持たざる少年   作:交渉人

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14.工房

 恒例になりつつある、依頼に向かう前の打ち合わせ(ブリーフィング)がレイの問題提起から始まる。

「ご褒美をどうするか、だが」

 レイの言葉に、マルが眉をひそめる。

「各自好きに選べばいいだろう?」

「ダメだ」

 レイが即答すると、ニナは小さく苦笑する。

「ダメなの?」

「その後の活動に関わってくる話だ」

 レイは一息ついて続ける。

「ミラの話だと武装や車という話だった」

「それなら、自分が欲しいものを選べばいいんじゃ……」

「各自の役割に応じた物を貰うべきだ」

 レイの断言に、ダグは一理あると頷く。

「……じゃあどうするんだ?」

「ミラの依頼の後、俺はハンターとして活動をしたいと考えている」

「それで?」

「ハンター稼業は基本的に遺跡探索だが、あっちは自信がない」

 レイは軽く周囲を見渡し、続けた。

「俺は荒野のモンスターハントを中心とした活動を考えている。当面はな」

「汎用討伐依頼で手堅く稼ぎながら?」

 マルが確認すると、レイは短く頷く。

「……そんな上手くいくかわからないけどな」

 マルは腕を組む。

「なるほど」

「というわけで車を貰って、荒野を中心とした活動になる。その前提で、俺含めてどのような役割を各自が担うかが重要になる」

「なるほどな……。で、続きは?」

 レイは小さく肩を竦める。

「俺が考えたのはここまでだ。ニナはどう考える?」

「……え、わたし?」

 突然振られたニナが少し驚く。

「この中でハンター業に一番詳しいのはニナだろう」

「……あのさ、あと一週間しかないんだから、みんなも真面目に勉強しようね」

 ニナが溜息をつきつつ、情報端末を開く。

「ミラさんのお勉強のやつもそこまで詳しい話はなかったから、少し調べさせて……」

 端末を操作しながら、ニナは確認する。

「……そうだね、車は制御装置の恩恵で単独運用(ワンマンオペレーション)が可能らしい」

「つまり、一人で一台を動かせる?」

「そう。でも、一台での運用なら役割を分けて考えるべきだね」

 ニナは端末をスクロールする。

「えーと、何々?指揮する人、運転する人、攻撃する人、索敵する人、支援する人、だってさ」

「指揮は……」

「レイでしょ」

 即答するニナに、レイは少し眉を上げる。

「とりあえずやってみるしかないか」

「次に運転についてだが……、俺がやってみたい」

 レイが軽く言うと、ニナは少し考える。

「……運転したいの? 指揮も兼任する形?」

「正直、してみたい」

 ニナは短く息を吐いた。

「ああ、そう……」

「攻撃は?」

「言わずもがなだけど、車両兵装もしくは個人携帯兵装でモンスターを迎撃する役目」

「やりたい人」

「はい」

 即答するダグ。

 レイは小さく頷く。

「はい、ダグ。続けてくれ」

「軽い」

 ニナが小さく呟くが、気を取り直して続ける。

「えーと索敵は、モンスターの索敵、地形の分析など。情報収集機器で周りの状況を確認する役目。かなり重要なポジションだね」

「情報収集機器が必要だな。やりたい人」

「……」

 沈黙。

「保留。支援って具体的には?」

「色々だね。モンスターの分析などの戦闘補助とか、車両兵装の管理、緊急依頼の管理、他のハンターとの通信など、とのこと」

「なるほどな……、まあ情報端末があれば出来そうだな」

 レイは短くまとめる。

「じゃあご褒美は車、武装、情報収集機器にするべきかな。意見ある人」

「武装は強化服にするべきだと思うぜ。貰えるならな」

 ダグが呑気に言う。

「理由は?」

「硬ければ死なない」

「……車から降りた時の話か?」

「いつも乗ってるわけじゃないだろ?あと街での自衛も必要になるはずだぜ。多分な」

 

