持たざる少年   作:交渉人

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31~34話まで仮投稿です。
あとで大幅に書き直すか、展開そのものが変わる可能性があります。
閲覧の際は、以上についてご了承ください。


31.モンスター駆除の依頼

 シジマの徒党を抜け、独立したレイたち。

 ただ生き延びるだけで精一杯だった状態を脱却し、ハンター稼業を続けていく。

 

 クズスハラ街遺跡。

 かつて旧世界を支配した国家の都市として栄えたその場所は、今や色無しの霧と廃墟に覆われた死の領域だった。

 レイたちの車両が赤茶けた平原を抜け、遺跡の外縁部へと差し掛かる。

 フロントガラス越しに見える景色は、崩れかけたビル群と、朽ちた道路標識、そして宙を漂う薄い霧だった。

 

 (……クズスハラ街遺跡か。久しぶりだな)

 

 ポリタンクのモンスターと死闘を思い返しながら、レイは助手席で情報端末を確認しながら、遺跡の外観を観察する。

 情報端末には依頼の詳細が表示されていた。

 

【依頼内容:クズスハラ街遺跡外縁部のモンスター駆除】

 依頼主:クガマヤマ都市 長期戦略部

 報酬:基本三百万オーラム、追加討伐ボーナスあり

 目的:仮設基地建設に伴う周辺区域の安全確保

 

 この依頼は、クサカベの伝手で回ってきたものだった。

 ――あれは、シジマとの交渉から数日後のことだ。

 

 

 ハンターオフィスのヤードで、レイはクサカベと再び顔を合わせていた。

 

「……素材の件、残りの四億についてですが」

 クサカベは相変わらず淡々とした口調で切り出した。

「交渉に応じる気はありますか?」

 

 レイは短く頷く。

「内容次第だ」

 

「素材の出所――具体的には、どの遺跡で入手したか。それだけ教えてくれれば、四億どころか、更に上乗せも可能です」

 クサカベの視線は鋭く、だが威圧するものではなかった。

 ただ純粋に、情報を求めている目だった。

 

 レイは少し考える。

 (遺跡の場所は言えない。リョウの手引きで向かった場所だ。地下道を経由する――恐らくコロンが必要になる。そんな情報、渡せるわけがない)

 

 全てを拒否するのも得策ではない。何も言わなければ、交渉決裂。統企連に敵対意志ありとして、残額が反故にされる可能性もあるとレイは考えた。

 だが、それは考え過ぎだ。統企連の判断に()()()()()はあれど、健全な企業活動を推進している。それはハンターの活動も含まれる。ハンターオフィスが査定結果を覆すことはあり得ない。――統企連と敵対しない限りは。

 

 (……言えることだけ言うか)

 

「……言えるのは、クガマヤマ都市近郊ということだけだ。詳細な座標は伏せる」

 

 クサカベの表情がわずかに動く。

 驚き――ではなく、興味。

 

「理由を伺っても?」

「次があるかもしれないからだ」

 

 沈黙。

 クサカベは無言でレイを見詰めた。

 その視線の奥で、何かが計算されている。

 

 (……クガマヤマ都市近郊?)

 

 クサカベの脳裏に、地図が浮かぶ。

 東部でもやや中央寄りに位置するクガマヤマ都市。その近郊で、手に入るはずのない素材。

 あれは、もっと東側――東部の軍事施設に近い場所でしか産出されない代物だった。

 

 (だが、こいつは嘘をついているようには見えない)

 (ならば――本当にクガマヤマ都市近郊に、未発見の遺跡があるのか?)

 (あるいは、特殊なルートで繋がっている……?)

 (まさか、クズスハラ街遺跡の奥部……?)

 

 どちらにせよ、価値のある情報だった。

 この情報を都市に流せば、他企業への牽制材料になる。

 「クガマヤマ都市近郊に未発見の遺跡」――それだけで、統企連内部の勢力図が動く。

 

 クサカベは短く息を吐いた。

「……なるほど」

 

 レイは内心で呟いた。

 (遺跡そのものの情報じゃない。これじゃ、交渉には応じたことにならないだろう)

 

 クサカベはレイの様子を観察する。

 (こいつは、交渉に応じたつもりはない。クガマヤマ都市近郊という情報に価値があるとは思っていない)

 (だが、こちらにとっては――十分に価値がある)

 (しかし……ランクが低すぎるな。今のままでは……)

 

「では、交渉不成立とします。残額、四億オーラムで支払いを確定します」

 

 (まあ、そうだよな)

 

