Blue Redemption   作:白黒モンブラン

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1899年より、油を絶やすことなかれ 2

漂う土草の匂いの中に二両のディーゼル機関車から出る排ガスの臭いが混ざり合い、鼻をつく。

顔を覆い隠すようにつけたバンダナ越しでもそれは感じられる一方でタキトゥスは自ら敢行し、タンクの上から停車させた列車を見つめる。

 

(二台の車両…それも線路を二つ使って貨車を牽引しているのか?どれだけでかい貨車を引っ張っているんだ?)

 

タキトゥスが知る列車というのは一本の線路の上に後ろへと長く続くもの。

しかし彼の前に停車した列車は線路を二つ用いて、車両も二つ用いて一台の貨車引っ張っていた。

だがそれだけを引っ張っている訳でもない。良く知る普通の客車や普通の貨車も何両も繋がっているのが確認できた。

 

(馬鹿デカい貨物列車と言う訳か…コーンウォールの特別列車や軍の列車とは比較にならんな)

 

生前行った列車強盗の事を思い出していると、二両のディーゼル機関車の操縦席から二人のオートマタの男が降りてきた。

 

「何なんだよ、これは!?何の真似だ!?」

 

「こりゃ一体…」

 

この状況を前に呑み込めずにいるのか二人とも困惑していた。

一見すれば普通の運転手。

だが身に纏ったツナギに装備されたホルスターにはしっかりと銃が収められており、その手は僅かにだが銃へと伸ばされているのをタキトゥスは見逃さなかった。

しかしそこで構えて発砲しないのは目の前にあるのが大量の燃料を積んだタンクローリーだからだろう。

引火して爆発でもしたらこの場一帯が火の海に呑み込まれるのが容易に想像できるからだ。

そしてそれが二人の背後から近づく彼女達に油断を与える事となった。

 

「動かないで」

 

「あなたも動いちゃ駄目だよ~。はい、それも没収するね~」

 

かちりと撃鉄が上がる音と共に運転士の背後から銃を突き付けたカヨコの声が響く。

カヨコの登場にもう一人が咄嗟に銃に手をかけるも、ムツキがそれを阻止。

銃を奪い取り、二人を無力化。そしてムツキが歩み寄ってきたセツラに専用の手錠を投げ渡すと便利屋68はお互いに頷き合い、ディーゼル機関車の運転席の制圧へと動き出した。

 

「お、お前たち…こんな事をしてタダで済むと思っているのか!?」

 

「知った事じゃない。…それじゃ、良い夢を見ろよ」

 

「何を…がっ!?」

 

運転士に手錠を付けると、セツラはクローズ・ファイティングの銃床部分でその頭を殴打。

強烈な一撃に運転士は地面に倒れ、もう一人も同じように殴打されて気絶する。

一方で運転席の方から物音がしたと思えば、すぐさま無線が届く。

 

『せ、制圧完了しました!』

 

『こっちも運転席を制圧よ。それと敵の無線から列車が止まった事に気づいて動き出そうとしているわ』

 

ハルカとアルからの無線にこれから後方車両へと向かって動き出そうとするタキトゥス達の眼つきが鋭くなる。

一発の銃声で状況は一気に動く。

当然敵は銃声を聞きつけてタキトゥスたちの方へと向かってくるであろう。

しかしタキトゥスも、ハヅキ達も、便利屋68も、ヒナも決してそこから逃げ出すという選択をしなかった。

何故なら──

 

「行くぞ」

 

──この戦いは"決して失われてはいけない命"が掛かっているのを全員が知っているのだから。

 

タキトゥスの一言に残りの三人は頷き、彼の後を追うように歩き出す。

車両への突撃組が動き出したのを確認するとアルは運転席の防衛をカヨコ達に任せてクロカが待機している陸橋へと移動。

タキトゥス率いる突撃組は二両のディーゼル機関車と連結された大型貨車から乗り込み、後方へと繋がる車両へと向かっていく。

その最中、貨車に積まれた荷物の多さに気づいたセツラが疑問の声を上げる。

 

「こいつら、これだけの物資を何に使う気だったんだ?」

 

「分からないわ。でもこの線路の先…"狩場"と言われる最終駅で降ろす物資だと思う」

 

「にしては多い気がするが…一体何者なんだ、この誘拐犯どもは」

 

事件発生から今に至るまで、犯人は誘拐犯グループと言う事しか分かっていない。

まるで靄に包まれ、掴む事の出来ない影の様なものを只管に追いかけて、追い詰めようとしている。

今の自分たちはそうなのではないかとセツラは思う。

 

「それをこれから知る。奴らの本当の面を拝めそうな情報があれば全部搔っ攫え」

 

「搔っ攫えって…それだと今から私たちがやろうとしているのが列車強盗みたいだが、タキトゥスさん?」

 

「今になって気づいたのか?連中にとって今の俺たちは列車強盗をしに来た無法者(アウトロー)だ」

 

ゲヘナの風紀委員長が居る前で言う様な台詞ではないだろう。

だがタキトゥスのセリフにヒナはふふっ、と笑みを零した。

 

「…そうね。今は風紀委員長という肩書も置いてきた様なものだし、少し派手に行こうかしら」

 

「…やり過ぎるなよ?」

 

「安心して。車両は破壊しないから」

 

そう言いながら手に持った銃『終幕:デストロイヤー』のレバー式ハンドルを動かし、ガチャンとその音を立てるヒナを見て、本当に分かっているのだろうかと思わず心配になりそうになるタキトゥス。

そしてそのまま貨車の端までやってくると、ふと四人はその足を止めた。

 

「ここで普通の客車か」

 

スズキの言う通り、その視線の先にはまるで道は二つしかないぞと言わんばかりに存在する二両の客車。

片方だけ通っていくのは論外。そんなことすれば敵は間違いなく運転席の制圧へと向かう。

であれば二手に分かれるのが得策と言える一方で客車が暫く後ろへと続いている辺り、一度中へと足を踏み出せば後戻りはできないと言えた。

 

「ならここから二手に分かれるぞ。セツラ、ヒナと組め」

 

「じゃあ、私はタキトゥスさんとね。前は任せてもらうわ」

 

「任せた」

 

そこからの四人の行動は早かった。

セツラとヒナが左の客車へ、タキトゥスとスズキが右の客車へと移動し、その出入口付近の壁に身を寄せた。

それぞれが手にした銃を手に握る。タキトゥスもまた肩に提げたポンプ式ショットガンを手に取り、フォアエンドを動かして初弾を装填。

 

『…援護は任せて。思いっ切り暴れてきてちょうだい』

 

『危ないと感じたら無理せず引いてください。穴埋めは任せてください』

 

アルとクロカから無線が来るも四人は答えない。

ただ二人がいるであろう陸橋に向かって軽く手を降って、任せたという意味を込めて反応する。

 

「突撃するぞ」

 

客車の中へと通ずる扉のドアノブを握るタキトゥス。

そのまま勢い良く扉を開いた瞬間、スズキが内部へと突入。

突入してきた彼女を前に反応が遅れる敵。

それに対してスズキは「千流水影」の引き金を引き、その散弾を顔面に叩き付けた。

 

『!』

 

木霊した一発の銃声。

それがこれから起きる事に対する始まりだと言わんばかりに鳴り響く。

そしてその銃声が、銃声だけで奏でる戦場へと生まれ変わるのは約数秒後の出来事であった。




お久しぶりでございます。

今回から列車強盗編という事もあって、最初は短めで行かせてもらいます。

では次回ノシ
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