ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜 作:nemu1116
――林間学校。
それは、凡矢里高校の年間行事の中でも最大級の一大イベント。
「自然とのふれあい」「集団行動による絆の深化」「協調性の育成」――というお堅い建前はあるものの、実際のところ生徒たちにとってはただの楽しいお泊まり会である。
夜ふかし、枕投げ、恋バナ、浴衣のパジャマトーク。
いくつもの“いつもと違う”が混ざり合い、恋のイベントフラグが乱立する魔の2泊3日。
その非日常の空気は、今日この日、静かに、一条楽と小野寺小咲と桐崎千棘の三角関係を揺さぶろうとしていた。
バスの車内。
急カーブに体が寄るたび、楽の左右にいた小咲と千棘の肩がぎゅうっと押し寄せるように当たる。
小咲(うわぁぁぁ……こんなに体が密着してる……!でも!い、今のは事故だから…!うん!事故だから仕方ないよね…///)
千棘(ちょ、こいつ……肩!!どさくさに紛れてわざと体重かけてない?! でもここで言い出したらなんだか自意識過剰に見えたり?! くそぅ……なぜ私がこんなにドキドキしなきゃならないの…!!///)
楽(……これは、天国だけどある意味生き地獄かもしれん///)
その後も、カレー作りでは三人でニンジンの切り方を巡ってわちゃわちゃ、ババ抜き大会では妙に目線で心理戦を繰り広げ、笑い声の中にほんのり火花が交じるような時間が過ぎていく。
そしてーー夜。
いよいよ、生徒たちが楽しみにしていた温泉タイムがやってきた。
楽「……ふぅ、極楽〜……。やっぱり風呂は一番風呂に限るよなぁ」
檜の香り漂う旅館の湯。
湯けむりに包まれながら、男湯(と信じて疑わない)浴場にひとり肩まで浸かる一条楽。
湯気が立ちこめる檜の風呂。
ほどよい熱さが、疲れた身体をじわじわ癒やしていく。
楽「今日は小野寺と、あんまり喋れなかったなぁ。でも、夜の自由時間にちょっとでも2人きりになれたら……」
ぼーっとしながら天井を見上げていると、ぽちゃん……と水音がして、湯船に誰かが足を入れた。
目の前に立っていたのはーー
小咲「…………え?」
タオルで慌てて前を隠し、立ち尽くす小咲。
湯気越しに見えたその姿は、普段の制服とは全く違う、素肌のシルエット。
楽「……え゛?」
あまりの衝撃に、思考が停止。
小咲「きゃぁぁあ!!! ま、まって!! なんで?! なんで一条くんここにいるの!? ここ、女湯だよ!?」
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予想外の出来事に思わず仰け反り湯船の中にバチャンと倒れる小咲。
楽「いやいやいや!? は? マジで!? だって、男湯って書いてたぞ!?!!?」
小咲「ええ?! じゃあわたしが間違えたの?! でも、わたし以外にも女子生徒入ってきてたし……」
楽「うそだろ……マジかよ……」
小咲「しっ……誰か来ちゃうかも…!」
その言葉に、楽の顔がサッと青ざめる。
楽「え、マジ?……これ……バレたら退学!?……いや、下手したら逮捕……!?」
小咲、真っ赤な顔をブンブンと横に振り、一度目を瞑って大きく深呼吸。
小咲「……大丈夫。任せて。わたしがなんとかするから!」
楽「……小野寺、ありがとう! 今マジで天使に見える。裸だから余計に……いや、そうじゃなくて!!(つい心の声が///」
小咲「……/// あの……ほんっとうに、男湯だと思って入ったんだよね!? 信じるよ?!」
楽「もちろん!! そこだけは信じて!? お願いします! マジでほんとに!!!」
小咲「とりあえず……!ほら! この桶、逆さにして顔隠してくれるかな? 私の後ろにいれば、湯気と私で視界は完全にシャットアウト! 他の人からは絶対に見えないから!」
楽「小野寺……!!恩にきる……!!」
バタン。
ドアの向こうから、誰かの足音が近づいてくる。
女子の声、ピタピタという足音、ざわめき。
そして。
生徒1「うわ〜、めっちゃ良い湯気〜! 霧みたいで景色がぼやけて見えるね!」
生徒2「早く浸かろうよ〜」
生徒3「おーい、桐崎さーん!シャンプー持ってきた〜?」
千棘「来た来た〜!うーわ、外だからマジで寒っ。早く浸かりたい〜!」
楽(マジで来た……!!って、千棘もいるの!? これ、バレたらリアルに人生終わる……!!)
桶の中に顔を突っ込み、小咲の背中にぴったりと隠れる楽。
小咲も、湯船の縁にそっと腰を下ろしながら、必死に表情を作っていた。
小咲(こ、こんな形で……まさか、お互いが裸で会う初遭遇になるなんて……泣きたいよ……/// でも今は……とにかく集中しなきゃ……!!)
前方には無数の女子生徒たち。
後方には桶に隠れた楽。
湯煙が立ち込める中、小野寺小咲の孤独な戦いが、今始まる。