 想定通りの流れ。レイは無感情でその言葉を受け取った。

 だが、クサカベは続けた。

 

「当面のハンター稼業のご予定は?」

 唐突な問いだった。

 レイはわずかに眉を動かしたが、特に隠す理由もないので予定を告げる。

「そうだな……オーラムを稼ぎつつ、ハンターランクを上げたい。汎用討伐依頼をこなしながら、残ってる特別報酬付きモンスターを探そうかと思ってる」

「……遺跡探索ではないんですね」

「ああ。車で行ける遺跡、知らないしな」

 

 (なら、あの素材は一体どこから……だが、都合がいいな)

 

 クサカベは少し間を置いてから、口を開いた。

「……クガマヤマ都市が、クズスハラ街遺跡の奥部攻略に向けて、仮設基地を建設する計画があります。そのための周辺モンスター駆除依頼が、クガマヤマ都市から出されています」

 レイが眉根を寄せる。

「俺たちも受けられるのか? でもクズスハラ街遺跡ってビルとかだろ。俺たちじゃあな……」

「主に地上部分の掃討を目的とする、車両持ち向けの依頼枠がありますよ。本来はそれなりの徒党向けですが……先ほどの交渉結果から、斡旋は可能です」

「……さっきのは、交渉に応じたつもりはないぞ?」

「クガマヤマ都市近郊という情報自体も価値があります。そして、統企連はハンターの貢献に報います」

 クサカベは表情を変えないまま、続けた。

「如何しますか?」

 

 レイの目が細まる。

「……俺たちがそれを受けるとでも?」

「強制ではありません。ですが、損はないかと。この依頼で実績を作り、都市にとって有用なハンターだと示せば――更なる優遇を得られるかもしれません」

 

 その言葉の裏には、別の意図も透けて見えた。

 (俺たちを、クズスハラ街遺跡に誘導したいのか?)

 

 だが、悪い話ではない。

 モンスター駆除で実績を積み、ハンターランクを上げ、報酬も得られる。

 

「……条件は?」

「指定区域のモンスターの駆除。それだけです。期間は無期限。仮設基地建設の進捗によって打ち切られます」

 

 レイは少し黙り、情報端末で依頼の詳細を確認する。

 報酬は一日あたり数百万オーラム。悪くない。

 リスクも、通常の遺跡探索に比べると低い。

 

「経費は自腹なんだな……。依頼元の意向で急に依頼が打ち切られることと相性は悪いな」

「ええ、そこはハンター自身でのリスクマネジメントが必要になります」

「……わかった。受ける方向で考える。だが、メンバーとも相談して決める」

「では、正式に依頼として登録します。受諾次第、現地へ向かってください」

 クサカベは淡々と手続きを進め、レイに確認コードを送信した。同時に、ゼロのチーム口座に四億オーラムが支払われる。

 

 レイは通知を確認し、立ち去った。クサカベは一人、端末を見詰めていた。

 画面には、レイから得た情報が記録されている。

 

 『特殊金属素材の出所:クガマヤマ都市近郊。詳細座標不明』

 

 (あの反応からクズスハラ街遺跡は関係ないだろう。これだけで十分だ)

 クサカベは短く息を吐く。

 

 (あの少年は、自分が何を渡したか理解していない)

 (だが、それでいい)

 

 クサカベは別の通信を開いた。

 宛先は――クガマヤマ都市広域経営部。

 

 『報告:クガマヤマ都市近郊に未発見の遺跡の可能性。

  詳細調査を推奨。

  情報源:ハンターチーム「ゼロ」』

 

 クサカベは無表情のまま、窓の外を見た。

 遠くに見える、クズスハラ街遺跡の影。

 

 (さて――次は、どう動く?)

 

 

 拠点に戻ると、レイは全員を集めた。

 テーブルの上に情報端末を置き、クサカベから送られてきた依頼詳細を表示する。

 

「クサカベから依頼の打診があった。クズスハラ街遺跡の外縁部、モンスターの駆除だ」

「そんなことより四億……」

「一旦それは置いておけ。本来なら得ることのなかった報酬だ。で、依頼だが……」

 

 画面には、指定区域の地図と依頼条件が並んでいた。

 マルが画面を覗き込む。

「……情報収集機器でモニタリング?」

「ああ。サボってると依頼打ち切りだそうだ」

 レイは淡々と答える。

 

「遺物収集は?」

「禁止されてない。ただし、モンスター駆除が最優先だ。遺物漁りに夢中になってたら、依頼は打ち切られる」

 

 ダグが腕を組む。

「つまり、仕事しろってことか」

「そういうことだ」

 

