キヴォトスの亡霊 作:枝那
7thPVの情報量が多すぎる!!
篁ムクロとの戦闘から数日が経ったある日。
アビドス高等学校と手を組み、便利屋68は命からがらブラックマーケットの亡霊から逃げおおせた。社長である肝心のアルはというと……
「ハァ~~………」
先日の堂々たる立ち振る舞いが嘘のように思えるほど大きなため息をついていた。
「社長、ここ最近ずっと元気ないね」
「ど、どうしましょう……」
「アルちゃーん。いつまでため息ついてんのー?」
「別にいつまでだっていいじゃない………」
「こりゃ重症だね」
生返事を繰り返すアルを見て、カヨコは肩をすくめる。
アルがこうなっている理由は皆も分かっている。
先日のブラックマーケットでの一件だ。
アルの個人的な信条により、ムクロと戦っていたホシノを救出し、彼女たちと共に逃げ出した。
あの激闘で有耶無耶になっていたが、便利屋がブラックマーケットに居たのは資金不足により融資を受けるためであり、その資金不足という現実は何も解決していない。
そして、アビドスとの共闘。
元々アルはアビドス高等学校の生徒たちにそこまで悪感情を抱いていなかった。
共に死線を潜り抜けたことである種の信頼関係さえ築かれていた。
非情になり切れない部分がある彼女にとって、再びアビドス生たちに銃口を向けるのはあまり気分の良いものではない。
改善の兆しが見えない資金不足と、アビドス高校とまた戦わなければならないというダブルパンチにより、アルの依頼に対するモチベーションはかつてないほどに低下していたのだ。
「こんなことなら………」
「アビドスと手を組まなければよかった?」
「……そうは言ってないでしょ」
言葉を遮ったムツキにジト目を向ける。無邪気な笑みを浮かべている彼女を見て、アルはため息をつく。こっちは笑いごとではないのだ。
「でも、クヨクヨしていてたって何も変わらないでしょ?」
「それはそうだけど……」
「だったら、依頼を蹴ってゲヘナに帰るって手もあるよ」
そこでカヨコが口を出した。アルは少し驚いたような顔をした後、キッと表情を引き締める。
「今更ゲヘナに帰るって選択肢は無いわ。依頼をキャンセルすることもね」
「だったら、それでいいんじゃない?余計なことは考えず、今は依頼に集中しよう」
「…………それは、そうなんだけど……はぁ………」
また悩ましげな表情に戻って唸り声を出すアル。そこで場の空気を変えるように、ムツキがパンと手を叩いた。
「ハイハイ、小難しい話はこれでおしまーい。アルちゃん、ご飯食べに行こうよ。美味しいもの食べれば悩みも吹っ飛ぶって!」
「そうだね。もういい時間だし」
「『紫関ラーメン』行こうよ!」
「また?」
「気にしない気にしない。バイトちゃんは午後から入るみたいだし。鉢合わせなきゃ問題ないじゃん?」
「まぁ……美味しかったしね。とにかく、社長を元気づけないと……」
「じゃあお決まりー。行こ行こ♪」
依頼のことは一旦後回しにして、便利屋は昼食を摂るため事務所を後にした。
◇
柴関ラーメン。
アビドス自治区に居を構えるラーメン屋であり、アビドス生たちの憩いの場でもある。
そこに便利屋は再び足を運んでいた。
「お、いらっしゃい。何人だい?」
「4人よ」
「じゃあ、好きなテーブル席に座ってくれ」
店に入ると、厨房に立っている店主である柴大将が暖かく迎えてくれた。店内に充満するスープの匂いに食欲が刺激され、4人は少し急ぎ気味に卓に着く。
「何食べよっかなー」
「あまり高いのは駄目だよ」
「えー?たまにはいいじゃん。ここお安いんだし」
「今日は1人一杯注文していいわよ!」
「きゃー!アルちゃん太っ腹ー♪」
「さっきお金がないって話したばかりでしょ?」
「い、いいのよ。これくらいの余裕はあるわ」
4人で駄弁っていると、アルは店内にいる人たちの視線を集めていることに気付く。お昼時にも関わらず閑散としているこの空間で騒げば目立ってしまうのは当然だ。
気まずさを感じたアルが注文のために大将を呼ぼうとしたその時、またガラガラと音を立てて扉が開いた。
「いらっしゃい。何人かな?」
「一人だ」
「じゃあ、カウンター席に座ってくれ。いやぁ、最近は一見さんがよく来てくれるねぇ」
言葉の機能を果たしているとは言い難い掠れた声。便利屋はその存在に一瞬で気付いた。
(どうして…)
(ここに)
(ムクロが来てるのよーーー!?)
