ソードアート・オンライン~破壊の剣《ブレイクブレイド》~ 作:ソースケ_研究中
ではよろしこ
11/10一話、二話の修正箇所
《ブレイクブレイド》の性能
●再使用時間を12時間に変更しました。
冬に入り始め、寒さが強くなる季節。ある住宅地で小さい庭の付いた二階建て家の引き戸に中高生くらいの人影を映り、引き戸の開ける音が響く。
「――――――おはようございまぁす!!」
そう元気良く挨拶する彼女は頬のそばかすが印象的で、肩ほどある茶色の髪は髪留めを使って前を開けており、同じ色の瞳、首元にもふもふとした毛皮のあり、腰のあたりにベルトの付いた焦げ茶色の厚手のオーバーコートを着て暖かくし、紺色のスカート、黒にニーソックスに茶色の靴、学校指定の手提げカバンを手に持った活発で強気な少女。そんな彼女に玄関から真っすぐ伸びた廊下の左にあるリビングから凛とした女性の声の返事が聞こえた。
そして出来たのは腰に届くほどの茶色の長髪に三白眼、白のセーターに黒のジーパンを履いて、前に付けた青い無地のエプロンで手を拭く若干元ヤンのような感じのスレンダーな背の高い女性が
「おはようさん。――――――寒いのに元気良いな。里香。」
「ホントですよね。――――――――――――――遼子さん。最近になっていきなり冷え込んできてまいっちゃいますよ。」
「ホントになぁって、おい!!里香がもう来てんぞ!!準備出来てんのか!!剣!!」
「準備できてるよ。母ちゃん。・・・・そんな大声出さなくても聞こえてるっての。」
そう言いながら出てくる少し長めなボサボサな黒髪に少し釣り眼気味の眼に灰色の瞳、鼻立ちや他も普通。手提げ鞄を持った学ランの上に黒のコートを着た遼子と呼ばれた女性より同じくらいの少年が出て来て、欠伸をしながら玄関にだらしなく歩いて来る。それを見た遼子は剣と呼ばれた少年の後頭部を叩きながら
「――――――あだっ!?」
「ぶつぶつと締まらねぇ顔してねぇでシャキッとしろ。―――――――――――まったく、ウチの馬鹿息子を頼むよ」
「あはは、了解です。」
「―――――痛ぇ、ったく、毎回毎回叩かなくても起きてるってのに・・・。」
「文句言ってないでさっさと行け!」
へいへいと言いながら剣は、里香と一緒に玄関を出た。彼は大神 剣《おおかみ けん》。今さっき見送った彼女、専業主婦の気の強い母”大神 遼子”とサラリーマンの大神 良志(りょうし)という気の弱い父を持つ普通の中学3年、隣で何時もの感じで呆れ様な表情をして歩いている彼女は幼馴染で同い年の篠崎 里香。小さい頃からの付き合いで、普通なら小学生辺りで女子と一緒に居ると茶化されたりするが、そう言うのを気にしない彼との付き合いはそこまで悪くない。というか彼としては豪快な彼女について行くのがやっとな感じで、関係的に言うなら中の良い友達程度。部活は入って無く、ゴロゴロしているのもなんだから走り込みをしろと若干脅迫気味に言うので、しぶしぶやっていたら何時の間にか日課になっていた彼は部活組に負けない持久力と足を持っている。
そして他愛の無い話をしながら学校に着き、何時もの他愛も無い学生生活、授業も全部終わって日の入りが早くなった少し暗い校内玄関。玄関辺りで靴を取って帰ろうとした剣を他の女友達と途中まで一緒に来ていた里香が見つけて、大きな声で呼び止めるとあまり聞こえないが、周りの女子達が若干茶化す様に里香に言うと少し頬を染めて誤魔化す様に言う。此処からでは何を言っているか分からないので剣は首を傾げて見ているが、ようやく解放された彼女は小走りで此方に来る。
「――――良いのか?篠崎。」
「うん、まぁね。それじゃ帰ろう。大神」
今日も一日が終わろうと日が暮れている。赤い夕日に照らされ、大きな影を作りながら帰る二人。剣は大きく伸びをしながら欠伸をする彼に呆れた様な眼を向ける。
「相変わらず眠たそうな顔して・・・・アンタまだ眠たいの?」
「いや、今日も一日終わったからぁ的な感じだったんだが、俺そんなに眠そうな顔してるか?」
「眠そうって言うか、遼子さんが言う様に締りのない無い顔かな。やっぱ・・・。」