 武器と防具、どちらに重きを置くかは個人により見解の相違がある。一般的にスラム街出身者は武器に重きをおく傾向がある。まず入手性に差があるからだ。モンスターに有効な武器は比較的安価に入手が可能だが、モンスターの攻撃に耐える防具の入手は価格的に現実的ではない。また、スラム街に不自然に出回る装備も武器が中心となっている。時折モンスターの襲撃に晒されるスラム街の住人はその身を持って抗う。武器すらなかったら逃げ回る以外に選択肢はない。生き残ったら成り上がる機会にありつける。上手くいけば遺跡から遺物を持ち帰るハンターも夢ではない。死線を何度か潜り、生き残るような幸運が続けば、だが。

 一方、ハンターランク10から始められる、スラム街出身者と比較して裕福なものはそうではない。武器と防具両方共に揃えるのが基本だ。価格帯にもよるが強化服は標準装備の中に入る。そのようなものは武器と防具、どちらを優先するかというと、より身体の安全を確保できる強化服を重視するというものもいる。死んだらそれまでだからだ。生き残れば再起のチャンスがある。 ある程度予算が充実したものは出身の差に関わらず完全に好み、あるいは、所属する組織の方針によるものとなってくる。その程度の話だ。

 

 レイは少し考えた後、頷いた。

「……あまり考えたくはないが、そうだな。いいだろう。他に意見は?」

「俺は索敵を担当してみたい」

 マルが手を挙げる。

「わかった。ニナは何かやりたいことはあるか?」

 ニナは少し思案し、首を振る。

「……体を動かすのは自信がない」

 レイは軽く笑い、短く言う。

「ひとまずニナは情報担当ってことで支援してくれ」

 ニナは小さく息を吐いた。

「……はぁ、了解」

「今日はここまでだな」

 レイが立ち上がる。

「俺はミラに何が選べるのかを事前に教えて貰えないか確認する。お前らも考えておけよ」

「うーい」

 ダグがだらけた声を出す。

「ミラの所に行くぞ」

 レイの言葉で、話は打ち切られた。

 

 

 レイは短く息を吐き、ミラに問いかけた。

「ミラ、ご褒美の情報、事前に教えてもらえないか?」

 ミラはわずかに思案した様子を見せ、申し訳なさそうに答える。

「ごめんねー。ご褒美の情報は事前には教えられないんだ」

 レイは予想をしてた答えに、少し眉を動かした。

「そうか……」

「こっちにも色々あってね」

 ミラの声は軽かったが、含みを感じさせる。

 レイはわずかに考えた後、続けた。

「一日で決め切れるのか、不安でな」

「ん、わかった」

 ミラの声に迷いはなかった。

「決められなかったら、決めるまで付き合うことを約束するよ」

 レイは少し驚いたが、短く息を吐いた。

「いいのか? ありがとう、助かる」

 ミラはどこか楽しげに言葉を重ねる。

「どれを選んでも、今後のハンター稼業に役立つものであることは保証するよ!」

 どこか誇らしげな口調だった。

 レイはその態度に、安堵したように笑う。

「……なら、安心か」

 ご褒美の情報は事前開示されない。しかし、ミラの保証がある。

 レイは軽く息を吐き、考えを巡らせる。

 選べるものが何なのか――当日まで、わからないままだった。

 

 

 依頼の最終日を迎える。

 ミラの車両に乗り込み、しばらく荒野を進む。

 途中、何度か戦闘が挟まるが、それまでの日々と変わらないものだった。

 やがて、車両の前方に巨大な開閉扉が現れる。

 緩やかに開く。

 ミラは何も言わず、車をそのまま進めた。

 扉が閉じると同時に、光学迷彩が起動し、溶けるようにその構造が消える。

 

 車両が停止する。後方の扉が開き、ミラの弾む声が響く。

「降りて降りてー!」

 レイたちはわずかに訝しみながらも、ミラの指示通り降車する。

 視界が広がる。

 巨大な倉庫にも似た広い空間――前方にはさらに小さな扉がある。

 レイが眉をひそめる。ご褒美の贈呈場所にしては無骨すぎる場所だった。

「……ここは?」

「ここは工房だよ」

 背後から、聞き慣れた声。振り向くと――そこに立っていたのは、見知らぬ女性だった。

 服装は、どこか都市の女性職員の制服にも似ている。しかし、決定的に異なる。旧世界の風を感じる衣装。そして、微笑みながら、レイたちを見つめていた。

「……え、ミラ?」

 ダグが眉をひそめる。

「人間だったのか?」

 問いには答えず、ポーズを取る。

「ミラだよ。どう?」

 レイは短く考えた後、真面目に答える。

「美人だと思う」

 東部の人間は美形が多い。これは、旧世界の人間の末裔であることが影響しているという考えがある。旧世界由来の遺伝子改造の最終生産物――その子孫。美醜についても当時の基準で美形に偏ったため、現代においても美形に偏っている――そういう説だ。

