悪い人はみんなガバるガンダム   作:ガ場

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このハゲー! 0083

 

 ジオンはア・バオア・クー防衛戦において連邦の攻防に押しつぶされる形で幕を閉じた。指揮系統、ビーム兵器、アムロ、など様々な原因はあるが、単純に物量差が10倍以上であり、例えジオン側が全MSにビーム兵器を標準装備にできていても負けていただろう。そもそも武装も統一しておらず、一般的なザクのマシンガンであっても他MSで対応できない・互換性がない場合がある(標準の120mm弾でも使用不可、専用弾・専用武装が多い)。新型MSはパイロット側を考慮しない操作性である(ザク系統と全然違う。そもそもメーカーも違ったりなどある)。MSバリエーションは豊富だが用途が限定的すぎる(最初からゲルググだけ量産しとけと…)。・・・ジオン驚異のメカニズムと呼ばれるには由来があるのだ。

 

「うむ…今日もギレン総帥は輝いておられる」

 

 日課のギレン像磨きに満足しているおじさんがいた。その名はエギーユ・デラーズ。

 

 茨の園と呼ばれる旧サイド5の暗礁宙域においてジオン残党の拠点が存在した。ギレン・ザビ親衛隊のエギーユ・デラーズが中心として創設し、大敗したジオン兵の大半はアステロイドベルトの小惑星アクシズへ向かい、負けを認めない者達、いわゆる過激派が地球圏に残り武装組織デラーズ・フリートが吸収した形である。

 

「そろそろガトーがMSを奪取した頃であろう。私も準備しなければ…行ってまいります!ギレン総帥!」

 

 ギレン・ザビの銅像に敬礼しながらデラーズはその場を後にする。

 

 ジオン軍の宇宙戦艦グワジン級戦艦一隻、ムサイ級、チベ級巡洋艦15隻、補給艦二十隻。デラーズによる連邦に対する反抗作戦に賛同した者達が集まり、残党と片付けるには多い戦力がそこにいた。だがその実態は宇宙海賊と大差ない。残党兵、強いては彼らはれっきとしたテロリストであるため、表向き補給が難しいのだ。補給こそ裏でジオン、元ジオン同志でやり取りはあれど限度がある。それを補うために行うのは略奪だ、基本的に連邦の補給部隊を襲うが、民間船の方が安全なのは明白。軍ではなく、群である現状、デラーズがまとめようともハメを外す輩はいる。

 

 そのような問題が発生してもデラーズは相当悪質でなければ黙認する。ジオン独立のため、大義のための少なからずの犠牲と考えるためだ。宇宙空間、娯楽の少ない暗黒の海でストレスを感じ続けるパイロットのガス抜き、組織維持のため非情な事も行うのもデラーズという男だった。

 

「アナハイムにいる同志には感謝せねばならぬな。連邦の卑劣な行い、南極条約違反を未然に防ぐことができた」

 

 南極条約は核兵器などの大量破壊兵器、コロニー落としなどの物量兵器を互いに使用禁止を含む条約である。ただし、ジオン公国の間で締結した条約な為、現在ジオン共和国となった時点で失効している。テロリストの彼らの中では公国のままな為、都合がよい解釈となる。

 

『連邦が求めた機体情報をお渡ししました。核の炎だけは防いでください!』

『うむ、これでこちらも方針が決まった。同志オリヴァーよ、感謝する』

『いえ、こちらも資金さえあれば協力を惜しまないと言われてますので…その、方針をお聞きしても』

『ふむ、コロニー落としだが?』

 

 デラーズはテンションが上がると冷静な判断ができなくなるおじさんだった。同士だし現場情報教えてもいいっしょと、機密情報を外部にいる者にもベラベラ喋っていた。

 

『な!?いけません!またあの悲劇を繰り返すなんておやめください!』

『何か問題があるのかね。これは必要な処置だ、卑劣な連邦に対する答えである!』

『そ、そんな』

『情報提供感謝する』

 

