アキラに全部盗まれる一般通過ヴァルキューレ生徒の話 作:はと×4
拙い文章ですが楽しんでくれたら幸いです。
(あとアキラの小説少ないから頭いいひと書いて)
「てめェッ!!待ちやがれ!!」
───現在、トリニティ総合学園校区内メイン──リート上空にて、ヴァルキューレ警察学校、怪盗課所属──メ──巡査長が慈愛の怪─と交戦中、至急、動け──は応援へ───
通信距離に特化した通信媒体から、垂れ流しに音が流れるのが聞こえる。
少しノイズが入っているが、妨害電波の張り巡らされたこの中でもこれだけ聞こえるのだから、かなり精巧な方だろう。
ただ、そんなことがどうでもよくなるくらい、今は緊迫した状況であった。
「クソッ、毎度思うが…速すぎだろ、アイツ……!」
「ふふっ………。そんなこと言いながら、着いて来れるあなたも私のことを言えないですよ?」
慈愛の怪盗。この学園都市キヴォトスにて最も危険度の高い囚人を指す「七囚人」の一人であり、厄介さで言えば七囚人上位に食い込むであろう存在。
そして、そんなヤツと俺は、
さらに舞台は公園なんて甘っちょろいものではなく、時にはビルの上を飛びまわり、時には空を駆ける。
ボフンッ
「ッチ、また煙幕かよ!どこにそんな
あと少しで追い込めそうになったとたん、煙幕を投げられた。恐らく今日の鬼ごっこで5回目だ。
毎度思うが、盗んだ品を持ちつつあのスタイリッシュな服のどこにそんなものを仕込んでいるのか。
「おや、まさかこんな時にスタイルを褒められるとは……少し照れますね」
「褒めてねえよ!?というかナチュラルに心を読むんじゃねえ!」
完全に掌の上で踊らされている……。
───こちら
───こちらヴァルキ───管──こ─伝─妨害──わせてい───
「クソッ、使えねぇじゃねぇかッ」
俺の心音は徐々に余裕をなくしているのに対して、アイツはまだまだ俺をおちょくる余裕がある。その上、ここはビルの上で増援も見込めない。
このままじゃジリ貧だ。
「しょうがねぇなぁ……ッ!!」
神秘を一気に足にためる。足をばねのように使って加速する。
これで一気に距離を詰めて───
「よしッ」
手錠を慈愛の怪盗の片手に掛ける。
「ふふ、以前よりかなり速くなりましたね、努力の賜物、ということでしょうか」
「ただ────
スパ、という音と共に手錠の鎖部分が切れた。完全に手錠は左右に分割され、意味をなさなくなった。
「もう少しこの時間を楽しみたいところですが……潮時ですね」
「お次は、私を捕まえられることを期待していますよ………それでは、おやすみなさい、良い夜を」
そう言って、慈愛の怪盗はビルの隙間にあるほんのわずかな夜の闇に消えていった。
そんな姿に、寂寥と安堵を覚える自分が居た。
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「……で、今日も逃げられた……と」
「ウッ……」
ところ変わって、小さな居酒屋”風”(ここ大事)飲食店で、同僚と飲んでいた*1。
「いや、別に、私も誰も、お前のことを責めてるわけじゃない。むしろ、キミの働きには日ごろ感謝しているんだ。ただ、日々の通常業務に加えて奴の予告状の解読、追跡を一人で行うのは酷じゃないか?」
そう言葉を紡ぐのは、ヴァルキューレの局長、尾刃カンナ。少し大きめの耳に、こちらをにらんでいるのではないかという錯覚を起こすほど鋭い目つきと狂犬を思わせるギザ歯が特徴的な人物だ。彼女とはヴァルキューレ入学以来の付き合いで、時々このように飲みに来る*2のである。
「ウチの部署の事情知ってて言ってる?それ。その事情のせいで、異動してきた人たちは皆すぐに辞めてくんだよ」
そう、ウチの部署である怪盗課は、その多忙さとやりがいをほとんど感じられないせいで異動してきた人が一瞬で辞職していくのである。
慈愛の怪盗の出す予告状は解読がとても困難だ。それこそヴァルキューレの入学試験なんかとは全く別ベクトルの。この学校の生徒は賢い。しかし、あくまで『勉強ができる』だけであり、『頭がいい』という訳ではない。もちろん、例外もいるが、そういうやつは大体
