詠う小鳥は夜の魔王に出会う   作:リョウ77

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まさかドラクエ12と同時にドラクエモンスターズ4まで発表されるとは思いませんでした。
3はやり混み要素が薄くてちょっといまいちだったので、その辺を期待したいですね。


『勇者の歌』を捧げましょう

「・・・なるほどな。歌う小鳥(ソングバード)が名付けを経て進化したのが貴様というわけか」

 

一通り簡単な説明を終えると、ルドラ様が軽く頭を抱えながら玉座に深く座り込んだ。

そこまで深刻な問題か?と思ったけど、『愛玩動物として富裕層に割と親しまれている魔物が名付けで進化したら、魅了か支配系のスキルを獲得する可能性があります』って言われたら、そりゃあ頭を抱えるか。

私の場合は進化する前からスキルを保有してたけど、それは言わないでおこう。

 

「ならば、貴様に名付けをしたのは何者だ?」

「・・・申し訳ありませんが、その問いへの返答は控えさせていただきます。私の主はあまり表舞台に出ることを好みませんので」

 

これはマジだ。

ルミナス様は自分が好きなものは自慢したがるし、自分の国や自身がそれを統べる魔王であることに誇りを持っているものの、じゃあ権威を誇示したがるのかと言われたらそうではない。

むしろ必要以上に目立つのを嫌うし、他魔王との交流も最低限にしている。

そのため、ルミナス様の世界的な知名度は意外と低い。名前を知ってる人はいれど、具体的な特徴となるときっかけが無ければ知る機会も少ない、そんな御方なのだ。

まぁ、自分の趣味のために立場や権力をフル活用することは珍しくないけども。今でも定期的に店を貸し切って私を着せ替え人形にしてくるからね。愛が重い。

そんなわけで、私も余程でなければルミナス様の名前を出すようなことはしない。

現状はその余程にカウントしてもいいとは思うけど、出さずに済むならそれに越したことはない。

 

「ですが、むやみに人類と敵対する御方ではない、とだけ申し上げます」

「そうか。ならば、ここは敢えて詮索は避けるとしよう」

 

幸い、ルドラ様は大人しく引き下がってくれたけど・・・たぶんバレてるっぽい?

まぁ、数千年も生きてれば心当たりもそれだけ多いだろうし、ルミナス様のことを知っていてもなんらおかしくないか。

 

「では、改めて問おう。貴様は、何のためにこの国に訪れた?余の民で、何を企んでいる?」

「私は、何も企んでなどおりません。確かに、私の歌に聞き入った者たちから微量の魔力を頂戴していたことは認めましょう。ですが、それを悪しきことに使うつもりは微塵もありません」

 

本来であれば、自分のユニークスキルの効果をバラすのは自殺行為に等しい愚行だ。

けど、ルドラ様の口ぶりからして、最低でも一人は高位の解析スキル持ちがいる。

それが誰かまでは分からないけど、下手な嘘が通じない以上、信用を得るためにも、ここは敢えて自ら情報を開示しよう。

 

「やはり、歌にまつわるユニークスキルを持っていたか」

「私のスキルは詠唱者(ウタウモノ)。効果は主に二つ。一つは、歌唱による魔法の創造と発動。もう一つは、私の歌に意識を向けた者を魅了し、魔素や生命力を奪うことができます」

「・・・ほう?」

 

二つ目の魅了にまつわる効果を聞いた途端、ルドラ様から途轍もない威圧が放たれた。

鼓動が激しくなり、まともに呼吸することさえ困難になり始めたのを、気合いで抑え込む。

ここでビビったまま釈明できなければ、まず間違いなく殺される。

過去一命の危険を感じながら、私は気力を振り絞って弁明を続ける。

 