 デラーズは同志には嘘をつかないと決めている。それがどんな事であろうとも…。相手がどのように思おうとも。

 

「そんな…まさか…」

 

 情報提供者その者の名は元ジオン公国軍・第603技術試験隊所属オリヴァー・マイ技術中尉であった。彼は敗退後アクシズに向かい、その後エンツォ・ベルニーニというアクシズ内の過激派からのアプローチで本来戦うのも嫌いだった彼の中でくすぶる、技術試験の中で散っていった男たちの最後を労うと言葉巧みに誘導されていった。本業としてアナハイムに取り入り、その裏で情報を流す。そのようなスパイであり、パイプ役を任されてしまっていた。ただ、技術者として本心からMS開発から始まり、アナハイムでの生活に満足はしていた。

 

 そんな彼であっても当初はジオン色に染まっていた。コロニー落としに対し、その行為に否定的であっても戦略的には必要な事だったと…だが、アナハイムに、一般的な家具製造にも関わるようになって徐々に考えを改めていくことになった。正確には一般的正常な感性に戻っていったのだ。

 

 宇宙世紀0079年頃から各コロニー・地球での移動手段はエレクトリック・カー(電気自動車)が主流になり始めた。勿論、≪スプーンから宇宙戦艦まで≫をキャッチフレーズにしているのだから当然、一般自動車産業にも介入している。

 

「…」

 

 自動車部品の製造にも関わることになった彼は現場に出向く時があった。動かすにあたり、その地区、環境を理解するには地球に降りるのも仕事であった為に…その時見たのだ、コロニーが落ちた地…その惨状、その余波による自然災害、人々の嘆き…スペースノイド・アースノイド、どちらも人であったと改めて理解してしまったのだ。

 

 自分がわからなくなった。今もジオン兵としての自分がいる、同時にただの技術者としての自分がせめぎ合っているのだ。

 

「オリヴァー君か、どうしたのかね暗い顔をして…お友達から何か言われたかね?」

 

 働いている職場は自分の立場を理解してくれている。裏で繋がっていると確信しながらもパイプとして受け入れる程に…経営に対して上昇志向が強いのであった。

 

 後宇宙世紀0080年代になってアナハイムは企業買収を経てMS開発・製造を中心に経営していくことになる。

 

 

 

 ぬわぁにぃぃぃ!?コロニー落としだとぉぉぉぉ!?儲かるじゃないっ早く連邦に伝えなきゃ!

 

 

 丁度いい武装があったので、それを大量に売り込む先ができて上司はウキウキした。それに伴い、連邦のジャミトフ派がオラオラと改革派を批判する材料になって、ガンダム試作機の武装を送らない事案に発生していったが・・・その追加情報をデラーズは知る事ができなかった。

 

 

 


 

 

 

イヤー私のガンダムのビームサーベルがァぁぁ!?

「ぐぅっ!この機体、バルカンの弾もないのか!?なぜッッ」

 

 ガンダム強奪作戦…ジオン再興のために実行された本作戦は形は成功していた。試作機の奪取は成功、例え主力の核武装、および弾頭がなくとも時間さえかければ代用品の用意は可能であると判断したためだ。実際可能ではあるのだ、本来のアトミック・バズーカの水爆並みの火力こそないが、一年戦争前に使用していたザクのバズーカで核弾頭を撃っていたこともあり、その在庫はまだ存在していた。また、交渉次第でアナハイムから武装を注文できる可能性もあったのだ。機体だけでも意味はある…ただ、その情報が連邦にバレていて、わかりずらい棺桶になっているという現実に目をつぶればだが…。

 

 強奪を成功させた男、アナベル・ガトー。ソロモンの悪夢とまで呼ばれるジオンのエースパイロットであった。MSデッキに乗り、現在搭乗している試作2号機に乗り込むまで妨害もなくスムーズに事は運んでいた…唯一、どこかで見たような女性エンジニアに見つかりはしたが問題ないとMSを動かした。だがそれは間違いだったと、今更ながらガトーは内心で舌打ちをしてしまった。

 

イヤー私のガンダムが!?

