ガチコイ 〜もし小野寺小咲が先に一条楽と付き合ったら?〜   作:nemu1116

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あーあ……


ダイスキ

翌日

屋上・放課後

 

夕暮れが、ゆっくりと校舎を染めていく。

茜色の空に、ひと筋、細く飛行機雲がのびていた。

静かな風が吹く中、小咲は、ひとり屋上のフェンスにもたれていた。

制服のスカートが、かすかに揺れている。

 

ドアが開く音。

そして、足音。

 

楽「珍しいな、小野寺から呼び出してくれるなんて。どうした? 何かあったか?」

 

いつものように気さくに声をかけてくる楽の姿に、小咲は静かに振り返る。

その表情は、いつもと変わらないーーように見えて、ほんの少しだけ、影を落としていた。

 

小咲「……一条くん。大好き、だよ」

 

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楽「……え? どうしたの、急に……めちゃくちゃ照れるんだけどw 俺も大好きだよ、小野寺のこと……」

 

いつもなら、顔を真っ赤にして、両手で頬を覆って、目を泳がせながら笑っていた。

けれど今日の小咲は、表情を崩さなかった。

それは、どこか覚悟を持った人間の顔だった。

 

小咲「……ずっと昔から一条くんが好きで。約束の相手が一条くんってわかって、鍵が開いて。わたし、天にも昇る想いで、幸せだった。付き合ってからのデートも、すごく楽しかった。学校でこっそり会って、たった1分でも、2人きりで話すだけでドキドキして……。休みの日に会えると、それだけで、嬉しくて嬉しくて……。本当に、幸せだったんだ」

 

語る小咲の声は穏やかで、優しくて。

まるで、ひとつひとつの記憶を確かめるようにーー丁寧に紡がれていく。

 

小咲「一条くん、大好きだよ。日に日に、どんどん好きになっていくの。こんな気持ち、自分でも止められないくらいに……」

 

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楽は、何も言えなかった。

聞いているしかできなかった。

 

小咲「でもね、一条くん。……わたしが好きになればなるほどね、一条くんに、もっともっと、たくさんのことを求めるようになっちゃったの」

 

風が、ふわりと小咲の髪を揺らした。

それでも彼女の目は、まっすぐに楽を見据えていた。

 

小咲「人目を気にせずもっと一緒にいたい。隠さずに、みんなの前で、恋人としていられるようになりたい。付き合う前のわたしにはなかった“わがままな自分”が、少しずつ顔を出すようになったの。自分でも、どうしたらいいのか分からなくなっちゃったんだ」

 

楽「……小野寺……」

 

小咲「それにね……一条くんは、すごく優しい。すごく、すごく優しいの。その優しさが大好きだったのに……気づけば、その優しさを、わたしだけのものにしたいって、思うようになっちゃって……」

 

――昨日の、千棘と楽のシーンがよみがえる。

 

あの告白。

あの笑顔。

楽の肩を抱く千棘。

 

小咲「これ以上、一条くんが他の女の子に優しくしているところを見たら……わたしの心、壊れちゃいそうなの……」

 

楽は、ただ、沈黙していた。

小咲の声は震えていない。

 

でも、その穏やかな語り口の奥にある、張り詰めた想いは、楽にも、はっきりと伝わっていた。

 

小咲「わたしね……これ以上、“彼女”という立場から一条くんを見ていたら、今までと同じ“好き”じゃいられなくなる気がしたの。大好きなはずの気持ちが……少しずつ、苦しくなっていって……わたし、一条くんのこと、ずっとずっと、大好きなままでいたいんだ」

 

そう言って、小咲はふっと笑った。

それは、どこか悲しげで、それでいて、どこまでも優しい笑顔だった。

 

小咲「この素敵な気持ちを、壊したくない。わたしの中の、“一条くんが大好きな気持ち”を、何かに染められたり、濁らせたりしたくないの……」

 

楽「小野寺……待て」

 

楽は察する。このあとの展開を。

しかし、小咲は、その言葉に惑わされることなく楽を見た。

まっすぐに、静かに。

まるで、それが最後になるのを知っているかのように。

 

小咲「だから……ごめんね。わたしたち、別れよ? 友達に、戻ろう?」

 

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その瞬間ーー夕陽が、校舎の影を長く伸ばす。

茜色の光が、小咲の輪郭を縁取り、まるで少女の姿を空気に溶かしてしまいそうなほどに幻想的だった。

 

楽「……」

 

涙は流しながらもきちんと笑って、静かに一礼する。

 

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小咲「一条くん、大好きだよ。本当に、ありがとう」

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