「・・・え!?そんなにだらしがないのか俺?」
「今更、何言ってんだが・・・。」
何を今さらという笑う里香に異議申し立てする彼、はたから見たら恋人同士と言われても本当に思えるほどに仲が良く見える。最初から距離感が近い所為か、里香はどうか知らないが、剣は何時もこのような感じだ。
そして彼は思い出したように
「そういや、そろそろソードアート・オンラインの発売日だな。」
「ああ、あの実際にゲームの中に入った感じに世界観を感じる事の出来るVRマシンを使った凄いゲームって、アレがどうしたの?」
「いやな、なんか面白そうだから買ってみようと思うんだよ。お年玉と溜めてた小遣い足せばなんとか足りるし。」
「たしかアンタ、ナーヴギア持って無かったわよね。同伴版?」
「――――おう。」
「まぁ、良くそんなに溜めてたわね。・・・ってそれで何?自慢?」
「いや、そんなわけねぇだろうが、お前もゲームやるだろう?だから良かったら一緒に出来ねぇかなと思ってな。」
「ふぅん。そうなんだ。」
若干ニヤニヤとした里香が、構って欲しそうな子供を見る様な眼で見てくるのに腹立たしく思う剣。それから彼女は少し考える素振りを見せ、どうしようかと言いながらわざとらしく言う。少し間が開いてふと剣は里香もナーヴギア持っていないから、それを考えた同伴版の値段と自分達の立場を考えて
「ああ、やっぱ良いわ。お前も懐の事もあるしな。普通あんな大金、中学生が持っているもんじゃないし。」
「―――え!?そんな事無いわよ私だっていろいろ服とか買う為にそれくらい持ってるわよ。」
「大丈夫なのか?無理強いはしないけど・・・・?」
「大丈夫って言ってるでしょう!!」
心配する剣に対していい加減にしてと言わんばかりに言う里香。それを分かったと押され気味に了承した剣に隠れてなんか哀愁が漂う影のある彼女に首を傾げる。その理由は同伴版を買うと今月のお小遣いがかなりピンチであり、欲しかった服も買えないが今を逃せば、と思ったとっさの判断に彼女自身どうしようか今でも迷っている様だ。とりあえずその時には答えはもらえなかったが、運営開始当日の朝早くに里香が財布を持って乗り込んできて”ゲーム付き合ってあげるわよ!!さぁ起きなさい!!今すぐ起きなさい!!買いに行くわよ!!”とあまり正気とは思えない半泣き状態、そんな声を荒げる彼女を剣は休日の時間間隔で寝ぐせで頭爆発、さらに眠たげな顔で彼女を出迎える事となった。
そして急かされる様に行き付けのゲームショップへ行き、服装は何とかしたが寝ぐせも整えてないので頭がボンバーヘッドのまま、眠気眼を擦りながら彼女に手を牽かれる剣。行き付けの所はあまり知られてない店なので来る人も少ないから入荷数は少ないと思うが、それでもあると確信が持てる店である為、そんなに急ぐ必要が無い。後から行っても良くね?的な感じだったのだが、叩き起こされて今の状態になっている。店には思った以上に人がいたが、どうにか同伴版を二人共購入出来た。とりあえず家に帰ろうとなって大きな紙袋を持った剣に同じような袋を持つ彼女は
「アンタが誘ったんだからちゃんと私をエスコートしなさいよ!」
「ベータテスターでも無い俺にどうしろと?」
「言ったからにはゲームでは私に付き合いなさいって言ってんの!」
「お、おう。」
一緒に帰る最中。ああ、なんであんなにするのよ・・・。とか”そりゃあさぁ、ゲーム機とソフトの同伴だと言っても、もうちょい安くなんないのかなぁ・・・。とか”今月からどうしようか?あははは・・・・。”とブツブツ言っていて終始笑顔に影のある彼女に誘っておいて何だが少し罪悪感を感じる。彼女を見送って家に戻った剣は貰った大きな紙袋からヘルメットの様な機器、ナーヴギアとパソコンのネット回線に説明書を見ながら繋いで、電源を入れてソフトを入れていると灰色の板状のフレーム、タッチパネル式液晶が特徴的な携帯が急に振動する。何かと思って携帯を取ると画面に里香の名前が表示されていて、剣は電話を取る。
「もしもし、どうした?」
『準備できたから今から始めるけど、そっちはどう?』
「こっちも今から始める所だ。」
