詠う小鳥は夜の魔王に出会う   作:リョウ77

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誰がこんな貧弱ボディに生まれ変わらせてくれと頼んだ

「ぁっ、あっ、あーあー。こんな感じですか?」

「うむ、ちゃんと喋れておるの」

 

祝・発声の手段を手に入れることができました!

段階をすっ飛ばしてる?実際そうなんだから仕方ないじゃん。

ことの経緯は、魔素の制御訓練をしていた時のこと。

並行でどうにか言葉を話せないか模索しながら、いつもと同じように修行に励んでいたところ、ふと天啓が降りた。

そういえば、前世の世界だとやたらと声真似が上手い鳥がいたな、と。

たまたま動画サイトで見かけただけだから名前は覚えてないけど、そやつは森の中で聞いた音なら何でも再現ができるという。

車やチェンソーの音を完璧に再現しているのを見て「ははっ、すげー」って笑ったような記憶がある。

なお、そんな天啓は降りたけど何の参考にもなってない。

(ソングバード)?ピーピー鳴くことしか出来ませんが、それが何か?

そんなわけで、「普通の鳥に出来て魔物の私が出来ないなんてどうなってんだオラァ!」という怒りを胸に宿して練習していたら、なぜか新たにスキルを獲得した。それもユニーク。

ユニークスキルは大きな感情によって獲得しやすいとルミナス様から聞いたけど、こんなんでいいのか世界。

 

そういうわけで、新たに獲得したユニークスキルは“演奏者(カナデルモノ)”。

効果はシンプルで、魔素を音に変換するというもの。

似たようなスキルにはコウモリ系の魔物が持つ“超音波”があるけど、ユニークスキルなだけあって性能は比べ物にならない。

というのも、音に変換っていうのは何も声とかに限った話ではなくて、例えば超音波カッターや音波防壁、ソナーなんかも出来るし、なんなら音の塊を衝撃波として放つことも、たぶん出来る。

音って要するに“空気の振動”だから、その範疇であれば割と何でもできるらしい。

 

まぁ、個人的にその辺は割とどうでもいい。

私としては生の声が出せるようになったことの方がはるかに重要だ。

これで魔法の詠唱が出来るようになるし、何より生歌を披露することができる。

とはいえ、歌の方はブランクがあるからルミナス様に聞かせるのはまた今度として、今回は魔法と詠唱者(ウタウモノ)をとことん試すことにした。

 

「それにしても、こうして生の声で話しているのに違和感を覚える日がくるとは思わなかったですね」

「今までは念話でやりとりしていたからの。二年近くも言葉を発していないのであれば無理もない」

 

ぶっちゃけ、こうして喋るよりも念話の方が楽なんだけどね。

たしかに出来ることは多いけど、自由度が高すぎて逆に制御が難しい。

この辺は慣れるまでの辛抱かな。

 

「さて、ではまず詠唱せずにファイアボールを発動してみるのじゃ」

「はい。『ファイアボール』」

 

ルミナス様に促された通り、まずはファイアボールを発動した。

唯一無詠唱で使える攻撃魔法だけど・・・軌道どころか炎自体がヘロヘロで安定していない。

辛うじて的に着弾したけど、ボフッという情けない音と共に軽く破裂しただけで終わった。

 

「・・・分かってはいましたけど、改めて突きつけられると傷つきますね」

「得手不得手は誰にでもあるものじゃ。ほれ、さっさとスキルを試してみよ」

 

戦闘はそこそことか言ってたのに実力で吸血鬼を纏めあげているルミナス様に言われても説得力がないんですけど。

それはさておき、今度はスキル込みの詠唱で発動させるけど・・・詠唱内容はどうしたものか。

もちろん一般的な詠唱もあるけど、せっかくなら別のでいきたい。

ファイアボール、火の玉・・・こんな感じでいってみるか。

 

闇夜を照らすは蛍の灯

 

