焺祥燈祷(しょうしょうとうとう)   作:Halnire

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その6

 

 

 二曲目も終わり、MCを挟まずに三曲目が始まった。

 三曲目は再びMyGO!!!!の曲で、バンド成熟期に作られたものだった。

 初期のころに燈様が書かれた詩は、祥子様のお言葉を借りて表現すればご自身の抱えた〝心の叫び〟そのものという印象だった。しかし成熟期にもなると人間全体への優しさ、慈しみを内包した歌へと変遷していて、さきほどお歌いになった二曲目のような歌に荘厳さを感じられたのも納得であった。

 

 三曲目も終わると、一度幕が下ろされた。

 第二幕開始まで、しばらくの休憩時間となる。

 睦様はとくにお疲れのご様子もなかったが、他のお二人はベッドメーカーに用意させた大型の安楽椅子にお掛けいただき、ご体調を整えるためにできることは全てやった。

 

「燈、起きていらっしゃる?」

 

 休憩中、祥子様が横になっていらっしゃる燈様に問いかけられた。燈様は小さくうなずかれた。

 私は少し意表をつかれた。

 このお三方はほとんど音楽だけで通じ合っているように私には見えたからだ。

 実際にこれまでは控室でも、積もるお話もおありだろうに、会話はほとんど交わされていなかった。

 今、疲れて横たわっている燈様にあえて話していただこうとするのはどうしてだろう。

 ひょっとすると、観客には伝わってほしくない内容ということだろうか。

 祥子様はご質問を続けた。

 

「燈はAveMujicaの曲をよく歌われていましたの?」

 

 燈様は短く、うん、と答えられた。

 

「初華ちゃんの詩……昔は苦しい詩だ、ってずっと思ってて……読むと気持ちがぐちゃぐちゃになって解らなくなって、苦手だった、と思う」

 

「今は違うの……?」

 

 睦様もお訊きになる。

 

「今は、初華ちゃんの思っていたこと、解るようになった気がして……もっと解りたくて、スタジオでは何度もうたってみた」

 

 燈様はその後ぽつりぽつりと、初音様への思いを語られた。

 MyGO!!!!がまだバンド名も無いころ解散しかけたとき、初音様の言葉に力をもらえたこと。何があっても手を離さないと決心できたこと。その後一度お会いになることができたが、なぜかは判らないが初音様を怒らせてしまい、以来お会いできないままだったこと。初音様の気持ちを理解したくてAveMujicaの歌詞を何度も読んでは書き写し、それでもずっと解らなかったこと。

 

「やっと解るようになって……私が今やっていること、もしかしたら……初華ちゃんを悲しませる、かもしれない」

 

 それでも、と燈様は続けられた。

 

「私が、初華ちゃんの気持ちを伝えたい……」

 

 睦様がその後を引き取るように仰った。

 

「――それが、燈の〝ありがとう〟なの?」

 

 燈様は小さく、しかし強くうなずかれた。

 それで私は確信した。

 燈様はこれから酷く身勝手なことをなさろうとしている。しかし同時に私はもう一つのことも確信していた。

 他ならぬ祥子様がこの結末を、誰よりも強く望んでいらっしゃることを。

 

 

 

 


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