Blue Redemption   作:白黒モンブラン

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便利屋68 その1

×月○□日 天候 曇り

 

ハルノが行方不明になった。

キヴォトスに流れ着いてきてから聞いたニュースの中で一番最悪と言っていい。

何故あの娘が、今でもそう思わずにはいられない。

だがこの件を相当参っているのが、ハルノが通うカイナ農場学園と彼女の友人であるクロカだろう。

大人顔負けの落ち着きを持つクロカがこの一件を伝えに来てくれた時は、彼女は相当取り乱していた。

友人が突如として行方不明になった。どんな気持ちなのか言わずとも分かる。

クロカがこんな風になっているのを放っておける程、自分はそこまでの屑に成り下がったは覚えはない。

クロカやハヅキ、学校の連中や地元の連中が安心できるようにハルノを一刻も早く見つけなくてはならない。

だから自分もハルノの捜索に手を貸す事にした。このキヴォトスにある文明の利器を満足に使いこなせない自分に出来る事は多くないが、人手は多い事に越したことはないだろう。

最初の取っ掛かりとしてクロカと共に一度ハルノの持ち物が落ちていた現場に赴いた。

人通りは少なく、周囲には建物もない田舎風景の中に存在した現場。

残された轍の跡は車と使ったと言う証拠。

そしてその場に落ちていた複数の薬莢がハルノへと繋がるであろう手掛かりとなった。

このキヴォトスはアメリカと同じく銃社会だ。二十歳にも満たない生徒らがまるでアクセサリーみたいに持ち歩いている。

当然ながらハルノも銃を持っており、現場に落ちていた薬莢は恐らくだが車に押し込まれそうなった所を抵抗し、発出てきたものだと推察している。

落ちていた薬莢の数から相当発砲したのだろう。となれば、犯人が乗った車にもかなり数の銃撃の跡が残っている筈だ。そいつを見つけ、持ち主を見つけて締め上げればハルノの居場所も分かると見ている。

この事は少し手詰まり気味だったハヅキにも伝えた。幸い人手はある…早い内に車とその持ち主が見つかる事を願っていた所に以前ハルノとクロカに連れていってもらった雑貨屋の店主に会った。

店主もハルノの件を聞いて飛んで来たらしい。

あの愛嬌のある子供が行方不明になったのだ、飛んできて当然だろう。

それと同時に自分にとんでもない事を話してきた。

前に製品を学園に売り込みに来た時に騒ぎを起こしていたあの猫の獣人が、ハルノの誘拐に関与しているらしく、その瞬間を目撃したという証言を得たというのだ。

居場所はまだ分からないが、この猫を探してほしいらしい。ただ店主も人手を用意してくれるらしい。

何でも便利屋を営んでいるらしく、ここから少し遠い所に事務所を構えているらしい。

どういった奴らかは知らないが、ここは素直に店主に感謝すべきだろう。

…よりによってあの猫が絡んでいるとは。

せいぜいこの田舎にいるチンピラ程度にしか思ってなかったが考えを改めるべきだろう。

あの時に平気で子供を攫う様な事をする奴だと知っていれば、そんな気が起こせなくなる程に懲らしめておく事が出来たと後悔している。

 

…こんな事を思うのはおかしな話かも知れないがあの時、クロカを助けるつもりで自分が騒ぎに首を突っ込むような事をしなければこんな事にならなかったのではと、つい思ってしまう。

そんな事は無い筈だと誰しもが言うかもしれない。

だが今まで経験が、自分の運の無さが呪いの様に悪さをする。

このキヴォトスに流れ着いたのは只の奇跡で、贖罪を成し遂げていなかったんだろう。

自分が静かに農場をしながら平穏な人生を送る事を神と言う存在が許していないのかも知れない。

ここからが本当の贖罪の道だと言わんばかりに。

もしそうなのであれば甘んじて受ける他ない。それでハルノや学園の者達を助ける事が出来るのであれば──

もう一度「アーサー・モーガン」に戻る事も厭わないし、一生贖罪を歩み続けてやるとも。

 

 

 

 

それは何もない静かな時間に鳴った一本の電話からだった。

彼女は依頼が来たと意気揚々に黒電話の受話器を手に取り、彼女は面白そうに見つめ、彼女はさっき来たデリバリーの注文だと勘違いした電話じゃないかと思い、彼女はその指示が来るまで待った。

三者三様…それぞれが違う感情を抱いた時彼女…『便利屋68』社長は嗤った。

 

「ええ…その依頼、この便利屋68がお受け致しますわ」

 

ハードボイルド、アウトローに憧れる少女はその依頼を受ける。

とある田舎で起きた生徒行方不明事件に関わっているであろう獣人の捜索依頼を。

そして彼女は出会う。その憧れを体現した一人の男を。

そして彼女は知る。自らの罪を背負い続け、死して尚もその贖罪の道を歩み続ける男の生き様を。

そんな出会いが訪れるとは知る筈もなく、便利屋68…社長『陸八魔 アル』は部下へと指示を飛ばす。

 

