ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜 作:nemu1116
夜風がそっと揺れる窓辺のカーテン。
部屋の明かりは柔らかく、枕元のスタンドだけが灯っていた。
小咲はふわっとあくびをひとつしながら、パジャマに着替え、ベッドにぽすんと大の字に倒れ込む。
小咲「……疲れたぁぁぁ……!」
天井を見上げて、小さく唇を尖らせたまま、しばらく何も言わずにぼーっとする。
小咲「はぁ……今日は、色々あったなぁ。というか……今日“も”、かな?」
目を閉じれば思い出す。
人混み。
屋台の匂い。
笑い声。
そしてーー千棘と楽が話していたあの光景。
思い出したくないのに、なぜか一番鮮明に焼き付いて離れない。
小咲「……泣いたり笑ったり、一条くんに面倒くさい女って思われてないかなぁ…わたし」
そう言って、自分の髪を軽く引っ張る。
ちょっとだけ苦笑い。
でも、心の奥がかさぶたをめくろうとしたみたいに痛む。
小咲「……でも、やっぱり、恋むすびをあげてたのは……ショックだったなぁ……。わたし、自分で買っただけで……一条くんからもらったわけじゃないし……」
胸の奥に何かが刺さる。
同じ「恋むすびを手に入れる」でも、その小さな違いが、大きな意味を持っていることに気づいてしまったから。
小咲「……って、こんなの、贅沢なのかな。欲張り、なのかな……。ああもう、わたしってほんと……」
目元を腕で覆い、思わずベッドにうずくまる。
でもすぐに、思い出してふっと起き上がる。
小咲「それにしても、一条くん、すごかったなぁ。輪投げとか百発百中だったし、結局、あの鯉みたいな金魚も取っちゃうしww 家に持ち帰ってたけど、あのあと、どうしたんだろう?ww」
その言葉は、どこか本気で気にしながら、しかしどこか笑いながら。
小咲「……でも、びっくりしたよね……。いきなり……プロポーズされるなんて……///」
ふわっと頬が熱くなる。
まだドキドキしてる。
思い出すだけで、呼吸が少し早くなる。
小咲「本気、だったのかな……? わたし……あの時、ちゃんと『はい』って言えばよかったのかな? でも、急すぎて、恥ずかしくて、びっくりしちゃって……なんとなく、『前向きに検討させていただきます///』って保留にしちゃったけど……」
ぽすん、と枕に顔を埋める。
小咲「正解が分からないや……。でも……まだドキドキしてる……///」
でもーー
小咲「……わかるよ、一条くん。わたし、分かっちゃうんだ」
布団をぎゅっと握りしめる手に、自然と力が入る。
小咲「千棘ちゃんに恋むすびをあげたことがプロポーズを意味してる、ってわたしが言ったことーー気にしてたんだよね?」
小咲「だから、あえてわたしを安心させるために、恋むすびを渡すなんていう間接的な表現ではなくて、直接、ちゃんと言葉でわたしに伝えてくれたんだよね? 結婚しないか、って///」
小咲「本当に、優しいんだから……///」
小咲、ニヤけが止まらなくなる。
小咲「……だめだ、好き過ぎる/// これ以上にないくらいに、一条くんのことが好き。会うたびに、好きって気持ちが増えていく。だけど、好きになればなるほど……もっと色んなことを求めてしまう。わたしだけ見てほしい、わたしだけに笑ってほしい……そんな、イケナイことを考えてしまいそうになるんだ」
小さな声が、夜の静けさにぽつりと落ちた。
小咲「……ねえ、一条くん。わたし、どうしたらいいのかなぁ……?」
答えのない問いをそっと抱えたまま、小咲はゆっくりと目を閉じた。
きっと、わたしと一条くんの未来が素敵でありますようにーー
そんな願いを胸に抱きながら。