さらにそれに加え、慈愛の怪盗が全く捕まえられない。そもそも
そんな感じで、いつの日か『
「それに関しては、本当に申し訳ないと思っている……私も上層に掛け合ってはいるのだが……なかなか話を聞いてもらえなくてな」
「いやいや、こちらも無茶を言っているのは分かっている。噂も、我ながらその通りだと思うしな。怪盗課で慈愛の怪盗を追うのは、俺だけでいい」
「……まぁ、今は忘れて、ぱぁーっと飲もうや」
「…………あぁ」
そう、慈愛の怪盗を追うのは、俺だけでいい。
俺だけで。
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ここは、微睡の中。
恐らくあの後家に帰って、すぐ寝てしまったのだろう。
つまりは夢の中。こんなとき、決まってみる夢がある。
それは、正真正銘の
ガチャンと牢屋のカギが開けられる。
そしてそのまま、扉を開けたままにした。
『慈愛の怪盗、テメェは今日で釈放だ』
異様な光景だ。無論、釈放されることはなんら変哲もないことだが、異常なのは、解放される人間である。それは、キヴォトスにおける最大の犯罪者である七囚人のひとり、慈愛の怪盗であった。
『ふむ、唐突ですね、昨日は私のことを『誰が一生ここから出すかよ』と言っていたのに』
慈愛の怪盗が釈放されるという事実は、慈愛の怪盗本人であっても、異様なことに思えた。
『
紬野メグルから放たれる言葉は、にわかには信じがたいことばかり。最初から最後まで不可解な点ばかりだ。
現にそれを聞いた慈愛の怪盗も、全くもって信じられないといったような感じで立ち尽くしている。
『それは外の様子を見ればわかる。慈愛の怪盗、着いてこい』
紬野メグルと慈愛の怪盗は牢から出て、その足を外の玄関に進めていった。
そして矯正局の入り口、その堅い扉を開けた先に見えた景色に、慈愛の怪盗の息を飲む音が聞こえた。
赤い。
空が、世界が、そのすべてが。
ところどころ、地面に何かの血がこべりついていた。
『昨日は何にもないただの平日だ。強いて言えばトリニティとゲヘナの間でエデン条約が結ばれたらしいが、それ以外に目立った事件は無い。そして昼15時ほど、急に空が赤くなり始めた。夕日をうけて光るようなきれいな赤じゃなく、人の血液のようなむごい赤だ。』
『ッ………、』
さすがにあの慈愛の怪盗も、一日にして世界が滅べば、言葉も詰まるらしい。あの余裕綽々な笑みも、今は
『それで、あそこに見える禍々しい塔に近づくと、精神汚染を受けるらしくてな。ここも次期にその範囲内になる。っつーワケで、テメェを釈放する。あとは精々生きるなりなんなりすると良い』
淡々と告げる。慈愛の怪盗は、その事実を未だ呑み込めていないようだ。
『キヴォトスがこの先どうなるか知らねぇが、──慈愛の怪盗、テメェの好きにすると良い。どの道、全部終わりそうだけどな』
慈愛の怪盗は、いつもとは想像もできないような呆け顔で、こちらを見る。
『あなたは………この先、どうするつもりでしょうか?』
尋ねられた。しかし、返答に困るな。
『どうする、と言われても……な。正直俺は、やることがねぇんだ。ヴァルキューレは無くなったし……まぁ、最後の方まで、警官らしくこの世界をパトロールしようかな』
ほう?と慈愛の怪盗が呟く。その目は、興味津々と言った様子で、こちらを見ている。
『この様子では、守る市民もいないかもしれないというのに?』
『……そうだ』
『俺には、それ以外ない。
『……そう…ですか……』
慈愛の怪盗は小さくそう呟くと、いつもの仮面を取り出して、装着した。
『じゃあな、慈愛の怪盗。また会う……かどうかは、分からんが』
『あぁ。……それでは、さようなら』
静かに飛び上がり、道を駆けていく。時々高所に飛び移ったりして、どこか遠くへ駆けていった。
……いつものような
アイツと別れて、数日。インフラが死んだコンビニで、俺は食料を調達していた。
あの不気味な塔の勢力は依然力を増していて、この世の終わりを想像させる。
どうしてこうなってしまったか。正直俺によくわからない。そして、それが俺程度の力ではどうにもならないことだけが、理解できる。
