贖罪の道
あの場所で、静かに上った朝日をその目に焼き付けながら──
彼は死んだはずだった。
○月▽日 天候 晴れ
ここに来て早数か月が経った。
その数か月間は忙しく、これを書いている暇がなかったから漸く余裕が出来たといった所だ。
逆に言えば、余裕がない程に忙しくしていたからこそ余計な事を考えずに済んだのだろう。
こうしてペンを握って文を綴っていれば、嫌でも思い出す。
あの時、あの場所で死んだはずの自分がどうして此処に居るのか。
結核を患い、罪を自覚し、善い行いをしてきたとしても全てが許される訳じゃなく、残り僅かな命を贖罪に使って来たと言えど、自分みたいなやつが死んだ先に行くのは地獄の筈だ。
それがどうだろうか。死んだと思っていたのに感覚があって、目を開けたら訳の分からない所に居て、銃弾一発じゃ死なない天使の輪っかの様なものを浮かべた子供たちが当たり前の様に銃を所持していて、自分はこうしてどことなく西部の雰囲気を感じさせる所で農場をやっている。
嘘の様な話だが、全部事実であって自分がそれを経験しているのだから嘘の言いようもない。
加えて今は運に恵まれているんだろう。近所の学校に通っている彼女らは馬の世話をしてくれるし、こんな無愛想の自分にも良くしてくれる。機械仕掛けの大人?みたいな奴らやライオンや猫が服を着て人間の様に歩き、人間の様に喋っている奴らもこんな見ず知らずの自分に良くしてくれているのだから。
…逃がしたアイツはどうしているのだろうか。無事妻と息子に再会する事が出来たのだろうか。
アイツの為に手助けしてくれた彼女たちも無事あの場所から逃げて、何処かで幸せに過ごせているのだろうか。
おかしくなっていくあの中で、先に逃げ出した奴らも無事なんだろうか。
裏切り者のアイツのその後はどうでも良いが、他のギャングのメンバーはどうしているんだろうか。
その答えを聞く事なんて此処からでは、今の俺では出来る筈もないと言うのに。
ただ、それだけが無性に気になって仕方がない。
此処は巨大学園都市「キヴォトス」。
数千にも上る学園が存在し、それぞれが自治区を運営。
学生が行政を営み、その歳に見合わない責任を背負いながらも日常と銃撃戦を繰り返していく。
そんな都市に、青空と自然、草木とそよ風が広がる場所が一つ。
三大学園の周囲に広がる様な町並みは存在せず、正しく田舎とも言える様な所。
学園とも言える場所も存在するが、数千はある学園の一つであり、所謂無名校。
そんな無名校から少し離れた所に、ぽつんと存在する農場がある。
一戸建ての木造建築の家。その周囲には鶏舎や放牧地があり、牛や馬を数頭飼っている。
土地的にもそれなりに広い方であり、それをとある人物がたった一人で管理しているというのだ。
その人物を知る者達から見て、その人物の印象に対してこの様な声上がっていた。
『何処か不機嫌そうで無愛想な人、服装もガンマンみたいな格好をしている』
『どちらかと言えば不器用な人。それでも根は良い人で、手助けをしてくれる』
『サブマシンガンとかアサルトライフルとか大して珍しくないのに、それを見た時は凄く驚いていた』
『あまり都市部の方とかには行きたがらない。嫌なものを受けずにいいとか』
『動物の中で馬が好きなのか、飼育している馬を撫でている姿は凄く優しい顔をしていた』
そして全員が口をそろえて、その人物の事をこう言う──
『多分キヴォトスの外から来た大人の男性。何となくだけど、偽名を使っている』
その彼の名前は──
タキトゥス・キルゴア。
本名、アーサー・モーガン。
1899年 アメリカ。無法者とギャングの時代が終わりを迎え、文明社会が迫る中──
自身が犯した罪を意識し、不治の病に身を侵されながらも──
贖罪の道を歩み、そして死んだ筈の男である。
どうも皆さん。知っている方はお久しぶりです。
RDR2の二週目をクリアして、思わず書いてしまったという所業でございます。
ブルアカ、やっている訳でもない。でも書いてみたい…。だって、彼にはのんびり静かに生きて欲しかったから…。
そんな欲望に負けてしまったのです。
とは言いつつも少しずつ勉強しながら、ちょいちょい書いてみようかとは思っています。
キャラの表現力が薄っぺら所とか確実にあるとは思うので、何卒ご容赦を。