Blue Redemption   作:白黒モンブラン

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1899年より、油を絶やすことなかれ 7

 

(ゴリアテを持っているなんて。雇い主はヘルメット団に対して随分と大盤振る舞いね)

 

重武装に重装甲。両腕のガトリングガンに巨砲。

人の姿をした鋼の巨人。その名もゴリアテ。

とあるPMCが開発した兵器であるのだが、まさかそれが此処にあるとはヒナからしても思ってもいない事だった。

 

(買い取ったか、或いは今回の事件に関わっているのか…それが出てきた以上はそう考えるのが普通なんだろうけど)

 

今はそんな事を考えている訳ではない。

あのゴリアテの操縦席に乗っているのはドロドロヘルメット団の頭目で、加えて錯乱状態にある。

出来るだけ列車の損害は避けたい所であるが、そう簡単に倒れてくれるような相手ではないのは分かり切っていた。

 

「前にパワーローダーというのを見たが…今度はそれ以上のものか。鋼の巨人など初めて見た」

 

「…意外と落ち着いているのね、タキトゥスさん」

 

「ついさっきまではそうじゃなかったがな」

 

キヴォトスでは割かし当たり前な事かも知れないが、アーサーからすれば違う。

しかし、このような事に一々驚いてはキリがない。

それに鉄の巨人よりも、自然に生きる熊や狼の方がもっと恐ろしいものである。

野生で生きる動物たちに人間の言葉など通用しない。

熊は人間を一撃で殺す事も出来るし、狼は集団で襲い掛かってくる。

下手に刺激しなければ、近づきさえしなければ命にやり取りなどせずに済む。

だが、否が応でもそうせざるを得ない時もあったのも事実である。

 

「…ホゼアと一緒に狩りに行ったあの化け物みたいな熊の方がずっと恐ろしいさ」

 

「ホゼア…?」

 

「一緒に馬鹿をやった知り合いで、ある意味で父親みたい奴だった」

 

だが、彼が死ぬ姿を、殺される姿をアーサーはその目で見ていた。

どうする事も出来なかった。そういう状況だったから。

それでも、撃たれて胸から血を流しながら倒れ行くその姿はアーサーの脳裏に焼き付いたまま離れずにいた。

 

(…そして、俺もあんたの所に行く予定の筈だったのにな。どうしてこうなったのだろうな)

 

馬鹿をやっていたあの時が、気づけばこんなにも遠く感じてしまう。

死ぬはずだった運命に逆らうかのように、このキヴォトスで二度目の生を歩んでいる。

 

(…本当に、どうしてこうなってしまったんだろうな)

 

戦いの最中で思いに耽るなどやるものじゃない。

だが、時折こうなってしまう。それをアーサーは自覚していた。

このキヴォトスに流れ着いた時から、そうなってしまっていたのを自覚していた。

 

「出てきて早々撃ってこないのは有り難いが…さて、あの化け物をどうしたものか」

 

思い耽るのも程々にして、アーサーはそれぞれのホルスターから銀と黒のキャトルマンリボルバーを引き抜きながら立ち塞がる巨人を見据えた。

ヒナの様な火力はない。アーサーに出来るのはせいぜい早撃ち程度。

だが、それが装甲に覆われたゴリアテに通用するとは思えない。

 

「乗っている奴を狙えればどうにかなるかもしれんが…あの感じだと今にも動き出しそうだな」

 

「…既に動き出したけどね」

 

「そのようだな」

 

唸りを上げる様にしてゴリアテが動き出した。

その音は咆哮の様に高らかに響き渡り、その中に混ざり合うかのようにコクピットからドロドロヘルメット団の頭目の狂気じみた笑い声が飛び込んでくる。

それに加える様に両腕のガトリングガンが火を吹き、アーサーとヒナへと襲い掛かった。

 

「ッ!」

 

「くそっ!」

 

悪態をつきながら攻撃から逃れるために近くの遮蔽物にへと飛び込むアーサーとその場から飛びのいて攻撃を避けつつ地を蹴って駆け出し、攻勢にへと出るヒナ。

崩れたコンテナを足場にし次々と飛び越えながら、その翼を大きく、そして勢いよく羽ばたかせた。

 