『そう。分かったわ。―――――じゃあ向こうでね。』
「――――了解。」
そう言うと電話が切れた。切れたのを確認した剣はナーヴギアを被って電源をつけ、彼はベットの上に寝転んで説明書を見て、最終確認した後に深呼吸してから心落ち着かせる。彼の心に浮かぶのはゲームの世界で始まる新たな冒険に対する好奇心のみ、心を躍らせる彼にそこでゲームをやらないと言う選択肢は無かった。
そしてゲームを始める為の起動コードを言う
「――――――――――――リンクスタート」
その言葉と同時に彼の意識の全てが、目まぐるしく通り過ぎていく七色の光の通路を通って、電子的な情報の飛び交う電脳の海の中に跳び込む。その行為が生死を掛けた旅路になるとは知らずに・・・・・・。
眠気を引きずる重い瞼。明けた先に見えるのは木造の天井。なんであのような夢を見たか気になるが、彼は体を起こして伸びをする。昨日のはリズに珍しい見た事無い大量に取れた鉱石と一緒に渡されたボロッちぃ巻物を渡し後に、疲れたので宿屋に戻ってその日は疲れ共に感じた眠気に負け、風呂入って直に寝た。それを思い出しながら夢の内容に思う事があるのか、少し頭を抱える。あの事件から一年になり、大量の死者を出したあの事件の始まり、あの時一緒に居た彼女の表情は忘れられない。自分自身が誘った結果、あんな顔をさせてしまった自分に腹が立つ。一緒に遊ぼうと言う誘わなければ、少しでも気持ちが楽だったかもしれない。家族の事もあるが、最初に頭に浮かんだのは自分がどうなっても彼女だけは、と思って最初は寝ないで高Lvモンスターが居そうな場所を散策、あるだけの討伐系やランクの高い武装取得系クエストなど強くなる事に糸目をつけなかった。無理なレべリングをしていて一度に死にそうになり、その時助けられた彼女に一人にしないでと言う言葉に止められて、だけど何もしないと言うのもアレだったので、せめて攻略組の助けになる事をしようということで鍛冶屋で強い武具を作ると言うのが落とし所になった。
そして此処、第48層主街区リンダースで無理なレべリング時に得られた大量の資金とリズの持ち金を足してどうにか買った水車つきの家。そこで開店した武具店を一緒に営んでいる。あの場所から始まってもう一年、長い様で短いとても辛い一年だった。そんな事を思っているとメールの受信メッセージが表示されたウィンドウが展開され、内容を見る為にメニュー・ウィンドウからフレンドリストに飛ばしてメールを見る。
内容は、”今日はアンタの武器の手入れするから早めに工房に来て。”だそうだ。
前に比べたら自分も彼女も少しは余裕が出て来たのではないかと思う。そう思いながらデルは何時もの様に顔を洗って身支度すると、何時もの服装で宿屋を7時半位に出て武具店に向かう。向かいながら思ったのだが、昨日のモンスターは本当に変だった。強敵である証、名前が赤いのでゲーム内でかなり強く設定されているボスだったのは分かったのだが・・・。
「名前が表示されないモンスターってどうなんだ?」
普通なら表示されるであろう名前は戦闘中ずっと公開されずに《???》のままだった。そう言うタイプも居るだろうと言えばそこまでになってしまうのだが、前ほどの無理なレべリングはしてないが、こっちだって鉱石アイテム以外にも武具系取得で会うモンスター、討伐系クエストをソロ中心で大量にやってそれなりにレベルが上がっている。前よりレベルアップ速度が落ちたが、今の時期にLv61はそれなりに高レベルと言ってもいいはずだ。後、リズも製産系クエストやパーティをデルと組んで出る事があるのでかなり差がついているがLv52と割とある方だ。此方は武器攻撃系スキルの使用不可、《ブレイクブレイド》の性能把握の不十分を差し引いてもそれなりにやれていた。
やれていたのに、最後まで嫌な感じが後を引いた。あの場で無理に追撃を選択していたら返り打ちにあっていたのでは、と思ってしまう。デル自身がそう感じるだけで実際の所は分からない。溜め息をつきながら過ぎてしまった事を気にしている場合でないと店に向けて歩む足を速め、店の裏に回って工房に入る。