 ニナが依頼詳細の別の項目を指す。

「ねえ、これ……経費、自腹なの?」

 

 レイは頷いた。

「弾薬費、修理費、消耗品、全部こっち持ちだ」

「……うわぁ」

 ニナが小さく呻く。

「まあ、報酬が報酬だからな。経費を引いても十分に黒字だろ」

 マルが冷静に計算する。

 

 レイは地図を拡大し、指定区域を示した。

「範囲は外縁部の地表部分。だが――遺跡内のビルも含まれてる」

「ビルの内部も対象、ってことか?」

 ダグが身を乗り出す。

 

「ああ。車両戦闘を基本とするが、ビルの内部は生身での戦闘になる。主に、俺とダグとマルが担当だ」

 マルが溜息をつく。

「……生身、か。荒野とは勝手が違うな」

「だが、いつまでも車頼みじゃいられない。前の遺跡探索でもそうだっただろ」

 レイは真っすぐにマルを見た。

「お前も、俺も、生身で戦えるようにならないと――いずれ詰む」

 

 マルは黙って頷いた。

 その表情には、わずかな緊張と、覚悟が混じっていた。

「……致し方なしか」

 

 ダグが不敵に笑う。

「へへ、いいじゃねえか。遺跡探索、してみたいぜ」

 

「楽しそうだね」

 ニナが呆れたように言う。

 

「当たり前だろ。面白いに決まってる」

 ダグは拳を握り、興奮を隠さない。

 

 レイはダグに視線を向ける。

「ダグ、いい機会だ。バイクに慣れてくれ」

「バイク、いいのか?」

「ああ。乗りたいって言ってただろ。汎用討伐依頼でバイクを使ったら赤字だが……。この依頼なら黒字だ」

 

 ダグの目が輝く。

「マジか!」

 

「流石に最初はレンタルで慣れろ」

 レイは端末を操作し、別の画面を表示する。

「ただ、レンタルには俺たちのハンターランクが足りないんだ。ハンターランクマジで上げないとな……。これについてはクサカベに斡旋を依頼する」

 

「レンタルでも構わねぇよ! バイク、バイクだ!」

 ダグは子供のように喜んでいた。

 ニナが苦笑する。

「……ダグ、わかりやすいわね」

 リンが小さく呟く。

「……バイクも、いい……よね」

「お前もか」

 マルが呆れる。

 

 レイは全員の顔を見回した。

「で、どうする? やるか?」

 

 ニナが即答する。

「やるべきだよ。都市からの依頼なんて、そうそう来ない。報酬もいいし。ランクも上げられる」

 

 その口調は明るく、楽観的だった。

 ニナ自身、車から降りる想定をしていない。

 支援と生活面のサポート――それが彼女の役割だと理解していた。

 

 リンも頷く。

「……車で、戦うなら……問題ない、よ」

 

 彼女もまた、車両の運転が仕事だと思っていた。

 車から降りて戦う――そんな想定は、今のところなかった。

 

 マルが腕を組む。

「戦闘の経験不足は懸念だが……まあ、やるしかないだろ」

 

 ダグが笑う。

「いいんじゃねえか? やってみようぜ」

 

 レイは全員の反応を確認し、短く頷いた。

「……じゃあ、決まりだな」

 

 彼は依頼の受注ボタンを押す。

 端末が僅かに震え、確認通知が表示された。

 

【依頼受注完了】

 指定日時:明日、午前8時

 集合場所:クズスハラ街遺跡外縁部・仮設ゲート

 

 レイは端末を閉じ、全員を見渡す。

「明日から、全力で稼ぐ。だが――それだけじゃない」

 

 全員の視線が集まる。

 

「この依頼で、俺たちの戦闘力を底上げする。車両戦だけじゃなく、生身でも戦えるようになる。ダグはバイクでの戦闘を習得する。マルは遺跡内での索敵と射撃支援を磨く。俺は――」

 

 レイは一瞬、言葉を切った。

 

「俺は、指揮と判断を磨く。全員が生き残れる選択をする」

 

 その声には、迷いがなかった。

 

 ニナが微笑む。

「……頼もしいじゃない、リーダー」

 

「当たり前だろ」

 レイは肩を竦める。

「死んだら、稼げないからな」

 

 マルが笑う。

「相変わらず、合理的だな」

「それが俺だ」

 

 ダグが拳を打ち鳴らす。

「よっしゃ! じゃあ、準備すっか!」

「ああ。武器の整備、弾薬の補充、車両の点検――全部やっとけ。明日から、本番だ」

 全員が立ち上がり、それぞれの準備に取り掛かる。

 

