ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜 作:nemu1116
中央広場「恋むすび」売り場前
色とりどりの提灯が照らす中、ひときわ人だかりができている屋台――それが、例の“恋むすび”売り場だった。
屋台の周囲はまるでライブ会場の最前列のような混雑で、熱気に満ちている。
楽「なぁ、小野寺……知ってるよな?『恋むすび』ってお守り。あれ、なんでも絶大な効果らしいぜ?」
小咲「う、うん……知ってるよ。その辺りじゃ有名だもん。地方から買いに来る人もいるって……」
楽「……欲しいよな?」
小咲「そ、そりゃあ……うん……///」
楽「よし決まりだ! 突撃すんぞ、小野寺! 俺の手、絶対離すなよ!」
小咲「う、うん……!」
楽は小咲の手をしっかりと握り、雑踏の中へと勢いよく突入!
楽「って、うわ、思った以上にヤバいぞこれ……なんだこの密度。なに?壁?」
刺客A(無線)「確認。恋むすびに向かって進行中の対象を発見。接近を阻止せよ」
刺客B(無線)「了解、A班左から、B班右から包囲開始。……恋むすびは渡さない!」
楽(心の声)「人だかり凄すぎ……っていうか、なんか邪魔されてる気がするけど、気のせい?!」
小咲「あわわ……一条くん…なんかわたしたち、すごく怖い目で見られてる気が……」
楽「だよな!? 俺も思ってた! てかこれ絶対わざとだよな!?」
小咲「これじゃあ前に進めないよぉ……」
楽(クソ! これじゃあ格好つかねえ!)
楽(……。よし、こうなったら、いちかばちか、あの作戦を決行するか……! うまくいかなかったら……その時はその時だ!!!!)
楽はごそごそとポケットから、小さな巾着を取り出す。
ピンク色で、どこからどう見ても“恋むすび”……に似せて作った雑なお手製お守りである。
そして、それを一思いに自分たちの後方に投げつける!!
楽「あ〜〜〜〜〜っっっ!!! しまったぁぁぁぁぁ!!! 手が滑って『恋むすび』落としちゃったぁぁぁぁあああ!!!!!」
刺客A「……!?」
群衆その他大勢「あれが恋むすび!?」「誰かが落とした!?」「恋むすびが落ちてる!?」「拾え!!早い者勝ちだああああ!!」
刺客B「まずい……人並みに押されて……ブロックが……!」
小咲「え? 一条くん、今なんて?」
小咲はよく聞き取れなかったが、楽の言葉が聞き取れた群衆が偽物の恋むすびに群がる。
人の波で刺客たちのブロックが一瞬崩れた。
楽「よしっ! 小野寺、いまのうちに行くんだ!! 今なら前方に隙間ができたぞ! ほら、あそこ!!」
小咲は一瞬戸惑いながらも、楽の手を離して、混乱の隙を縫って走り出す。
小咲「あっ、あった……! 最後の一個、まだある……! よ、よいしょっ……!」
屋台の店主(優しげなおじいちゃん)「お嬢さん……これが今夜最後の一つだ。大切にな?」
小咲「は、はいっ! ありがとうございます!」
小咲(や、やった! やったよぉぉお!!)
楽「ナイスだ小野寺ー! やったなー!!」
が、次の瞬間ーー
ズゴゴゴォォッ
群衆や刺客たちを中心にしたまるで海嘯のような人波が楽へと押し寄せる。
楽「うわっ!?!?!? ちょっ……やばっ……小野寺ぁぁぁぁぁ!!!」
人の波に呑まれ、まるで紙吹雪のように視界から消えた楽。
小咲「いっ、一条くーーーん!!! だ、だいじょうぶっ!?!? うわぁぁ、完全に巻き込まれてるーーー!!」
手にはしっかりと“恋むすび”を握りしめながら、周囲を見渡してオロオロと立ち尽くす小咲。
小咲「ま、また会えるよね……? ね!?」
夜の祭り、熱狂の渦。
その真っ只中で繰り広げられた“恋むすび”攻防戦は、ひとまず小咲の勝利で幕を閉じた。
かのように思えたがーー