「!」

 

小さな体が幾多の星が広がる空へと舞い上がる。

巨体を誇るゴリアテを優に超える程の大飛翔。しかし飛行は出来ない。

宙を浮かんでいるのは僅か数秒程度。その体は重力に引っ張られながら落下を開始。

が、その状態でヒナは『終幕:デストロイヤー』を丁度真下にいるゴリアテのコクピットへと差し向け、弾丸の雨をお見舞いし始めた。

 

「あはっ!あははは!」

 

精神が崩壊し狂った笑みを繰り返しながらも、その体は攻撃に対して恐ろしいまでに動く。

笑いが止まらないドロドロヘルメット団の頭目はゴリアテの両腕を直上から攻撃を仕掛けてくるヒナへと向けると搭載された火器による迎撃を開始。

口径も火力も段違い。しかし両者ともにその引き金から指が離れる事が無い。

空と地上を弾丸が飛び交う。巨体の装甲は傷つき、小さな体に掠り傷が次々と出来上がる。

それでも止まらない。ドロドロヘルメット団の頭目もヒナも決して止まらない。

 

(距離を詰める)

 

ゴリアテとの距離がすぐそこまで来た瞬間、ヒナは『終幕:デストロイヤー』を片手で連射しつつ空いた左手を肩にかけたポンプ式ショットガンへと伸ばすとフォアエンドを操作して初弾装填。

 

「…!」

 

そして時が来たと言わんばかりに翼を大きく羽ばたかせて一時的な推進力を得るとまるで彗星の如くゴリアテのコクピットへと目掛けて強烈な蹴りを叩き付けた。

巨人の体が沈み、響き渡る破砕音とその衝撃を物語るかのように周囲に粉塵が舞う。

 

「くっ!」

 

襲い掛かる粉塵に両腕を使って顔を守るアーサー。

そして粉塵が過ぎ去ったのを感じ取り、すぐさま両腕を下ろしその先へと視線を向けた時──

 

「この距離なら、ご自慢の火力も発揮できないわね」

 

『終幕:デストロイヤー』とポンプ式ショットガンの銃口をゴリアテのコクピットにいるドロドロヘルメット団の頭目へと突きつけるヒナの姿がそこにあった。

 

(空を飛んだと思いきや、あの化け物と撃ち合ってそのまま乗り込んだのか…?無茶にも程があるだろ…)

 

無茶苦茶すぎる。

一連の流れを見ていたアーサーは苦笑交じりにそう呟いた。

だがああも張り付かれたら、勝負はついたようなものだ。

撃たずじまいに終わってしまった二丁のキャトルマンリボルバーをホルスターへと収めようとした時だった。

 

「あはっ…まだ、終わってないんだ…」

 

「?」

 

「まだ終わってないんだよ…ははっ。まだ、終わってないんだよぉ…はははっ」

 

虎の子のゴリアテも搭乗者さえ仕留めれば、ただの置物でしかない。

出てきた事には驚きはしたものの、やり方さえ知っていれば容易いもの。

故に未だに笑い声が止まる事はないが、終わってないと連呼するドロドロヘルメット団の頭目に対しヒナは告げる。

 

「…いいえ、これで終わりよ」

 

引き金に指が掛かり、引かれるそうになる。

が、その時だった。

 

「まだなんだぁ…まだ終わりじゃないんだぁ……終わってないんだよぉぉ!!」

 

「ッ!?」

 

ドロドロヘルメット団の頭目の叫びに呼応したかのように、ゴリアテが不気味な音を立て始める。

装甲同士がぶつかり合う音が何とも不快で、耳を塞ぎたくなるような音が列車全体へと広がっていく。

突然の出来事に僅かに反応に遅れたヒナはゴリアテのコクピットから振り落とされるが、それに気づいたアーサーが駆け寄り彼女が地面と激突する寸での所で受け止めた。

 

「大丈夫か!?」

 

「ええ、大丈夫。ありがとう」

 

「気にしなくていい。…だが、何が起きた?鉄の巨人の姿が一気に化け物らしさを増しているような気がするんだが」

 

