ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜 作:nemu1116
夜の遊園地は、昼間の賑わいとは違い、どこか幻想的な雰囲気を帯びていた。
煌びやかなイルミネーションが足元を照らし、遠くの観覧車が回る音が静かに耳に届く。
ゲート前。
人々がちらほらと帰り始める中、楽と小咲はまだそこに立っていた。
帰りたくない……そう思っていたのは、きっと2人とも同じだった。
しかし、無情にもーー
アナウンス「間もなく、閉園時間となります。お客様は、速やかにーー」
小咲はふう、と一つため息をつくと、優しい笑顔で楽へ向き合う。
小咲「一条くん、今日は楽しかったよ。ほんとに、あっという間だったね」
その声はどこか名残惜しげで、風に紛れそうなほどか細かった。
けれど、その目は今日一日をかみしめるように優しく笑っていた。
楽「ああ……このまま時が止まればいいのにって、何度も思ったよ。たぶん、今日の景色は一生忘れねぇな」
小咲「……わたし、幸せだよ。こんなに一条くんのこと、好きだって言えて。好きだって言ってもらえて。素直に“本物の恋人”として振る舞えて……本当に幸せ」
そう言って、小咲は自分の手を見つめて微笑んだ。
小咲「だってね、今日ずっと、何時間も手を繋いでたんだよ? 大好きな一条くんと。幸せすぎて……多分、帰っても手洗わないと思うww」
楽「それは衛生的にちょっと……って俺も多分洗わねぇけどww でもさ、小野寺。これで終わりじゃない。今日みたいな思い出を、これからもっともっと作っていこうぜ。たくさん、たくさんな」
それは誓いのように、確かな言葉だった。
2人の心がすでに同じ場所を向いている、何よりの証。
小咲「……。」
そして、小咲が一歩近づいた。
真剣な顔。頬はほんのり紅く染まっている。
小咲「ねえ、一条くん……キスしてもいい?」
一瞬で空気が変わった。
楽「……え? き、き、キスって……!? ちょ、待って、全く心の準備が…っ」
小咲「っ……そ、そうだよね!? ご、ごめん!!変なこと言っちゃって! 私ったら、なんか舞い上がってたかも…!///」
そう言いながらバタバタと顔を隠すように振る舞い、ごまかすようにしゃべり続ける。
小咲「さー帰ろう帰ろう! 晩ごはん何かなー!? ハンバーグ? カレー? それとも――」
楽「……小野寺」
その声に、小咲の足が止まる。次の瞬間、そっと楽が一歩近づいて――
楽「……」
小咲の頬に、柔らかく唇を当てた。
ほんの一瞬のキスだった。
だけど、それはとても静かで、あたたかくて、世界の音が一切消えたような感覚だった。
楽「……ごめん。したことなかったから……下手で」
小咲は驚いたまま動けず、目をぱちぱちさせる。
しかし、すぐに――ふっと笑った。
そして今度は、彼女の方からそっと背伸びをして、楽の頬にキスを返した。
小咲「……///」
楽「……っ!///」
言葉は、もう要らなかった。
2人の手は、さっきよりもずっと強く結ばれていた。
静かな夜の中で、寄り添う2つの影が、ゆっくりと歩き出していく。