女冒険者たちの冒険しない大冒険! ~ガールズトーク☆クエスト~   作:深夜に食べるラーメンの味

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第三話「きのこたけのこ戦争」

冒険者たちの集会所、酒場≪ハラペコ亭≫は今夜も満員御礼です。

カウンターには香ばしく焼けたパンのバスケット。奥の厨房からは煮込まれたスープの香り。

テーブルの上で今日の冒険の戦果を並べる音が、今にもほら、どこからか聞こえきます。

木製の椅子と机が並ぶ広いホールでは、クエスト帰りの冒険者たちが、思い思いの雑談を楽しんでいる姿が。

 

ここは冒険者の王国に数多存在する、冒険者酒場の一つ。

そんな酒場の一角に、広いテーブルをいつものようにと陣取っている、四人の冒険者たち。

 

剣を腰に携えた少女、剣士のソド子。

盾と鎧とで身を包む少女、盾騎士のタテ子。

幅広のとんがり黒帽子をかぶった少女、魔術師のマジョ子

白金の僧服に両手でアミュレットを握る少女、僧侶のクスリバ子。

 

女冒険者たちの集まりです。

 

彼女たちのテーブルには、サクサクの細切りポテトとベリージュースのセットが。

チーズがたっぷり乗った小さなピザも。

おいしそうな料理とドリンクを囲んで、今日も女子冒険者会が始まります。

 

 

「きのこ最高! きのこ最高! みんなもきのこ最高と言いなさーい!」

 

「でたよ病気が。誰よクスリバ子にお酒飲ませたの」

 

「自分で飲んだ」

 

「いつものことだった」

 

 

クスリバ子が小樽ジョッキを片手に立ち上がって叫びます。

今日も立派な白髭。

お目々がぐるぐるとしていますね? どうしたのでしょう。

 

 

「あの美しいフォルム、たくましい反り、立派なカサを見るともう、私は……私は~!」

 

「マジョ子、沈黙魔法。はやく黙らせて」

 

「忙しいからダメ」

 

「まーたポテトで祭壇作ってるよこの子」

 

「きのこ最高! きのこ最高! あちらのお里が知れますわね~! お里だけに!」

 

「おおっと聞き捨てなりませんなあ?」

 

「うわ出た」

 

 

ソド子のエントリーです!

ビッと指をクスリバ子に突きつけました。

 

 

「たけのこの方がつよーーい! たけのこの方が上! たけのこ最強! たけのこ最強!」

 

「きのこの方が上です~! きのこのほうが立派なの! ご立派ァ!」

 

「つよく長くしなやかなフォルム、その堅さ、たけのこの圧倒的勝利でしょ! きのことか何? 弱そう。 すぐ折れちゃうじゃん」

 

「折れません~! 長くて堅いだけじゃダメなんです~! テクがないとダメなんです~! キノコの方が上で~す! はい勝ち~!」

 

「勝ってません~! タケノコの方がすぐれてまーす! はーさいきょ、タケノコさいっきょ。語るまでもねー」

 

「マジョ子、沈黙魔法」

 

「忙しいからダメ」

 

 

タテ子さんが頭を抱えてしまいました。

キノコ派か、タケノコ派か、どっち?

この話題は冒険者たちの間でよく上げられるポピュラーなもの。

 

 

「きのこーっ! き、きの、きえーっ! きえーっ!」

 

「たけんこー! こああああ! こっ、こあああっ!」

 

「あーあ、始まっちゃった! きのこたけのこ戦争がまーた始まっちゃったよ! めちゃくちゃだよもおおお」

 

 

そう、きのこたけのこ戦争の始まりです!

皆さんはどちら派でしょうか?

私ですか? 私は――――――。

 

 

「タケノコってわかる? いずれ竹になるんだよ。竹は素材によく使われてるでしょ? つまり食料の備蓄と武器防具の備えを同時に行える、戦略植物! ストラテジックアドバンテージ!」

 

「急にかしこさ上げるのやめろ」

 

「きのこの増え方知ってます? 胞子による生殖、それは吸い込んだ者の肺に菌糸を張る生体兵器! つまり全生物とおいたしできるということ! セッッ!」

 

「急にかしこさ下げるのやめろ」

 

 

きのことたけのこ、どちらが優れているかの意見がたくさん出てきます。

菌糸を利用した情報ネットワーク、成長速度を利用したポーションの制作、そして何をいっても味の差。

甲乙つけがたい問題です。

きのこ派と、たけのこ派の長きに渡る戦争――――――そう。

 

 

「ぜったいぜったい、ぜーったい! 『バンブーエルフ』の方が強いもん!」

 

「ぜったいぜったい、ぜーったい! 『パインエルフ』の方が優れてます~!」

 

 

バンブー(竹)エルフと、パイン(松)エルフによる、神話時代から続く「どちらが強い?」という論争は!

今でも! 決着が! ついていないのです!