咄嗟に4人はテーブルに突っ伏し、メニューで顔を隠す。
(なんでわざわざアビドスにまで…)
(どうする?さっさと逃げちゃう?)
(いや、駄目よそんなの。大将に失礼じゃない!)
メニュー表を盾のように扱い、彼に聞き取られないよう小声で4人が話し合っていると、大将がテーブルに近付いてきた。
「ご注文は?」
「へ?」
「さっき呼ぼうとしてただろ?俺の勘違いだったかな?」
「え、あ、そうね……じゃあ、ラーメンを4つでお願い」
「あいよ!少し待っててくれ」
(うぅ………優しさが心に沁みるわ……)
全員が顔を隠しているという怪しすぎる状況に一切触れることなく、一人の店主として真摯に対応してくれた大将にアルは心の中で涙を流す。
「お兄さんはもう決まったかい?」
「ラーメン、並でいい」
「あいよ!じゃあ待っててくれ」
(え?何言ってるのか分かるの?)
(というかムクロって普通にご飯食べるんだ……)
4人は顔を覆っているメニュー表からチラリと目を覗かせる。
会話が出来るのか怪しい男だが、大将は彼が言っていることが分かるらしい。これはプロの料理人だからできることなのだろうか。
やがて注文の品が届き、便利屋はムクロに気を払いつつラーメンを食べ始めた。
他の客が逸品に舌鼓を打つ一方で、4人の座るテーブルだけはまるで戦場のような空気に包まれていた。
(全然味しなかったわ………)
絶品のラーメンを十分に味わうこともできず、そそくさと食べ終えた4人は急いで会計を済ませて店を出ていった。
外へ出てから脱兎の如く走り出した便利屋は、店から数十メートルほど離れた場所で立ち止まった。ひとまず安心と見るや、彼女たちは一気に口を開いた。
「あーーっ!心臓止まるかと思ったーーー!!」
「せっかくのラーメンが台無しだったじゃん!」
「す、すみません!やっぱり私が囮になれば……」
「流石に彼相手に囮は通じないよ」
荒くなった息を整えつつ、4人はその場で話し合う。
「そもそも、なんでムクロがブラックマーケットから離れてわざわざアビドスにまで来てるのよ……」
「ムクロが他の学区に出没することなんてよくあることだよ」
「案外ラーメンを食べたかっただけだったりして?」
「いや、それは流石に…どうかしら」
「とりあえず、早く
「ええ、そうね」
少し身体を休ませた彼女たちは、ムクロが追ってこないうちに事務所へ戻るため再び足を動かした。
ヒュゥウウウ―――
「…?何か変な音聞こえなかったかしら?」
「確かに……」
何かが風を切るような音が彼女たちの耳に入る。最初は聞き取り辛かったが、その音は徐々に大きくなっている。それはまるで彼女たちに近付いてきているようで。
「…ッ!社長、逃げ――」
「へ?」
異音の正体にいち早く気付いたカヨコが声を張り上げた。
だけど、もう遅い。
飛来物……
逃げる挙動を取ることも、そもそもそれを認識することも出来ない。砲弾は無慈悲に襲い掛かり、その衝撃と爆炎に彼女たちは為す術なく呑み込まれるだろう。
「何してやがる」
ドッカーーーン!!
