詠う小鳥は夜の魔王に出会う   作:リョウ77

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ハーレム願望はないんですけどね

「ブラボー!見事なのよさ!」

「お褒めに預かり光栄です」

 

一通り歌い終わると、ラミリス様から盛大な拍手をいただいた。

それはそうと、そのクラッカーどこから取り出したんですか?てかこの世界にも存在するんですね。

スキルと精霊魔法で再現した?はぇー、すっごい便利。

 

「それにしても、それだけ上手ならもっと有名になっても良さそうだけど?」

「私は旅の歌人を信条にしてますからね。悪く言えば、あちこちをふらふらほっつき歩いているようなものですから」

 

その時の状況や気分によるけれど、基本的に私は話題が大きくなりすぎないタイミングを見計らって街を出ることが多い。

なぜなら、面倒ごとに巻き込まれたくないから。ナスカ王国からここに来るまでの間にも、何回か誘拐未遂があったし。

それでも長居する理由があるとしたら、お金か生命力が枯渇気味のときくらいか。

後は、スポンサーがいないのも理由としては大きいかな。

活動を縛られるのは嫌だし、何よりルミナス様以外の誰かの下につきたくないから、その手の話はすべて断ってる。

まぁ、ルミナス様なら私がお願いすればノリノリで承諾してくれる、というかむしろ今も支援したくてソワソワしてるけど・・・そこは私にも譲れない矜持がある。

ルミナス様には悪いけど、まだまだ我慢してもらおう。

 

「ふーん?まぁ、こだわりがあるならアタシからは何も言わないわ」

「ありがとうございます」

なんとなく、ルミナスとルドラが気に入った理由が分かる気がするわ

 

最後に何かボソッと呟いた気がするけど、盗み聞きも気が引けるし聞こえなかったことにしよう。

 

「ともかく、あんたの実力は分かった。精霊魔法を見たいんだっけ?思う存分見るがいいのよさ!」

「ありがとうございます」

 

なんでも、ラミリス様はすべての精霊魔法を扱えるらしい。

さすがは元精霊女王、弱体化してなおハイスペック。

ただし、さすがに威力はあまり出せないらしい。その辺は説明とイメージで補完するので大丈夫です。

 

「さて、まずはどれから・・・ってちょっ、どうしたのよあんたたち!?」

「うわうわうわ!?」

 

ラミリス様が肩を回して気合い入れてると思ったら、横から光に包まれてかっさらわれてしまった。

光の正体は、まさかこれ全部精霊?私を掴んでるのは、上位精霊と妖精か。

 

「えっ、なになに?どうしたの?君たちが魔法を見せてくれるの?」

『女王様だけずるいー!』

『私たちも見せるから、もっとお歌聞かせてー』

 

困惑気味に問い掛けると、肯定するかのように続々と姿が光の玉から多種多様な実体に変化しながら自己主張してきた。

そっかぁ、そんなに構ってほしいのかぁ。

念のため確認の意を込めてラミリス様に視線を向けると「仕方ないわねぇ」とばかりに肩を竦めた。

許可は降りたし、存分に相手するとしよう。

 

 

* * *

 

 

「うーわ、すっごい群がられてる・・・」

 

ラミリスの視線の先では、無数の精霊や妖精に囲まれているアリアの姿があった。

自我の薄い下位精霊だけならまだしも、意志がはっきりしている上位精霊すらアリアに構ってほしそうにしている。

あそこまで精霊に好かれている存在は、種族関係なくちょっと記憶にない。

少なくとも、ないと分かってても“あれ、もしかして自分の立場が危ういのでは?”と欠片でも思ってしまうレベルのものは。

アリアが精霊と契約はしないと断言してくれたのは、むしろ助かった。

もし契約すると言っていたら、軽く内戦が起きたかもしれない。

 

(スキルの効果?いや、でもそれとは関係なさそうだし・・・)

 

迷宮の中はラミリスの領域だ。最上位の解析スキルほどではないが、使用されたユニークスキルの分析くらいはできる。

そのため、アリアの歌を媒介に干渉を受けていることは認知していたし、そのスキルに魅了効果があるのも把握していた。

というか、そりゃあルドラもブチキレるに決まってる。むしろなぜ見逃されたのか不思議なくらいだ。

だが、今回はちょろっと魔素を取られたくらいで何も支障はなかったし、魅了されている感じもしなかったため見逃した。

あるいは、アリアの性格的に魅了効果は普段の活動では使っていないのだろうか。

ただ、それはそれとしてあの好かれ具合の説明がつかなくなってしまうのだが。

ごく少量とはいえ魔素を奪われてなおあの懐きようだ。

おそらくは、スキルに依らない天性の何かなのだろう。そのような手合いはたまにいる。

複数の精霊と契約できる者はまさにそれだ。アリアがその中でも特におかしいというだけで。

いろいろとツッコみたいところはあるが、まだギリギリ『まぁたまにはそういうこともあるよね』で済ませられる範疇だ。

問題というか、気になることがあるとすれば、

 

(絶っっっっ対ギィが興味を持つわよね、あれ)

 

最古の魔王が一柱、ギィ・クリムゾン。

本当の意味でこの世界で最初の魔王であり、魔王の中で最強と言っても過言ではない実力を持つ彼だが、実はルドラとは浅からぬ因縁がある。

むしろ腐れ縁と言ってもいい間柄であり、長い戦いの中で二人の間には奇妙な友情が芽生えている。

ここしばらくは二人とも距離を置いているが、細々と交流は続いているらしい。

もし今もそうだとしたら、ルドラからアリアの話が伝わる可能性が非常に高い。そうでなくとも、ルドラの些細な変化からギィが見抜く可能性もある。

別に自分が迷惑するわけではないが、アリアにとっては非常に胃が痛くなる話だろう。

 