私がそう唱えると、周囲に軽く10を越える炎の玉が現れた。

サイズはさっき発動したファイアボールよりも一回り小さいけど、あれよりも形は安定しているし輝きも強いことから、明らかにこっちの方が威力は上だ。

 

集いて群れて、蛍は飛んで行く

 

さらに詠唱を続ければ、炎球は不規則な軌道で次々と的に向かっていき、的を粉砕して小さなクレーターを作った。

えぇ・・・なんか思ってたよりもやばいんですけど・・・。

的自体は土の壁とはいえ、魔法要素もあって簡単には壊せないもののはずなんだけど。

いや、今はそれよりも・・・

 

「ふむ、なかなかじゃな。初めてでこれなら大したもの・・・どうした、大丈夫か?」

「ちょっとダルいです・・・」

 

少し調子に乗ったからか、ちょっとばかり魔素を消費しすぎてしまった。

そりゃあ普通のファイアボールよりも高威力の魔法を一度に10発以上もぶっぱなしたら、小鳥の私じゃこうなるよね。

 

「ふむ、やはり魔素の総量を増やすのは急務じゃな」

「面目ないです・・・」

「気に病まずともよい。ほれ、何か食べるか?」

「お菓子をお願いします」

「うむ」

 

ルミナス様が手に取ったパウンドケーキをムシャムシャと啄む。ケーキは本来鳥が食べるものじゃないってツッコミは無しで。

それにしても、魔素の総量の上げ方かぁ。

日々の鍛練以外に手っ取り早い方法はあるけど、そっちはなぁ・・・

 

「アリアが進化できれば、話は早いんじゃがな」

「本当、面目ないです・・・」

 

この世界の生物には“進化”というのが存在する。

字面は某ポケットな奴だけど、ぶっちゃけ実際は似たようなものだ。

ざっくり言うと強化イベントみたいなもので、進化を経ることで格が上がり上位の存在になれるって感じ。

格っていうのはなかなか曖昧な部分もあるけど、要はRPGにおけるレベルみたいなもの、とでも言えばいいか。ただし、種族によって生まれた時点でかなり差があるけど。

進化すると強くなったり新しいスキルを得られるのはもちろん、見た目が変わったり変わらなかったりする。その辺は同種族でも個体差があったりするらしい。

進化の条件はまちまちで、魔素を大量に得たり、クラスなんてものを与えられたり、強固な意志でなんか進化したりすることもある。

また、魔物の場合は名付けがそのまま進化のきっかけになることも多い。

魔物への名付けは自身の力を対象に分け与える行為であり、一気に存在としての格が上がって進化に至ることが多いのだという。

私?見ての通り小鳥のままですが何か?

もちろん、私もルミナス様に名付けされたことで多少は強くなっている。

ただ、戦闘の“せ”の字もない小鳥だからか、私の器が進化に至れるだけの強度に達していない、っていうのがルミナス様の見解。

器の強度を上げるには鍛錬あるのみだけど、やっぱり実戦があるかないかでもかなり変わってくるとは思う。

ようやくまともな攻撃手段は出来たとはいえ、ルミナス様と一緒に魔法やスキルを練習することはあっても実戦練習は一度もしていない。

強めの魔法を一発使っただけでこの有様だし、いったいいつになることやら。

そんなことを考えていると、ルミナス様が顎に手を当てて何かを考え始めた。

 

「・・・ふむ、ならばそろそろ頃合いかもしれんな」

「何がですか?」

 

まぁ、何となく言いたいことは分かるけども・・・まさか、本当に?

内心で冷や汗を流していると、ルミナス様が微笑みながら私の顔を覗き込み、いつも散歩に付き合わせるような調子で口を開いた。

 

「アリアよ。これから魔物退治に行くぞ」




アリアの戦闘スタイルは“灼眼のシャナ”のマージョリーと“トリコ”のゼブラを合わせたような感じになる予定です
そもそもを言えば、マージョリーみたいな戦闘スタイルのオリ主を書きたくて始めたのが本作になります。
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