詠う小鳥は夜の魔王に出会う   作:リョウ77

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久しぶりにアニメ主題歌で藍井エイルの名前を見た気がします。
まぁ、ただ単に自分の記憶がSAOで止まっているだけなのですが。


不幸は続くものとはいえ、これは連鎖しすぎでは?

適当な期間を滞在し、歌を披露しては次の街に行くという生活にも慣れてきた頃。

・・・ついでに荒事にも慣れてきてしまっているけど、それはそれとして、

 

「お金がない・・・」

 

とうとう路銀が尽きてしまった。

いやまぁ、収入が不定ならいつか金不足に悩む時がくるかもしれないとは思ってたけど、まさかここまでお先真っ暗な状況に陥ってしまうとは。

うーん、前の街での後半の収入が少なかったのが響いてるなぁ。

一応、しばらく小鳥として暮らすか、ルミナス様に頼むという手もあるにはあるけど、人間社会に混じって暮らしている以上、この2つは本当の最終手段ってことにしておきたい。

 

今のところは魔物の討伐を視野に入れているけど、この世界には創作物にあるような“冒険者ギルド”のような組織がない。

いや、厳密には冒険者の互助組織があるにはあるんだけど、都市間の提携が難しい関係で都市ごとに半ば独立しているような形になっている。

その結果、都市によって規模はおろか運営形態すら大きく違ってくるのだ。

んで、私が今いる街はめちゃくちゃ規模が小さい。

旅の道中で聞いたところ、たまたまこの街を囲うように冒険者活動が活発な都市があるため、結果的に魔物も少なく冒険者業としての需要もほとんどないらしい。

それによって、主な依頼がせいぜい薬草採取となった“旅の始まりの街”と化した、というわけだ。

 

ひとまず、今後の予定を考えよう。

幸い、なけなしのお金で一泊はできたから、問題は明日からどうするかだ。

歌唱活動は当然として、他にも稼ぐ手段を考える必要がある。

魔物の討伐依頼は、あったらラッキーくらいに考えよう。最悪、マジでお使いの依頼を受けることも視野に入れればいい。

他は、同族(ソングバード)を呼び寄せてペットとして売るとか?いや、籠も用意せず小鳥だけ売ってどうするんだって話か。下手したら私の正体もバレかねない。

一番楽なのは、ラナさんのところみたく住み込みで依頼を受けることかな。そっちは、明日の活動次第か。

ちなみに、今泊まっているところは「うちはそういうのやってないから」って断られた。

 

さて、一通り方針は考えたことだし、明日のことは明日の自分に任せよう。

考えすぎて寝れなかったら、明日の活動に支障がでちゃうし。

それに、今までもなんだかんだ何とかやれてきた。

しばらくはその日暮らしが続くだろうけど、今の生活に慣れてきた私なら大丈夫なはず・・・

 

 

 

「お金がなくなった・・・」

 

日も暮れかけた頃、私は広場のベンチに座って頭を抱えていた。

本日の収入、なんとその日の宿に泊まるお金すら稼げなかった。

というか、そもそも活動ができなかった。

どうやら、この街は公共の場で金銭が生じる芸術活動をする場合はあらかじめ許可をとる必要があったのだ。

というのも、魔物の被害が少ないということはそれだけ人も多く来るということであり、それは歌人や画家といった芸術家も同様だ。

そのため、手数料を払って発行される許可証によって厳密に管理している、ということだった。

それを知らなかった私は、無事(?)衛兵に連行された。

今までの街でそういうことがなかったのは、冒険者業が盛んなために娯楽関係の縛りが緩かったからだと思う。

幸い、私が外部からの旅人であると証明できたおかげで、今回に限り罰則は与えられなかった。

問題は、今の私の手持ちでは許可証を発行できないということ。

本来であれば一般人でも払えないことはない程度の金額なんだけど、今の私の手持ちは一食を捻出するのがせいぜいのド貧乏。

取り調べをしていた衛兵が私に向けた憐れみの眼差しが印象に残っている。

いや、いつもはもう少し余裕があるからね?今回はたまたま失敗したってだけで。

 

さて、これからマジでどうしよう。

取り調べから解放された後、さっそく冒険者組合の建物に行ってみたけど、めぼしい依頼はほぼ0。まったくないわけではないけど、今日の暮らしを凌げるものはなかった。

衛兵にもそれとなく歌関連の仕事がないか聞いてみたけど、業務外と一蹴された。そりゃそうだ。

いや、本当にどうしよう・・・。

これは、さっそく最終手段に頼らないといけないか。

最終手段の中で一番ハードルが低いのは、歌う小鳥(ソングバード)として過ごすことだけど、問題点としてこの街で野生の個体を一度も見かけていないということか。

直接的な害はほとんどないにしても、一応は魔物に分類されているわけで、通常の生息域はだいたいが山か森の中だ。

飼育個体が逃げ出して野生化するケースもあるにはあるけど、だいたいは都会になじめない。騒音で駆除対象になったりするし。

幸い、この街で歌う小鳥(ソングバード)は即駆除対象にはなってないけど、発見次第捕獲推奨扱いされてる。

その辺りのリスクを考えたら無闇に変身しない方がいいんだろうけど、浮浪者みたいに街中で野宿するわけにもいかない。私の身なりでそんなことをしたら、その日のうちに闇組織の類いに連れ去られるだろう。

 

・・・仕方ない。ここはワンチャンに賭けて小鳥形態で過ごすことにしよう。

幸い、この世界比でけっこう発展している街だから、一夜の寝床には困らない。

問題なのは、その前後。

変身しているところを見られたら終わりだ。

こういう裏路地とか身を隠すのにちょうどいいんだろうけど、それは逆もまた然り。死角からこっそり覗かれる可能性もある。

できるだけソナーで周囲に人がいないか確認はするけど、変身と同時発動はできないから確認漏れはどうしても出てくる。

いや、そもそも変身するときの魔素を魔術師に感知される可能性だってあるわけで・・・。

あーもう、不確定要素が多すぎる!

