見切り発車というわけではないですが、他作の掛け持ちもあるので不定期更新になると思います。
それと、あらすじにもある通り作者は転スラはアニメ・漫画が主なにわか寄りなので、至らない点は指摘してもらえると助かります。
気が付けば、私の意識は朦朧としながら闇の中を漂っていた。
なんで“身体”ではなく“意識”と表現したのかと聞かれたら、手足の感覚がないどころか五感すらろくに機能してないから。
最後の記憶に残ってるのは・・・あぁ、思い出した。イヤホンをして音楽を聞きながら下校してたらトラックに轢かれて死んだんだ。
ながら歩きしてた私の自業自得とはいえ、まさか身をもって異世界転生トラックを体験することになるとは。
いや、本当に異世界転生するかどうかなんて知らないけど。
思い残しは・・・腐るほどあるなぁ。
一応、私はチャンネル登録者が2000人くらいの歌い手だった。
誰だ、思ったより少ないとか言ったの。2000人でも上澄み中の上澄みだからな?
歌うのが好きだったのが興じて始めたけど、もっといろんな曲を歌いたかったなぁ。
《確認しました。ユニークスキル『
ファンからは「まるで魔法みたい」と誉められたこともある。
お世辞かどうかは別として、そう言われたのは嬉しかった。
生きていた頃は既存の曲しか歌ったことがなかったけれど、もしオリジナル曲を作って歌う機会があったら私は魔法使いになっていたんだろうか。
《確認しました。ユニークスキル『
続いて『歌唱者』と『創造者』を統合進化。ユニークスキル『
そんな夢を見る暇もなく、トラックに轢かれて死んでしまうとは。
もし私が鳥だったら、轢かれる前に飛んで逃げることができたのかな。
《確認しました。種族を決定・・・成功しました》
・・・ていうか、さっきから聞こえる謎の声は何?幻聴?それとも神様?
まぁ、どっちでもいいけど。
こんなことを考えている間にも意識が遠退いていくのを感じる。
ひとまず、生まれ変わったら前世よりも長く趣味に生きれるように頑張ろう・・・・・・
目が覚め・・・た、のかな、これは?
まともに目を開けられないから何とも言えないけど、暗闇の中にいることに変わりはない。
身体に重力を感じるし、ほんの少しとはいえ光が漏れてるから、あの謎空間じゃないのは確かなはずなんだけど・・・。
赤ん坊なのか身体に力も入らないし、起き上がるのも精一杯・・・
コツン
・・・おん?こつん?
なんで私の顔の付近から、固いものと固いものがぶつかったような音がしたの?
・・・まさか、と思う。
頭では否定したがっているけど、一つ感じた違和感から芋づる式のように次々と新たな違和感が呼び起こされる。
まず、腕。
何となく腕が動いているという感覚はあるけれど、指があるって感じがしない。
次に、体勢。
普通生まれたての赤ん坊は仰向けに寝かせるものだと思うけど、今の私はたぶんうつ伏せ、もっと言えば四つん這いみたいになっている。
最後に、足。
百歩譲って、生まれたての赤ん坊を暗闇の中にうつ伏せで閉じ込める習慣がある限界部族に生まれたとしよう。
仮にも寝転がっているなら、足は後ろに放り出されているはず。
なのに、なんで
そして、とどめのさっきのコツンという音。
出来ることなら答え合わせをしたくない気分だけど、ここまできたら確かめないわけにもいかない。
頑張って上体を持ち上げて、目の前の壁・・・というか殻(暫定)に頭ごと突っ込む。
パキッて音とかヒビから漏れる光とかもう嫌な予感しかしないけど、僅かな望みに賭けて身体ごと思い切り突っ込んだ。
最後の一撃で殻は砕け、眩い光にさらされながら私は周囲を見渡した。
今の私は卵の殻から頭を出していて、周りは干し草みたいなもので覆われている。そして、私の他にもいくつか同じ模様の卵が転がっていて、何よりそんな私をオレンジの羽が綺麗な小鳥が見下ろしていた。
・・・うん、ここまできたら認めるしかない。
今くらい汚い言を吐いても許されると思うから、心の中で思い切り息を吸い込んで、叫んだ。
「ピィーー!ピィーー!」
(鳥じゃねぇかッ!!!)
