まどマギキャラと色んなキャラが戦うだけ 作:shinshinta
見滝原市、月下の広場
夜の帳が下りた見滝原市。街灯に照らされた、人気のない広場。つい先ほどまで此処に存在したであろう異質な気配。
――魔女の残滓が、まだ微かに漂っている。
巴マミは、浄化を終えたグリーフシードを手に、ふぅ、と一息ついたところだった。
その時、夜空から一条の金色の閃光が舞い降りた。
音もなく着地したのは、黒を基調としたシャープなデザインのバリアジャケットを纏う少女――フェイト・テスタロッサ。その手に握られた斧槍状のデバイス「バルディッシュ」が、低い電子音を発する。
『未登録魔力シグネチャ検出。エネルギーパターン、特殊。高出力体と判断』
「あら?」
マミは突然の来訪者に少し驚きつつも、優雅な笑みを浮かべた。
「新しい魔法少女かしら? 見ない顔だけど……」
しかし、フェイトの表情は硬いままだった。バルディッシュを静かに構え、鋭い視線でマミを見据える。
「……何者? 未知の魔力……管理局のデータベースにない……。全ての魔力行使を停止し、身元を明かしなさい」
その口調は、有無を言わせぬ響きを持っていた。
マミの笑みが消え、警戒の色が浮かぶ。
「……私の名前は巴マミ。ずいぶん高圧的だけど、あなたこそ何者? その武器……普通じゃないわね」
マミの袖から、するすると金色のリボンが流れ出し、周囲に複数のマスケット銃が音もなく出現する。
「まずは、少し……試させてもらうわよ」
マミはそう言うと、寸分の狂いもない精密さで、マスケット銃の一斉射撃を放った。牽制、あるいは力量を測るための一撃。同時に、金色のリボンが蛇のように地を走り、フェイトの足元を狙う。
「バルディッシュ、パターン解析。ソニックフォーム」
フェイトは冷静に指示を出す。次の瞬間、彼女の姿は金色の残像を残して消え、マスケットの弾丸は空しく空間を撃ち抜いた。地を這うリボンも、ただ空を切る。
マミが驚きに目を見開いた瞬間、フェイトは既に彼女の背後に移動していた。バルディッシュは、鋭利な大鎌形態「サイズフォーム」へと変形している。
『解析完了。実体弾生成による物理攻撃及び、リボンを用いた捕縛・操作を確認。危険度:中』
「中、ね……。でも、あれだけの威力、殺傷能力は十分にあるわ」
フェイトは呟きながら、背後から迫るリボンをサイズで容易く切り裂く。そして、素早い身のこなしで次の射撃を躱しつつ、金色の雷――『プラズマランサー』を数発、マミのマスケット銃に向けて撃ち出した。
バシュッ!と音を立てて、いくつかのマスケット銃がプラズマに貫かれ消滅する。
「……速い! なんて動き……!!」
マミは驚愕しながらも、リボンを使って瞬時に後方、そして上方へと跳躍。空中に足場を作り出し、距離を取る。
そして、さらに多数のマスケット銃を召喚し、空中に円陣を形成。そこから、雨のような連続射撃をフェイトへと浴びせかけた。
下方の地面には、リボンによる防御陣が展開される。
「距離を取っても無駄」
フェイトは弾雨の中を、紙一重で躱しながら突き進む。その動きは、まるで金色の流星。
「『ジェットザンバー』!」
サイズから放たれた三日月状の巨大な魔力刃が、マミのリボン防御陣を切り裂き、空中のマスケット銃をも薙ぎ払う。
そして、一気に加速。
「『ブリッツラッシュ』!」
マミが反応するよりも速く、フェイトは空中のマミの懐へと飛び込み、金色の魔力を纏ったサイズを振り下ろした。
「……っ!」
眼前に迫る金色の刃。マミは咄嗟に、手元に召喚したマスケット銃と、幾重にも重ねて硬化させたリボンで、盾のようにしてそれを受け止める。
キィィンッ!
激しい金属音と火花が散る。バルディッシュの刃が、マミの急ごしらえの防御を軋ませる。
至近距離で、フェイトの冷徹なまでの強い瞳と、マミの驚きと焦りに満ちた瞳が交差した。
優雅な遠距離戦を得意とする魔法少女は、今、圧倒的な速度を持つ接近戦のスペシャリストに、その懐に踏み込まれていた。
至近距離で刃を交え、圧倒的な速度とパワーで押し込むフェイト。マミは、リボンとマスケット銃で形成した即席の盾を軋ませながら、苦しげに耐えていた。
このままでは押し切られる――そう判断したマミは、意を決する。
防御に使っていたリボンの一部を鞭のようにしならせ、フェイトの顔面を狙うと同時に、フェイトのすぐ背後に、予備として召喚していたマスケット銃を一つ、起爆させた!
