雨上がりの午後の、優しい光が差し込む静かなチャペル。
祭壇には、サクラが選んだ白いバラと、かすかに紫がかったライラックが飾られている。
その清楚な香りが、空間を満たしていた。
純白のウェディングドレスに身を包んだサクラは、少し緊張しながらも、ゆっくりとバージンロードを歩き始める。
柔らかな光が会場を包む。
一歩、また一歩と進むにつれて、これまでのシンとの日々が鮮やかに蘇ってくる。
初めて出会った時の、彼の冷たい眼差し。
任務で共闘するうちに感じ始めた、奥底に秘められた優しさ。
どれもこれも、彼だ。
言葉少なげながらも、いつもサクラを気遣ってくれる不器用な愛情。
いつしか二人の間に芽生え、深く根を下ろした、かけがえのない想い。
祭壇の前には、漆黒のタキシードに身を包んだシンが、少しだけ緊張した面持ちで立っている。
ふふ、と笑みが浮かぶ。
普段は感情を表に出さない彼だが、その瞳の奥には、深い愛情。
今日という日を迎えた喜びが、確かに宿っている。
神父の静かな声が、チャペルに響く。
サクラは、シンの隣に立ち、そっと彼の大きな手を取った。
その温かさが、不安を優しく包み込んでいく。
「あなたは、生涯、この人を愛し、敬い、慰め、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
神父の問いかけに、サクラは迷うことなく、シンの瞳をまっすぐに見つめて答えた。
「はい、誓います」
その力強い言葉に、シンの口元がかすかに緩んだ。
いつものニヒルなものとは違う。
「あなたは、生涯、この人を愛し、敬い、慰め、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」
今度はシンの番だ。
彼は、サクラの手をしっかりと握り返す。
低いけれど、力強い声で答えた。
「誓う」
指輪交換。
シンの少し骨ばった指に、サクラが選んだシンプルなプラチナのリングが嵌められる。
綺麗に通った。
サクラの細い指には、彼が大切そうに選んだ、一粒のダイヤモンドが輝くリングが嵌めらる。
その控えめな輝きは、シンの飾らない愛情を象徴しているようだった。
次は誓いのキス。
シンは、ゆっくりとサクラのヴェールを上げ、優しく唇を重ねる。
その瞬間、チャペルを包む光が、より一層温かく感じられた。
「シン……」
祝福の拍手が、静かなチャペルに響き渡る。
サクラは、隣に立つシンの腕にそっと抱きつく。
彼の温もりを感じながら、サクラは心の中で呟いた。
「ずっと、一緒にいよう」
と。
披露宴は、親密な人々だけを招いたもの。
温かい雰囲気の中で行われた。
部屋は、白いバラとライラックで統一され、シンプルながらも上品な空間を演出している。
白が似合う。
シンは、普段のクールな雰囲気から一転、少し照れながら。
サクラとの思い出や、これからの未来について、訥々と語り始めた。
その言葉一つひとつに、彼の深い愛情が滲み出ていて、サクラの胸は熱くなった。
ウェディングケーキ入刀。
「ハンターの仕事で手慣れてるな」
「シンこそ、滑らかだよ」
二人で仲良く、ナイフを入れた純白のケーキ。
これから始まる、二人の甘い生活を象徴しているようだった。
キャンドルサービスでは、一つ一つのテーブルの灯を二人で灯していく。
「シン、どう?疲れてない?」
「疲れてない。そっちそこ衣装替えしてるから疲れるだろ」
その優しい光は、二人の未来を明るく照らしているよう。
最後に、シンはサクラの手をしっかりと握り、真剣な眼差しで言った。
「今日から、お前は俺の全てだ。決して離さない。いいな?」
サクラは、溢れる涙を堪えながら、最高の笑顔で応えた。
「私も、シンのそばを離れない。永遠に、愛してる」
チャペルの外に出ると、雨上がりの空には、大きな虹がかかっていた。サクラは、シンの腕に抱きしめられる。
この上ない幸福感に包まれた。
朝の光が優しく差し込む寝室。
サクラはまだ眠っていて、隣にはシンの温もりが残っている。
「ん」
彼はもう起きて、静かに身支度を済ませているらしい。
時折聞こえる微かな物音で、ゆっくりと目を覚ます。
「おはよう」
低く優しい声が耳元で囁かれ、サクラは幸せな寝返りを打つ。
シンの顔は穏やかで、少し眠そうなサクラの目元を優しく見つめる。
「おはよう、シン」
彼の腕の中に潜り込み、もう一度温もりを感じる。
二人だけの静かな朝の始まりだ。
今日の朝食は何にしようか。
パンを焼く甘い香り。
淹れたてのコーヒーの、豊かな香り。
ベッドから起きて、お互いの寝癖を治す。
二人でキッチンに立ち、他愛ない話をしながら準備をする時間は、何よりも穏やかで幸せなひととき。
ジャムをぺたっと、鼻につけられたので、お返しに目元に塗った。
「おれのアイシャドウは、きっと甘いぞ?」
「ふふっ!」
シンは意外にも手際が良く、サクラが少し苦手な卵料理。
彼にかかれば、あっという間に美味しい一品になる。
「おかわりは?」
「お腹いっぱい!」
食事が済むと、庭の手入れをするのが二人の日課。
暗点のボスとして活動していた彼の行動はさらに、地面に潜るようにわからなくなるだろう。
サクラが、育てたいと言った色とりどりの花たちは、シンの手によって大切に育てられている。
「あの竜の骨を一部、持って帰ってここに埋めてあげたい」
「そうか?どちらでもいい」
昔、二人で行った古城の花畑のようにするのだと張り切っていた。
土に触れる感触、草花の香り。
二人で並んで作業をする、静かな時間。
時折、シンが不器用ながらも花の名前を尋ねてくるのが、サクラには愛おしくてたまらない。
「赤い花にしないの?」
「摘む時に変化させる。赤色にしておくぜ?」
午後は、リビングのソファーで二人で過ごすことが多い。
サクラは本を読み、シンは静かに仕事をしているか、窓の外を眺めている。
「眠いか」
「まだ、平気」
言葉はなくとも、お互いの存在を感じられるだけで心が安らぐ。
時折、シンがふと顔を上げ、サクラの髪を優しく梳く仕草に、深い愛情を感じる。
「この家、いいね」
「そうだろ」
夕食の支度は、二人の共同作業。
献立を相談したり、一緒に食材を切ったり。
シンは料理の腕もなかなかで、特にサクラが好きな煮込み料理は彼の得意とするところ。
温かい料理を二人で囲み、今日あったことを話す時間は、何よりも大切。
「ハンターは続けさせてくれるなんてね」
「まだ、知りたいことがあるんだろ」
夜は、二人で星空を眺めることも。
静かな夜空に輝く星たちは、まるで二人の未来を照らしているようで。
シンの大きな手に包まれながら、サクラは永遠の愛を誓う。
「夫婦ってまだ照れるね」
「そうか?おれとしては、今更だな」
暗点のボスの顔を持つ彼とは違う、穏やかで優しいシンとの日常。
それは、ささやかだけれど何よりもかけがえのない。
「今度、夫婦としてテーマパークに行かない?」
「いいぞ。やつらに用意させておく」
温かい愛をシンに知ってほしい。