詠う小鳥は夜の魔王に出会う   作:リョウ77

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今回はナスカ王国に訪れることになるのですが、3000年前って原作ではあまり明言されていない期間になるので、自分なりに調べたり解釈したり、齟齬があれば少しでも書きたいストーリーに寄せるために頑張って擦り合わせてコネコネした結果、自分でも正しいのかどうかちょっと自信がない状態です。
もし間違いがあれば、指摘していただけるとものすごい助かります。
詳しいことは後書きにて。


過去一で命の危機を感じた

「ようやく、ここまで来た・・・」

 

夜薔薇宮(ナイトローズ)を出発してから、早数年。

ここに至るまで、色々なことがあった。

いや、本当に。

時にはやばい魔物に襲われ、時には悪人をしばき、時には路銀が尽きかけもした。

若干自業自得な部分がありつつも、あらゆる試練を乗り越えて、とうとう辿り着いた。

 

「“始まりの勇者”がいる国、ナスカ王国・・・!」

 

ここまでの道程を思い返すと、むしろよく数年で済んだなとすら思える。

なにせ、夜薔薇宮(ナイトローズ)からほぼ大陸の真反対だし、間にはくそでかい大森林もあったからね。

普通に考えたら軽く10年以上はかかりそうなところをよく頑張った。

まぁ、空を飛んで所々スキップしたからなんですけどね。

さすがにバカ正直に全部歩いていこうとは思わなかった。

大陸東部の手前の大森林とか特に。あれを徒歩で抜けようと思ったらどれだけ時間がかかったことやら。

それはともかくとして、これからどうしようか。

さっそく“始まりの勇者”を見てみたいけど、すぐに会えるとも思えないし、ひとまずは宿屋を探しがてら城下町を見て回ろう。

幸い、今回の軍資金にはかなり余裕がある。

よほど贅沢三昧をしなければ数ヵ月は滞在できるだろう。

・・・なのだが、来てみたはいいものの、

 

「物々しい感じがしますね」

 

全体的に空気が暗いというか、重い。

少なくとも、今まで訪れた街の中で最も活気を感じない。

ただ、それも仕方のないことだとは思う。

 

(戦争中だもんね、一応)

 

大陸東部にはナスカ王国以外にもナムリウス魔法王国とウルメリア東方連合という二つの大国が存在しており、ナスカ王国を含めた三ヶ国が戦争を続けている。

ナスカ王国は元々はその二つと比べると小国だったんだけれど、ここ最近はジワリジワリと勢力圏を広げているらしい。

そんなんだから、当然のように目の敵にされているし、嫌がらせという名の破壊工作やら諜報活動やらが行われている。

私も道中で3回くらい襲われた。

戦闘に巻き込まれた、ならまだマシだったんだけどね。

マジで襲われた。

 

1回目は、小隊から体目的で襲われた。蛮族思考のド変態とか救いようがねぇな。

そいつらはまとめて生き埋めにしておいた。運が良ければ助けてもらえるかもしれないけど、3mくらい掘った上で連中の周囲をセメントのようにガチガチに固めておいたから、十中八九衰弱死するだろうね。

度しがたい変態は生かしておけない。

何気にこの世界で初めての殺人だけど、相手があんなんだったからか特に思うところはなかった。

2回目は、諜報員を疑われた。濡れ衣もいいところではあるけど、取り調べはキチンとしたものだったし、前回が変態共だったから思わず感極まっちゃったね。驚かれて事情を話したら同情もされたし、悪い人たちではなかった。

まぁ、解析スキル持ちの人に正体を看破されたから対処したんですけどね。

始末しようかとも考えたけど、あの連中よりいろいろとマシだったから、詠唱者(トナエルモノ)で魅了して記憶を消すだけで済ませた。

まぁ、ワンチャン私の歌に誘き寄せられた魔物に襲われる可能性もあるけど、そこまで責任は持てない。

ちなみに、1回目と2回目の襲撃はそれぞれ別の国だった。着ている鎧が別物だったからね。

この2回にナスカ王国の兵士が含まれてないか冷や冷やしたけど、辿り着いた時に違うのを確認してホッとした。

それはそうと、最後の3回目は爆撃された。

いや、マジで。

この時は途中で合流したキャラバンと一緒にいたんだけど、物流遮断のためかどこからともなく飛行してきたゴーレムが爆撃を仕掛けてきた。

幸いにも、商隊をまるごと狙った絨毯爆撃でなかったこと、ゴーレムの飛行高度が視認できる程度の距離だったこと、私もこれまでの旅路で強くなったおかげで被害なく対処することができた。

