悪い人はみんなガバるガンダム 作:ガ場
一年戦争は終結した、連邦軍はジオンに勝利を収めた。二足歩行兵器の脅威、そして強さ、ガンダムという象徴。連邦軍再建計画に取り込まれるのも必然の事であった。ジオンという共通の敵は完全に消えたわけではない、依然として空に陸に隠れ潜む残党は数を知れず脅威が残っている。
「核兵器を搭載したMS!やりますね!」
地球連邦軍中将ジョン・コーウェンが新たなガンダム開発計画を発表し、保守派からの反論を抑え実行に移されようとしていた。
「ジオンのコロニー落とし…あの惨劇を忘れた者はいないだろう。二度とあの惨劇を起こさせない為に連邦軍には抑止力が必要である」
「ああ!いけません、いけませんよ!いくいく!ジオン残党が脅し程度で止まらないとはっきりわからんのか!」
「バスク少佐…貴方の考えもわかる。だがジオンだけでない新たな脅威に対しても有用だ」
「ここはやはり王道を征く殲滅作戦んんんあぁぁぁぁ!実行するのだ!大丈夫だって安心するがいい!」
会議は二択されていた。ジョン・コーウェンが中心となって進める改革派、それに反対する保守派。結果的に改革派が議題を通し、核搭載型MS開発を含む、新型ガンダム計画は始まった。だがしかし、抑止力として扱う考えに反対する者が自派閥にいたのだ。
ジオンによって家族が、身内が…恨みが募る者達は多くいる。その中で特に赤いゴーグルを付けた男、バスク・オム少佐の徹底したアースノイド至上主義、強いてはスペースノイドに対する憎悪は止まる事を知らない。核搭載MSに関しては積極的な賛成をしていたが、それを抑止力としてと文言を見つけるや否、上司と言えど内側から湧き上がるモノを吐き出すのだ。
だからこそ…ジョン・コーウェンは思うのだ。この哀れな男のようになった者達を…一年戦争時から終戦した今になっても…戦争に魂を置いてきた者達を弔うためにも…仮初と、偽善と言われようと平和を維持できる基盤を作らねばならないと。
「バスク少佐」
彼とて当初からこのようになったわけではない。一年戦争時、ジオンからの拷問によって視力が低下、それからゴーグルを付けている。その時の経験から今の人格形成に繋がったのだから、恨みの連鎖は断ち切らなければならない。
「…失礼いたしました。感情の整理が上手くいかず」
「構わないとも…アナハイムから試作機に関する資料が届く予定だ。受け取ってきてくれないかね?」
「おかのした」
廊下を歩くバスク大佐は隠そうとしない怒りを振りまいていた。あの生温い上司の思想、考えに鬱憤が溜まる溜まる。資料を持ってきていた者から奪うように受け取り、上司に持っていく前に確認する。
「ガンダム試作機」
これから開発されるMSの資料を受け取り、尚更思うのだ。これだけの戦力、力、圧倒的破壊力のある核兵器。これで宇宙のゴミ、宇宙人共を皆殺しにすれば済む話であるというのに…と。
!
「ちょっとぐらい貰ってもバレんだろう」
赤いゴーグルの内で案外小さなおめめが光った。情報を写し…ジョン中将に資料を届けた後、とある人物の元に歩みを進めた。己と同様にジオンというゴミを排除する思想を持つ同志の元に。
「ほう、これが核搭載型ガンダムか」
「そうだよ、ジャミトフ准将」
「スペースノイドの領域で配備執行するならまだしも…地球圏でだと…地球の環境のことを全く配慮しないとは!」
その者はジャミトフ・ハイマン准将。地球連邦軍財務高官であり、ジーン・コリニー大将の部下である人物だった。
ゆるさん!