中に入ると全面がレンガ造りでかなり広く、ドアから張って階段を下りるて周りを見ると壁に立てかけられた武具、鉄を熱する為の火炉に水車を利用した研磨機、さらに鍛冶に必要な者は一式揃っていると言っても見た目だけだ。実際の所、メニュー・ウィンドウで製作する武具、武器を設定して鉱石系をハンマーで叩くだけと言ったシンプルなモノ、そこはやっぱりゲームだなぁと思う。まぁ、何十年も修行を積まなければならなそうな工芸なのに、素人に本物の鍛冶をやれと言っても無理と言う事だ。そんな何時も見る彼女工房に新しい設備があった。壁をさらに掘り込んで作られたスペースに同じレンガ造りなのだが、何かを固定するベルトや鉄の固定器具がある。
そして何かを考えているのだろうか、考え事をしていてデルに気付いてないリズに声をかける。
「リズ。おはようさん。」
「あ、うん?――――――ああ、来たのね。おはよう。デル。」
「おう。所でどうしたんだ?こんな朝っぱらから眉間に皺寄せて、便秘か?」
「何それギャグ?笑って欲しいの?それともぶっ飛ばされたいの?」
流石に此処はゲームだからいくら食料アイテムを食べても太らないし、トイレにも行かなくて大丈夫。腹に溜まる物では無いしな。そんな的外れで下品な彼の発言に呆れ顔で睨まれる。そんな彼女が腰に手を当てながら
「昨日アンタに貰ったあのボロい巻物を使った時に鍛冶系エクストラスキルに変なスキルが追加されたんだけど、テキストを読んでも良く分からなかったからその後そのまま寝たわ。それで朝、工房で準備初めようと来たらコレよ。」
言いながら新しい設備に顎を上げて、示す。彼女自身にもこの設備が何なのか分かっていないようだ。とりあえずスキル名と内容を聞く。
スキルは《武装開発》、鍛冶スキルから派生したエクストラスキルで、テキスト内容も名前と同じようなモノらしい。機能を使ってみようとメニュー・ウィンドウを展開して操作してみると、メニュー欄にパーツ製作、改修、武器開発、武具開発の四つの項目があり、押してみるとパーツ製作はいろいろな形状パーツが表示され、全て鉱石系アイテムから作るみたいだが、数は指定されているが鉱石なんでも良い様だ。改修は製作したパーツを使って何かを作る機能があり、他の開発もパーツから製作すると言った似たような感じになっているらしい。
俺はその設備に近づいて良く分からないが、あのクエストで取った物だと言う事は《ブレイクブレイド》も関係しているのかもとアイテム欄から選ぶと、装備と整備・格納と言う項目が出てくる。デルは整備・格納を押すと新しい設備に青白い粒子が形を成し、《ブレイクブレイド》がオブジェクト化されるとベルトや固定器具で直立姿勢で固定される。
ああ、やっぱりと思うデルに、それを見ていたリズは問いかける。
「―――――――ちょ、デル。アンタ何やったの?」
「え、ああ、うん。―――――ちょっと待ってくれ今、説明するから。」
デルは昨日のクエストの内容を説明する。枯れ井戸で発掘した黒銀の鎧《ブレイクブレイド》の事も話した。実際の所、この設備があのクエストの報酬で得られた物ならば、と思って調べたら当たっていただけの事。それを聞いたリズは
「それが当たっているなら、コレはその出鱈目な鎧を整備と強化する為のスキルと設備になるんだけど。」
「―――まぁ、今の所はな。上手く使えば他のプレイヤーでも装備できるかもしれないぞ?」
「・・・にしても完全なチートアイテムじゃないのよね。上手くやれば防御性能は改善できるけど、なんで制限時間があるのかしら?」
「制限時間じゃなくて”予測使用限界”な。」
「―――― 予測使用限界?」
「ああ、俺も最初は3時間だけ使えると思ったんだがどうも違うらしい。コイツは俺の動き次第で使用できる時間が変わるんだよ。全力で動かして持って”4、30分”程度。その後は使用終了時間から12時間のクールタイムを挟んで再使用。」
「12時間って、それじゃあ戦っている最中にもう一度使う事は出来無いわけね。――――今もソードスキルが使えないんでしょ?それなら途中で使えなくなったら目も当てられないわ。」
