Blue Redemption   作:白黒モンブラン

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《エース、目標地点に到着。情報送ります》

《ジョーカー了解。…ふむ、相当な数と戦力ですな》

《戦闘ヘリも幾らか確認できます。狩場外部の防衛はかなりのものかと》

《成程。…内部は?》

《事前に送った通りです。A地点とB地点…そこに対象はいるかと》

《外部と同様の戦力が内部にある、ですか》

《……ご指示とあれば13課はいつでも動けます》

《…また戦ってくれますかの?》

《無論です》

《…13課、活動再開。緊急招集を》

《了解しました、ジョーカー…いえ、ハクタク局長》


日陰者と未来人の嗜み

ハヅキとタキトゥスが得た情報をその耳にした者達は、予想だにしていなかった内容に言葉を失っていた。

何かしらの目的がある。それは分かっていた。

しかし、その目的が人間狩りを行う為の標的集めであると誰が想像出来たであろうか。

 

「人間、狩り…?」

 

「…普通じゃないね、こいつは」

 

困惑に入り混じる様に僅かな恐怖。

それを体現する様な沈黙を破るようにクロカは困惑気味に呟き、ルオンがサングラスを掛けなおしながら神妙な面持ちで感じた事を口にした。

だが二人以外の、その場にいたメンバーの口からは言葉は出なかった。

言葉は理解できる。しかし頭がそれに対して理解を拒もうとしている。

 

「なぁ…あんまりこういった事は聞きたくないんだが…」

 

「構いません、セツラ。言ってみてください」

 

「攫った生徒を的にするというのは何となく分かる。だが、狩りをするという事はつまり…そいつらは"そういう事"を辞さない連中という事か…?」

 

「……」

 

答えられなかった。

しかし、ハヅキは薄々と感じ取っていた。

キヴォトスでは禁忌とされている行い。

その行いを躊躇わず出来る集団が黒幕であるのであれば、非常に危険な存在と言える。

そしてもしそうなら、ハルノは既に…。

 

(何を考えているのですか、私は…!)

 

首を振って、最悪な考えを振り払う。

考えたくはない結末。否定しようにも頭の中でこびりついていく。

その時、静かに情報がまとめ上げられた資料を読んでいたタキトゥスがそっと口を開いた。

 

「この情報を見る限り、こいつらは只の実行役なのかもしれん」

 

「え?」

 

怯える必要が無い。

言外にそう言っている気がしたのだろうか。

ハヅキの視線がタキトゥスへと向けられる。

 

「危険のは間違いないだろう。正直、危険のはそれを待ち望んでいる客の方だろうが…その客とやらも、どこぞの資産家や金持ちばかりだ。そんな気概を起こせるような連中の様には見えん。それに人間狩りと称しているが、こいつらがやりたいのは胸糞の悪い的当てごっこだ」

 

「…しかし」

 

「ハヅキ、言いたいことは分かる。だがな…こいつらにはそんな気概はない。歩くもやっとになる…そんな一生モノを背負っていけるようなタマじゃない」

 

確信はあった。

そればかりは無法者として生きてきた男だからこその直感とも言えた。

 

「証拠を隠そうが、何処かへ逃げようが、許されない。それは地の果てまで追ってくる。そして追いつかれて、最後はろくな終わり方はしない。そういった末路を迎えた奴らを腐るほど見てきて思うよ。悪い事をしている奴に良い事なんて起きやしないとな」

 

「…タキトゥスさん」

 

「それに知り合い(自分)もそういう奴だった。途中で病気に体を犯されて、漸く後悔する様な大馬鹿野郎だったがな」

 

苦笑交じりに帽子の庇をつまんで降ろし、僅かに目元を隠すタキトゥス。

その姿がハヅキ達にどう見えたであろうか。

何かしらの感情はあるのだろう。しかしタキトゥスにそれを推し量る様な器用な芸当が出来るはずもなかった。

 

「今はこの先の事を考えるぞ。相手は危険な連中だからな、大丈夫だとか、何となるとかは大したことは言ってやれんが手を貸す。だから後ろばかり見ずに前を歩くことに集中しろ」

 

「!…はい!」

 

足踏みしている暇など無い。

最悪な結末を考える頭があるなら、体を動かして行動し、助け出す事だけに思考を割り振れ。

そう言い聞かせる様に己を窘め、軽く息を吐くハヅキ。

 

「申し訳ありません。お見苦しい所を見せてしまいました」

 

恐れで慄く少女の姿はそこにはない。

今やれる事に意識を向け、生徒会長として、皆の上に立つ者としての責務を果たそうする者の姿が確かにあった。

 

「列車はこうして押さえる事は出来ましたが、問題は狩場と称される場所への襲撃日になります」

 

「それに関しては報告だけど、ハクタクの爺様が向こうに嘘の報告を流している。あちらさん、焦っていた様子だったが特別な日までに到着する様にとの事でね。そしてその特別な日とやらは、翌月の第一週目の日曜日さ」

 

「と、なると…私たちに与えられた猶予はせいぜい二日程度ですか」

 

列車は確保した。

カイナの持つ戦力もそれなりにある。

問題は向こうの戦力がどれだけあるか、そこをどうにか知る必要がある。

それを把握せず、馬鹿正直に真正面から突撃した所で返り討ちに遭うなど言わずとも分かる。

戦力を把握したい。今のハヅキ達にとって一番に欲しい情報だった。

 

「ハクタクさんと連絡を取り、相手の戦力を探ります。ルオン以外のメンバーは列車内にある装備をかき集めてください。使えるものであれば何でも構いません。必要なら砲台化しても構いません。ただし適度に休みを取るようにしてください。…では、お願いします」