同僚は、どうなっただろうか。あの日、トリニティへエデン条約の締結会場の警備に行った彼女は、あの日から見ていない。
後輩は、どうなっただろうか。一人二人、俺に対して好感を持ってくれていた物好きがいたがどうなったのだろうか。ドーナツを見て、ふと思った。
先生は、どうなっただろうか。一度だけ話をした、あの根っからの善人は、いったいどこに消えたのだろうか。
………慈愛の怪盗は、どうなったのだろうか。あの後、ヤツとは反対方向へ進んでしまったから、アイツの行方なんて知る由もない。
なんとなく、絶望を感じた。
背後に迫る"恐怖"が、自分を見てニタニタ笑っているような気がした。
パトロールは続く。自分が朽ち果てるまで。
見回りを続ける。恐怖に負けないように。目をそらさないように。
此処の所、誰も人をみていない。あれほどいた獣人も、セールスがうるさかった機械人も、全くもって姿を見ない。
恐怖に吞まれそうだ。ここ数日、人と話していないのも相まって、かなり気が参っていた。
こんなことなら、慈愛の怪盗を解放しなければ、一人にならなかったかもしれない。
『はぁ………クソっ』
自然と苛立ちが芽生えた。
『うッ………おぇッ』
飲んでいた飲み物を、吐き出した。
それは白かった。下っ端の時、同僚と張り込み捜査に出たときにドラマに憧れて買ったものだった。
『おぇッ……ゲホッ』
そんなことを思い出したら、
クソまずい。電気配線の死んだ冷蔵スペースにあったからか、とっくに腐っていたのかもしれない。
やけくそになって、固形物の方を口に詰めた。こちらは保存料が効いているからか、味は保たれている。
クソまずかった。
何もかも、クソまずくてやってられない。心理的状況が体に与える影響は、思ったより強いらしかった。
さぁ、エネルギー補給も済んだことだし、パトロールを再開───『やぁ、』
ヒュッ、と息が詰まる音がした。聞きなれた声。軽やかな足取りは、1dBたりとも音を出さない。
『慈愛の怪盗、か。久しぶりだな』
『あぁ。久しぶり…です。数日ぶり、と言ったところでしょうか?』
これだ。と思った。あの余裕のあるような笑み。そしてすべてが白でそろえられた体。
以前はうざったく思っていたその姿に、どうしようもなく安心する自分がいた。
『なんで、テメェがここにいる。まさか、自分から捕まりに来たのか?』
『ふふふ、いいですね、その生意気さ。正気に戻る気がします』
どうやら、彼女もまた、参っているらしかった。
『あなたのことですから、案外生き残っているんじゃないかと思いまして。この数日、そこら中を見て回りましたが、
『気が合うな。俺も、正直退屈してたんだ。生存者も、何かの事件もない。気が狂いそうだぜ』
『ふふ、あなたに、一つ提案です。ここで一旦私を捕まえて終末旅行と洒落みませんか?』
なるほど、そう来たか。
彼女は今から、俺とパトロールに出かけたいらしい。一人が散々なのは、お互い様なのだ。
『何もないな』
『えぇ、そうですね』
短い会話。それでも、幾分か気が紛れた。
『私がなぜ、宝を盗むか、あなたに話したことがありましたっけ?』
『いや、ないな』
『この際、暇つぶしに話してしまいましょう。私は、"美術品は人の目に触れてこそ価値がある"と考えているのです』
『ほう?なら美術館から作品を盗む場合はどんな理屈で盗みをしてるんだ?』
『それは"美術品が個人の元にだけ存在するのは気に入らない"からです。私が盗みを行った作品流れを調べれば、それが不正に取引されたものだと分かるはずですよ』
なるほど、とシンプルに思った。確かに彼女の言っていることは正しい。彼女に盗まれたものがある人や団体は、人には見せられない側面があることが多くある。それは、ヴァルキューレ時代に気付いたことだ。
『これを聞いて、あなたは私をどうしますか?くだらない偽善だと蔑みますか?盗みの正当化だと罵りますか?それとも───『どうでもいいな』
慈愛の怪盗は、少し驚いたような顔をする。
『聞いといてなんだが、俺はテメェの美学がどうであろうと関係ない。俺は警官だ。だからテメェが罪を侵せば、なんであろうと