 

 翌日。

 クズスハラ街遺跡の外縁部に建設中の仮設基地。

 簡易プレハブと防護壁で囲まれたその場所で、レイたちは都市の職員から説明を受けていた。

 

「これが貸出端末です。モンスター駆除の指示が、この端末から送られます」

 

 職員が手渡したのは、手のひらサイズの黒い端末。

 画面には既に地図と、赤い点が複数表示されている。

 

「端末は発信機も兼ねています。あなた方の位置情報もリアルタイムで送信されます。他のハンターへの誤射に気を付けてください。また、サボりは……すぐバレるのでお勧めはしません」

 

 職員は軽く笑う。

 

「車両持ちは、地表部のモンスター駆除が優先です。範囲も広めに割り当てられます」

 

 レイが端末を確認する。

 画面には、担当区域が青く表示されていた。

 外縁部の広大なエリア――他のハンターの数倍はある。

 

「ビル内部の制圧指示が来たら、そちらも対応してください。ただし――」

 

 職員の声がわずかに硬くなる。

 

「ビルを倒壊させるような戦闘は厳禁です。遺跡全体の警戒度が上がり、奥地から強力なモンスターを呼び寄せる可能性があります。主砲は状況に応じて使用してください」

 

 (……つまり、派手な戦闘は避けろ、か)

 レイは端末をポケットにしまう。

 

「了解した」

「レイ、貸出端末を貸せ。情報収集機器とリンクさせる」

「ああ」

 レイはマルに端末を渡した。

「ダグ、いけそうか?」

「ああ、これ中々いいぜ。まあ強化服のおかげだな」

 

 クサカベに斡旋してもらったレンタル屋でバイクをレンタルした。

 本来はハンターランク20から借りられるものだ。

 ハンターオフィス職員の権限で斡旋された代わりに足りないハンターランクの担保のため、レンタル費用と保証代が高くなっている。一日百万オーラムだ。走行不能なまでに破壊された場合は八千万オーラムの支払いとなっている。

 バイクは簡易的な力場装甲(フォースフィールドアーマー)と携行武器用のマウントが備え付けられている。専用兵装はない。慣れていないと運転するだけで精いっぱいだが、着用している強化服のサポートにより、高度な運転と、武器による射撃を両立出来ていた。

 

「道具は使いこなしてこそだ。上手くやってくれ」

「ああ、やってやるぜ」

 

 

 そして今、レイたちはクズスハラ街遺跡の外縁部を走っていた。

「レイ、モンスター反応。前方二百メートル、複数」

 マルの声が通信越しに響く。

 彼は後部座席で情報収集機器を操作し、周囲の敵性反応を捉えていた。

「数は?」

「四体。中型、おそらくウェポンドッグだ」

 レイは軽く息を吐き、リンに告げる。

「リン、速度維持。正面から突っ切る」

「……了解」

 リンの声は小さいが、ハンドル操作に迷いはない。

 車両がわずかに加速し、廃墟の間を縫うように進む。

 

 通信が切り替わり、ダグの声が入る。

『おい、レイ! 俺が先行して引き付けるぞ!』

「……好きにしろ。ただし深追いするな」

『任せとけ!』

 右側を並走していたバイクが一気に加速し、車両を追い越していく。

 ダグはバイクを片手で操りながら、もう片方の手で改造AAH突撃銃を構えた。

 

 前方、崩れたビルの影から四体のモンスターが姿を現す。

 灰色の外皮に覆われた体躯、鋭い爪を持つ腕、背中に兵装を搭載――ウェポンドッグだ。

 一体一体は脅威でないが、群れると厄介な相手だった。

 

『いくぜ!』

 ダグのバイクが横滑りしながら急制動をかけ、その勢いのまま銃口が火を噴いた。

 改造AAHの異常な火力が炸裂し、最前列のウェポンドッグの頭部が吹き飛ぶ。

 

 だが残り三体は怯まず、ダグへと殺到した。

「ダグ、左に回避!」

 レイの指示と同時に、車両の主砲が唸りを上げる。

 実弾が空気を裂き、ダグの左側に迫っていたウェポンドッグの胴体を貫いた。

 

 ニナが後部座席から身を乗り出し、端末を操作する。

「リン、お願い!」

「……う、ん」

 リンが操作パネルに触れると、車両の副砲――エネルギー式の砲門が光を帯びる。

 一瞬の溜めの後、青白い閃光が放たれ、ウェポンドッグを消し飛ばした。

 

