Blue Redemption   作:白黒モンブラン

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素顔と仮面は表裏一体 その3

 沖河スズキというカイナ農場学園の生徒とタキトゥスが出会った一方で、生徒会室ではかつてハクタクが所属していた『キヴォトス監査局第13監査課』に関する話へと移行していた。

とは言え、そんな組織があった事すら知る筈もないハヅキやセツラ、便利屋68の面々はどう反応すべきかと戸惑って表情を見せており、それに気づいたヒナが答えた。

 

「キヴォトス監査局第13監査課…分かりやすく言えば諜報機関ね。ただ、その組織に関する情報は一部しか明らかになっていない。行動目的、活動拠点、構成人数等は不明。誰一人、その全貌を知ることもなく、数年前に知らないうちに消失した組織…の筈だけど、あなたがこうしているという事は組織は今でも行動しているの?」

 

「いいえ、そちらの知っての通り、組織は消失…いえ、自ら解散したというのが正しいでしょうな」

 

全貌が明らかになっていない諜報機関。

そんな組織に属していたという驚きでしかないが、ふと気になったことがあったのかハクタクとヒナとの会話が始まってから静観を貫いていたハヅキが初めて口を開いた。

 

「流石に誰一人とて全貌を知ることはなかったというのは大げさにも思えますが」

 

「いいえ、大げさではないわ。正直今でも組織の事を調べようとしても、キヴォトス監査局第13監査課に関する新しい情報は一向に出てこない。それでこそマコトが持つ独自の情報網や情報部が総力を尽くしても、何も得られなかったくらいにキヴォトス監査局第13監査課に関する情報は少ない」

 

「…となると連邦生徒会でも?」

 

「恐らくね。風の噂だと、その当時の連邦生徒会も第13監査課を自身の下に置く為に情報を得ようとして躍起になっていた程。それでも第13監査課に関する情報は得られなかった。それでこそ全く、と言っていいほどに」

 

そこまで言わせるほどの組織があったという事実。

このキヴォトスで十数年しか生きていないハヅキは、知らないことがまだまだあるのですねと胸の内で呟く。

そして話の端折るような行いに対し、一つ詫びを入れると視線を飛ばして会話の続きを促した。

 

「キヴォトス監査局第13監査課は、元々は組織として動いていた訳ではないのです。何処かの地区…それでこそ田舎の様に、のんびりとした平和な地区に住む者たちが、たった一つの志を胸に集った…一般市民で創立された組織。当初は第13地区自警団という名で動いていたのですよ」

 

「自警団?今とは随分と活動目的が違う様にも感じられるけど」

 

「そうですな。当時の組織の活動目的は主に警邏が多かったです。…ただ、それだけでは子供たちや友人、隣人、愛する者を守る事は出来なかった」

 

「と、言うと…?」

 

「…銃や刃物を使った暴力を未然に防ぐ事が出来たとしても、権力や金などといった企業の持つ暴力には警邏など何ら意味を為さなかった。それを知った時、我々は警邏から監査へと進路を変えた」

 

そこからでしょうか、とハクタクは下げていた顔を上げて暗くなりつつも僅かにその色を残したオレンジ色の空は窓越しから見つめた。

何かを思い出すかのように、彼は静かに語っていく。

 

「各々が表の顔を持ちながら、裏では諜報活動に勤しむ…。時間をかかった分、その成果は企業を丸ごと崩壊へと追い込む事が出来た。そうする事で自分たちが守りたいものを守る事が出来た。しかし悪徳企業の力はキヴォトスの奥深くまで根付いていた。それはこの先の未来を創るであろう子供達にまで、その手は伸びておりました」

 

「搾取され、虐げられ、奪われていく。やがてそれは大人に対する不信感や憎悪を増長させる…。このキヴォトスに広がる透き通る空の様に、この先を生きるであろう子供たちの未来を、青春を守りたかったのです」

 

「その為には善人という皮をかぶり、そして罪という物に手を染めていきました。見知らぬ誰かを守るためならば、子供たちが幸せを譲受し、青春を満喫していけるのであれば、我々の行いは知られなくてもいいと」

 