「だから使い所を選ばないと運が悪けりゃこの世からサヨナラコース一直線だ。それにいろんな武装が装備出て来ても脱いだら、補正無しの俺自身の筋力じゃ、それほど重い物は持てないからこの鎧が使えない時は軽く見積もってもLv5、6は下がっている。」
「性能任せの戦いをするならアンタよりLv5、6高いと危ないと言う事ね。どうするか目処は付いているの?」
「ソードスキル無しでの戦闘は何度もやっている。だが、攻撃系スキル無しを想定した格上に対する戦いは、さらに戦闘経験を積むしかないだろうな。」
「アンタ自身の、それもシステム補正無しのバトルセンスがモノを言う域ね。それは・・・・。」
「――――――そんな所だ。」
そう言うと少し悩んでいる彼女。このまま何時も通りにクエストや素材アイテムの散策に行かせていいのだろうかと悩んでいるリズ。いつも通りにやれば今までの彼なら心配無いが、今の彼はメリットとデメリットの半々と言った所か、この黒銀の鎧で出鱈目な戦闘能力を得た代わりに装備していない時以外は、ソードスキルが使えないからかなり弱くなる。それも装備できる時間は限られている。さらに言うなら幾ら出鱈目な破壊力を持った身体能力を使えても紙装甲だと余計に扱いがって悪い。だから
「当面の目標はこの鎧の強化、改修ね。今の私ならシステム補助も受けられるから簡単な整備くらいは出来ると思うし、何か使って防御性能を少しはましにしとくから、それと・・・・。」
「コイツはあまり外には漏らさない方がよさそうだ。」
「ゲーマーってのは嫉妬深い生き物だからしょうがないわよ。と言ってもデメリットの方がインパクト強すぎて使いたがるプレイヤーが居るかどうかわからない代物だと思うけど?」
「念の為にって事で頼む。」
「了解。アンタも切り札ないと心許無いでしょ?耐久性重視でセミスパタは二本追加で作っとくわ。後、私が渡した試作装備一式も整備しとくからこっちに渡してくれない?」
「――――わかった。」
そう言うとデルはメニュー・ウィンドウから《試作重大剣》と《ヘビーランス-4型》を順にオブジェクト化させてリズに渡す。《試作重大剣》自分の重点的に上げている中の一つである筋力値を考えても両腕で抱えてもかなり重量感を感じ、ランスも片手で使うには少し重い。鎧を纏っている最中はコレが羽根の様に軽かった。鎧を装備した時に発動しているあのスキルは、それだけの筋力値に補正が掛かっている。彼はランスを作業用のテーブルに置き、最初に置いた大剣を重そうに抱えるリズが来る。
「鎧とか装備とかいろいろあるから今から私は工房に籠るけど、アンタは店番お願いね。」
「今日は鉱石アイテムの調達は良いのか?」
ゆっくりと大剣を置いたリズが睨みつけながら胸ぐらを掴んで引き寄せ、それに驚くデルはされるがままに踏ん張る事も出来ずに引っ張られる。
そして怒りのこもった声を出す。
「昨日死にそうになったなんて愚痴ってたの何処の誰よ?昨日は冗談だと思ったけど、まったく無茶して!」
「俺もそのつもりで言ってました。」
「馬鹿じゃないの?なおさら性質が悪いわ!さらに言うならソードスキルが使えなくなって余計に危なっかしいのに、装備が不十分って死にに行く様なもんでしょうが!そんな状態で行くって言うならアンタを縛ってでも絶対に行かせないから!覚えておきなさい!!」
「りょ、了解!?分かった。分かったから苦しいって・・・!?!」
そう言うと胸ぐらを掴んでいる手を離す。それでも言い足りないと言わんばかりにジト目で見てくるリズに少し怯むデル。
彼女は疲れた様な溜め息をつきながら
「・・・ったく、前ので懲りたと思ったんだけど、ホント馬鹿ね。アンタ。」
「あはは・・・。」
「まったく、そろそろ開店時間だからさっさと行って欲しいんだけど?」
「お、おう。分かっておりますよ。今行く。」
そう言って店側の階段を上って行く彼の背中を見送ると、まずはと黒銀の鎧に手を着けようかと整備格納庫の様な設備に足を向ける。