「っ、です、が、私は誓って、一度たりとも、自己防衛以外の理由で、魅了したことはなく、著しく寿命を縮めるような量の魔素や生命力の奪い方も、してはおりません」

「口で言うのは簡単だ。だが、なぜ貴様の言葉を信じることができよう?」

「私の歌を、お聞きください。ルドラ様であれば、私程度の魅了など、欠片も効かないでしょう。私は、私自身の歌に誇りを持っています。スキルに頼らずとも、誰かの心を動かし、いつでも、何度でも聞きたいと思わせることができる、と」

「ならば証明してみせよ。貴様の歌は、余の心を動かすことができるということを」

 

そう言いながらも、ルドラ様が威圧を弱める様子はない。

つまり、このまま歌を披露しろ、ということらしい。

コンディションは最悪も最悪。言葉を発するのでようやくといったところ。

さらには、ルドラ様を納得させられるような歌が歌えなければ殺されてしまうという、今までにない極限の状況。

 

(どうする?どんな歌が良い?どんな歌ならルドラ様の心を動かせる・・・!?)

 

残された時間は多くない。

たぶん、既存の歌じゃダメだ。足りない。

この場で作るしかない、“始まりの勇者”に相応しい歌を。

戦闘中なら命の危機を前に即興で歌うことは割と慣れているけど、さすがに普段の活動でここまで命の危機を感じたのは始めてだ。いや、戦闘中でもここまで感じたことはない。

どうする?どう歌う?どうすればいい?

・・・いや、もう悩んでいられない。

そうだ。いつもと違うのは状況だけで、やることは変わらない。

ただ思うがままに、歌を囀ずろう。

私が思い描く、“始まりの勇者”の姿を。

 

遠き始まりの日、門出の時。勇ある者は剣を手に歩み始めた

 

イメージするのは、旅立の光景。

それは夢の始まりであり、まだ見ぬ未知への一歩目。

 

高き壁、遠き頂、険しい果てへの道。時に止まり、時に挫け、それでもなお終わりなき旅の中、勇ある者は遥か高みへと至る

 

連ねるように、旅を通じて成長する姿を思い描く。

いずれ魔王を打ち倒す勇者と言えど、始めからそれだけの力があったわけではない。段階を経て、魔王に挑むだけの強さを得るものだ。

余計なことは考えず、ただひたすら私が構築した勇者のイメージをを歌として出力する。

 

背負うは夢か、使命か、希望か、誓いか、あるいは全てか。されどそれらは枷ではなく、重石でもなく、導きの灯りの薪であり、闇を照らす光の種火

 

威圧が弱まる気配は、まだない。

平静を保て。声を恐怖で震わせるな。それはこの歌に相応しくない。

勇者の冒険とは、未知に溢れていて、人の心を踊らせるようなものでなくてはならない。

なぜなら、勇者とはどの時代どの世界でも、人類の希望の象徴であるからだ。

 

故に勇者とは、勇あるのみに非ず。全てを背負い、尚も歩み続ける者。光となりて、

 

何とか、最後まで歌いきることができた。

浅くなった呼吸でどうにか息を整えながら、ルドラ様の反応を伺う。

威圧は、まだ消えない。ただ、瞑目しながら何か思考に耽っているようだ。

出来ることはやった。あとは祈るだけ。

永劫にも感じられる時間の中、ようやルドラ様が口を開いた。

 

「・・・見事だ」

 

次の瞬間、ルドラ様から放たれていた威圧が嘘のように消えた。

これは、許されたってことでいいのかな?

疑念が完全に晴れたわけではないにしろ、少なくとも即殺されるような気配はなくなった。

そのことに内心で安堵の息を吐いていると、ルドラ様が探るような視線を向けながら問いかけてきた。

 

「一つ聞くが、余の冒険はどこで聞いた?」

「?・・・いえ、詳しく聞いたというほどでは。勝手ながら、大部分は私の想像でございます」

 