『!?』
刻一刻と迫っていた砲弾は突如として空中で大きな花火を上げた。
辺りを黒煙が包み込む。その場にいた民間人たちは突然の爆撃にパニックを起こし、蜘蛛の子散らして逃げ惑う。
―――カチンッ
黒煙と爆風により視界を奪われ、ゴホゴホと咳き込んでいる。しかしながら彼女たちの意識を占有していたのは、迫撃砲の爆音というよりはむしろ、その後に鳴り響いた聞き覚えのある金属がぶつかり合う音だった。
「もう!さっきから何なのよーー!!」
「…なんで、あなたが」
ようやくムクロから逃げられたのにまたも災難に見舞われたアルが不満を吐き出すように叫ぶ。その一方で、カヨコはそばにいる存在に目を大きく見開き、声を震わせた。
「ウルセェな」
他の便利屋メンバーたちもその人影の正体に気がついた。
黒煙から現れたのは刀を持った一人の男子生徒。
昨日アビドス生と共に戦い、そして今日ラーメン屋で鉢合わせた亡霊。篁ムクロである。
「な、なんでムクロが……!?」
「まさか、私たちを助けてくれたの?」
「…………」
未だ混乱が残る便利屋の問いにムクロは答えない。その濁った瞳は先の攻撃が放たれた方を捉えている。
「というか、さっきの砲弾は一体どこから…」
「風紀委員だよ。奴らこんなところにまでわざわざやって来た」
「……えぇ!?ふ、風紀委員がぁ!?」
「……砲弾、不発!空中で爆破した模様です」
「何?奴らに勘付かれたか?」
便利屋から遠く離れた道路のど真ん中。そこに軍服のような制服に身を包んだ少女たちが、粛々とした雰囲気で立ち並んでいた。
彼女たちはゲヘナ風紀委員会。自由と混沌を校風とするマンモス校、『ゲヘナ学園』の秩序を担う組織である。
銀髪のリーダー格の生徒は突然の不可解な現象に眉をひそめる。
牽制とはいえ、砲撃が防がれた。予想外の出来事ではあるが、やることは変わらない。
依然として戦力はこちらの方が上。問題児どもに鉄槌を食らわせるため、彼女は強気な笑みを浮かべながら進軍を開始した。
………その先に待ち構えている存在が何なのかも知らずに。
「どうして風紀委員まで…!?」
アルが白目をむく。ただでさえムクロのことで手一杯だというのに、風紀委員のことまで相手にしなくてはならないのか。
「ま、まさか私たちを追って……!?」
「……いや、」
カヨコはそこで口を噤んだ。この規模の戦力投入に違和感を覚えるが、今口にすべきことではない。
それよりも。
―――チャキッ
「「「あ」」」
カヨコは既に居合の姿勢に入っているムクロにチラリと視線を向ける。
それに気づいた他の社員も焦った様子で思わず声を漏らした。
「まったく」
「風紀委員は彼に敵意を向けてしまった」
「どいつもこいつも」
「もう誰も止められないよ」
◇
「ウザってぇ」
「な、ななな……!」
「分かってはいたけど、ホントとんでもないね」
制圧するのに5分もかからなかった。
既に刃を納めているムクロの周囲には、風紀委員たちの死体の山(死んでないが)が築かれ、兵器だったものが無残に散らばっている。
「ウグッ……!」
正に死屍累々。大勢のヘイローの灯が消えている中で、地に倒れ伏しているリーダーの少女――銀鏡イオリはうめき声を上げる。
「アレ?起きてたんだ?タフだねー」
「何でこんな所にムクロがいるんだ……!!」
自分たちをここまで追い詰めた元凶を見上げながら、忌々しそうにイオリは呟いた。
なんてことはない、少し厄介な問題児を捕まえるだけの任務の筈だった。懸念点があるとすれば、それはこの自治区を治めるアビドスとかいう学校の邪魔立てくらいだと思っていた。
風紀委員に落ち度があるとすれば、周囲に注意を向けず無鉄砲に攻撃を行ってしまったことだろう。結果として、彼女たちは『亡霊』と敵対するという最悪のカードを引いてしまった。
彼に敵意を向けた時点で風紀委員たちの運命は決まっていたのだ。
屈辱に顔を赤くするイオリを、カヨコは心の底から憐れみを込めて見下ろしている。
「……まぁ、あなたたちには同情するよ」
「クソッ……奴さえいなければお前らなんか……!」
「ハァ…ハァ…!一体どうなってんの!?」
ムクロのお陰で窮地を脱したはいいが、これからどうすればよいものかと便利屋が考えあぐねていると、騒ぎを聞きつけてホシノを除くアビドス生と先生がやって来た。
“えっと……今どういう状況?”