(どーしよっかなー、もしもの時はアタシがそれとなく仲裁に入るとか?いやでもそれだとミリムがうるさくなっちゃうか。『私だけ仲間はずれはズルいのだー!』って。そうなったらアリアがストレスで死にかねない)

 

一応、傲慢で冷酷無比と言われているが、会話が成り立たないわけではないと交流がある者は知っている。それはそれとして、機嫌を損ねたら殺されるが。

まぁ、その辺はルドラ相手に生き延びた手腕を信じることにしよう。

 

「ラミリス様ー、なんかめっちゃ歌をせがまれてるんですけど、披露した方がいいですか?」

「好きにしちゃっていいのよさ~」

 

そんなことを考えている間に、アリアに群がる精霊や妖精の数はさらに増えていた。

どうやらアンコールをご所望らしい。

アリアが本気で困っているならさすがに考えるが、そうでもないならわざわざ止める理由もない。

実際、困惑はしているものの満更でもなさそうな表情をしてるため、歌を披露すること自体は楽しいし嬉しいのだろう。

・・・その姿を見ていると、ルミナスが気に入りルドラが絆された理由がなんとなく分かるような気がする。

結局、その日は休憩を挟みながらもアリアは一日中歌を披露し続けることになった。

 

 

* * *

 

 

「あのー、本当に良いんですか?こんなにもらっちゃって」

「気にしなくていいのよさ。それが報酬ってことで。自分で使うなり、売って資金の足しにするなり好きにしていいから」

 

結局、あれから興が乗りまくって歌いまくったり、宴会芸みたいに披露される精霊魔法を楽しんでいたら、気がつけば日付が変わって朝日が昇っていた。

迷宮内だと外の様子が分からないから仕方ないとはいえ、回復魔法込みで喉が若干ガラガラになってた辺りで相当時間が経っていることに気付くべきだった。

それから少し睡眠をとってお別れということになったんだけど、報酬兼お土産としてそれなりの量のアクセサリーをもらうことになった。

それもただの装飾品ではなく、そのすべてが身に付けるだけで何かしらの効果をもたらすマジックアイテムの類いだ。

宝物はいらないと言った手前、こんなに受け取るのはだいぶ気が引けるんだけど・・・あんまりしつこく断るのも失礼だし、恐れ多くも素直に頂戴することにしよう。

 

「でしたら、ありがたくいただきます」

「それで、あんたはこれからどうするつもり?」

「そうですね。ナスカ王国からここまで来ましたし、このまま西に行ってみようかなと」

 

とは言ってみたものの、大陸の西側ってほぼほぼ砂漠とか不毛の乾燥地帯だから、得られるものがあるかって言われたら微妙なんだよね。

それはそれとして興味はあるから行くけども。

ただ、気になることがあるとすれば、

 

「ルミナス様から、ダグリュール様とは折り合いが悪いからそちらには行かない方がいいと言われたんですよね」

 

十大魔王の一柱、ダグリュール。

巨人族の魔王であり、魔王歴はルミナス様よりも長いらしい。

領地もルミナス様と隣接してるんだけど、仲はかなり悪いと聞いている。

ルミナス様の豊かな領土を巡って争っていると言っていたけど、それとは別に因縁があるような感じがした。

 

「あぁ、それはたしかにそうね。人質にとられるか、最悪プチって潰されちゃうかも」

 

人質はともかく、即殺の可能性があるって何があったのか・・・。

まぁ、ルミナス様が話したがらない内は聞かないようにしよう。

 

「気を付けるようにします。では、縁があればまた」

「ばいばーい」

 

ラミリス様と見送りに同行してきた多数の精霊に手を振って、私は“精霊の棲家”を去っていった。

いやー、それにしてもとうとうルミナス様以外の魔王とも交友ができてしまった。

ただ、仲良くして損はないかなーと思う反面、あまり交流を増やし過ぎるのも危ないかもという自覚もより強くなる。

魔物のコミュニティにおいて、魔王という称号はそれだけ重い。

まぁ、今のところ私がルミナス様に名付けされたと告白して大変な目にあったことはないけども。むしろ変な納得と共に見逃されてる。どゆこと?

それはともかく、私は外交やら何やらの話はあまり詳しくない。

今度、報告も兼ねて聞いてみようかな。

・・・ルミナス様が何て言うか、なんとなく予想はつくけども。

それはさておき、

 

「君たち、早く帰りなー?」

『え~?まだ一緒にいたーい』

『もっとお歌聞かせてー』

『契約しようよ~』

『あっ、抜け駆けした!』

 

いつの間にかついてきていた精霊たちに帰ってもらわなければ。

契約はしないって言ったよね?

この後、めちゃくちゃ説得に苦労しながらも戻ってもらった。

別に無自覚たらし系ハーレム主人公を目指してるわけじゃないんだけどなぁ。




アリアの声は“演奏者(カナデルモノ)”の性質によって魔素を含んでいるため、普通の声よりも実体を持たない種族に歌が届きやすい、という設定を生やしてみました。声に含まれる魔素がそのまま糧になるので。
それはそれとして精霊ハーレムは本人の素質です。
なお強化の予定もあるので、ハーレムがさらに加速する可能性があります。
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