ナスカ王国までの道中で、予習としてできるだけルドラ様の逸話を人伝に聞いたり自分で調べたりした。

なんだけど、“国王”としてのルドラ様の話は多くあれど、“始まりの勇者”としての話は驚くほどに少なかったのだ。

それらが数千年前の話で、度重なる戦争や魔物の襲撃で失伝してしまったのだろうけれど、本当にもったいないことだ。

せいぜい、神様に師事していたらしいこと、原初の魔王と一騎討ちをしたことくらいで、その詳細もほとんど分からずじまい。

だからこそ、本人からその辺の話を聞けたらと思ったんだけど、こうなっちゃったからなぁ・・・。

今回の歌は、前世のRPGを参考に妄想100%で作ってみたけど、失敗だっただろうか。

若干心配になっていると、ルドラ様は何かを堪えるように笑いを溢し始めた。

 

「そうか、貴様の想像の産物だったか」

「お気に障られたのであれば・・・」

「いや、良い。実に愉快な話だ」

 

先程までの威圧が嘘のように随分と上機嫌になっちゃってまぁ。

そんなに気に入ってもらえたのは嬉しいけど、逆になんでここまでウケがいいのか、一周回ってちょっと怖い。

 

「そう言えば、魔素や生命力を奪う点についての弁明がまだだな」

「・・・私のスキルは、私の歌で動かした心の分、魔素を頂戴するもの。言ってしまえば、心の突起にやすりをかけるようなものです。多少の疲労感を覚えることはあれど、死ぬことも後遺症が残るようなことはありません。もちろん、頂戴する量をコントロールすることも可能です」

「なるほどな。ならば今回は見逃すことにする。また、褒美として貴様の望む好きなものをやろう」

 

“今回は”ということは、つまり二度目はないと言うことですか。次来たら命はないぞ、と。

まぁ、今すぐ死なないだけマシってことにしておこう。

それにしても、好きなものをくれるとは太っ腹なことだ。よっぽど私の歌を気に入ってもらえたらしい。

それなら、私が求めるものは決まっている。

 

「それなら・・・」

 

私の要求に、ルドラ様は一瞬目を丸くして、感心半分呆れ半分の笑いを溢してから私の求めるものをくれた。

そうして、ルドラ様の謁見を無事(?)終えた私は、翌日の出立まで王城で過ごすことになった。

これに関しては、国民に万が一余計なことをしないようにっていう監視も兼ねているのだろう。別におかしなことではないから、深く考えなくてもいい。

“騙して悪いが”ってなる可能性も0ではないけど・・・案内された客室のベッドの上でゴロゴロ転がりながら先ほどまでのことを思い返せば、それはたぶん大丈夫、だと思う。

なにせ、

 

(表情、変わったもんなぁ)

 

ルドラ様の第一印象は、『本当に勇者なのか?』という疑問、だったと思う。

別に、ルドラ様のことを疑っているわけでも侮っているわけでもない。

だが、“勇者”というよりは“王”という印象が強かった。

国王として私の前に現れたのだから当然かもしれないが、改めて思い返せば『何かがイメージと違う』という違和感があったかもしれない。

少なくとも、私はルドラ様から“勇者”のインスピレーションを得ることはできなかった。

そして、私が歌い終わった後の笑み。あれは、間違いなく過去を懐かしんでいる類いのものだった。

懐かしく思うということは、今となっては得難いということ。

つまり、

 

(今のルドラ様は、勇者の資格を持ってない・・・?)

 

ルミナス様は、勇者となるには資格が必要だと言っていた。

であれば、後になって剥奪される可能性も0ではない、かもしれない。

聞いた限りのルドラ様のここしばらくの活動も、戦に明け暮れる王といった感じで、勇者っぽいものは聞いていない。軍国主義への変換途中であることからも、それが伺える。

そこまで考えて・・・私は思考を放棄した。

これらは空想の域を出ず、証明する方法はない。

何より、

 

「生きた心地がしなかった・・・!!」

 

いやもうほんっと、いつ死んでもおかしくなかったからね、今日。

これ以上、身の危険を感じるようなことはしたくない。

もう、ナスカ王国を出るまでは大人しくしてよう。

 

余談だけど、今回の謁見で『精神攻撃耐性』のスキルを得ることができた。

怪我の巧妙と言うべきか、このスキルが役に立つ場面が来ないことを祈るべきか。

 