「あ、先生ー。実はかくかくしかじかで~~」
この惨状を見て目を丸くする先生らに、ムツキが事の仔細を説明する。詳細を聞いた彼女たちは、驚きもありつつも納得といった表情で彼に視線を向けた。
「この規模の軍隊をたった一人で……」
「ん。相変わらず圧倒的」
「そもそも!なんでゲヘナの風紀委員が他の自治区にまでやって来るのよ!」
彼の強さに戦慄するノノミとシロコをよそに、セリカは当然の疑問を投げかける。
「まぁ、大体検討はつくよ」
すると、その疑問に答えるようにカヨコが口を開いた。
「風紀委員たちは
「しかもこんな非効率的な運用、
「この会話も通信越しに聞いてるんでしょ?
まるで犯人を追い詰める探偵のような口調で自身の推論を発表するカヨコに、そばで聞いていたアビドス生たちは思わず感心する。
彼女がその名前を口にすると辺りに沈黙が流れる。しばらく経った後、ギリッと小さく奥歯を噛む音と同時に、彼女たちの前にホログラムが投影された。
『……えぇ、流石はカヨコさん。ご名答です』
貼り付けたような笑みを浮かべながら、先生たちの目の前に現れたのはなんとも奇抜な制服を着用している青い髪の少女。彼女は天雨アコ。ゲヘナ風紀委員会の行政官であり、風紀委員長の右腕とも言える存在だ。
『ご紹介に預かりました、天雨アコと申します。以後お見知りおきを』
「行政官……!?」
「ということは、風紀委員のNo.2……」
「随分と出てくるのが遅かったじゃん?亡霊くんが怖くて仕方なかったのかなー?」
ようやく現れた黒幕に向けて、ムツキはニヤニヤとあくどい笑みを浮かべながら刺々しい挑発の言葉を放った。
『………ッ!……………ふぅ、まずは、先ほどまでの愚行に対する謝罪をさせていただきます』
ムツキの煽りに口角をピクピクと痙攣させるも、アコはなんとか堪えて小さく息を吐く。彼女は笑みを絶やさずアビドスとの会話を続けるが、その額にはホログラム越しでも分かるほどの青筋が浮かび上がっていた。
「まず、ゲヘナ風紀委員会の方が何故アビドス自治区へやって来て、戦闘行為を行ったのかについてご説明いただけますか?」
アビドスを代表してアヤネがこの不可解な行為についての説明を要求する。
『私たち風紀委員会はそこにいる便利屋68…校則違反者を逮捕するためにここへ来ました。ですが実働隊への指示が円滑に行われなかったようでして、他自治区にも関わらず無差別に発砲するという事態を招いてしまいました。大変申し訳ございません』
アコはそう謝罪するが、アビドスの面々は未だ納得できずにいる。すると、それまで黙って話を聞いていたカヨコが再び口を開いた。
「この期に及んでまだ嘘をつくつもり?」
『……面白いことを言いますね、カヨコさん』
溜息混じりに言葉を遮ったカヨコにアコが視線を向けた。
「これほどの兵力、
「あんたの目的は最初から
「!?」
「何ですって!?」
“…私?”