「分からない。けど…何かを起動させたのは事実よ」

 

未だにゴリアテは音を立てながらその姿を変えつつある。

人型から、得体のしれない何かへと変貌しだしており、その様相は見当が付かない。

だが、これから起きる事を思うとアーサーはそっと呟いた。

 

「振り出しか」

 

「そうね」

 

アーサーに降ろされながらもヒナは同意する様に返答した。

とは言え、ここまで来たら圧倒的に戦力が足りないのが顕著になってきた。

流石に二人で変形していくアレを相手取るのは骨が折れる。

あと何人か欲しい所だが、この状況に誰かがやってくる気配は感じられないという現実は何とも残酷であった。

 

(詳しくはないけど…ゴリアテに変形機能はない筈。後付けの線が強いわね…そういったタイプをカイザーが出したか、或いは誰かがそういった機能を取り付けた、か)

 

いずれにせよ、それはこの戦いが終われば分かる事。

今は──

 

(こいつをどうにかする必要があるわ)

 

巨大な腕はさらに大きくなり、背中から生えたかのように現れた新たな腕がその異形さを物語る。

歩く為の足は不要なのか、身を守る為の装甲へと変形し、ゴリアテはそこに居座るだけの存在へと化していた。

当然コクピットは格納されたのか、つい先ほどまで見えていたドロドロヘルメット団の頭目の姿は見えない。

しかしスピーカー越しから聞こえる不気味な笑い声が駆動音の中で響き渡っていた。

 

『その耳障りな笑い声を止めてくださいまし』

 

だが次の瞬間、それを遮るかのように砲撃らしき銃声と共に飛来した一撃が変形したゴリアテに喰らいついた。

巨体はよろめき、ぐらつく。同時に先頭車両で戦闘を行っていた筈の便利屋68とルオン、クロカ、道中まで一緒に戦っていたスズキとセツラ、後方車両に居た筈のハヅキとミスズが姿を見せた。

まさかこのような事になっているとは思ってもいなかったのか、変形したゴリアテを前に少しだけ困惑した様子だったがクロカがアーサーの左腕に負った傷を見た瞬間、その場の空気が一転した。

 

「タキトゥスさん…その左腕のケガはどうされたのですか…?」

 

その声はどこか低く、目も何処か据わっている。

普段のクロカからは想像できない様子に困惑しながらもアーサーは答える。

 

「ヘルメット団の奴らと鉢合わせた際に一発貰ってな。幸い掠り傷で済んだが…」

 

「…そうでしたか」

 

この時、アーサーは先ほどの発言が間違いだったのではと思ってしまった。

ドロドロヘルメット団によって怪我を負ってしまったと言わない方が良かったのではないかと。

何故なら、ハヅキを筆頭にクロカ、セツラ、スズキ、ルオン、ミスズの様子が明らかに違っていたのだから。

その変貌ぶりはヒナはおろか、便利屋68のメンバーも困惑した様子だった。

それを他所にハヅキは愛銃『オーバーファイア』に初弾を装填しながら、今からでも飛び込みそうな面々にへと告げる。

 

「相手は鉄の化け物。遠慮は不要です…持ちうる全てを使って──」

 

叩き潰せ。

酷くシンプルな指示に武器を構えた彼女達が動き出した。




そう簡単にゴリアテ君が引いたら、つまらないので…オリジナル設定ですが第二形態へと移行です。
また他の面々もアーサーの所に到着したので…いよいよ大詰め?な感じな所まで来ました。


ブルアカを始め、新米先生な私。
星3の生徒さんを迎えれた事に喜びながらも、今はエデン条約へと突撃しております。
全て見た訳ではないのですが…内容が内容という事もあって…その、なんて言うのでしょうかねぇ…色々複雑というか、言葉に言い表せない何かを抱えた気分になっております。
ホント…何ででしょうかねぇ。

活動報告やユーザーの自己紹介にブルアカの私のID記載した方がいいのかなぁと思いましたが……そういうのを記載するのは結構抵抗感があったので止めました。
…こんな私で良ければ、頑張って見つけてくださいまし。

半分がどうでもよい後書きになってしまいましたが…ではではノシ
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