これらに加えて、普段通り(?)魔物も襲いかかってくるんだから、東部での旅路だけでも相当な戦闘経験値を稼げたのではなかろうか。

 

ここまで苦労してやって来たんだから、相応の収穫を得るまでは滞在しよう。

いや、本当に“始まりの勇者”がネタに困らない人物だといいんだけれど・・・。

まぁ、数千、数万年もナスカ王国を治めている時点でネタの塊だけどね。日本だって実質的統治者が変わりながら2000年とかなのに、個人がそれ以上の年月を統治し続けているってどういうことよ。

それも、ルミナス様のような魔王ならともかく、人間がやっているというのがだいぶおかしい。

一応、ルミナス様が言うには人間でも“聖人”に進化すれば寿命から解き放たれるらしいけど、それにしたって長生きしすぎでしょ。

その辺はともかく、何であれ私のやることは変わらない。

いつも通り、歌を披露するだけだ。

戦時中なだけあって、娯楽はいくらか制限されているらしいけど、内容に問題がなければ歌を披露するくらいは大丈夫と聞いた。

私の歌が広く届けば、いつかは“始まりの勇者”の耳にも入るかもしれない。

ワンチャン、そこで私の正体がバレる可能性もあるけど・・・まぁ、その時はその時で何とかしよう。

 

 

* * *

 

 

「ほう?町で話題になっている詩人がいると?」

「なるほどな。なら、一度様子を見てみるか」

「なぁに、ただの興味だ。そやつの腕が悪くなければ、余の歌を作らせるのも悪くなかろう」

「それに、万が一というのもあるかもしれんからな」

 

 

* * *

 

 

いやー、なかなか悪くない国だね、ナスカ王国は。

貴重な娯楽ということもあるのか、合いの手やアンコールをしてくれるくらいには盛り上がってくれる。

戦争中ってことでその辺は不安だったんだけど、杞憂で良かった。

ただ、若干周りから浮いているように見えるのはどうしようもなかった。

戦争中だから、というだけではなく、ここ最近は兵士が志願制から徴兵制に移行しつつあって、その事に不安を覚える人たちも少なくなかった。

身内が戦争に言って帰らぬ人になった、という話も少なくない。

なら“始まりの勇者”であるルドラ様が戦場に行けばいいのではとも思うけど、そう単純な話でもないらしい。

なんでも、遥か昔に遠征中に国内でテロが発生して、ルドラ様の師匠と妹様が亡くなった事件が発生したんだと。

その二人には子供も生まれており、幸せの最中に起こったのだから、当時のルドラ様の悲しみや絶望は計り知れない。

 

そして・・・そのような経験を経て今の状況になっているということは、もしかしたらルドラ様はすでに私が思い描いている勇者像からはかけ離れている可能性が出てきた。

そうなると、歌のネタにするにはちょっと弱い。

少なくとも、私が魔物だとバレて攻撃されるリスクに見合うかどうかはだいぶ怪しい。

非常にもったいないけど、適当なタイミングで切り上げて新たなネタを求め旅立つとしよう。

・・・そう、思ったんだけどね。

 

「では、こちらでしばしお待ちください」

「分かりました・・・」

 

現在、私は城の中の一室に案内されていた。

なんでも、ルドラ様が直々に私をお呼びらしい。

なんで?まだ半月も経ってないけど?

それだけ私の歌が評判だったと思いたいけど、相手が相手なせいでまったく楽観視できない。

 

「お待たせしました。こちらへどうぞ」

 

部屋で待つことしばらく。

近衛らしき立派な鎧を身に纏った兵士に案内されて、謁見の間へと連れられた。

今の私は、これまでにないほど緊張している。

主に、命の危険という意味で。

今までは“なるようになれ”の精神で後悔しつつも乗り越えてきたけど、さすがに今回ばかりはちゃんと考えて行動しなければ。

 

「陛下、例の詩人をお連れしました」

「入れ」

 

そんなことを考えているうちに、扉が開いて謁見の間に通される。

そして、謁見の間の奥にある玉座に、いた。

輝くような金髪と碧眼、西洋人のような顔立ちでありながら着ているのは中華圏のような服だが、違和感はなくむしろ身に纏う覇気を強調するかの如く着こなしている。

この人が、ナスカ王国の国王にして“始まりの勇者”、ルドラ・ナスカか。

その後ろには、炎のようにも見える蒼髪の女性が控えている。

こっちはたぶん、軍の元帥であるグリンド様か。城下町で聞いた特徴と一致している。

・・・着ているチャイナドレスのスリットが深いわ胸元が強調されているわで目のやりどころに困るけど、今は気にしないでおこう。

あらかじめ聞いた礼儀作法をとりつつ、ルドラ様の反応を待つ。

 

