ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜   作:nemu1116

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楽が力づくでやって折ってしまう展開も考えたけどボツにしました(笑)


カイトウ

屋上・朝

 

屋上の風が、止まったように感じた。

空は静かで、まるでふたりだけが、この世界に取り残されたみたいだった。

 

楽は、小咲の差し出した小さな金の鍵を、そっと受け取った。

 

楽「……分かった。開けてみよう」

 

小咲「……うん」

 

小さく、震える声でうなずく小咲。

 

彼女はそっと手を引っ込め、

両手でぎゅっとスカートの裾を握りしめた。

 

楽はゆっくりと、胸元のペンダントに鍵を差し込む。

 

ガチャッ。

 

音が、ひとつ。

けれど――開かない。

 

楽「……っ」

 

眉をしかめ、楽は角度を変える。

慎重に、焦り混じりに、

カチャカチャと音を立てながら、何度も何度も。

 

でも――

 

楽「……嘘、だろ……?」

 

開かなかった。

楽の顔に、わかりやすい絶望の色が広がる。

 

楽(違うのか? 小野寺は約束の女の子ではないのか……?)

 

信じたかった。

奇跡が起きると、確信したかった。

けれど、現実は冷たく背を向ける。

 

楽「ま、まぁ……これ、古いし?

錆びついてるのかもしれねぇし?

小野寺の鍵だって、もしかしたら……落とした時に欠けたり、変形してるとかさ、な? あはは……」

 

震える声。

自分に言い聞かせるみたいな、弱い言葉。

その空気を、小咲はそっと遮った。

 

小咲「……ちょっと、わたしにも……やらせてくれるかな?」

 

小さく、でもはっきりとした声だった。

 

楽「……あ、うん」

 

楽は、鍵とペンダントを、小咲に渡した。

小咲は、両手で、それらを大切そうに包み込む。

胸元に抱え、まるで誰かに語りかけるみたいに、

そっと鍵を、ペンダントに差し込んだ。

 

カチリ――

 

一度、静かに回す。

でも、動かない。

 

小咲(きっと開くはず……だって、確信があるから……!)

 

小咲は、小さく息を吐き――もう一度。

その瞬間だった。

 

──ふわり。

 

鍵が、淡く光った。

まるで、小咲の心に応えるように。

鍵は自然と回り始めた。

 

楽「っ……!?」

 

次の瞬間――

 

ポロッ。

 

小さな金属片が、カラン、と地面に落ちた。

 

楽「なんだこれ……? ……鍵の先端の破片……? これは…星のマーク? 小野寺のじゃない…。これが詰まってたのか?」

 

ふたりが息をのんだ、その刹那。

 

カチャッ。

 

小さな音が、確かに響いた。

ペンダントの錠が――開いたのだ。

 

小咲「……開いたぁ!!」

 

楽「……ま、まじ……?」

 

ふたりは、顔を見合わせた。

言葉にならない。

けれど、その瞳は確かに、同じ感情を映していた。

そして――ペンダントの中から、小さな指輪と、二枚の、折りたたまれた手紙が現れた。

小咲は、そっとその光景を見つめながら、

涙がこみあげそうになるのを必死にこらえた。

 

小咲(……これが、わたしたちの約束!)

 

風が静かに吹く中、ふたりは、そっとそれらを手に取った。

楽は、一枚の手紙を開く。

それは、子供の頃の自分が書いたものだった。

 

【おおきくなった、こさきへ】

 

 お元気ですか。ぼくは多分元気です。

 大きくなって結婚したら、いっぱい好きなどうぶつを飼おうな。

 指輪も、本物のやつを買ってあげます。

 けっこんしたら、こさきのりょうりをまいにちたべたいです。

 らくより

 

楽「……ああ……これ、オレが……」

 

懐かしさと、切なさと、どうしようもない愛しさが、胸に押し寄せた。

楽は、そっと手紙を胸に抱く。

隣で、小咲もまた――震える指先で、もう一枚の手紙を開いた。

 

【おおきくなった、らくくんへ】

 

 おとなになったらくくんは、きっととてもせがたかくなっているんだろうね。

 はやくおおきくなってあいたいです。

 あってたくさんおはなしがしたいです。

 きっとまたあえるとしんじてます。

 とってもじかんがたってるとおもうけど、

 きっとわたしはずっとらくくんのことがすきだとおもいます。

 らくくんは、いまもわたしのこと……すきですか?

 

読み終えた瞬間。

小咲の目元から、ぽろり、と涙がこぼれ落ちた。

 

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小咲「……っ」

 

堪えようとしても、ダメだった。

胸の奥が、あたたかくて、苦しくて、でもどうしようもないくらい、嬉しかった。

 

小咲(わたし、ずっと……信じてた……)

 

そんな自分を、今やっと、認められる気がした。

楽も、そっと手紙を胸に押し当てたまま、小咲をまっすぐに見つめた。

 

楽「……今も、昔も、変わらないよ」

 

小咲「……!」

 

楽は、静かに、でも確かに告げた。

 

楽「答えは、……“うん”。今も、昔も、ずっと前から……好きだよ、小野寺」

 

その言葉は――優しく、温かく、小咲の胸に染み渡った。

風が、ふたりを包み込む。

さっきまで肌寒かったはずの空気が、

今はまるで、ふたりを祝福するように柔らかかった。

ふたりは、そっと見つめ合う。

そこにはもう、不安も、迷いもなかった。

約束は、本物だった。

ふたりは、運命だったのだーー。

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