Blue Redemption   作:白黒モンブラン

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悪意に狙われた天使

翌日。

便利屋とヒナをハクタクに託して、タキトゥスは街にある大きな病院へと向かっていた。

目的は、あの館で救出したトリニティの生徒から今回の事件の黒幕とハルノの情報を聞き出すため。

前日の夜にハクタクから少女への面会は可能であるという情報を得た事もあって、早速行動を起こしていたのだ。

流石に馬に乗って街中を移動する訳にも行かず、またこの情報を同じくハクタクから得たハヅキの命によってクロカとスズキがタキトゥスの付き添いとして同行していた。

 

「学校があるというのに悪いな、二人とも」

 

学園から持ち出したトラックをクロカが運転するその隣でタキトゥスは二人の学生としての本分である学業を邪魔したことに詫びを入れた。

こんな事がなければ今頃友人らと勉学や実習に励んでいるはずなのだ。

今更かも知れないがその点に関してはタキトゥスとて引け目を感じずにはいられなかった。

 

「気にしないで下さい、タキトゥスさん。自分から名乗り出たのです、貴方が負い目を感じる事はありませんわ」

 

「自分も名乗り出た身だから、気にしなくていいわ。それに言われなかったら勝手に動いていたとは思うけど」

 

スズキのセリフに、だろうなとクロカとタキトゥスは胸の内で頷く。

理由はハルノの捜索であるとはいえ、誰にも告げずに地区外に出ていたのだ。

そういった点では自由奔放とも言えるのかもしれないだろう。

 

「それでこれから会うのは、クロカたちが襲撃した際に助けたトリニティの生徒なんでしょ?」

 

「そうですが…何か気になる事でも?スズキ先輩」

 

「いや…襲撃を受けることを知っていて誘拐した生徒全員を別の所に移動するだけの時間はあった筈なのにどうしてトリニティの生徒を置いていったのかが気になって」

 

「言われてみれば…確かに」

 

その話を聞いていたタキトゥスも確かにと思う。

何故あの時、あの連中はトリニティの生徒だけをあの場に残したのか?

匿名からの情報で襲撃を知っていたにも関わらずだ。

 

「それもトリニティの生徒に聞いてみるしか無いな。ここで考えた所で何も出てこないだろう」

 

「…それもそうね」

 

考えた所で何か分かる訳でもない。

それにその答えとやらを知る為に今は情報がいる。

 

(…ここでハルノに繋がる情報が得られなければ──)

 

本当の意味で、ハルノを救えなくなる。

病院へと向かうトラックの中でタキトゥスの胸中は決して穏やかではなかった。

 

 

病院に到着した一行は入院しているトリニティの生徒への面会の取り次ぎを受付で済ませてた後に、その人物がいるであろう病室の前へと来ていた。

ハクタクからの事前情報では容体は安定しており、受け答えも可能。また事件に関しての話を聞きたいという話を通したところ、了承してくれた事もあって面会までに持っていくのは比較的簡単であったらしい。

とは言え、受付からは体の方は快調に向かっているが精神面で完全とは言えない為、刺激を与えるような質問は控える様に釘を刺されたのはついさっきの話だったりもする。

 

(そうも言っていられんのも事実だがな…)

 

受け付から言われた事を頭の中で思い出しつつも、それに対する思いを胸の内で呟くタキトゥス。

ここで情報が途絶えるようであれば、もう成す術はない。

それだけはどうして避けたい事でもあるのだ。

 

(二人に合わせた方が良いかもしれん)

 

心のない大人たちによって犯罪に巻き込まれたのだ。

そう言った意味では、トリニティの生徒にとって大人という存在は恐怖の対象になっている可能性も大いにある。

情報を聞き出すのはクロカかスズキに任せて、自身はフォローに回った方が良いと考えるタキトゥスの傍でクロカが病室のドアをノックした。

 

「どうぞ」

 

中から声は響く。

失礼しますとクロカが部屋の中へと入り、二人はお互いに頷き合うと部屋の中へと足を踏み入れる。

ベッドに床頭台、ロッカー、テレビ。

個人用として宛がわれているのか、この病室にトリニティの少女以外の患者の姿はない。

そしてそのベッドには病衣を纏い上半身を起こしたまま三人を迎えるトリニティの少女の姿があった。

助けた時と比べて顔色は良く、やや痩せこけていた頬もすっかり元の状態へと戻っている。

その姿にタキトゥスは安堵した。事前に聞いていたとは言え、目にしてしまえば安心するというものである。

 