 レイは健康的な成人女性をまだ見慣れていない。また、美形にも幅がある。ミラの外見は――レイの基準だと、明確に美人の範疇(はんちゅう)だった。

 ミラは得意げに答える。

「ありがと。もう少し語彙(ごい)が欲しいところだけどね。付いてきて」

 ミラが先導し、奥へと進む。

 レイたちは、ミラの存在を人として受け止めている。

「人間だったんかい」

 ダグの軽い声に、ニナは溜息をつく。

「ダグ、少し黙って」

 ニナはダグを短く注意し、思案する。

 (多分、自動人形……しかし、危険はない。ミラさんはいい人……。ということは、人……?……うん、考えるのは止めておこう)

 

 

 工房の扉が開く。先ほどの広い空間と同様の光景が広がる。

 しかし、奥には店舗のような外観のスペースがあり、そこに女性が立っていた。

 印象的な燃えるような赤髪。技術者らしい装い。武器屋にいそうな気配もある――そんな雰囲気だった。

「ようこそ、わたしの工房へ」

 女性は、自然な笑みを浮かべながら告げる。

「ここを営んでいる火華(ヒバナ)だ。よろしく」

 レイは、微妙に言葉を探しながら答える。

「あ。よろしくお願いします」

 雰囲気に呑まれていた。

「ミラから話は聞いている。好きに選ぶといい」

「わかっ……わかりました、火華さん」

 レイは少し落ち着き、確認する。

「もしあればですが、車と強化服と情報収集機器を見たいんですが、どこにありますか?」

「ではまず車から行こう。こっちだ」

 火華は動きながら答える。周囲を見渡すと、様々な物が展示されている。しかし――車両は、一台のみだった。車両の前で、火華は説明を始める。

「用意した車は装甲車だ」

 大型の車両、四輪。機銃と大砲が1門ずつ備わっていた。

 火華は続ける。

「主砲と副砲を備える。特殊兵装はない。主砲は市中の砲弾と専用弾を使用できる。専用弾はここでしか補給できない。有料だ。また、合食再構築の技術を流用し、材料さえあれば砲弾の生成が可能だ」

 レイは情報の密度に圧倒される。火華は短く間を取り、レイたちの様子を見てから続ける。

「副砲はレーザー型だ。弾薬は使わない。エネルギーは車両のエネルギーと共用だ。力場装甲(フォースフィールドアーマー)も同じエネルギーを使用するため、運用には注意が必要だ。車のエネルギーは自動補填(オートチャージ)に対応していて、概ね一晩で充填される」

 レイは車両の運用イメージを脳裏に描き、驚く。確認のため、火華に問う。

「上手く使えば補給不要という理解で合う……合いますか?」

「合うぞ、そのように作ったからな。ああ、あと気を遣う必要はない。普通にしゃべっていいぞ」

 まるで当然のように火華は答える。

「……めちゃくちゃ便利じゃないか……」

 レイは少し考え、再び確認する。

「材料って、その辺に落ちてる鉄くずでもいいのか?」

「いい。ただし、砲弾の質は材料に左右される。最低品質の砲弾でも、それなりの役目はこなす。普段は副砲を使い、ここぞという時には主砲、倒したモンスターの素材で砲弾生成、という基本運用(フロー)を想定している」

 レイはわずかに思案する。

 (……エネルギー管理が肝だな)

 火華は、レイの反応を見ながら説明を続ける。

「防御は力場装甲(フォースフィールドアーマー)頼りなので、物理的な装甲は薄い。その分、積載には余裕がある。見た目より多く積めるはずだ。防犯機構については、現在の社会状況を考慮し、柔軟な設定が可能だ。ただの施錠(ロック)から、自律防衛まで対応となっている。光学迷彩も利用可能だ」

