わなくてもアビドスの子たちを倒せるけど」

 

「…え?あ、確かに、そうね………」

 

カヨコの提案を聞いて、確かにそれが可能であることに気付く。

数十人程度の傭兵を雇うより、ムクロに任せる方がはるかに効率的で現実的である。彼一人でもアビドスを処理できるだろうが、便利屋が共に戦えばより確実に倒すことが出来る。

 

昨日から散々悩まされてきたた依頼の達成が、思わぬ形で現実のものとなったのだ。

 

しかしながら、アルの返事には覇気がない。

少しの間黙考した後、ようやく彼女は口を開いた。

 

「……決めたわ!」

 

 

バン!バン!バン!!

 

走りながら、遠距離からムクロにひたすら発砲し続けるホシノ。当然、その弾丸は彼の肉体に届く前に、彼が振るう刀に全て斬り落とされる。

 

この程度の攻撃は彼には通用しない。そんなことはホシノも分かっている。

 

刀身を鞘に収めたムクロの眼前に、彼の斬撃によって生じた瓦礫が凄まじい勢いで迫りくる。

 

――キンッ

 

柄を握る腕が微かにブレる。子供の体程ある大きさの岩は綺麗に4分割され、彼に届くことなく地に落ちた。

 

更に彼女は動きながら投げ続ける。岩石、街路樹、果てには立て看板やドラム缶まで。周囲にあるあらゆるものを利用し、攻撃する手を緩めない。

 

絶え間なく飛来してくる障害物を斬り続けて防いでいる隙に、ホシノは彼の懐にまで近づいた。ムクロが一際大きな瓦礫を横一文字に真っ二つにすると同時に、ホシノは彼を力の限り蹴飛ばした。

 

勢いよく吹き飛ばされたムクロは、その運動エネルギーに従って廃ビルの窓ガラスを突き破り、建物の最上階まで突っ込んだ。

 

息つく暇もなく、ビルの壁を斬り壊して飛びかかって来るムクロ。空中で鞘から刀身を剥きだしにし、傷だらけの彼女を狙う。

 

寸分の狂い無く迫りくる凶刃を、彼女は銃身を使って()()()()()

 

(狙い通り……!)

 

本来ならばホシノの愛銃は無情に断ち切られ、この見るも無残な瓦礫の山の一部と化していただろう。だが、そうはならなかった。ムクロの刀はボロボロの鈍らになっていた。

 

目の前の亡霊が如何に強くとも、武器が無ければさしたる脅威ではない。ホシノはヒットアンドアウェイに徹することで彼の刀を損耗させ、無力化することに成功したのだ。

 

切れ味が落ちたとはいえ、まだ安全とは言えない。完全に刀を破壊するべく、ホシノは追い打ちをかける。

 

バン!!

 

自分の力だけではない。あらゆるものを駆使して遂に見えた“勝機”。容赦なく放たれた渾身の一射を前に、ムクロは刀を逆手持ちの要領で、刃先を弾道と重なるように傾けて――

 

ギギギーーッ!!

 

(銃弾で、刀を研いだ……!?)

 

火花を散らしながら、金属同士が擦れる甲高い音を響かせる。

銃弾のスピードによって研磨され、鈍らであったはずの刀は再び輝きを取り戻した。

 

常軌を逸したその現象と、それを可能にしたムクロの技術を目の当たりにし、ホシノは目を剥く。

 

その刹那、ムクロは呆気に取られているホシノと距離を詰める。

 

(あ……ヤバッ………)

 

その思考にたどり着いた頃には何もかも遅かった。

彼の振るう銀の閃光は、ホシノの首を的確に捉え、その意識を刈り取る。

 

 

ガキンッ!!

 

 

――ことは叶わなかった。

 

「!?」

 

銃声と、先ほどとはまた違う鈍い金属音。

彼女の急所に肉薄した刀は既になく、ムクロは柄を両手で握りしめ、刃で側頭部を守るように構えていた。

 

ホシノはさっきの音の要因が高所からの狙撃によるものだと知る。

 

 

「そのザマはなに?さっきの威勢は何処に行ったのかしら!」

 

少しばかり上ずった、けれど凛とした声が上から響く。

 

ホシノがその声の主がいると思しき場所に目を向ける。

先ほどムクロが吹き飛ばされた廃ビル――ではなく、その隣にあるテナントビルの屋上。

 

そこにいたのは。

 

「私をあまり失望させないでちょうだい」

 

マントをたなびかせてスナイパーライフルを構える紅い髪の少女。

その顔に一切の迷いはなく、泰然自若と二人を見下ろしていた。

 

「覆面水着団、いや、アビドス高校!!」

 

邪魔すんな 死にてぇか

 

便利屋68社長、陸八魔アル。ここに参戦。




つい最近『超かぐや姫』を映画館で観ました。ネタバレになるので詳しいことは言えませんが本当に神アニメでした。あれがネトフリでいつでも見られるのおかしすぎません?


あとポムケンが可愛すぎました。

『SAKAMOTO DAYS』はどれくらい知っている?

  • 原作も読んでいる
  • 名前や大まかなストーリーくらいなら
  • 全然知らない
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