 

* * *

 

 

「良かったの?アレを放置して」

 

アリアが謁見の間から出て行ったのを見届けてから、後ろで控えていたグリンドがルドラに問いかけた。

彼女はナスカ王国の元帥であると同時にルドラのパートナーでもあり、その正体は世界に存在する4体の竜種が1体・ヴェルグリンドである。

今回はルドラの指示で後ろに控えていたが、不穏分子として真っ先に排除しようとしたのは彼女の方だ。

その考えは今でも変わらず、悪影響をもたらす前に始末するべきだと暗に主張する。

だが、ルドラは珍しく上機嫌な笑みを浮かべながらヴェルグリンドの問いに答えた。

 

「良い。久方ぶりに楽しませてもらった。その見返りとして、今回は見逃す」

 

まさか、

ここまで愉快で懐かしい気分に浸れたのは、本当に、本当に久々だった。それこそ、最後がいつだったか思い出せないくらいには。

そして、今回こそ本当に最後になるだろう。

自分には成さねばならぬ偉業、勝たなければならぬ戦いがある。

今持っている感情は、それを果たすには不要で余分なものだ。

だからこそ、今回限りだとわざわざ釘を刺した。

もしもう一度、この国に足を踏み入れたなら、その時は国王を惑わす不穏分子として排除する。

その口実も、なくはない。

 

「アレの主は、おそらく魔王ルミナス・バレンタインだ」

 

歌う小鳥(ソングバード)を魔人として進化させることが出来るほどの力の持ち主となると、聖人か魔王くらいだろう。

そして、アリアの『むやみに人類と敵対する御方ではない』という言い方から、人類に歩み寄りつつも必要なら排除する魔王であるという見方ができる。

ある程度人類と共存し、歌う小鳥(ソングバード)に名付けするような物好きの魔王となれば、ルドラの知る限りルミナスしかいない。

別にルドラはルミナスのことをよく知っているわけではないが、おおよそのスタンスは把握している。

 

「奴ならば、己のモノを害されなければ、自ら動くことはない。故に、アレが愚かな真似をせぬ限りは後回しだ」

 

あの吸血姫の配下となれば、“ルドラを魅了し傀儡とするために送り込んだ”と捕まえることもできるだろう。

だが、それをやればまず間違いなくルミナスの怒りを買うことになる。

諸事情でルドラ自身が動けない以上、現在のナスカ王国の戦力でルミナスを迎え撃つのは難しい。

幸い、アリアはルミナスのことを心から慕っているように見えたため、おそらくルミナスに迷惑をかけるようなことはしない。

“ルミナスのため”を口実に暴走して勝手に動くような愚物であれば話は別だが、見た限りアリアは小鳥らしく臆病で命の危機に敏感だ。自分から竜の顎に飛び込むような真似はしないだろう。

希望的観測を多分に取り込んだ甘ったるい判断だという自覚はあるが、数千年ぶりに引き出してもらえた感情をこれから捨てるのだから、今回くらいは大目に見ることにする。

それに、アリアが要求したものもなかなか面白かった。

 

『では、私からは情報を欲します。新たな歌のインスピレーションになるような、とっておきの情報はありますか?』

 

金品も名誉も求めず、ただ歌のために生きる姿勢は、一周回って好感を覚えそうになった。

ルドラは直感する。

まず間違いなく、アリアはいつか世界に名を刻む。

世界にとって無視できない存在になる。

それこそ、魔王や勇者のように。

だが、それらとはまた異なる形で。

それがどのような影響をもたらすかまでは分からないが、もしもの時の責任くらいはとろう。




全力ではないとはいえルドラの“覇王覇気”を受けながら歌いきって、さらにルドラのメンタルをいくらか回復させたやべー女。
この結果、ルドラ経由でギィにアリアの存在が知られ興味を持たれる可能性が爆増するという。
これいろんな意味でルドラに会わない方が良かったのでは?
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