誰がこんな私を生んでくれと頼んだ。
* * *
新たな生を受けて早一週間。
私は今日も口を大きく開けて餌をねだっていた。
人としての尊厳?もうすでに人じゃないし、生きるか死ぬかに比べたら安いもんだよ。
この状況については、もう一日で諦めた。
最初こそ現実を受け止めきれずに黙ってうなだれていたけど、お腹が空いて死にかけてそれどころじゃねえってなった。
さすがに新しい人生、いや鳥生?が一週間も経たずに終わるのは虚しすぎる。
まぁ、餌をもらってもすぐ死ぬ可能性なんていくらでもあるんですけどね。
食物連鎖の底辺の雛鳥なんて、蛇に狙われたら自分が食べられないのを祈ることしかできない。
本当、なんで転生先がこんな難易度ハードどころかルナティックなことになってしまったのか。
仮に雛鳥時代を抜け出したところで、小鳥の寿命ってどれくらい?少なくとも20年は生きれないだろうし、多めに見積もって10年とか?
いや、確かに前世よりも長く趣味に生きたいとは思ったけどね?10年はもう誤差のレベルなのよ。
親の仕事柄、民謡とか童謡に触れる機会が多くて、それがきっかけになって歌が好きになっていった。
歌い手の存在を知ったのは中学に入ってからで、自分で歌い手活動を始めたのは高校に上がってから1,2年くらいだから、歌い手の趣味に没頭できたのは4,5年程度か。
『前世よりも倍以上趣味を楽しめるね』?いくらでも死が溢れている世界でそれは何の気休めにもならないのよ。
そういうわけだから、ひとまず今後の方針を考えよう。
生後一週間で何をと思われるかもしれないけど、人間と違って小鳥は数ヶ月で独り立ちしなければならない。
短いだろう鳥生を無駄にしないためにも、考えられる内に予定は立てておいた方がいい。
とはいえ、趣味に生きたい私がやることと言ったら、あちこち飛び回って好きに歌うくらいで、考えることはどこに行くかってことくらいかな。
見た感じ、私がいるのは森の中だ。
選択肢としては、このまま森の中で過ごすか、人がいる町に移動するか。
森の中にいれば移動の手間は省けるし、食べ物に困ることはないだろう。その代わり、変わり映えしない景色だと歌のネタも湧かなくなるだろう。ついでに捕食者にも事欠かない。
人のいる町に行けば、移動と食料は多少苦労するかもしれないけど、歌のネタには事欠かないだろう。だけど、この辺の地理はサッパリだからどこにあるかなんて分からない。あと人間に害獣認定されて駆除対象になる可能性もある。
どこに行っても敵しかいねぇなクソが。
一応、具体的な目的地を決めずにあちこちを飛び回る手もなくはないけど、エネルギー消費がバカにならないし、変なやつの縄張りに入った時が怖いんだよなぁ・・・。
まぁでも、生まれてからまだ一週間。樹洞の中に作られているみたいで、巣の外がどうなっているかもよく分からない。
せめて外の様子が分かってから決めても遅くはないはず。
今できることもほとんどないし、一ヶ月くらい様子を見てから改めて考えよう。
ひとまず目の前の餌争奪戦に勝つことを優先しあっ、ちょっ、お前さっき食べただろどけやおらぁ!!
* * *
えー、たぶん生後一ヶ月くらい経ちました。
悲報:ここはヤバイ森でした。
同じ巣の雛が二匹くらい蛇に食べられたのは、まぁまだ良しとしよう。同じ危険性が付きまとってるのは変わらないけど、私が生きてるならそれでいい。
問題なのは、外の様子。
時折、この世の生き物とは思えないような雄叫びが聞こえるんですが?
森にいるヤバイやつなんて、せいぜい熊とかその辺だと思ってた。
だけど、熊の鳴き声にしてはあまりにもでかい。うるさいとかじゃなくて空気が震えてるんですけど?
あと、たまにバキバキと木が踏み潰されているような音が連続して聞こえるのはなに?どういう化け物がうろついてるの?
むしろ、こんなやばい森の中で毎回餌を持ってきてくれる親鳥が一番やばいんじゃないかとすら思えてくる。優秀な危機管理能力をお持ちのようで。
あと、樹の中にあると思っていた巣は実際は地中みたいなところにあった。振動のたびに上から砂粒が落ちてくるからね。
空はきちんと見えるから、崖の中腹にでもあるのかな?そこを這い登ってきた蛇はなんなんだよ。
とりあえず、森に留まるのは無しにしよう、うん。
こんなディストピアみたいな世界に人間が街を作ってるのかどうか疑心暗鬼になりかけてるけど、逞しく生きていることを祈ろう。
ひとまずの目標は、巣を出たら人のいる町まで直行!安定した生活を確保しつつ歌を練習しよう!
鳴くことしかできないんだけどね、クソがッ!!