「依頼が来たわよ!貴女達、準備しなさい!今からカイナ地区へ向かうわよ!」

 

「え…今から?」

 

意気揚々と支度をしろと言うアルに対し、カイナ地区に向かうと聞いた鬼方 カヨコは少しげんなりした表情を見せた。

 

「社長…今からそこへ向かうとなったら下手したら片道四時間かかるけど」

 

向かおうとしている場所は田舎とも言える地区であるという事を彼女は知っていた。

そして電車を利用したとしても片道四時間かかり、最終列車があと30分で行ってしまう事も知っていた。

流石に今向かうのはと言うも、その言葉はアルに届かない。

 

「さ、行くわよ!依頼主を待たせるわけには行かないわ!」

 

「はい、アル様!」

 

目を輝かせるアルと彼女ことを「アル様」と呼ぶ伊草 ハルカはいそいそと準備していく。

このペースで事務所を出たとしても、到底間に合わない。

何故ならここから最寄りの駅まで40分かかるのだ。

今日じゃなく明日に持ち越して向かうべきだとアルに進言しようとするカヨコだったが、それをこのいたずらっ子は黙っていなかった。

 

「アルちゃん上機嫌だねぇ♪でもこんなにのんびりしてて時間の方は大丈夫~?」

 

「へ?時間?」

 

「うん、時間。カイナ地区に向かう最終列車、あと30分で行っちゃうけど?」

 

笑みを浮かべて、画面に電車の時刻表が映し出されたスマホをアルに見せたのは浅黄 ムツキ。

小悪魔の様で、いたずらっ子の様な笑みを浮かべている事にアルは気付かず、その様子を見ていたカヨコは手を額に当てながらため息を付いた。

 

「ん~…?」

 

ムツキが見せたスマホの画面を目を細めながらムツキの発言を頭の中で再生するアル。

約二週間ぶりの依頼、今から30分後にはカイナ地区へと向かう最終列車、今から事務所を出てから最寄りの駅までにかかる所要時間、その他諸々…。

冷静になるという選択肢を度外視にしたそれら全てをスーパーコンピューター並みの速さで計算し、その答えを叩き出した脳はアルへと伝達する。

 

「ななな、なっ…何ですってーー!!!???」

 

何時ものと言うべきか、ある意味でお家芸と言うべきか。

彼女の叫び声が事務所全体に駆け巡ったのは、約数秒後の出来事であった。

鼻歌を歌って準備している場合じゃない。色々混じっているかも知れないが、必要なものをバックに押し込んで、何かに追われているかのように事務所から飛び出して彼女らは最寄りの駅へと全力ダッシュ。

普通に行けば40分かかる道のりを29分で駅に到達すると、残り一分を使って駆け込み乗車よろしくと言わんばかりにカイナ地区へと向かう最終列車へと乗り込んだ。

 

「ぜぇ…ぜぇ…」

 

全力疾走から、全力駆け込み乗車。

息も絶え絶えになり、言葉を発する気力も無い便利屋68の面々は座席に背中を預けてカイナ地区へと向かう電車に揺られていた。

暫くは電車に揺れながら、カイナ地区に向かうだけ。

これから四時間かけた列車の旅が始まる。全員が寝てしまっては乗り過ごしてしまうので、その対策をどうするかを決めた話し合いが四人の中で行われた後に、カヨコ、ムツキ、ハルカが静かな寝息を立てる中、アルは頬杖を突きながら外の景色を見つめていた。

カイナ地区に向かうにつれて、映る景色は変わらなくなっていく。まるで一枚の絵を延々と見つめている様に。

夜の帳も落ち始めている。やがてそこに映る景色も真っ黒に染まっていくだろう。

それでもアルの視線は外へと向けられていた。

 

(カイナ地区…そしてカイナ農業学園にあの人が…)

 

モモッターに投稿されたとあるショート動画に映る、とある大人。

ガンマンを思わせる出で立ち、銃を構える所作…それら全てがアルにとってはハードボイルドでアウトローだった。

今回の依頼を受けたのは約二週間ぶりの依頼という事もあるが、あのショート動画で得た情報からあの大人の人が居るカイナ地区だから受けたと言うのもあった。

その人を一目見れるのであれば…あわよくば話す事が出来たらといった感情がない訳ではなかったのだ。

 

「ふふっ…」

 

思わず訪れたチャンス。

こればかりはアルも微笑まずには要らなかった。

アウトローに憧れる少女が1899年のアウトローと邂逅する瞬間はすぐそこまで迫っていた。




今回はやや短めです&キャラのエミュが低いです…お兄さん、許して。


さて次回はアウトローに憧れる少女とガチモンのアウトローとの邂逅かなぁ…。

では次回ノシ。
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