カヨコの推理を聞いて彼女たちは驚きの声を上げる。当の本人である先生は呑気な反応をしているが。
アコは柔和な笑みを崩さず、カヨコに反論する。
『面白い推理ですね。ですが、そこのムクロさんを逮捕するためという可能性もありますよね?』
「それだと逆に数が少なすぎる。ムクロを相手するには、少なくともヒナがいないと話にならない。そもそもここにムクロがいるのは偶然みたいだし」
『……ふふっ。ええ、その通りです。カヨコさんの推理通り、私はシャーレの先生の身柄を目的に部隊を動かしました』
『………きっかけは、ティーパーティーでした』
長年ゲヘナ学園と敵対関係にあるトリニティ総合学園の生徒会が、シャーレに関する報告書を手にしているとの情報を風紀委員は入手した。
トリニティがシャーレに関する情報を得たとなれば、ゲヘナも無視する訳にはいかない。
彼女はチナツが提出した報告書を閲覧し、ようやくシャーレという部活のことを認知したのだった。
シャーレという超法規的組織をアコは危険視した。現在ゲヘナとトリニティの両校はとある条約の締結の準備を進めており、情勢が不安定である。その条約にシャーレがどのような影響をもたらすのか想像できない。
『ですから、せめて条約が無事締結されるまでは、私たち風紀委員の庇護下に先生をお迎えさせていただきたいと考えていました。ついでに、居合わせた不良生徒たちも処理した上で…といった形で』
「………」
『なのに、まさか亡霊と鉢合わせてしまうだなんて。予想外にもほどがあります。ですので今回は、大人しく撤退させていただきます』
「「「「!?」」」」
これほどの横暴をしておいて潔く引き下がるアコに、彼女たちは驚愕する。アビドスたちに関しては、そのあまりの身勝手さに怒りすら覚えている。
「随分と諦めがいいんだね。あんたらしくない」
『流石にこの戦力でムクロさんを相手するほど私も驕ってはいませんよ』
淡々と返すアコだが、その様子にはどこか焦燥感が見える。
『今はそれより、ヒナ委員長がお戻りになる前に――』
『私が、何?』
アコの言葉に何者かの冷たい声が重なる。
『……え?』
本来ここにいるはずのない声に、アコの体は凍り付いたように硬直する。
突然現れたその声に皆が戸惑う中、禍々しささえ感じる4本の大きな角を頭から生やした少女がホログラムでその場に現れる。
『ひ、ヒナ委員長!?』
思考が現実に追い付いたアコが愕然とした声を上げる。
ゲヘナ風紀委員会の委員長の空崎ヒナが、アビドスと風紀委員、そして便利屋68の前に姿を現した。映像越しでも分かるほどの威圧感にアビドスの者たちは思わず息を飲む。
『い、委員長がどうしてこんな時間に……?』
『アコ、今どこ?』
『わ、私ですか?私は…その、えっと、げ、ゲヘナ近郊の市内の辺りです!風紀委員のメンバーとパトロールを……』
「思いっきり嘘じゃん!」
「やっぱり、行政官の独断行動だったみたいですね……」
痛い所を突かれて分かりやすくアコは狼狽する。苦しい言い訳をする彼女はなんとか自分への追及を躱そうと逆にヒナに尋ねた。
『そ、それより委員長はどうしてこんな時間に…出張中だったのでは?』
『さっき帰って来た』
『そ、そうでしたか……!その、私、今すぐ迅速に処理しなくてはいけない用事がありまして…後ほどまたご連絡いたします!い、今はちょっと立て込んでいまして……!』
『立て込んでる……?パトロール中なのに珍しい、何かあったの?』
『え?え、その……それは……』
必死に誤魔化していくも、追い詰められるように段々と言葉尻が弱くなっていくアコ。そこに、またも横槍の声が。
「他の学園の自治区で、委員会のメンバーを独断で運用しないといけないようなことが?」
『……え?』
通信機を介したものではない肉声がアビドス生たちの耳朶を打つ。それを聞いた者たちが戸惑うのも束の間、ホログラムと全く同じ姿の者――ヒナが紫色の瞳を鋭くさせながらアビドスたちの前に現れた。
『……え、ええええっ!?』
「…アコ、この状況、ちゃんと説明してもらえるかしら」
ちょっと長くなったので今回も2回に分けて投稿します