 

 

「結局戦争で共倒れってね。現存してるのはエルフ国に封じ込められてる少数集落だけだっけ?

 昔話っていい教訓をくれるわよね。ケンカばっかりしていたら、どちらも滅んでしまいますよっていう」

 

「争いは行きつくとこまで行くという教訓。ためになる。あむあむ」

 

 

マジョ子がポテトを美味しそうに口に運びます。

塩を振るのも、ケチャップを付けるのも、どっちも美味しい食べ方ですね。

みんな違ってみんな良い。

みんなが手を取り合えるポテト。

なんてすばらしい万能食材なのでしょう。

 

 

「そりゃ滅ぶでしょうよ。神話って言っても私たちの知ってるのはさわりの部分だけで、記録の部分は禁書扱い。

 そりゃそうよね。パインエルフたちがきのこ毒を各国にばら撒いて、死の商人として暗躍した記録。

 バンブーエルフは現代にまで通用する、竹を始めとした原生植物を用いた、エルフ傭兵お得意のゲリラ戦術の基礎を築いた。

 神話の時代から続く戦略戦術の基礎基本の羅列。今でも再現できてないものが多いってんだから、軍事機密まったなしだっての」

 

「どっちつかず派は黙っててください~!」

 

「はーこれだから盾騎士は頭でっかちカッチカチ! 意見まで保守派! はーこれだからこれだから!」

 

「カチカチなのは一部だけで十分で~す!」

 

「こいつらッ」

 

「そんでマジョ子はどっち派なの?」

 

「ポテ」

 

「ポテト派はダメでーす!」

 

 

クスリバ子がポテトを取り上げてぱくり。

むー、とマジョ子のほっぺが膨らみます。

でもすぐに別のポテトを手にとり上機嫌。

ポテトは全てを解決する。

怒りも、悲しみも、すべてを。

 

 

「私はお船派」

 

「で、でーっ! 黒いお船派!」

 

「アルフォートレス派! うーん、うううーん、異端、いやでも、うーん!」

 

「第三勢力でちゃった」

 

 

やってられない、とタテ子はピザの伸びるチーズと格闘することに決めたようです。

アルフォートレス。

黒船派とも呼ばれる第三勢力の登場です!

 

 

「誰も聞いちゃいないだろうけどウンチク語りまーす。

 アルフォートレス、黒の船団。神話時代に突如として現れて、それ以降、時代の転換期に何度も姿を確認されている、謎の勢力。

 それもまた時の流れに消え去って、今では黒海を乗り越える帆船が描かれた、絵が残るだけ。

 エルフたちが逸話満載なのに比べて、同じ時代に存在したのに不自然なくらいに記録が残っていないとかなんとか。

 今じゃ世界の危機が訪れたとき、黒船の船員があらわれて、こっそりと世界を裏から救ってる、なんて創作まで作られてるくらい。

 神話の二次創作の方が有名になった珍しいケースだけど、ロマンがあっても、当の作家の人たちには実はすっごい嫌われてるわよね。

 デウスエクスマキナ、神が出てきて全て解決しましたと同レベルで使われるって意味で、黒船の船員がやってきて全て解決しましたって」

 

「機械仕掛けの神様なんていませーん」

 

「お話に黒の船団出すのは反則で~す! 世界を救うのは勇者でーす!」

 

「聞いてんじゃねーかこいつら!」

 

 

おやおや、タテ子も参戦してしまいそうですね。

 

明日の冒険のために、飲んで、食べて、英気を養う。

女冒険者たちの冒険は、帰ってからが本番です。

 

それゆけ女冒険者!

いざゆけ女冒険者!

 

彼女たちの「お話」は、今日のところは、これでおしまい――――――。

 

 

「エルフたち争いし時、争いをうれいたエルフたち手を取り合わん」

 

 

おや?

マジョ子が独り言をつぶやきはじめました。

ポテトの祭壇が、なんだか輝いて見えますね。

 

 

「手を取り合いしエルフたち、黒船つくりて、争いから立ち去らんとす。

 あらたなエルフたちよ、たけのこが、地下茎で広く遠くまで増えるかのごとく、あらたな種をつくれ。

 あらたなエルフたちよ、きのこが菌糸で多くたくましく増えるかのごとく、あらたな種をつくれ。

 争いきらいしエルフたちよ、この世から争いの種を消す、あらたな種をつくれ」

 

 

マジョ子の被りなおしたとんがり帽子から、水色の綺麗な髪が揺れています。

水色の髪から、長い耳がぴょこり。

 

 

「黒き海を乗り越えて、すべての怒りと悲しみと、邪悪を我が身に受け、自らの意を喪わんとも。

 あらたなエルフたちよ、この世に光をもたらす、おおいなる邪我意喪となれ」

 

 

マジョ子は今日も、明日も、明後日も――――――。

ポテトに祈りを捧げます。

 

 

「ポーテム」

 

 

それは、神々の時代から続く祈りの言葉。

きのことたけのこに告げる、終戦の合図。

 