「その声はニナだな!?どうしてここにッ」

 

 ニナ・パープルトン、かつてのガトーの恋人が偶然にも強奪現場に、しかもガンダムに乗って立ち向かってきていた。しかもシステムエンジニアのはずなのに無駄に技量がよかった。武装が無い2号機、当然楯もないので手足が自由に動かせたのが唯一の救いだった。振り下ろされたビームサーベルを横に避けながら持ちてを蹴り上げバランスを崩させる。しかし、すぐさま1号機は起き上がり頭部バルカンで牽制する。

 

「その声はガトー!?どうしてここに」

「今は時間が無い!君も私と共に空へ来てくれ!」

 

 機体に弾が当たるが無理やり接触回線を行う。蹴り上げの際、偶然機体同士の回線がつながり声が聞こえたのですぐさまガトーは二ナであると確信していた。MSのことになると事が外れる難儀な彼女を。

 

私のガンダムを返してェぇぇ

「グぅ駄目か!っ仕方ない援護を!」

『了解!』

 

 その声に応答したのは高台から基地を混乱させる役目のボブというパイロットだった。ボブの乗るMS、ザメルの主力武装680mmカノン砲による砲撃は下手な格納庫程度の装甲を容易く破壊する威力があった。

 

 援護要請をした2号機周辺に長距離砲撃を繰り返す熟練の技を受け、辺りに噴煙の如く砂煙が巻き起こる。その隙にガトーはHLV(大気圏離脱艇)まで離脱を試みた。

 

イやーー!?私のガンダム部品がァぁぁ!?

 

 夜間での砲撃だったこともあり、砲撃のフラッシュバックにザメルの影がよく見えた。ガトーが離れたこともあり、一号機のビームライフルを使用する。二ナは試作機の設計に関わっていたこともあり、機体のクセもすぐにわかる空間認識能力を持っていたのだ。片手でビームライフルを構え、そのままザメルのコックピットに直撃させた。ザメルは強力な砲撃能力の変わりに機動力が皆無なMSな為、単純な打ち合いでは的になってしまうのだ。

 

「ッボブっお前の勇士無駄にはせん!」

「待ってガトー!私のガンダムを置いて行って!?」

 

 しかし、ザメルの、ボブの援護は確かにガトーの脱出へと導いていた。

 

 

イヤー!?私の2号機ガァァァ!?

 

 

 空に撃ちあがるHLVに向かってがむしゃらにビームライフルを連射する一号機にハラハラしながらも…ガトーはガンダム2号機の奪取に成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念ながらアルビオン隊では止められなかったようですな。ジョン・コーウェン中将の責任を追及せねばなりますまい」

「ああいいよ!基地に向けて基地に!」

「了解しました。本艦はこれより、ジオン残党拠点、茨の園に向けて発艦する!」

 

 連邦の宇宙基地より、試作2号機のシステム内に仕込まれた発信機に向けて連邦のサラミス(巡洋艦)艦隊が向かおうとしていた。

 

「全く、新型機を預けてくれるのはいいが…これじゃあ戦闘が楽しめそうにない」

 

 サラミスのMS格納庫にて野獣のような男が預けられた機体…それは本来試作機の予備機である。その方腕には巨大な楯、そして肩には…巨大なバズーカとの接続部位が見て取れた。

 

 

 





 エギーユ・デラーズ…口が軽いおっさん。無駄にカリスマがあるテロリストである。

 アナベル・ガトー…根っからの軍人。上のおっさんの被害者。

 ニナ・パープルトン…ガトーの恋人だった人。今はガンダムが恋人。

 オリヴァー・マイ…技術中尉である。アナハイムを通して一般の空気に当てられジオン星人の洗脳から正気に戻った。

 コウ・ウラキ…主人公じゃない。君は関わらない方がいい。
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