そしてデルは大量に武器が飾ってある店のカウンターに隅に置いている木の椅子を持ってきて腰を掛ける。店番と言っても入れ替わりで人が来るような程いっぱい来るわけじゃないから、退屈なわけで、装備だってあの様子だと多分今日一日は返って来なさそうだ。メニュー・ウィンドウを開いて装備の確認をする。転移結晶と回復結晶以外の数は大丈夫。あの時二つ使った回復結晶の分を補充する以外は特に差し迫って買う物は無い。問題があるとすれば、そう思い彼はスキル画面のツリーを見る。
相変わらずソードスキルの殆どがバッテンに埋め尽くされているを見てカウンターに突っ伏す。視線だけを動かして見える様に移動したウィンドウを操作してステータスを見ると以前のものに戻っている。装備時にはコレが数倍に上がってのだ。
コレからデルの弱点となるのは、その性能差になってくる。短時間に限られた爆発的な性能強化が常に維持されているのならば、スキルが無くてもチートと言っても良いのだが、使用限界になると装備できなくなるから大幅に戦闘能力が弱体化する。今の強化無しのステータスでソードスキル無しだと火力に乏しくなる。性能が安定していないからここぞと言う時に押し切れないと確実に死への直行便に乗る事になる。如何するべきかと悩んでいると店のドアが開き、来客ベルが鳴る。
「いらぁしゃぁい。リィズベェット武具店でぇす。ふぁぁぁぁぁぁ・・・・。」
「とんでもなく接客態度が悪いわね。――――デル君。」
来客者に眠そうな顔で、さらに欠伸で対応するデルに苦笑しながら答える少女。明るいライトブラウンの両側の側頭部から後頭部にかけて三つ編みの様な編みこみをした腰まである綺麗な長髪、ブラウンの瞳で赤と白で彩られた軽装の鎧を着用、腰にある白いベルトに提げた細剣がトレードマークの攻略組ギルドの一角である《血盟騎士団》こと《KoB》に所属している”閃光”と言われた美少女。
俺はフレンドリストから簡易文で”アスナがそっちに入って来るかもしれないから適当に誤魔化せ”とリズにメールを送りながら姿勢を正し
「――――アスナさん。ちぃっす。何時もお務めご苦労様です。」
「逮捕された覚えも出所した覚えも無いわ。―――直したらどっかのヤクザ映画みたいな挨拶って、まぁ別に良いけど・・・。」
後ろの工房の方で大きな物音がする中、送り返されたメールには”どうにか持たせなさい。後で連絡する。”と書かれていた。それを確認しながらデルは来店してすぐに疲れた様な顔する彼女の方を見る。彼女は《血盟騎士団》人気沸騰中のアスナさん。最近の評判だと攻略の鬼とか狂戦士とか聞く、美しい花には棘があると言う事を字で言っている様な人だが、持っているのは棘じゃなくて狂剣では無いだろうかと思う。
ついでに言うとアスナはリズと親友で、リズが無理を言って俺が死にそうになった時に潜っていたダンジョンに単身では無理だったリズに力を貸してくれた。デルにとっては命の恩人の様な人とも言え、彼がこうやって軽口を叩けるのもこの人のおかげだ。
「まぁ、前に命の恩人だからって敬語で話さないでって言ったのは私だけれど、それを考えても少し変りすぎじゃない?」
「いや、コレが俺の素だけど?」
「ああ、そうなの。―――今のが私だから良いけど、他のお客さんにもそうやっているならリズが怒るわよ?」
「大丈夫。やるヤツはちゃんと選んでいるから。」
デルがそう言うと”もう良いわ。”と続ける彼女が表口から入ってきたのかと思ったのでデルは一様、彼は
「表口に入って来たって事は今回はこっちに用あるみたいだけど、どう言ったご用件で?」
「最近団員の人に何か売ってる物で良い武器が無いかって聞かれて、此処なら貴方が新しい鉱石とかインゴットとか探しているから新しい武器が無いかなって見に来たのよ。武器は両手剣で、今攻略中の50層でも対応できそうな性能が欲しんだけど?」
「50層でも通用しそうな性能ね。そいつって筋力と防御重視なの?」
「いいえ、貴方と同じ筋力と速度重視でスピード系の両手剣を使っているの。」
「珍しいな。速度重視の両手剣使いって、となるとこんなもんかな。」