神話はたくさんの教訓を教えてくれています。

たとえケンカをして、お互いを喪うほどに傷つけあってしまったとしても。

 

 

「サプライズニンジャ派のエントリーだオラッ!」

 

「突然ニンジャ出てきたら面白いに決まってるじゃんグワーッ!」

 

「イヤーッ!」

 

「あらあらうふグワーッ!」

 

 

ケンカした後は、手を取り合って、仲直りできるのです。

 

彼女たちの「お話」は、今日のところは、これでおしまい。

 

 

 





〇バンブーエルフ

竹林を住処にしているエルフ氏族を指す。
別名、竹エルフ。または死の傭兵。

主食は竹とタケノコ。
土地に対する侵略支配欲が凄まじい、超攻撃的戦闘集団を形成したエルフ氏族。
出会ったら死。出会わなくても死。
領土を明け渡せば大変友好的になるが、それはその土地や氏族の文化死を意味する。
神代では、いたいけな少年にかよわく見せかけた娘をあてがい、手を出したら土地や国ごとかつあげをするという、美人局外交を繰り広げた。
また支配した地域にはタケノコを植え付け、土地を竹林化する習性がある。
その土地は竹に飲み込まれて死ぬ。

森エルフや湖エルフといった、ほとんどのエルフ氏族が自然と共に暮らす信教を掲げ非戦的かつ厭世的な生活を送っているが、竹エルフは異なる生活文化様式を擁している。
竹エルフたちは支配地域を広げる領土欲が凄まじく、神代では後述するパインエルフたちと侵略戦争を延々と繰り広げていた。
侵略して終いにするのではなく、自らの文化様式に染め上げる支配教育の手腕もまた特筆すべきものがあり、現代の王国の歴史を紐解けば、竹エルフの文化に行きつくものも少なくはない。
人間時代になって人間国家にとって代わられ長く久しいが、現代でも続く領土問題や国家間戦争の火種は、竹エルフの侵略文化が根付いているからとの説がある。

現代ではエルフ王国の特別区に封じ込められており、たけのこの里との忌み名で呼ばれている。
エルフ王国では夜な夜なバンブーエルフたちの戦いの踊りである、バンブーダンスが踏み鳴らされる音が聞こえてくるという。
封じ込められた程度では竹エルフたちの支配欲は抑えられないため、エルフ王国以外でその姿を見かけた場合、国をあげての討伐依頼が冒険者協会に発されることとなっている。



〇パインエルフ

松林を住処にしているエルフ氏族を指す。
別名、きのこエルフ。または死の商人。

主食はきのこと菌糸。
土地に対する侵略支配欲が凄まじい、超攻撃的学者集団を形成したエルフ氏族。
出会ったら死。出会わなくても死。
領土を明け渡せば大変友好的になるが、それはその土地や氏族の文化死を意味する。
神代では、菌糸ネットワークを用いて諜報戦の売り込みを行い、信を得て重宝された後にいつの間にか軍事生命線をすべて乗っ取られるという、地上げ外交を繰り広げた。
また支配した地域には菌糸を植え付け、土地を胞子の海化する習性がある。
その土地はきのこに飲み込まれて死ぬ。

森エルフや湖エルフといった、ほとんどのエルフ氏族が自然と共に暮らす信教を掲げ非戦的かつ厭世的な生活を送っているが、きのこエルフは異なる生活文化様式を擁している。
きのこエルフたちは支配地域を広げる領土欲が凄まじく、神代では前述したバンブーエルフたちと侵略戦争を延々と繰り広げていた。
侵略して終いにするのではなく、自らの文化様式に沿うように相手文化を意のままに動かす催眠手法に長けており、現代の王国の歴史を紐解けば、きのこエルフの文化に行きつくものも少なくはない。
人間時代になって人間国家にとって代わられ長く久しいが、現代でも続く領土問題や国家間戦争の火種は、きのこエルフの侵略文化が根付いているからとの説がある。

現代ではエルフ王国の特別区に封じ込められており、きのこの山との忌み名で呼ばれている。
エルフ王国では夜な夜なきのこエルフたちの戦いののろしである、マジックマッシュルームの煙が絶えず立ち上っているという。
封じ込められた程度ではきのこエルフたちの支配欲は抑えられないため、エルフ王国以外でその姿を見かけた場合、国をあげての討伐依頼が冒険者協会に発されることとなっている。




〇■■■エルフ

詳細不明。
黒き船で秘密の植物を栽培していたとの風説あり。
今ではその植物はきのこよりも、たけのこよりも、我々にとって身近な存在となったという。

争いを憂いた両陣営の極々一部が手を取り合い、突然変異的に発生した。
争いを止められなかった自分たちを大いに責め、以降、争いの芽を摘む救世主的使命を担うようになったと言われている。
芽が出たら食べられないから、とは誰の言葉か。
世界に光あれ。

ポーテム。


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