ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜 作:nemu1116
翌朝――楽・自宅前
玄関の扉を開けると、朝の爽やかな風とともに――目の前には、どこか異質な光景が広がっていた。
楽「いってきま――……って、なんだこれ」
目の前には、黒塗りの巨大なリムジン。
その後部ドアがゆっくり開くと、そこには――
万里花「おはようございます、楽様♪ お迎えにあがりましたわ!」
楽「……」
しっかりセットされた髪、品の良い制服姿、いつも通りの完璧スマイル。
そこにいるのは、まごうことなき“橘万里花”だった。
楽「いやいやいや、え、なにこれ? どゆこと?」
万里花「通学、ご一緒にと思いまして。わたくし、体が弱いものですから……基本的には車で通っておりますの。こちら、ちょうど通り道ですので、楽様もぜひお乗りいただければと!」
楽「通り道……? そうなの? てか、そういう問題なのか?w」
万里花「ちなみに……いつ頃現れるかわからなかったので、朝6時からここで待機しておりました♪」
楽「ろ、ろくじ!? 今、8時前だぞ!? 2時間前から!?なんでそんなにストイックなの?!」
万里花「楽様と朝から少しでも長くご一緒できるなら、2時間など……むしろ短いくらいですわ!」
楽(真顔で言ってる……本気で怖ぇ)
楽「……ま、まぁ……来てくれたのはありがたいし、今日はとりあえず乗せてもらうよ。お言葉に思えて(どうせ引き下がらないしな)」
万里花「まぁ、光栄ですわ!どうぞどうぞ、お気をつけてお乗りくださいまし!」
車内は完全に高級ホテルの一室のような内装。
革張りのシートに、さりげなく香るハーブのアロマ。
朝食のケータリングまで完備されている。
楽「……なにこの高級感」
万里花「ふふふ。お気に召しましたかしら?」
楽「というか、圧倒されてるww」
万里花は終始笑顔を絶やさなかったが、一度視線を逸らすと、意味深げな表情でこう言った。
万里花「ねえ……楽様、気を悪くしないで聞いていただけますか?」
楽「……前置きがある時点で嫌な予感しかないけど、まあ内容次第かな……」
万里花「では、単刀直入に申し上げますわ。 小野寺小咲さんと――別れていただけませんこと?」
楽「……」
楽「……え?」
万里花「小野寺さんと、お別れを」
楽「いやいやいやいやいや、待て待て! まず、俺が付き合ってるのは“千棘”って説明したと思うんだけど!? 小野寺の話って、なに!? どこから出てきたの!?」
万里花「ふふふ…楽様、わたくしの情報網を甘く見てはいけませんわ。あなたと桐崎千棘が“偽物の恋人”であること、そして小野寺小咲さんと“本物の恋人”であること――すべて把握済みですわ」
楽「お、おま……どこまで調べてんだよ、ほんとに」
万里花「ささやかな資金と情熱があれば、真実は容易に手に入りますもの。お褒めに預かり光栄ですわ♪」
楽「……で、その上で“別れてください”って? それはなんで?」
万里花「ええ、ご説明申し上げます。わたくしが楽様を本気で愛しているという一点において、小野寺小咲さんよりも強く、熱く、深く、確信を持って申し上げます。……ですから、今すぐにとは言いません。けれど、いずれはーー」
楽「……いや、無理だわ」
万里花「…………」
楽「別れるとか、多分死んでもありえない。俺、小野寺が大好きなんだよ」
万里花「……なるほど。楽様が“絶対に手放さない”とまで言い切る相手。それほどの女性だったとは……興味深いですわね。ふ、ふふ、うふふふふ♪」
楽「おい、その笑い方なに?ちょっと怖いんだけどw」
万里花「ふふふ……失礼いたしました。けれど――そう言われると、ますます燃えるじゃありませんか♪ “絶対に別れない”と言い切った楽様が、わたくしの魅力に揺らいで、将来を誓った女性と別れ、わたくしと結ばれる未来を想像すると♪」
楽(こりゃだめだ……ww)
そしてリムジンは、優雅に学校前に停車する。
万里花「今日も一日、よろしくお願いいたしますわね、楽様♪」
楽「あ、ああ、よろしくね(いつまで続くんだろう……これ)」