「武装なんて必要ないのだ!ガンダムなら殴り合いで十分であると知れ!」
「いや、それはおかしいのでっッヘバァァァ!?」
「バカモノ!バカモノ!バカモノォぉぉ!ガンダムファイトォぉォレディーゴォォォ!!」
財務高官としての地位を発揮したのは言うまでもない。ジャミトフは地球環境のことを第一に考え、地球再生を目論むおじさんであった。
「ジャミトフ准将どうかいたし…バスク少佐もおられましたか」
二人で騒がしくしていると、騒音を聞いてジャマイカン・ダニンガン大尉がノックをして入室した。
「なるほど…核搭載型MSの運用方法及び実施地区の厳選に対する揉め事ですか」
「殴り合い空だ、武装撤去あるのみ!」
「暴力!暴力!暴力!なんで武装解除する必要があるのですか、准将の精神状態がおかしいと思わんのか!」
ジャマイカンは優秀な男だった。どのような事案案件でも処理してしまう人物であり、二人の会話から瞬時に答えを導き出した。
「でしたら2年ほど前に出た、ジオンの軍事拠点らしき場所の襲撃に使用してみてはいかがでしょうか」
提案したのは0081年小惑星帯機動艦隊を出撃させたのちにMIAとなった事案だった。ジャミトフが率先して殲滅を優先していたこともあり、記憶に残っていた。
「アクシズだったか…ジオン残党がいる軍事拠点は」
「ええ、このジャマイカンの提案です!ええ!成功の暁にはこのジャマイカンの昇進に!」
「うるさいぞ!一般ジャマイカンは黙っていろ!」
ジャマイカンは手柄に対して誠実に向き合う人物だ…ジャミトフを中心としたジャミトフ派は今日も陰謀を企てていた。
新型ガンダム計画…通称ガンダム開発計画は順調に事が運んでいった。ジョン・コーウェン中将が後ろ盾となり、ペガサス級強襲揚陸艦の7番艦予定、アルビオンを軸とし、ガンダム試作機のテストが実行されていたった。
「ガンダムか…俺だって」
ガンダム試作機のテストを任されたアルビオン艦隊、エイパー・シナプス大佐を艦長として、テストパイロットの一人、コウ・ウラキは今も整備されている新型のガンダムを眺めていた。そのMSの近くで整備している一人のシステムエンジニアに目移りしながら。
「おーい、飯を食いに行こうぜ」
「キース」
「ガンダムねぇ…俺たちみたいな新人には程遠いよ」
ガンダムは連邦にとっての新型機。新人テストパイロットの自分たちが選ばれることはないとわかっている。それでもと心に思いながら…コウは心を奪われていた。
「そこの、聞きたいことがある」
友のチャック・キースとコウはその場を後にしようと移動していると、基地で見慣れない人物から声をかけられた。総髪をまとめた銀のロングヘアが特徴の威厳のある男性だ。一瞬誰なのか困惑した二人だが、階級を見ると大佐だったこともあり、すぐさま敬礼で返答する。
「は、はい!何でありましょうか大佐殿!」
「ガンダム試作機…あのMSの武装はどうした」
「え…武装でありますか?」
「先ほど到着したばかりでな」
なるほど、と二人は納得した。試作機を動かすにあたり、機密性と試験運用を兼ねて砂漠を中心とした市街地から離れた場所に基地がある。他部署から来た大佐殿なら状況を知らないのも無理もないと…。
「アナハイムから武装について上層部と話し合う事案が出たと耳にしましたが…」
「部品が無い…と?」
「はい。現状フレアとペイント弾による演習を少し行っています、強力なバズーカを装備する予定らしく…」
それはアルビオン隊にとっても突然の出来事だった。試作機は送られてきたが、肝心の武装が来なかったのだ。最低限のビームサーベル、ビームライフルなど基本武装はあったが・・・ガンダム試作2号機 型式番号RX-78GP02 の主力武装であるアトミックバズーカは影も形も無かったのだ。
剣な顔つきで名も知らない大佐殿は黙ってしまった。
「…いつ届く」
「未定としか…」
「・・・そうか」
「あの、大佐殿はどこから、あ、ちょ…行っちまったよ」
MSの格納庫に後ろからでもわかる重い足取りで名も知らぬ大佐殿が向かって消えていく。コウとキースはあの大佐殿に違和感を感じだした、なぜあれ程武装にこだわるのか、名も知らない人物というのも合わさって二人も元いた格納庫に向かった。
「キース…よく考えたらおかしくないか?何であの大佐は試作機の武装を知ってたんだ、試作機の武装とかはパイロットとエンジニア、一部にしか詳細は伝えられないはずだ。俺だって聞き耳を立てて知ったぐらいだぞ」
「それもそうだな…さっき到着したばかりだって…でも上層部から教えられてたとか?」
「だったら俺たちに聞く必要ないだろ。現場より上ならアナハイムから直接聞ける立場だぞ?」
二人が嫌な予感を感じた時だった。格納庫から大きな破壊音が響き渡った。それは先ほど大佐が気にしていたガンダム試作2号機であり、固定デッキを破壊しながら無理やり移動しようとスラスターを吹かし始めていた。
「イヤー!私のガンダムがァぁぁぁーー!?」
…と周りに叫びながらガンダム試作1号機に乗ったシステムエンジニアの女性が、2号機にしがみつくMS同志の取っ組み合いが始まったのだった。
ジョン・コーウェン…変化なし。核を配備するのはいいけど、試作機にそのままロックも何もかけず核バズーカ送っちゃう。バスクを野放しにするなど、元からいろんなガバが目立つからガバガバじゃねえか。
バスク…淫夢。スペースノイド・ジオンはクソは変わらず。でもガバる。
ジャミトフ…悪顔なのにアースノイド・スペースノイド両方のバランスを重視しているおじさん。アースノイド主義というより、安定を求めている。コロニー落としによって悪化した地球環境について深く考えており、東西南北マスタージャミトフになるかもしれない。
ジャマイカン…出世第一主義。連邦の敵は標的にするおじさん。なんだかんだ出世の為に誰でも悪党討伐に誘導するおじさん。
謎の大佐殿…核ないよぉ!閣下の情報ガバってるよ!