それを聞いた慈愛の怪盗は、こらえきれないといった様子で、笑いだした。
『ふふ、ふふふふふふふッ』
『なんだよ、気持ちわりィ』
『──キラ』
『は?』
『清澄アキラ。私の名です。これからは、そう呼んでください。そして』
アキラは、徐にナイフを取り出すと、首に押し当てた。
『おいッ、馬鹿ッ、何やってる!!』
『今世で、最後の盗みを働くとします。予告状はありませんが────それは些細な問題です』
『今まで、沢山の物を盗んできましたが、それらはすべて私の信条に従って盗んできたものです。ですから今まで私が本心から欲しいと思うものは見たことがありませんでした。ですが………今、見つかったのです』
慈愛の怪盗──清澄アキラは、ゆっくりと言葉を発した。
『それは、あなた、です』
『あなたの心、だけではありません。その身体、神秘までも、盗んでやりたいのです』
『私が罪を犯せば、あなたは一生追いかけてくれるのですね?ならば、私は今から罪を犯します』
『あなたを置いて、先に逝く、という罪を』
狂気に溢れた顔だった。"恐怖"が溢れて止まらなかった。
『そうすれば、まずはあなたの心を。そうしてあなたが私を追えば、あなたの体と、神秘を盗むことができます』
『おいッ!!やめろッ!!!』
動悸が止まらない。体から嫌な汗がでる。
『以前から、あなたと対峙すると胸の中が妙に騒いでいたのです。その理由が、今、払拭できました。これは、衝動です。あなたを、全て盗みたいのだという、怪盗の……ね』
『アキラッッ!!!』
『あぁ、いいッ、いいですねぇ……その心、私が今から盗って差し上げますッ』
恐怖に呑まれたせいだ、正気を失ってる。ずいぶんと、狂っている。
『紬野メグルッ………!!』
恍惚とした笑みが見えた。それに俺は手を伸ばして──
『今。あなたの全てを、いただきに参ります』
ザシュ、
『あ…』
赤と、白のコントラストが妙に映えた。その満足げな顔も、生気を失いつつある。
赤い水が、あの白い髪に染みていく。
『あ…あぁ、………あ』
気付いたら俺は駆け出して、彼女の銃を銜えて引き金を引いた。
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朝。目が覚める。最悪の目覚めだ。
これほど夢見が悪いのも久しぶりである。
「……はぁ……」
前世の事。実に非科学的で、非現実的だ。
しかし、この夢も、今体中に走っている悪寒も、『これは現実だ』と言わんばかりに俺の心に侵食してくる。
体が重い。怖い。やめたい。そんな声に出すまでもないような弱音を、心の中に押し込める。正直、学校に行きたくない。今すぐにでもやめたい。
でも、もし今日学校に行かなかったら。もし現実から逃げたら。
もし慈愛の怪盗が、清澄アキラが、消え去ったら。置いて行かれたら。
そう思うと、震えが止まらなくなる。
あの純白を切り裂く赤と、あの恍惚とした顔に覗かれる気がした。
寒気が止まない。
学校に着けば、一通の電話が掛かって来た。
「慈愛の怪盗から予告状が───
吐きそうになる。こんな夢を見た日からアイツと会うなんて。
「てめェッ!!待ちやがれ!!」
デジャヴである。あの電話があったその夜、俺はまた慈愛の怪盗と鬼ごっこをしていた。
「今日こそッ、捕まえてやるよッ」
もう八つ当たりに近いだろう。あんな夢見させやがって。クソっ、責任取りやがれッ
神秘を足に籠め、一気に加速そしてそのまま両手に手錠を──────
慈愛の怪盗の片手に手錠が掛かる。
「その手は昨日みましたよ」
慈愛の怪盗が鎖を切り離そうとして、腕を曲げた。
「させるかッ」
加速のまま、慈愛の怪盗の前に回り込む。そしてそのままもう一つの手へと手錠を掛けようとして、
「ぐっ……!?」
「あっ!?」
慈愛の怪盗の腹に、神秘の籠った足が入ってしまった。
慈愛の怪盗はそのまま吹き飛ばされ、軽い体をビルの上で打ち付けた。
「……ッ頭が、この頭痛は、ただの脳震盪じゃ」
慈愛の怪盗は、俺の偶然当たってしまった蹴りを受けてうろたえていた。
そして体を地面に打ち付けた勢いでどこかを擦りむいたのだろう。所々血が出ていた。
…………血?
