ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜 作:nemu1116
朝の教室
小咲「おはよう! 一条くん!」
小咲が駆け寄ってくる。
相変わらず制服がよく似合う。楽はつい頬をゆるめる。
楽「お、おはよう、小野寺」
楽(……うぉぉ、なんつー破壊力のある笑顔。今日一日分のエネルギー、確保完了だわ……)
まるで昨日のデートと、観覧車でのやりとりが全て夢だったような、でもたしかに現実だったと思える距離感。
手を繋いだ記憶も、頬へのキスも、楽の中で何度も反芻されていた。
だがその様子を、教室の端でじっと見ていた少女がいた。
千棘(……ふうん)
髪をかき上げながら、ポツリと呟いた。
千棘「……何か進展、あったみたいね。……まぁ、私には関係ないし?」
楽はそっと笑いながら、気軽に声をかけた。
楽「お、千棘。おはよう、ハニー」
千棘(何よ、そのついで感……まあいいけど〜)
千棘「おはよう、ダーリン。朝からデレデレねぇ」
楽「ふ……そりゃそうだろうよ。なんたって、俺たちーー」
千棘「……俺たち……なに?」
楽「いや……なんでもねえ(なんで、デートしたこと、キスしたこと、こいつに隠す必要がある? なんで躊躇った俺? あーくそ、小野寺に千棘がどうとか、映像がどうとか、そういう話されたから変に意識持っちまってるわ……)」
楽、頭を抱えて歯軋りをする。
千棘(……なんか一人で悶えてて気色悪……)
そんな中、教室がざわめきはじめる。
先生「えー、今日は転校生が来てまーす。みんな仲良くしてねー」
先生の言葉に、教室内がざわついた。
男子「また転校生?」
女子「このクラスすごくね?」
男子「今度はどんな子だよ」
楽もなんとなく入り口のほうに顔を向ける。
カラララッ――
ドアがゆっくりと開いたその瞬間、眩いばかりのオーラをまとった一人の少女が教室へと足を踏み入れた。
万里花「皆さま、はじめまして。橘万里花と申します」
凛とした声、完璧な挨拶、そして品のある佇まい。
その瞬間、クラス中が静まり返る。
何人かの男子は思わず立ち上がりそうになるほどの衝撃だった。
楽(うぉぉ……すっげえ美人。まるで芸能人みたいだ)
楽もそう思った、次の瞬間だった。
万里花「あっ……楽様〜〜〜〜っ!」
その美少女が、教室の端から端までをガバッと全力で突っ走って――
万里花「やっと……やっとお会いできましたわぁっ!」
比喩ではない。本気のガバッ。
楽「うわああああっ?!」
まさかの“正面からの抱きつき”に、楽は盛大に吹き出す。
一瞬教室が静まり返る。
千棘「……は?」
小咲「え……え……っ……?」
千棘、目が点になる。
小咲は目を見開いたまま、ピタリと固まる。
万里花「申し訳ございません、ずっとこの瞬間を夢見ていたものですから……あぁ、楽様のお胸、逞しい……」
楽「わーーーー急に何すんだ!!?」
万里花「だって……わたくし、楽様の許嫁ですもの♡」
教室、今世紀最大の騒然。
男子「えぇぇぇぇえええええ?!」
男子2「あの一条に許嫁?!」
男子3「なんであいつばっかり?! !!」
千棘「いやいやいや、さすがに意味がわからないけど!!?」
万里花「不束者ですが、みなさまご承知おきくださいませ♪」
万里花は不敵な笑みを浮かべ、静かに一礼した。
小咲「……(目を見開いたまま半笑いで、そっと意識が遠のいていく)」
楽「ちょっ、まって、いや、ほんとにまって、何この展開?!?!?!」
万里花「ふふ……今日からは“わたくしたち”が主役ですわよ、楽様♪」