「ティロ・ドゥエット!」
「!」
至近距離での爆発と、視界を狙うリボン。
フェイトのバリアジャケットが爆風を軽減するが、咄嗟に後退し、リボンを切り払いながら距離を取らざるを得なかった。
武器のロックが解ける。
マミはその一瞬の隙を逃さない。リボンを巧みに操り、近くのビルの屋上へと高速で跳躍、着地する。
即座に、新たなマスケット銃を数十丁召喚し、屋上から広場全体を射界に収める陣形を構築。
同時に、広場の地面には、淡く輝くリボンを張り巡らせ、見えにくい罠を仕掛けた。
「逃がさないわよ……ここは、私の庭だもの」
マミは静かに呟き、眼下のフェイトを睨む。
「バルディッシュ、罠のパターンをスキャンして」
フェイトは冷静に指示を出す。
『了解。広範囲に低レベル魔力反応散布を確認。接触起爆式トラップと推測』
「なら、直接は踏まない方が良さそう。……ハルバードフォーム」
バルディッシュが、柄の長い斧槍形態「ハルバードフォーム」へと変形。
フェイトは飛行し、広場の罠を避けながら、屋上のマミへと迫る。
途中、薙ぎ払うように『プラズマスラッシャー』を放ち、マミの射線を塞ぐリボンや罠を破壊していく。
屋上からのマスケット弾が雨のように降り注ぐが、フェイトは巧みな飛行技術でそれらを回避、ハルバードで弾きながら、着実に距離を詰めていく。
マミは、フェイトの圧倒的な機動力と突破力を改めて認識する。小細工では時間を稼げても、決定打にはならない。
覚悟を決めたマミは、両手を掲げ、集中力を高める。彼女の周囲に、金色のリボンが渦を巻くように集まり、一つの巨大な砲門―――普通のマスケット銃とは比較にならない、巨大な魔法の大砲を形作り始めた。魔力が奔流となって注ぎ込まれ、砲口が眩い光を放つ。
「これで……決めるわ!」
彼女を守るように、残ったマスケット銃が最後の抵抗とばかりにフェイトへ向けて火を噴き続ける。
『警告! 高エネルギー反応、急速増大中! 推定威力レベルAA! 当該個体の最大出力を超過!』
バルディッシュからの警告。フェイトは眼前に形成されつつある巨大な砲門と、そこに収束していく凄まじい魔力を感じ取る。
(この魔力砲……まともに受けたら、ただじゃ済まない……!)
フェイトは前進を止め、空中で静止する。バルディッシュが、巨大な剣の形態「ザンバーフォーム」へと移行。
黄金の刀身が雷光を纏い、咆哮するかのように唸りを上げた。
正面から受けて立つフェイト。
「バルディッシュ、フルドライブ! ザンバーフォーム……!」
マミが、全霊を込めて叫ぶ。
「『ティロ・フィナーレ』!!」
魔法の砲門から、夜空を焦がすほどの極太の黄金色魔力砲が放たれた。それは、全てを薙ぎ払う破壊の光。
対するフェイトもまた、雷光を纏ったザンバーを振りかぶる。究極の砲撃と、必殺の斬撃。二人の最大級の技が、今まさに激突する―――
ゴォォォォォッ!!
二つの絶大な力が激突し、夜空が真昼のように白く染まる。轟音は次元の壁を揺るがすかのように響き渡り、衝撃波が周囲のビル群を叩き、窓ガラスを粉々に砕いた。
黄金の光と雷光が拮抗し、膨大なエネルギーが一点でぶつかり合い、火花を散らす。
「はぁぁぁっ!!!」
フェイトは渾身の力を込めてザンバーを押し込む。巨大な黄金の刃が、ティロ・フィナーレの奔流の中心を捉え、力強く切り裂いていく。
ビームは完全に消滅しないまでも、その軌道を大きく逸らされ、威力を減衰させられながら、夜空や周囲の建物へと逸れて炸裂した。
フェイトのバリアジャケットも激しく明滅し、ザンバーの刃にも微かな傷が残るほどの凄まじい威力だった。
『警告。バリアジャケット損傷度35%。ザンバー部に軽微なダメージを確認』
ティロ・フィナーレを放ったマミは、自身の切り札が破られたことに、一瞬、瞠目する。全霊を込めた一撃の反動と、予期せぬ結果に、わずかな硬直が生まれた。
その一瞬を、フェイトは見逃さなかった。
衝撃波が収まらぬうちに、『ブリッツラッシュ』で再び神速の踏み込み。驚愕するマミの眼前に金色の閃光が迫る。
バルディッシュは瞬時に標準形態へと戻り、フェイトはその石突部分で、マミの肩口を的確に打撃した。
手加減された、しかし意識を刈り取るには十分な一撃。
同時に、拘束の魔法陣が展開される。
『Bind Set.』
金色の光の輪が、抵抗する間もなくマミの身体を捕らえた。
「あっ……」
マミは短く声を漏らすと、打撃の衝撃と魔力の消耗、そして拘束によって意識を失い、光の輪に支えられるようにして、その場に崩れ落ちた。
召喚されていたマスケット銃も、主の意識と共に霧散していく。
破壊の跡が生々しい広場と屋上に、静寂が戻る。
遠くで、先ほどの爆音に反応したであろうサイレンの音が微かに聞こえ始めていた。
フェイトは静かにマミの傍らに降り立つ。気を失い、光の輪に拘束されたままの魔法少女を見下ろした。
ティロ・フィナーレの余韻が、まだ空気に熱を残している。
「すごい威力……でも、根本的に何か違う。魔力の流れも、その核も……」
フェイトは静かに分析する。
『対象の意識喪失を確認。バイタル安定。魔力反応、急激に低下するも、中心核より自己修復の兆候あり。……中心核の構造、既知の魔導師データと著しく乖離。詳細な解析を推奨します』
バルディッシュが冷静な報告を付け加える。
「ええ……管理局に報告ね」
フェイトは頷き、改めてマミに視線を落とす。
その表情には、任務遂行の安堵と共に、未知の魔法体系に対する強い疑念と、わずかな憐憫のようなものが浮かんでいた。
この出会いが何をもたらすのか、今はまだ誰にも分からない。