「あの時の…確かカイナ農場学園の…」

 

「はい、私は落合クロカと申します。後ろにはいるのは沖河スズキさん、もう一人の男性がタキトゥス・キルゴアさん。今回は面会に応じて頂き、誠に感謝申し上げます」

 

「いえ、とんでもない。私はトリニティ総合学園一年、錦戸(にしきど)ミレイと言います。こちらこそ助けていただき有難うございます」

 

(驚いたな…クロカよりも年下か。てっきり同年代かと思っていたが…)

 

一年生であると明かしたミレイにタキトゥスは驚きを覚える。

一年生となると年齢からして大体16歳ぐらいであり、その歳だとまだまだ子供らしさが残る年頃だ。

しかしミレイからはそういった子供らしさが見受けられなかった。

 

(…()()()と言い、このミレイと言い…キヴォトスの学生は大人顔負けな性格が多いんだ?)

 

ふと思い出すは、カイナ農場学園に通う生徒でミレイと同じく一年生の少女。

善良で、明るく心優しい所はハルノと同じだが、同時にハルノには無い聖母の様な一面を持ち合わせた人物。

大人のタキトゥスが、ある意味で危険な少女と称してしまう程にその生徒は実に魅力的なのだ。

そんな事を思っているとクロカとミレイの会話は事件に関する話へと切り替わろうとしていた。

 

「事件の事を思い出させる様なことをするのは大変心苦しいのですが…覚えている限りで構いませんのでお話して頂けませんか」

 

「…はい」

 

元より今回の面会は事件の事を聞く為。ひいてはハルノに繋がる情報を得る為でもある。

ミレイはやや浮かばない表情を見せるも、本人もクロカ達が此処に来た理由を知っている為か、ぽつぽつと語り始めた。

犯人グループによって捕まって直ぐに気絶させられ、目を覚ました時は目隠しとヘッドホンをされていたと語る。

目隠しは視覚から得られる情報を遮る為。そしてヘッドホンは大音量の音楽を流す事で周囲の音から得られる情報を遮る為。

今になって思えばそうでないかと語るミレイだが、ふとこんな事を言い出した。

 

「私の場合、犯人グループが忘れていたのか運よく音楽とか一切流れていなかったんです。そして周囲の音に耳を澄ませていると、ガタンゴトンといった音が聞こえたんです。途中で降ろされたから、何処で停まったかは分からないですけど…」

 

「犯人グループは列車を運用していたのでしょうか…?」

 

「多分そうかと。何処かに止まる時も列車特有のブレーキ音が聞こえましたから」

 

「成程…。それ以外に何か覚えている事は?」

 

「断片的ですけど…列車は週に二、三回しか走らない。走っている所は一部がカイナ地区内にあって、カイナも知らない独自路線、あとは今月の末日に誘拐した生徒を最終駅に送る為に特別で走るとかでしょうか…」

 

犯人グループは列車を使っていて、独自路線を保有している。

基本的には週に二回か、三回しか走らないが今月の末日に誘拐した生徒をとある場所に送る為に特別に走らせる。

十分に有力な情報なのだが、ハルノを助けたいと願うクロカは思い切って尋ねる。

 

「その中にはカイナ農場学園の生徒の事も言っていませんでしたか?」

 

「そう言った話は聞きませんでしたけど……あ、でも最終駅にある"狩場”の牢屋にカイナの生徒云々の話は聞いた気がします」

 

「狩場…?」

 

ミレイから出た言葉にクロカは首を傾げる。

狩場とは一体どういう意味なのだろうかと思うもミレイも分かっている様子ではなかった。

だが、その狩場にある牢屋にハルノがいる。ようやく得られた友人の情報にクロカとスズキは喜びそうになる一方でタキトゥスは密かに病室を出てて、貸し出されたスマホを覚束ない手つきで操作しつつ、とある人物へと通話を繋いだ。

 

「店主か?…急ぎでカイナ地区内にあって、かつカイナも知らない路線を調べて欲しい。どうやら犯人グループは列車を使っているらしい」

 

ミレイから得られた情報を通話相手であるハクタクに伝えていくタキトゥス。

そして得られた情報を伝え、同時に用意してほしい物を伝えた後にタキトゥスはとある事を口にするのであった。

 

「それとアルに伝えてくれ。…数日以内に列車強盗をやる、楽しみにしておけとな」




タキトゥスが口にした()()()とやらはまたいずれ。

色々抜けてはいますが…そこはまたいずれという事で。

さて、お次はどうしたものかねぇ。

ではではノシ
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