『今。あなたの全てを、いただきに参ります』
ザシュ、
あ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だッ
もうあんな思いなんて、恐怖に呑まれる思いなんてッ
怖い、恐ろしい。
綺麗な赤と白のコントラストが網膜に焼き付いている。
1人の世界で孤独に狂うのも、くそみたいなシュチュエーションでおいて行かれるのも。
「いや、いやだッ」
周りが見えなくなる。
すると、突然、身体が持ち上げられた。
見あげるとそこには、
「ふふふふふふふふふふふッ」
恍惚とした笑み。それは、俺を置いておく時のような。
「すべて、思い出しましたッ、あなたとの日々も、あなたへの予告もッ!まさか、盗むと言った私が忘れてしまうなんて、怪盗失格です」
今起こったのは、
一方、メグルの方は、
「いやッ、いやだッ、やめろッ」
幼児退行していた。単にトラウマが蘇ったのだろう。
「ふふふふふふふッ、以前した予告が、このような形で実現できるとは。ふふふ、少々下品ですが、笑みがこぼれてしまいますっ」
かたや幼児退行、かたや覚醒ヤンデレ。かなり、収拾がつかなくなってきた。
「それでは今から、あなたを盗ませていただきますねっ。とりあえず、アジトに連れて行かなければ♪」
慈愛の怪盗は、メグルを抱えて、そのまま夜の街に消えていった。
────────────────────────────────────────────
「んあ……?」
知らない天井だ。…これ一回言ってみたかったんだよね。
というか、ここどこ?
自室でもないし、学校でもない。本当に、ここはどこだろうか。
ふと、壁に掛けてある絵画に目を向けた。
むむ……何か見たことがあるような………ないような……
「やっと、目覚めましたか……」
向こうからやって来たのは、紛れもない、慈愛の怪盗。
「慈愛の怪盗、だなんて、冷めた名前で呼ばないでください。教えたでしょう?清澄アキラという名前を」
メグルは青ざめた。先ほどは思考が混濁して収拾がつかなかったが、何かの影響でアキラが記憶を取り戻したことを、今悟った。
「………まさか」
「そのまさか、です。私から"あなたを盗む"と言っておいて、まさか忘れてしまうとは。申し訳ない気持ちでいっぱいです」
「というわけで、そのお詫びとして、あなたの全て、ありとあらゆるものを──────
盗らせていただきますね♡
紬野メグル
本作のオリ主。前世からの記憶をなぜか持っている。
ヴァルキューレに尾刃カンナたちと同じ時期に入学した。
身体能力、学習能力共にエリートである。
前世でえぐい方法でアキラに置いて行かれており、白と赤のコントラストがトラウマ。
孤独だった時はアキラの存在がかなり支えになっており、だからこそアキラに強く出れない。
(アキラになされるがままなのは満更でもない)
清澄アキラ
本作のヒロイン。前世の記憶はなかったが、覚醒した。
本当に盗みたいもの()に気付いた。
絶対にオリ主盗むマン(男ではない)。
まさかの自分の死を以て盗みたいものを盗むというアグレッシブガール。