 残る一体は、ダグのバイクに飛びかかろうとしていた。

 だがダグは冷静にバイクを傾け、体を低くしながらモンスターの下を潜り抜ける。

『マル、任せた!』

「了解」

 マルが端末を操作すると、車両の射撃補助システムが作動する。

 自動照準が最後のウェポンドッグを捉え、主砲が再び火を噴いた。

 爆音。

 四体目のウェポンドッグが地面に崩れ落ち、動かなくなる。

 静寂が戻った。

 

「……全滅確認。次の反応は?」

 レイが尋ねると、マルが端末を覗き込む。

「三百メートル先、また四体。パターンは同じだ」

「なら、同じ手で行く。ダグ、囮は程々にしろ」

『わかってるって! ……つーか、このバイク、意外と動くな! これが欲しい!』

 ダグの声には興奮が混じっていた。

 荒野仕様の機動力は、彼の戦闘スタイルに合っていた。

 

 ニナが小さく笑う。

「ダグ、楽しそうね」

『当たり前だろ! やっぱ燃えるわ!』

 マルが呆れたように息を吐く。

「……お前、死なないようにな」

『へへ、死ぬかよ』

「バイクを壊すなとは言わない。命の方が大事だからな。だけど、壊したら弁償なんだ。しっかり使えよ」

 レイが釘を刺す。

『へーい』

 

 車両が再び加速し、次の戦闘へと向かう。

 リンの運転は正確で、障害物を避けながらも速度を落とさない。

 レイは前方を見詰めながら、内心で呟いた。

 

 (クズスハラ街遺跡……クサカベの意図はわからないが、悪くない依頼だ)

 

 ウェポンドッグの討伐報酬は一体につき十万オーラム。

 既に四体。加えて基本報酬もある。

 この時点で、汎用討伐依頼とは比べ物にならない報酬になっている。

 

 (それに――)

 

 レイの視線が、遺跡の奥へと向く。

 霧の向こうに見える、巨大な構造物の影。

 あれがクズスハラ街遺跡の中枢部――都市が狙う、旧世界の遺産が眠る場所だ。

 

 (いずれ、あそこに行くことになるのか?)

 

 その問いに答えは出ない。

 ただ、今はモンスターを狩り、実績を積む。

 それだけだった。

 

「次、来るぞ」

 レイが呟くと、全員が戦闘態勢を整える。

 車両とバイクが並走し、再び銃声が響いた。

 

 

 夕刻。

 レイたちは遺跡外縁部の安全地帯――仮設基地の建設予定地近くで休息を取っていた。

 車両の脇で、ニナが携行食を配り、リンがエネルギーパックを補充している。

 ダグはバイクの整備をしながら、上機嫌で鼻歌を歌っていた。

 

「今日の成果、どうだった?」

 ニナが尋ねると、マルが端末を見ながら答えた。

「ウェポンドッグ、合計十六体。基本報酬三百万に、討伐ボーナス百六十万。合わせて四百六十万オーラムだ」

「……一日で、それだけ?」

 ニナが目を丸くする。

「ああ。都市の依頼だからな」

 ダグが笑いながら言う。

「これ、マジで稼げるんじゃねえか?」

「依頼期間は無期限だが、仮設基地建設完了までだ。他のハンターも受けてるだろうからいずれモンスターの取り合いになる」

 マルの言葉に、場の空気がわずかに引き締まる。

 

 レイは黙って遺跡の奥を見ていた。

 夕日が廃墟を照らし、長い影を作っている。

 

 (クサカベの狙いは、俺たちをここに慣れさせることか)

 (それとも――もっと別の何かがあるのか)

 

 答えは、まだ見えない。

 だが、確かなことが一つだけあった。

 ――クズスハラ街遺跡は、レイたちにとって稼ぎ場になる。

 

「……明日も、同じように行くぞ」

 レイが立ち上がり、全員に告げる。

「了解」

「おう!」

「……うん」

「りょーかい」

 五人の声が重なり、夕闇の中に消えていった。

 遠くで、モンスターの遠吠えが響く。

 それは脅威であると同時に、獲物の在処を示す音でもあった。

 

 

 

【今回の収支】

- **素材売却** → **+4億オーラム**

- **モンスター駆除** → **+460万オーラム**

- **レンタルバイク代** → **-100万オーラム**

- **消耗品代** → **-50万オーラム**

 

【現在の貯蓄】

チーム口座:

4億7810万オーラム

個人口座:

680万オーラム

250万コロン

「一旦貯金する」

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