デルはメニュー・ウィンドウから店長であるリズと店員のデルが使える店の共通倉庫を呼び出してアイテム欄から《ソニックインパルス》と呼ばれる風を表現した装飾の青い細身の大剣が青白い粒子が形を成し、オブジェクト化する。これならそこそこ威力があり、敏捷性と器用さを上げるステータス補正もあるから一般の大剣使いにしたら軽く、取り回しやすい重量だと思う。デルはそう思い彼女にどうかと見せる為に渡す。
「私にしたら少し重く感じるけど、この大剣って?」
「アイテム名は《ソニックインパルス》。両手剣にしたら敏捷性と器用さを重視した補正が掛かるようにしてあるし、他の両手剣に漏れず威力もそこそこ、硬直時間も短いから総合して考えたらソードスキル連発して火力を稼げば50層でもやって行けると思うぞ。」
「それって途中でガス欠にならないかしら?」
「誰が、常に前に出てドッカンドッカンソードスキル使えって言ったよ。両手剣使いは殆ど爆弾か、大砲扱いだからここぞと言う時に投入して雑魚の掃除か、デカイダメージを与えたい時に相手をパリング後スイッチで使えば良いだろう。そいつがかなりの大剣使いなら今さっき言ったのが必要無いだろうがな。」
「それもそうよね。だけど彼は防御が上手いんだけど攻撃系ソードスキルの扱いが少しね。」
「なにそれ、片手剣に盾も持たして壁役《タンク》やらせた方が良いじゃねぇか?」
「まぁそれも考えたんだけどね。なんかプライドと言うか拘りと言うか、貴方にもあるでしょう?」
「俺は武器なら何で使うけど?」
「あ、そう言えば貴方は何でも使うからそう言う拘り無かったわね。」
「拘りとかプライドなんだので格好つけて死んだらそいつ馬鹿だ。コイツは遊びじゃねぇんだぞ。仲間を思うなら、ごちゃごちゃ言って言う事聞かないなら引っ叩いてでも止めろ。それでも大剣を使うなら今回は見送れ。訓練積んで次の階層でアタッカーとして使えば良い。まぁ、攻略を遅らせるって手もあるが、1人に為に攻略を遅らせるのは建設的じゃないから前者がお勧めだ。」
デルが真剣そうにそう言うと突然、アスナは噴き出す様に笑い。それに呆気に取られるが真面目に対応したのに笑われると思っていなかったので少し不機嫌そうな彼が
「・・・・んだよぉ。」
「いや、ごめん。雰囲気とかも全然違うんだけど、少し知っている人を思い出してね。」
「どんな奴なんだよ?」
「えっと、何時も飄々としてぶらぶらしている人なんだけど、ここぞと言う時には真剣に向き合うそう言う人。」
「ふぅん。ソロか?」
「そうだけど、なんでそう思ったの?」
「そう言う奴は足並みを揃える様な集団行動が苦手な奴だ。まぁ、その代わり見えない所でいろんな事やってる奴だよ。」
「そう言う所は思考回路が似るの?」
「違ぇよ。あの時の俺はがむしゃらにやってただけだ。そいつみたいに休むとか計画的に考えて無かったよ。」
「そうなの?」
「そうだよ。―――――――――そんな事より、どうすんだよ?見に来ただけか?」
「まぁね。それに私の親友は人を見る目があるなって改めて思ったわ。」
「ああ、そうかい。」
なんだかたしてやった的な感じで意地悪な笑みを浮かべるアスナに少し照れ気味の顔で視線を外すデル。でも彼はリズからメールが来ている事を気付かずにしばらく時間が立っていた。
そして調べるとあの格納庫には石のシャッターの様な物を下ろす機能があったので、それを降ろして誰が来ても大丈夫な準備が出来たから工房でインゴットや鉱石を打っているリズは、ああじゃないこうじゃないと店の方が騒がしのに気付いて
「・・・・店の方で何やってのアイツ?」
そう思いながら店の方の階段を上がって、ドアを開けると
「――――――え、こうじゃないかしら?」
「――――――こうもいけるじゃね?」
リズは細剣を構えている様にゆっくりと剣を振り抜いたポーズを取る親友と片手剣を構えている様に突きのポーズで取る馬鹿が目に入り、死んだ魚の様な眼になりながら彼女は
「アンタ達、ウチの店の中で何やってんの?」
「「―――――え?」」