 レイは、改めて車両を見つめる。

「なるほど……。最高だな!」

 火華は、にまにま、とした表情を浮かべ、嬉しそうな声を漏らす。

「……そう言ってもらえると嬉しい」

 

 ミラの視線が火華へ向かう。

『やりすぎではないか?』

『いや、これくらい必須だってー。便利だよー?ミラのだって同じじゃん』

『それはそうだが、最初からこれでは……』

 

「この車、なんて言うんだ?」

「特に決めてない。好きに呼んでくれ」

「え……、わかった。ちょっと相談させてほしい」

「詳細は取扱説明書(オーナーズマニュアル)でも確認できる。あとで見るといい」

 

 レイは真面目な表情で確認する。

「車は絶対選ぶつもりだったけど、選ばない理由ないだろこれは」

「まあ同意。というか、これ乗り回して大丈夫なやつなの?盗まれない?」

「……防犯装置に期待だな。ダグとマルもいいよな?」

「異論はない」

 

 

「次は強化服だったな?こっちだ」

 火華が軽く手を動かしながら先導する。

「はい!」

 レイがわずかに気を引き締めながら歩を進める。

 

 ミラと火華が言葉を発さず、言葉を交わす。

『なんか年相応って感じで若いねー』

『車はいいものだからな』

『あーね?』

 

 透明なケースに、強化服が飾られている。火華はゆっくりとそれを指し示す。

「用意した強化服はこれだ」

 展示されるのは、ただ一種類。

「車と同じく、一種類しかない。勿論、有料ならその限りじゃないがな」

 レイは火華の言葉に考えを巡らせる。

 (有料……。いくらくらいなんだろうな)

 火華は説明を続ける。

「強化服は利用者の安全を重視した設計になっている。力場装甲(フォースフィールドアーマー)を主としており、利用エネルギーは車と共用可能。つまり、予備バッテリー的な扱いを相互に対して行える。意味はわかるか?」

 レイは少し考え、確認する。

「……車のエネルギーを強化服から補給できるってことか?」

「その通りだ。また、その逆も可能だ」

 レイは喉を鳴らした。

「なるほど。すごく便利だな」

 火華は嬉しそうに言葉を紡ぐ。

「各種装置との連携も大体可能だと思うが、その辺は使いながら試してほしい。また、学習機能を備えた補助機能が強めに入っているため、すぐ使えるはずだ。その特性上、使えば使うほど使いやすくなり、思い描く通りの動きが出来るはずだ。特に訓練なく使えると思ってくれていい」

 ダグがぼそりと呟く。

「……最高じゃん」

 火華の表情がわずかに緩む。

「……そう言ってもらえると嬉しい」

 火華は、にまにま、とした笑みを浮かべる。

 

 ミラはどこか温かい視線を向ける。

『超人並みに動けるとかはないのか?』

『それはやりすぎー』

 

 レイは考えを切り替え、確認する。

「これの名前は?」

「好きに決めていい」

「……あ、はい。ちょっと相談します」

 レイは、火華の反応を見ながら思考する。

 (ただ作りたいだけの人なのかな)

 

 レイは皆の意見を確認する。

「俺には文句なしに聞こえたけど」

「強化服って、訓練しないと真面に使えないとか、補給が必要ってネットに書いてあったけど、その辺は大丈夫そうだな」

「いいんじゃないか?着るのダグなんだろ? ダグがよければ」

 火華が意外そうに声を上げる。

「全員着ないのか?」

「え?」

 唱和するように反響する声。

「四人分くらいはあるぞ」

 レイは驚きを隠せない様子で確認する。

「え、だってご褒美って一人一つだって……聞いてはないけど、そう思ってたんだけど。ミラ、どうなんだ?」

 

 ミラと火華の短い会話が交わされる。

『いいのか?追加では払わないぞ?』

『いいよ!だって生身でおでかけは危ないじゃんか!』

『ああ、そう……』

 

 ミラが、複雑な微笑みを浮かべながら告げる。

「いいよ」

 