「面を上げよ。余の都合で呼んだのだ、必要以上にかしこまることもない」

「身に余る光栄です、国王陛下。私はアリアと申します」

「噂は聞いている。各地を旅している詩人らしいな」

 

市井の噂を聞くとは、単に兵士経由で噂が伝わったのか、それとも民との距離がよほど近いのか。

・・・たぶん前者かな。民との距離が近いなら、民が不安を覚えることもないだろうし。

ただ、それはそれとして思うところがある。

 

(この人たち、めちゃくちゃ強いな)

 

あくまで感覚的なものだけど、ルドラ様はもちろんのこと、後ろのグリンド様も、今まで会ってきた存在の中で最も強いかもしれない。

それこそ、もしかしたらルミナス様よりも。

いや、“もしかしたら”とか“かもしれない”で濁したらダメだな。

ルミナス様のスキルが戦闘向きじゃないことを加味しても、まず間違いなくルミナス様より強い。

世界は広いというか、むしろ私が知っている世界が狭かったと言うべきか。

この二人がその気になったら、私なんか秒も経たずに殺される。

 

「私をここに呼ばれたということは、私の歌をご所望ということでしょうか?私のこれまでの旅路か、あるいはルドラ様の栄光を讃える歌か、何でもお好きなものをお選びください」

 

とりあえず、ここは意地でも“旅の詩人”を演じよう。

たとえ道化のように見えたとしても、なんとかこの場を乗り切らなければ。

 

「そうだな。では単刀直入に言おう。

 

 

 

魔物風情が、余の国で何を企んでいる」

 

次の瞬間、周囲にいた兵士たちが一斉に剣を抜いて私に向けてきた。

あーね、最初からバレてたパターンか。

いやー、剣でもジョ○ウィックみたいに見えるもんなんだね。

言ってる場合じゃねぇや。

いやほんと、どうしたものか。逃げようと思っても絶対無理だろうし、頑張って説得するしかないのかな、これは。

 

「うーん、何も企んでなどいないのですが・・・強いて言えば、歌のネタのために“始まりの勇者”を見に行こうと思ったくらいですね。もちろん、このような形になるのは望んでいませんでしたが」

「それを信じられるとでも?」

「ですよねぇ」

 

そりゃまぁ、私も同じ立場なら疑うに決まってる。

普通に考えればすぐに殺されても文句を言えない立場だけど、そうならなかったということは、何かしらの利用価値か情状酌量の余地を見出だしたということか。

とはいえ、このままだとマジで死にかねない。

私だって、ここでくたばるわけにはいかないんだ。

 

「恐れながら、どこまで把握しているかお聞きしても?」

「貴様の歌が民に対して何かしらの干渉してること。大方、魔力か生命力を奪っている、というところか?あとは、魔法かスキルで変装しているということか」

 

・・・これは、下手に誤魔化せないやつかな。

仕方ない、ルミナス様に迷惑がかからない程度に白状しよう。

 

「そこまでご存知でしたら、姿を偽る必要もありませんね。戸を開けた先には(まこと)の姿

 

そう言って、私は変身の魔法を解いた。

とはいえ、背中から小さな翼が現れる程度の変化だけど。

だが、これだけでは終わらない。

 

「それが、貴様の本当の姿か」

「はい。とはいえ、これだけというわけではありませんが」

「なに?」

 

訝しむルドラ様を他所に、私は再び変身する。

私が光に包まれるのを見て兵士たちが身構えるが、光の中から現れた私の姿を見てルドラ様を含めたほぼ全員が動きを止めることになった。

 

「これが私のもう一つの姿。有り体に言えば・・・私は、元々は歌う小鳥(ソングバード)でした」

 

この時のルドラ様たちの表情は・・・まぁ、ぶっちゃけてしまえば、ものすごい滑稽な間抜け面だった。




とりあえず、自分なりの解釈の3000年前は、
・ミリムはすでに魔王になっており、ルドラとギィのゲームも始まっている。
・東の帝国は統一前だが、原作軸の軍事国家に移行しつつある。
・ルドラの精神状態は追い詰められているものの、自我を保てる程度の余裕は残っている。ただし勇者の資格は消失寸前。
となります。
実は、調べながら執筆をしていた結果、当初書こうと思っていた内容の半分くらいが没ってしまって、おかげで投稿が遅くなってしまいました。
なぜルドラがすぐにアリアを殺さなかったのかとかは、次回までお待ちください。

そのぉ、書籍が完結してアニメも4期が始まったということでぇ、最新版の設定資料集とかぁ、発売してくれませんかねぇ・・・?
年表とかあるとものすごい嬉しいのですが・・・。
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