ほんと、どうしてお金の管理がしっかり出来なかったの過去の私・・・。

過去を悔いてばかりでは仕方ない、と言うだけなら簡単だけど、現状が逼迫しすぎているせいで下手に自分を慰める気にもならない。

とはいえ、嘆いてばかりもいられないから、さっさと隙を見て変身しよう。

 

「周囲に人は・・・いないか。さっさと変身しちゃおう」

 

ソナーで周囲に人間がいないことは確認した。

あとは今まで練習した成果を信じるだけ。

念のため追加でソナーで確認してから、手早く小鳥へと変身した。

周囲に人影は無し。服も地面に落ちてない。

よしっ、ひとまず第一関門はクリア!

あとは適当な寝床を探して、翌朝バレないように人の姿に戻るだけだ。

明日からの仕事は・・・明日の自分に任せよう。

とりあえず、しばらくは冒険者業で日銭を稼ぎつつ、余裕が出来たら許可証をもらおう。

さっさと次の街に向かうのも一つの手ではあるけど、それは何となく負けたような気分になるから、ひとまず優先順位は低くしておく。

さて、今夜の寝床は・・・あの屋根の上でいいか。人目につきにくいし、天窓があるからすぐ傍の軒下である程度雨風を凌げる。

寝てる最中に屋根から滑り落ちないかが心配だけど・・・これなら大丈夫そう。

それじゃあ、翌朝早起きするためにもさっさと寝よう。

どうか明日は、せめてその日を暮らせるだけのお金を稼げますように・・・。

 

 

* * *

 

 

「お父さん、お母さん、おはよー・・・」

「おはよう、ようやく起きたか」

「もう朝ごはん出来てるわよ」

 

ある朝、寝ぼけ眼の少女が寝間着姿のまま両親に朝の挨拶をする。

少女の家族は祖父母の代からこの街で雑貨屋を営んでおり、少女もいずれ店を継ぐために日々勉強していた。

 

「今日は店はお休みだけど、遊びに行く前に部屋の掃除はしておきなさい」

「はーい、わかってるって」

 

最近は仕事が忙しかったこともあり、自分の身の回りのことが後回し気味になっていた。

だが、いざ店を継いだら「仕事が忙しかったから」という言い訳もできなくなる。

いつか母のように立派に店を切り盛りできるよう、今日もまた忙しない日常が始まろうとしていた。

 

さっさと朝食を食べ終えた少女は、服を着替えて自分の部屋へと戻った。

少女の部屋はそれほど物は多くなく散らかってはいないものの、所々に埃がうっすらと積もっている。

これはなかなか重労働になりそうだと思いながら、掃除の換気のためにバン!と思い切り窓を開けた、次の瞬間、

 

バタバタバタッ、ゴンッ!

「あれ?」

 

窓のすぐそばから、何かが羽ばたく音と鈍いが聞こえた。

屋根から飛び立っていくだけなら珍しくないが、今回はなぜか横から音が聞こえてきた。

わざわざ辺鄙なところに降り立った物好きでもいたのか。

なんて思っていたら、カラカラと屋根の上を転がるような音がし始めた。

 

「あっ、いけない!」

 

おそらく、驚いて飛び上がった拍子にぶつけてしまったのだろう。

これで屋根から落ちて怪我をしてしまっては大変だ。

少女は慌てて窓から身を乗り出し、音がした方へと思い切り手を伸ばした。

予想は的中し、ちょうどアリサの手に収まるように小鳥が転がり落ちてきた。

 

「よかったぁ・・・おっとっと、怪我したら危ないから暴れないでね」

 

なんとか救出できて安堵の息を吐いた少女だったが、暴れる小鳥をなるべく傷つけないように優しく、それでいて逃げないようにしっかりと両手で包み込む。

しばし必死に抵抗していた小鳥だったが、少女の言葉が通じたのか、そうでなくとも害意がないと判断したのか、次第に抵抗をやめて大人しくなっていった。

 

「ふぅ・・・って、まさかこの子、歌う小鳥(ソングバード)?」

 

事態が落ち着いたところで、ようやくアリサは助けた小鳥の正体に思い至った。

明るいオレンジ色の羽に透き通るような鳴き声が特徴的な小鳥と言えば、それしかない。

 

「どこかから逃げちゃったのかな?お父さんに相談しないと」

 

森から迷い込んだ個体ならまだしも、誰かの飼育個体であればずっとこのままというわけにもいかない。

どうすればいいのか父親に相談するため、少女は歌う小鳥(ソングバード)を大事そうに抱えて階段を駆け降りた。

 

 

 

(あっ、やっべぇわこれ終わった)

 

すみません、ルミナス様。

下手したら貴女以外の誰かに飼われそうです。

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