ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜 作:nemu1116
屋台の明かりはまだまばらに灯り、遠くで聞こえる祭囃子が、二人の沈黙をそっと包んでいた。
それでも、小咲は突然――
小咲「ーーはぁぁぁ〜!!」
と大きく息を吐き出すと、勢いよく両手を広げた。
小咲「よしっ!!!」
楽「……えっ?! な、なに!?」
目を丸くする楽をよそに、小咲はにこっと笑って言った。
小咲「めそめそタイム、おしまいっ!」
楽「え……小野寺?」
小咲「うん! スッキリしたよ。言いたいこと、ちゃんと全部言えたから!」
くるっと向き直り、浴衣の裾を軽く整える小咲。
さっきまでの涙の跡も、どこか吹き飛んだように明るい表情になっていた。
小咲「ねえ、一条くん……わたしと少し歩かない? まだ、屋台残ってるといいなぁって!」
楽「お、小野寺……それはいいんだけど、ほんとに大丈夫か?」
小咲「うん、大丈夫。ほんとに! せっかくの夏祭りだもん。湿ったままで終わるなんて、もったいないでしょ?」
楽は、そんな小咲の笑顔に一瞬見とれたあと、ふっと息を吐いて頷いた。
楽「……そっか。そうだな。じゃあ、最後まで楽しまなきゃな!」
小咲「うんっ!」
二人は肩を並べて歩き出す。
浴衣の袖が時折触れ合い、そのたび小咲が小さく笑う。
楽「小野寺、俺さ……夏祭りのプロなんだぜ? 射的、輪投げ、金魚すくい、全部得意なんだから!」
小咲「ええ〜ほんと? じゃあ、あそこ行こう? 金魚すくい!」
楽「任せろ! ……って、うわ、ここの金魚でっか!! これ鯉じゃねーの!?www」
小咲「あはははっ、ほんとだ! これ、めちゃくちゃおっきいけど、どうやって取るの?ww ていうか、仮に取れても、家で飼えなくない?ww」
ふたりは笑いながら、次々に屋台を巡る。
小さな紙の舟に水を掬い、輪投げの景品に歓声を上げ、どれもが子供みたいに無邪気だった。
気づけば、空にはぽつりぽつりと星が灯りはじめていた。
小咲「は〜……楽しかった……! こんなに笑ったの、ほんと久しぶりかも……」
楽「だなぁ。小野寺、これ見て? 俺がとった景品の数、多過ぎて途中からカートで運ばないと入らなくなったわw」
小咲「凄過ぎww 一条くん、かっこいい/// でもこれ、家に持ち帰っても扱いに困るやつだねw」
楽「それは間違いないww この獅子舞の顔の部分とか、どうしたら?! って話だよなww」
小咲「www」
ふたりは顔を見合わせて笑った。
そして、夜の静けさがふと戻ったそのとき。楽は真剣な目で小咲を見つめた。
楽「……小野寺。今日はありがとな。そして、ごめん。ほんとに。……もう、大丈夫か?」
小咲は、一瞬だけ目を伏せてから、そっと微笑んだ。
小咲「うん。もう大丈夫。切り替えたから。わたしを誘ってくれて、ありがとね?」
楽はその表情に安心したように息を吐いた。そして、改めてまっすぐ向き直る。
楽「なぁ、小野寺……」
小咲「ん?」
楽「俺さ、本気で小野寺のことが好きだ。優しくて、健気で、笑顔がめちゃくちゃ可愛くて。……小野寺以上の相手なんて、絶対に今後現れないって、本気で思ってる」
小咲「……や、やだ……照れるって……もう……///」
耳まで真っ赤になりながら、顔を隠す小咲。
そんな小咲の手を、楽はゆっくりと握った。
楽「だからさ、既に誓ったことではあるんだけど、改めて言わせてくれ。高校卒業したらーー俺と結婚しないか?」
小咲の目が、静かに大きく見開かれた。