 

その号令でルオン以外のメンバーがその場を後にしていく。

残されたルオンは肩を竦めつつ、ハヅキへと声をかける。

 

「おいおい、私は除け者扱いかい?」

 

「まさか、きちんと仕事はありますよ。…一度学園に戻り、"こういう時"の為の装備を持ってきてくれませんか?」

 

「…!」

 

思わず目を見開くルオン。

何を頼んでくるかと思えば、まさかそれだとは思わなかったのだ。

 

「ハッ…随分な重労働を任せてくれるじゃないか。何だい…戦争でもおっぱじめる気かい?」

 

「それぐらい腸が煮え繰り返っているのですよ。…この事件が始まってからずっと」

 

「そりゃそうか」

 

腸が煮え繰り返っているのはハヅキだけでない。

ルオンとて同じだった。

故に断る理由も辞めさせる理由もなかった。

寧ろ…

 

「なら、それ以外に色々持ってくるけど構わないかい?派手な鉄火場になるならそれ相応の花火がいるだろ?」

 

どうせならこれ以上にない鉄火場にしてやろうと悪い笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

「こっちは重機関銃を見つけた!でも弾が無い!そっちはどう?」

 

「ちょっと待ってね。えっと…あ、重機関銃の弾!そっちに持っていく!」

 

「お願い!」

 

ハヅキからの指示を受け、カイナの生徒たちが列車内に残されているであろう使える物を探し出す為に棚やら木箱をひっくり返していく。

何かに追われる様に誰かが通路を行き交い、遠くから、或いは近くから物音が響く渡る。

つい前まで武装集団で守られていた列車内はまるで建設現場みたく慌ただしい現場へと化していた。

そんな現場でタキトゥスもまた他のカイナの生徒たちの中に混ざって使える物がないか探して回っていた。

 

「武器に弾薬、食料に酒、豪華な家具に高値で売れそうな置物、大量の金…武装集団が守る列車の中身は豪華列車だったという訳か。今まで襲われずに済んだものだな」

 

コーンウォールの特別列車とは比較にならないな、とかつての列車強盗を思い出すタキトゥス。

そのセリフを偶々近くで作業していたカヨコが答える。

 

「襲撃を仕掛けようにも何処を走っているか分からない。仮に列車を止める事が出来てもあれだけの護衛に改造されたゴリアテの前じゃ返り討ちが関の山だろうね」

 

「成程な。…それで何をしているんだ?」

 

「弾の補充。思った以上に消費が激しいから今の内に補給しておこうと」

 

「まぁ…これだけあれば困る事はないな」

 

開かれた木箱の中から取り出した弾薬ケースの蓋を開いて弾薬の補充を始めるカヨコ。

その様子を見つめるタキトゥスだが、自身もまた思った以上に弾を消費している事を思い出したのか、カヨコと同じように弾を補充しようと動き出す。

 

「そのリボルバーの弾ならここにあるよ」

 

デモンズロアに弾を込めたマガジンを差し込んだ後、トントンと傍に置いてあった弾薬ケースの蓋を叩くカヨコ。

 

「ついでに探しておいたから」

 

「悪いな。…助かる」

 

「うん」

 

彼女のおかけで探す手間が省けた。

一言礼を告げ、そのまま先に作業を終えたカヨコの隣に座り込むタキトゥス。

ホルスターと逆手ホルスターに差し込んだ二丁のキャトルマンリボルバーを引き抜き、作業を始めていく。

 

「もう一丁の方、貸して。手伝うよ」

 

「良いのか?」

 

「良いよ」

 

なら、頼むと告げて黒のキャトルマンリボルバーをカヨコへと差し出すタキトゥス。

それを受け取るカヨコだが銃を見て、ふと気づいた。

 

(凄く年季が入ってる…)

 

銃身にエングレーブが施されていたり、パール調のカスタムグリップを用いている辺りはキヴォトスの生徒たちが銃をカスタムしたり、色鮮やかに塗装している点と通ずるところがある。

ただ、その銃は所々塗装が剥がれている点を見るに相当使い込まれているのがハッキリとしていた。

 

「社長が見れば興奮するだろうね。こういうのには目がないから」

 

「言われてみれば…そうなのかもしれないな」

 

まるで玩具を与えられた子供の様に目を輝かせるアルの姿が二人の脳内に浮かび上がる。

容易に想像できたからか、二人してクスリと小さく笑った。

 

「そんなアイツに、無理をするなとかもっと頼れとか…色々と言われたさ。根の良さが身に染みて分かる」

 

「それが社長だからね。良い所も悪い所も含めてだけど。まぁ…そういう所を知っているから離れずに一緒に居るんだけど」

 

「そうか。良い友人を持ったな…あいつもお前も」

 

「…うん」

 

互いに良い友人を持った。

その事を言われて悪い気がしなかったのか、小さく微笑むカヨコ。

何やかんやあれど、こうしているのはそういう事なんだろう。

黒のキャトルマンリボルバーに弾を装填しながら、彼女は胸の内で納得したように呟いた。

 

「あら、二人して何かあったのかしら。良い表情しているわよ」

 

そこに件の人であったアルが二人の元にやってくる。

二人はお互いに顔を見合わせると──

 

「別に。何もなかったよ」

 

「別に。何もなかったさ」

 

そんな台詞を口にするのであった。




前書きではハクタクさんが何かやっていて。
本編ではハヅキの依頼を受けてルオンが何かしようとしています。

さぁて…次回はどうしたものかなぁ。

ではではノシ
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