彼女が入って来て思わず赤面するアスナに悪戯がバレた子供の様な顔するデル。彼女は詳細を聞くと、とりあえず用事の終わった彼女にデルがソードスキルみたいなデフォルト攻撃って出来ないのかなと言うと最初は口で言っていたのだが、今日は客が来ない事を良い事にあーだこうだと言う内に体も使ってやっていた所にリズが来てしまったらしい。説明した後にやるのは良いけど外でやれと怒られた。現在店内で正座している一緒にやっていた閃光さんに貴方の所為だからねと睨まれたのは解せない。面白そうねと乗り気だったのは誰だったか・・・。
アスナは自分の相棒をリズの研磨して持って帰った。それを見送った後にちゃんと店番しろと二度目のお叱りを受けて彼女は工房に戻った。その後は閉店時間まであんまりお客さんが来ず、終始暇だった。
そして店の片付けを終えて帰り際に挨拶しようと工房に寄ると格納庫で固定されている《ブレイクブレイド》は前は白い部分が黒ずんでいたが、その姿が白く灰色に近い黒銀に変わり、肩アーマーも曲線を描いていたが角張ったのもに変更され、同じように左右に出っ張ている。見た目はそこまでは変わり無いが、以前より見た目的に良くなっていると思う。それを見ていた彼にリズが
「店の片付けは終わったの?」
「うん。ああ、終わらせてきたぞ。――――――それにしてもコイツ、大分綺麗になったな。」
「そうでしょう。何時もの様に鍛冶スキルで直して肩がボロボロだったから、とりあえず朝言った新しいスキルで軽装甲を付けてみたけど、仮止めだから防御性能と耐久値はあんまりないから気をつけなさい。後は見た目は変わって無いけど《試作重大剣》を完成させた《超重量大剣》に整備した《ヘビーランス-4型》。当分はコレで我慢して頂戴。」
「おう。助かる。」
デルは格納庫に近づいてメニュー・ウィンドウを操作して新しくなった《ブレイクブレイド》と大剣とランスを収納し、さらに後で持ってきた以前より強化された《セミスパタ》を二本収納したのを確認した彼女は
「気をつけなさい。鎧を使っている時は主に大剣とランスを使う事、幾ら強化したって言ってもセミスパタの耐久値じゃ持たないわ。だからと言って大剣とランスの耐久値も過信出来ないわ。その鎧の能力で破壊力は上がるけど、耐久値の消耗速度が尋常じゃない事はアンタ自身が良く分かっているでしょ?肝心な時に折れて使えないと困るから使う時はそう言う所を気をつけなさい。」
「わかった。上手く使いこなして見せるさ。」
「それぐらしてもらわないと困るわよ。」
そう言うとデルとリズは工房の片づけしてから鍵を閉めて宿屋の方に帰る。今日は先にリズが彼を気遣ってか起こさずに店の方に行っていだが、何時も同じ宿屋を使っているおり、隣の部屋を借りている。日が暮れて適当に外食してから宿屋に変える最中、デルは突然
「まぁなんだ。リズ。―――――コレからもよろしく頼むぜ。」
「――――突然何よ。」
「コレからさらに鎧の事とかいろいろ迷惑かけるだろうし、改めて言っとこうかと思ってな。」
そう頬を掻きながら恥ずかしそうに言うデルに笑顔でリズは彼の背中を思いっきり叩き、”いだっ!?”と言いながら姿勢が少し前のめりになる彼を見ながら
「そんなのいまさらよ。わざわざそんな恥ずかしいこと言ってんじゃないわよ。ば~か。」
「――――誠意見せてるつもりなのにバカってひでぇ・・・。」
「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いのよ。でも・・・。」
先に彼の前を歩くリズの背中を恨めしそうに見ているデル。彼女は少しだけ彼の方に振り返り、それでいて彼を背にしたまま首だけ振りかえり
「――――――――――コレからもよろしくね。デル。」
そんな人の温かみのある光に照らされた彼女の満面な笑みはとても幻想的な美しさがあったと見た彼はその時思った。
オリジナル武器
《ソニックインパルス》
種類:両手剣
形状:風を表現した装飾の青い細身の大剣
性能:敏捷性と器用さを重視し、硬直時間が短い重量の軽い珍しい両手剣。軽い分、両手剣の中で威力はそこそこ。
スペック的にソードスキルを連発した嵐のような戦い方が適している。デメリットは調子に乗って連発するとガス欠する。
一言で言うならいろいろ頑張ってみました。とりあえず軽装甲付けてみたけど、仮止めだから耐久値は
ではまた次回