 レイは短く息を飲む。

「マジかよ」

「いいんだ」

 ダグがわずかに笑う。

「じゃあ全員じゃん」

 

 

「問題ないなら次は情報収集機器だったな。こっちだ」

 火華が案内を始める前に、レイが僅かに息を吐く。

「あ。聞いていいですか?」

「ああ」

「車に四人分の強化服を載せた場合、一晩で全て満タンになりますか?」

 火華は即答する。

「完全に枯渇した状態だと半分ってところだな。市中のエネルギーパックも使えるから、それと併用するか、活動時間を調整する必要が出るだろう」

「わかりました、ありがとうございます」

 

 火華が情報収集機器について説明を始める。

「情報収集機器はまだ技術蓄積中でな、試作の意味合いが強い。とりあえず頑丈には作ってある」

 一息ついて、続ける。

「車載の情報収集機器と連携し、射撃精度の向上が可能だ。また、基幹通信を利用しているため、市中の情報収集機器より広範囲を索敵可能なはずだ。その特性上、通信障害にも強い」

「良し悪しがわからないから何とも言えないけど、貰う以外の選択肢はないような気がする。マル、どうだ?」

「そうだな」

 マルは少し考えた後、頷く。

「売ってるやつより良さそうってのだけは理解できたから問題ないと思う」

 

 

「じゃあ、車と強化服と情報収集機器で――」

 火華が食い気味に割り込む。

「武器はいいのか?」

 レイは戸惑い、ミラを見やる。

「え?これ以上いいのか?ミラ?」

 

 ミラは火華を見やる。

『いいのか?出さないぞ?』

『見て欲しいもん!』

『ああ、そう……』

 

 ミラはにっこりと笑い、少し投げやりに、告げる。

「いいみたい」

「……? いいならいいけど……」

 

「武器はいくつか用意してあるぞ」

 火華は少し浮き浮きとした様子で説明を始める。

「まずこれ、刀剣だな。銘は火焔(ほむら)。戦車だろうと真っ二つだ。斬撃は勿論飛ばせる。長さと射程は設定可能、エネルギーは車と共用。エネルギーがなくても一応使えるが、お勧めはしない」

 レイの内心で感慨深く独り言ちる。

 (これは名前があるんだ……)

「次にハンドガン。銘は(せん)。相手は死ぬ」

 (え、急に雑になった)

「最後にAAH突撃銃。いやな、改造の好事家がいると聞いてな。真似じゃないが試しに作ってみたものだ。威力と射程は設定可能だ。ああ、試射は荒野ですることをお勧めする。街中で発砲した結果の責任は負えない」

「え……、ちょっと相談する」

 

 ミラは呆れたような表情で火華を見やる。

『どう考えてもやりすぎだろう』

『安全には配慮してる!それをいうなら、そもそも情報端末がやりすぎ!』

『あれは最低限。あれ以下は認めない。本人認証が出来ないと意味がない』

 

「急にどうしたって感じだけど、どうする?」

「なんか危なそうだな」

 勢いだけで生きてるダグも躊躇する。ニナが真面目な表情で警告するように告げる。

「真面目な話、都市防衛隊に通用する威力のものは持たない方がいいよ。最悪、持ってるだけで敵対行為になる」

「そうか……。なんか捕まりそうだし武器は止めておくか……」

 しかし、火華が少し必死な様子で割り込む。

「AAH突撃銃だけでも!」

 レイはわずかに後ずさる。

「え……、いや、気持ちはありがたいが……」

 火華の口調が急に幼くなる。

「お願い!」

 レイは困惑する。

 (断る理由も……ない、か?)

 火華の目が潤んでいる。

 (……泣かれたら面倒だ。いや、こっちが悪いのか?)

「……わかった。AAH突撃銃を一丁だけ、貰う……」

 途端に、泣き出すような表情から一転し、火華の、にまにま、とした表情が溢れる。

 (……騙された?)

「大事にして?」

 レイは溜息を付く。

「……ダグ、使うのはお前だからな。気を付けて使えよ」

「お、おう……」

 

『剥がれ落ちてるぞー』

『うっさい。泣くぞ』

 

 怪しげな武器の押し付けまで始まった火華の見せたいもの発表会は、終わる気配がなかった。

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