「誰かを傷つける企業や犯罪組織の行動を観測し、被害が拡大する前に監査を行う。得られた情報を元手に、対象を崩壊させる。そうする事で顔も名も知らぬ誰かを守る事が出来たのです。やがて組織は大きくなり、名をキヴォトス監査局第13監査に変更。その活動範囲はさらに広くなり、古参を含めた構成員にはトランプの役に乗っ取り、キング、クイーン、ジャック、エース、ジョーカー、ハート、クローバー、スペード、ダイヤの役を与えました。基本的な所は同じですが、それぞれに与えられた役割が異なるのが特徴でした」

 

「それからはと言うものの我々は不正や犯罪を行う企業や組織を対象に行動を起こしていきました。一つ、また一つとそれらは潰れていった。だが、我々の行動が守るための行いから、破壊だけを繰り返す行いにへとなっていたのです」

 

「本当にそうなのか…その真意を見極める事もなく犯罪とは関係のない企業を倒産させようとしたり、善良な組織を壊滅に追いやろうなどといった事が多くなったのです。その根底にあったのは、支配欲でした」

 

「自分たちが動けば幾多の企業や組織が恐れ慄く。裏でこのキヴォトスというのを操っているという優越感。守るという事から奪うようになり…そして構成員の一部からは学園も監査対象にすべきといった声が上がったのです。その理由は定かではありませんが…その者は常日頃からこのような事を言っていたのです。自分たちが動いているのに、それも知らずにのうのうと過ごし、あまつさえは大人というのを見下している。そんな奴らは間引いてやった方がこの世界の為だと」

 

「最初に志したものは、最早影も形も残っていなかった。それは組織の存続は不可であることを意味していました。そのことは殆どの構成員がそれを感じていた為、解散は時間の問題とも言えました。また同時に連邦生徒会が行動を起こしたという情報に加えて、学園、企業といった多くの勢力が我々を探しているという情報を入手し、事が大きくなる前にキヴォトス監査局第13監査課は自主解散を宣言。スムーズに行われた解散に伴い、構成員は各方面へと散っていき、かつての職を隠し、元の姿へと戻るようにひっそりと生き…そして今に至るのです」

 

長い様で、短い様で。

どちらなのか分からないと感じてしまう様な、ハクタクの独白は静かに終わった。

只々、見知らぬ誰かを、友人を、隣人を、愛する者たちを、未来を創るであろう子供たちを守りたいという願いから集った者達から作り上げられた小さな自警団から始まった誰も知らぬ物語。

守るから奪う事になってしまった時、組織に属していたという当時のハクタクは何を思っていたのだろうか。

その胸の内に抱えた感情に加えて、解散に至った時はどのように感じたのか。

しかし誰もそれを問う事はしなかった。無論それはキヴォトス監査局第13監査課という組織を知るヒナですら問う事を遠慮した。

聞きたい事は山ほどあれど、今はそうするべきではない。そんな感情が胸の内で宿っていたのだから。

 

「…少々話が長くなってしまいましたの。老人の長話に付き合わせて大変申し訳ございません」

 

「気にしないで。…ただ一つだけ聞いていい?」

 

「何なりと」

 

「…ジョーカーの役目は何だったのか聞いていい?」

 

こればかりは聞きたい事であった。

先ほどの話を聞き、あまり深く問うのを遠慮した上で、それでも聞きたかった事。

だからといってそれを学園に持ち込む気など彼女にはない。この問いは単なる興味でしかなかった。

 

「ジョーカーは所謂切り札ともいえる存在。役を作るにおいて、そのカードは何にでもなることができる。…それが分かればキヴォトス監査局第13監査課におけるジョーカーの役目が何なのか、自ずと見てくることでしょう」

 

「…そう。であれば、いつの日かにその答えを聞かせてあげるわ」

 

「ほほっ…楽しみにしておりますとも」

 

独白を終え、ちょっとした質疑が終わった時だった。

夜の帳が落ち、カイナ農場学園およびカイナ地区は静かな夜に包まれようとしていた。




というわけでハクタクさんの裏、キヴォトス監査局第13監査課に関して説明させていただきました。
とはいえ、色々抜けてます。まぁ敢えてなのですが。


次回はタキトゥスとスズキかなぁ…?

では次回ノシ
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